ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- あやかし荘 完結しました
- 日時: 2010/11/14 12:00
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
- 参照: http://www.youtube.com/watch?v=0V8-_hj3bcc
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眠たがりですが、お付き合いくださいませ。
イメソン 紅一葉
urlにて。
用語説明>>103
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- Re: あやかし荘 ( No.166 )
- 日時: 2010/11/14 10:21
- 名前: 水妖 (ID: 8hgpVngW)
おおっ!楽しみっ!
手探りて、そんな…
ちょ…何で笑うんですかっ!
- Re: あやかし荘 ( No.167 )
- 日時: 2010/11/14 10:52
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
- 参照: http://yaplog.jp/akirahayate/
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狐火でいくら焼きつくしても、半妖の黒い影は消える事はなかった。
轟々と蠢き、手のような形になる。
「拉致あかねぇな、クソ」
林太郎は妖気を最大限に高め、地面に右手を置いた。
傷が疼く。 だけど、そんな事を言っている暇もない。
「滾れ! 轟炎火ッ!」
高まった妖気が一気に狐の力となって膨張し、周りを火の海に変える。
火は妖怪にしか効かないため、木々に燃え移る事はなかったが、地面は最大に熱がこもる。
「すっげ……」 「やりすぎじゃないかな」
伊月と明弥が感嘆した感想を言う。
影妖は全て燃え尽き、千登里は口笛を吹いた。
『……ちょっと、加減しすぎたかな』
言って。
不意打ちで、明弥の腕に斬りかかった。 猫の鋭い爪が柔らかい皮膚を引き裂き、肉まで届く。
「がぁ……っ」
『ズッタズタに引き裂いて、鬼倫のエサにしてやろうかなぁ〜』
「明弥ッ!!」
近くにいた伊月が明弥に馬乗りになっている千登里に殴りかかろうとしたとき。
「………………っっっ」
そこにいた半妖たちが動きを止める。
全員が、同じ方向を見た。
それは、あまりにも恐ろしい妖気と、殺意。
生半可な存在である自分たちより、はるかに違う妖気。
「………鬼倫?」
思わず、腹話術ではなく自分の口で言葉を発する千登里。
それもそのはずだった。
だって鬼倫は────、
今まで自分たちに向けられることのないような───、
笑顔を、亜鬼に見せていたから。
「すごいな。 鬼に覚醒してまだ早いのに、殺意だけでここまで妖気を高められるのか」
振り下ろした刀を素手で受け止め、亜鬼の腹部をけり上げる。
胃液を吐き出しつつも、亜鬼は刀をいったん手放し、鬼倫の背後に回って妖気を脊髄にむかって討ちこんだ。
「っ」
衝撃が体を包む。 鬼倫はそれでも笑みを崩さず、二発目をくり出そうとしていた亜鬼の腕を、彼女の日本刀で貫いた。
「─────ッ」
「悲鳴をあげないのか」
一瞬驚いた顔を見せたが、そのまま腕を貫通させる。
痙攣している右腕は、鬼の再生治癒能力を持ってしても、いつ再生するか分からない。
──もう、死ぬ気でいこう。
覚悟を決め、姫斗は歯を食いしばり、
「あああああああああああああああああああああっ」
自らの腕の骨を梃子の原理で折った。
彼女の行動の意味が分からず、鬼倫が唖然としていると、そのスキに亜鬼は自らの腕から日本刀を引き抜き、
「!?」
そのまま自分の腕を切断した。
切断部分から血が噴き出すが、鬼の再生能力がそれを危険と判断し、真っ先にそれを塞ぐ。
「腕が使い物にならないと判断したら切り落としたか……。 驚いたな。 それほどまでに憎いか、オレが」
「憎いよ」
亜鬼はそう答え、二本刀を片手で構えた。
その刃に、自らの妖気を纏わせる。
「だから……止めなきゃいけない」
記憶では、いい兄だった。
口数は少ないけれど、亜鬼にとても優しく接してくれた。
でも──、
「これで、最後だよ」
もう、終わらせよう。
- Re: あやかし荘 ( No.168 )
- 日時: 2010/11/14 11:56
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
- 参照: http://yaplog.jp/akirahayate/
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刀を構え、一気に斬りかかる。
もうこれでサシの勝負の決着がつくのだと、鬼倫も分かっていた。
自分自身の妖気を最大限に膨らませ、そして、
「鬼派道」
妖気を膨張させ、派道となって亜鬼に襲いかかる。
刀でそれを喰いとめ、亜鬼は片手で踏ん張った。 少しでも力を抜くと突破されそうなほどの、威力。
──やばい……もたないかも知れない……っ。
歯を食いしばり、全ての妖気を刀に注ぐ。
しかし、二つの妖気がぶつかり合う刀としては、限界が近づいてきた。
──刀が折れる……っ!
目を閉じ、必死で祈る。 ただただ祈るしかなかった。
そのとき──、
「おらっ、ふんばれ姫斗!」
「え……」
後ろから自分を支えてくれていたのは、林太郎たち三人だった。
「オレら分かってっから」
「姫斗の覚悟ぐらい、ラクショーで通じる」
「……目、キレイって言ってくれたしな」
視界がぼんやりと霞むのは、きっと涙のせいだ。
三人の妖気と気持ちが通じてくる。
「ありがとう」
増大する妖気。
片手で支えるには辛かった刀も、今は一人ではなく、みんなと一緒に支えていられる。
「だあああああああああああああああああああっ」
鬼倫を押し返す妖気に。
突然増幅した妖気に、鬼倫は躊躇う。 自分が思っていた以上に、力が強い。
──これほどの殺意一体どこから……
そう思い、鬼倫は気がついた。 この妖気が、殺意ではないという事に。
──絆……? オレには分からない感情だ。
どんどん、光が膨らんで鬼倫を包み込む。
予想していた痛みは、なかった。
どこか柔らかな、そんな、痛さ。
「………………」
心臓を刀で貫かれ、鬼倫は声を出さずにただただ亜鬼を見ていた。
驚きも哀しみも何もない、無表情で。
不意に、そっと手を伸ばし、亜鬼の頬を撫でる。
「──喰い損ねた……かな……」
言って。
灰になった。
「……………え」
あまりにも呆気なく灰になったため、亜鬼も漠然とした感情を抱かざるを終えなかった。
簡単に、殺せた。
腕一本だけを犠牲に、あまりにも脆く。
「き……しな……っ」
愛する主人の消滅に、千登里が声を上ずらせる。 ヨロヨロと立ち上がり、亜鬼たちに目もくれず、灰の傍に近づいて、
「うああああああああああああああああっ」
泣き叫んだ。
そのさまをじっと見ながら、亜鬼は───、
「…………………」
そっと、気を失った。
♪
何が正しくて、何が間違っているのかよく分からない。
でも──、
せめて自分の信じた道だけは、歩いて行こうって思った。
♪
「亜鬼を、迎えに来た」
森の主にそう言われ、林太郎が苦笑する。
「やっぱ、連れていくのか」
「当たり前じゃ。 鬼は亜鬼一人。 辰美のように妖怪たちを纏めてもらわんと、鬼倫が死んだ今も影妖が出るぞ」
「………そうだよな」
糸目荘のリビング。 日のあたる場所。 そのソファの上で、亜鬼は眠っていた。
完全に “鬼” に覚醒し、特徴でもある牙も生えている。
「おい、起きろ。 おい」
伊月がいくら肩を揺すっても起きない。 困り果てている伊月にかわって、明弥がそっと亜鬼の肩に手をおき、
「起きなさいっ」
勢いよく体を回転させた。
当然、ソファから床に落ちるわけだが、一瞬で目も醒めるだろう。
「いってて……何するのよ〜」
「森の主が迎えに来たよ。 ──家に帰らなきゃ」
言われて、亜鬼が不安そうな表情になる。
離れたくないな、と思った。 いつまでもここにいて、林太郎たちとバカみたいに笑っていたい。
だけど
「うん……そうだね。 行かないとね」
鬼なのだ、自分は。
糸目荘から出ると、林太郎が何かを手渡した。
「なにこれ」 「日本刀だよ」 「くれるの? 大切に飾ってあったけど」 「やるよ。 どうせ使わないただの飾りだったんだ」
そう言う彼の表情は、やはりどこか寂しそうだった。
「里深のじっちゃんには言ったのか?」
「うん。 おじいちゃんは全部分かってたよ」
「そっか……。 なら行け」
「林太郎さん」
妖怪と人間は本当に仲良くなれるのか。
ずっとずっと、辰美たちが考えていた疑問。
「また、会いに来てもいいですか……っ?」
亜鬼は少しだけ分かったような気がした。
「オレら全員を家族だと思えっつったろ」
「暇なときにでも遊びに来てね」
「んじゃーな」
こんなにも、笑いあえる人がいるのだとしたら───。
人間も妖怪も、関係ないんじゃないかって。
- Re: あやかし荘 ( No.169 )
- 日時: 2010/11/14 11:59
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
- 参照: http://yaplog.jp/akirahayate/
完結しました(-_-)ホッ
もう………疲れたあああああああっ笑
いやはや、ようやく完結ですよ。 いやぁやっぱりこういうストーリーは話作るの大変ですね。
打ってるだけで指つりますよ。
今回は、このような駄作にお付合いいただき、ありがとうございました。
もう本当に……感激して涙が出そうになりました。
↑主に応援コメの方で。
一段落ついた自分ですが、シリアス・ダーク小説で再び書かせてもらいたいと思います(^<^)ノ
今度は現代もの!
妖怪も鬼も化け物も何も出てこない、皆さんの身近に潜んでいる悪意、というのをテーマにしていこうかと!
どうかそちらも、もうすぐスレッドたてるので
見てくれたら幸いですっ
でわでわ、「あやかし荘」 を見てくれた皆さま方!
本当にありがとうございました!
- Re: あやかし荘 完結しました ( No.170 )
- 日時: 2010/11/14 12:45
- 名前: 時雨 (ID: bQbYMR0G)
うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!
だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
って涙とまんないよ。
これから出かけるというのに。
感動だよ。
いままでお疲れ様でした。
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