小説の書き方 「技術」編~其ノ3

執筆をするにあたって、より具体的な技術を身につけましょう。「技術」編~其ノ2からの続きです。

表現を検証する

同じ事象でも、違う表現であらわすことはできないか!?
いくつか候補をあげて、比べてみるのもいいですね

「カキコさん」「優しい」という人物をイメージさせたいとします。
あなたなら、どういう言葉、文章やエピソード等で表現しますか?

  「カキコさんは優しい人だ。」

と書ききりますか?これも一つの方法です。
もう一つ、優しい様子をあえて「優しい」という言葉を使わずに表現するのも、一つの有効な方法です。

  • ・魅力的な笑いジワの
  • ・いつもニコニコ元気
  • ・いい友達が多い
  • ・まよわず困っている人に手を差しのべる
  • ・そっとそばにいてくれる

ダイレクトに「優しい」という言葉を使わなくても、身体的な特徴やエピソードで「カキコさん」は「優しい」ことを読者に分からせることができたりもします。
意外と、直接的な表現よりもリアルで生身の「カキコさん」という人間を思い描けたりすることも。
現実の自分が「この人優しそうだな~」と感じるときはどんなときだったかを思い出してみるのもいいかもしれませんね。


心の動きを体の動きにおきかえてみる

《例》
・カキコさんはものすごくショックで悲しい

という心情を表現したいとき、どのように表現しますか?

「ショックで悲しい」とそのまま書けば、確かに誤解なく伝わりやすいです。
ただ、作家さんならではの個性という意味ではちょっと貧弱になります。

カキコさんの表情、行動の描写によって「カキコさんは今ものすごくショックで悲しいんだろうな……」とキャラクターの心情を【読者に想像させることで表現する方法】です。

狙いどおり読者に伝われば「あえて文字にしないが、文字にしたのと同じ」になりますからね。う~ん、まさにテクニック。
「心情」を類推させる情景描写は、書き手の個性・力量に拠るところが大きく、ある種【腕の見せ所】といえます。

  • ・その場に崩れ落ちた
  • ・傘もささずに無言のまま雑踏の中に消えていった
  • ・問いかけにも返事をせず足元を見据えたまま
  • ・はらはらと涙がこぼれ落ちた

など、小説で伝えたい「雰囲気」も「誤差」も増えます。それが作家さんごとの「味」となります。

自分の思い描いたニュアンスをどんぴしゃで言い表すために、言葉のミクロなところまで印象の違いをこだわりぬいていく作業を、ひたすらに日々積み重ねていくことが大事です。

書きながら、書き終わっても「この言葉のチョイスでよかったのか?」等見直していきましょう。
その語自体が持つ意味と、表現したいニュアンスとの誤差をできるだけ小さくする作業を重ねることで、
より作者の意図に近い形で読者にも伝わりやすくなります。


魅力的な人物紹介をしよう

自分が小説執筆の際につくったキャラクター設定(詳細の全部)を、①タイトル②目次、につづいて、すべてをばばーんと貼りつけてしまうのは、あまり得策とはいえません。
小説をこれから読む人に適切な量の「引きのある」キャラクター説明にとどめるのが、執筆初心者の基本です。

ちまたにあるマンガ・小説の連載第1話目や第1巻で、ストーリーを読む前に、いきなりネタバレに近いようなキャラクター紹介(かなり詳細)がされていたら、読者の自分だったらどう思うか…と考えてみるとわかりやすいかもしれません。

あえて、身長・体重だとか背中にホクロ2つだとか、そこまではまだいいだろ…という情報は最後の最後、本当に詳しく教えて欲しいーっというご希望が殺到したときや、「終-end-」の文字を書ききってからにしましょう。

まだ執筆しはじめていくらも立っていないうちから、世界観や人物の詳細<しょうさい>な設定を出されると「これだけ設定があるんだったら、それを小説本文で書けばいいのに…」と早々にドン引いてしまう読者様も出る可能性があるからです。

素敵な旅館かとおもって客として入ったら、いきなり厨房や従業員作業場がモロ見えでビビる感覚といいましょうか
あるいは、ハンバーグを頼んだら、ハンバーグ小っさいのにキャベツがすんごい山盛りでビビる感覚といいましょうか
「そこじゃないだろ…」というわがままな読者の、とても素直な気持ちなのです。

小説はなるべく多くの人に読んでもらいたい、というのが自然ですよね。
できるだけ、最初のうちは、小説「本編」を見てもらことに特化したスレッド構成にしましょう。

人物紹介は、本編を効果的に引き立たせるためにあるので、本文を読む前の人たちが目にするところに書くのであれば、どうしても本文を読む前に知っておかなければいけない点だけに絞ってお知らせしてみてください。

中上級者になってくると、人物紹介を書かなくても多くの人がスムーズに本文を読み進めさせるような工夫やテクニックができるようになってきたりもしますよ。