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あやかし荘 完結しました
日時: 2010/11/14 12:00
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
参照: http://www.youtube.com/watch?v=0V8-_hj3bcc

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眠たがりですが、お付き合いくださいませ。

イメソン 紅一葉
urlにて。


用語説明>>103

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Re: あやかし荘 ( No.111 )
日時: 2010/11/05 18:11
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

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思い出すのは、温かい手のぬくもりだった。


テストで悪い点をとっても、髪を切り過ぎてベソをかいたときも、あるいは。 
リレーで一等になったときも、給食を残さず食べたときも、その手で頭を撫でてくれた。

やればできるじゃない、さすがアタシの子。

自慢するように姫斗を抱擁し、頬ずりし、笑いかけてくれた。
そんな優香が、いなくなった。

「姫斗、座れ」 「でも……っ」 「座れ」

林太郎に言われ、姫斗は悔しそうに顔をしかめるが、それ以上何も言わなかった。

「嫌いよ」

そして口から出たのは、

「妖怪なんて……大嫌い」

ハッキリとした、否定の言葉だった。
それを聞き、林太郎たちや妖怪たちが一斉に姫斗をみる。
怒りではなく、酷く傷ついたといった顔だった。

「里深なんて……、大嫌い。 お母さんが死んだのに、殺されたのに……。 何も悲しんでないっ」

それは一理あった。
人間より遥に長く生きる妖怪にとって、親しい人との死別は慣れているものだった。 
悲しんでいない、というより、慣れてしまったのだ。
人間が死ぬことに。

「姫斗、それは言い過ぎじゃろう」
「うるさい。 私はこんな所、好きじゃない!」

言って。
姫斗は立ち上がり、出て行ってしまった。

「姫斗っ」
「放っておけ。 まだ整理がつかんのだろう」

与一がそう言い、妖怪たちを宥める。
一方で、明弥は微妙な顔をしていた。

「明弥、気にすんなよ。 姫斗はただ混乱してるだけだから」
「うん。 わかってるよ」

わかってるからこそ、つらい。
混乱しているときに、本音を言ってしまうものが多いから。




   『               』



そろそろお腹も大きくなって、赤ちゃんが生まれそうです。
二人目とあって、さほど緊張はしないけれど。
ねえ、辰美。
あなたは何があっても私と鬼倫、そしてこの子を護ってくれると言ってくれました。

鬼倫が、僕もお母さんを護るんだと言ってくれた時、本当に嬉しかったのよ。

今お腹の中で眠っている子は、男の子かな? 女の子かな?
女の子だったら、亜鬼という名前をつけましょう。
鬼倫が考えた、とてもとても、いい名前。

鬼倫はどんな鬼になるのかな。


心優しい鬼になってほしいです。 

Re: あやかし荘 ( No.112 )
日時: 2010/11/05 18:17
名前: 水妖 (ID: 8hgpVngW)

姫斗ぉ!

何だか伊月が悲しんでいる気がします。

Re: あやかし荘 ( No.113 )
日時: 2010/11/05 18:31
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

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どれくらい走っただろうか。
気づけば、そこは暗い山の中だった。
息を吐き、涙をぬぐい、嗚咽をこらえる。

姫斗は一人、漠然として山の中を歩いていた。

──酷い事言ったかも知れないな……。

──妖怪がみんな悪いってわけじゃないのに。

──でも、お母さんが死んだのに。

優香の事を思い出そうとすると、どうしてもあの夜に殺された彼女が浮かび上がってくる。
消そうとしても、なかなか消えてくれない。

「どうしよう。 このまま、」

消えてしまおうか。

そう思った時だった。
吹いていた風が一層強まり、突風となって姫斗を襲う。
それが止み、姫斗が目を開けると、

「………………?」

一人の男がいた。

美しい男だった。
性別を超越した、どこか儚げな印象を持つ、男だった。
その頭部には2本の角が生えており、胸を大きく開けた着物が妙に色っぽい。

キセルを咥え、流れるような三白眼で姫斗を見た。

「………………ッ」

目が合っただけで、背筋が凍りつく。
それは、まぎれもない妖気だった。

──逃げなきゃ。

本能的にそう判断するが、足が動かない。

──でないと、喰われる。

「そこのきみ」

ふいに、その男が話しかけてきた。
姫斗が答えないでいると、

「きみの事を言っているのだけど」

遠く離れているはずなのに、耳元で囁かれているように錯覚させられる。

「なに?」 「どうしてここに人間がいるの?」

幼い子供のように聴かれ、姫斗はより警戒心を強くする。

「やっぱり……人間じゃないんだ」
「正直、人間はあまり好きじゃない。 だけど、きみはオレの妖気を一身に浴びても、何故か気絶してくれないから困ってる」

女の子の強張った表情を見るのは嫌なのだと、彼は言った。

「それなら帰ります。 すみませんでした」
「………きみは妖怪を見ても驚かないんだね」

ヒヤリと。
感じ取ったのは、殺意だった。

「半妖でもない……。 もしかして、里深家の人間かな」
「……そうだったら、どうだというんですか」

突如。
視界が暗くなり、両手に鈍い痛みが走る。

「……っ」
「鬼はどこだ」

その声で目を開けると、自分が両手をきつく上で抑えられ、目の前にさっきの男が迫ったのだと分かった。

「里深の人間ならわかるだろう? 鬼はどこだ」
「お……に……?」

──鬼なら、滅んだって聞いた。

──一匹の鬼の裏切りによって滅びたって、聞いた。

──確か………名前は…………。





「鬼倫?」





姫斗の口から出たのは、鬼のヒントでもなく、男の──鬼の名前だった。

「ほう。 オレの名前を知っているの」
「………聞いた事、あるだけよ」
「確信したよ。 きみは里深家の人間だね」

口調は優しいが、目には殺意が滲んでいる。

「オレが一番嫌いな人間の名前だ」

妖気が姫斗を包み、それが手のような影となってうねり出す。
怖い、と。
姫斗が悲鳴をあげそうになったとき。

「鬼のぼうや、貴様をここで喰らってやろうか」

声が、聞こえた。
いや実際には、“音” が聞こえた。

大地の、草木の、風圧の、生命の。
それらが全て合わさったような、音が。
しかし、それはハッキリと “声” だった。

「……森の主か」
「ワシの領土でイタズラしてもらっちゃ困るのじゃ」

その声は───

Re: あやかし荘 ( No.114 )
日時: 2010/11/05 20:42
名前: 叶嵐 ◆RZEwn1AX62 (ID: fMPELWLk)
参照: http://俺様こそ真の駄作者だッッ!!

わあああ!
ちょ、描写が! 文才がぁ!!(落ち着け
才能がすごいですよ……流石はアキラs。

なんかもうごめんなさい。
何で自分ここまで文才がないのか……。
あ、ちょっと待って。 なんか泣けてきたww

続きがものすごい楽しみです!
き、鬼倫怖えぇ……!

Re: あやかし荘 ( No.115 )
日時: 2010/11/05 22:03
名前: 杵島 茄武 ◆wWr1IKfGtA (ID: EUGuRcEV)

姫斗、世の中物騒なんだから、
お兄ちゃんと手はなしちゃダメよッ!

ほらー、おじさんが怒ってるよー


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