ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- あやかし荘 完結しました
- 日時: 2010/11/14 12:00
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
- 参照: http://www.youtube.com/watch?v=0V8-_hj3bcc
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眠たがりですが、お付き合いくださいませ。
イメソン 紅一葉
urlにて。
用語説明>>103
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- Re: あやかし荘 ( No.26 )
- 日時: 2010/10/11 07:57
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
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艸
夜になると、田舎のせいか外の音が聞こえなくなる。
髪を全て下ろし、風呂から出た姫斗は、糸目荘にきた初日の夜ということで、興奮していた。
──きっとアレだ。 お泊りみたいな感じ。
布団に入ったものの、一向に寝付けない。 そのまま数分が経ち、
「……トイレ」
のっそりと上半身を起こす。
扉に手をかけ、そこで昼間に言われた林太郎の言葉を思い出した。
夜に、糸目荘の自室から出るな、と。
──いや、でもトイレくらい良いだろうし。
深く考えずに姫斗は部屋から出て、暗い廊下を歩く。
初春のせいか、夜は冷え込む。 パジャマの上から体を擦りながら歩く姫斗を窓の外から、
「…………」
二つの紅い眼が、見つめていた。
「寒いな、やっぱり」
トイレを済ませて手を洗う。 冷たい水が更に体温を奪う。 早く布団に入りたいと思い、振り向く。
そして、
「ひ………っ」
目の前にいたのは、決して人間ではない物だった。
叫ぶ、というよりは息を止めるというような声を出した姫斗。
その“化け物” は、紅い眼で姫斗を睨みつけている。
黒い影がその巨体を多い隠し、低い唸りを上げている。
「……っ」
声が出なかった。 人間ではないソレを見て、姫斗は自分が危ないと瞬時に判断し、洗面台にあったドライヤーをソレめがけてぶん投げた。
簡単に避けられ、それで威嚇した化け物が牙を見せながら近寄ってくる。
逃げられない。
背中が洗面台にあたり、もう後に退けないのだと分かった。 寒いというのに汗が流れ、呼吸が苦しくなってくる。
「ウガアアアッ」
「っ」
吠えた化け物は勢いよく姫斗に飛びかかる。 その下をくぐって、姫斗はなんとか化け物から離れる。
足はそのまま、糸目荘の外へ。
──な、にアレ……っ!
混乱の中、頭を整理しようとするが、おいつかない。
──トラ? いや、だって黒かったしっ。
唸り声がして振り向くと、糸目荘から化け物が出てきた。 一層、体に纏わりつく影を濃くして。
姫斗はこれ以上逃げても無駄だと思い、強張った表情で化け物を見る。
──空手と剣道は習ってたけど……っ。
「ウガアアアアアアアアッ!! 」
吠え、走ってくる。 黒い化け物。 ああ、もうだめか。 死ぬのかと、姫斗が目を閉じたとき。
「散れ、狐火」
カッと、夜だというのに辺りが明るくなる。
化け物の体を焔が包み込み、悲鳴をあげながらその体が焼けるのを見る。 見てしまう。
完全に火が消え、辺りには灰だけが残った。
「………」
姫斗は、突如現れた男を見て、
「───林太郎さん?」
- Re: あやかし荘 ( No.27 )
- 日時: 2010/10/11 09:20
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
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白い髪に、紅い帯の着もの。 黄金色の瞳に、フサフサした可愛らしい狐の尻尾と耳。 首元には、昼間見つけた痣が頬辺りにまで広がっている。
「…………林太郎さん?」
姫斗はその顔立ちに見覚えがあり、そっと名前を呼んでみる。 ひくっと耳が動き、そいつは振り返り、
「ち、違いまふよ」
「声裏返ってるし噛んでるし、誤魔化しきれてない」
完璧林太郎だと確認した姫斗はそうつっこんで、安心したようにその場に座りこんだ。
「大丈夫か? 怪我、ないか」
「ありませんけど……」
気にしなくとも、林太郎の尻尾やら耳やらに目がいってしまう。
全ての合点がいき、姫斗はそっと口に出す。
「やっぱり、あの狐は林太郎さん、だったんだ」
こくりと、林太郎は頷く。
どこかバツの悪そうな、知られたくなかったという顔。 スゥッと林太郎の痣がひいていき、尻尾と耳も消え、瞳も黒に戻った。
「さっきのはなんだったんですか」
「……ぐーぐー」
「寝たふりするな。 下手なんだから」
艸
糸目荘に戻ると、伊月と明弥が起きていた。
入ってきた林太郎と姫斗に驚き、 「どうしたのっ、とりあえずあったかくして」 明弥が姫斗と林太郎に珈琲を淹れる。
「影妖に襲われた」
簡単に林太郎が説明し、二人の表情が曇る、陰る。
ただ一人、姫斗はゆっくりと事情を把握していった。
三人とも、同じ痣。 糸目荘。 ……影妖。
「あなたちは、人間じゃない……?」
疑問形だったのは、俄かに信じがたい事だったから。
これ以上隠しても無駄だと思ったのだろう、
「あったりー」
林太郎が簡単に答えた。
姫斗は特に驚かず、じっとじっと三人を見た。
「半妖……っていうんだよ」
「半妖?」
口を開いたのは、明弥だった。
「オレらは、先祖が妖怪と交わって、その血に人間と妖怪の血を交えた、先祖返りなんだよ」
半妖。
ヒトとアヤカシが交わった、人間でも妖怪でもない中途半端な存在。
糸目林太郎は、狐。
高野明弥は、鴉。
三船伊月は、狗。
それぞれが、それぞれの。
己の中に抱いてる、妖怪。 アヤカシ。
「さっき襲ったのは、影妖。 簡単に言うと、悪い妖怪」
「……すっげー簡単に言いましたよね」
影妖。
人間への憎しみから、妖怪に纏わりつく影。 その影が妖怪を異形の形に変えていく。
人を襲う、妖怪。
「それがさっきの」
「それを倒せるのは、半妖やら妖怪やら、鬼だけなんだよ」
「…………鬼?」
鬼。
妖怪たちの長で、この田舎町に住んでいた、最高上位の妖怪。
人間を襲うイメージがあるが、そんな事はなく、妖怪たちをまとめたりとリーダーのような働きをしていた。
しかし。
「鬼は滅んだ」 「滅んだ?」
元々数少なかった鬼は滅び、妖怪たちの均整は崩れ、影鬼となるものが生まれてしまった。
- Re: あやかし荘 ( No.28 )
- 日時: 2010/10/11 17:41
- 名前: スペシャル ◆XHKDIsPEFA (ID: 3L0NyJ0C)
- 参照: しおり
あげ
- Re: あやかし荘 ( No.29 )
- 日時: 2010/10/11 20:44
- 名前: 杵島 茄武 ◆wWr1IKfGtA (ID: EUGuRcEV)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode=view&no=15121
アッキーラさんの新作を今か今かと楽しみにしていました^^
あげます↑
- Re: あやかし荘 ( No.30 )
- 日時: 2010/10/12 12:09
- 名前: ユエ (ID: .Ksjqplx)
お久しぶりです。
アキラさんの新作だ!!
頑張ってくださいっ。
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