ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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あやかし荘 完結しました
日時: 2010/11/14 12:00
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
参照: http://www.youtube.com/watch?v=0V8-_hj3bcc

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眠たがりですが、お付き合いくださいませ。

イメソン 紅一葉
urlにて。


用語説明>>103

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Re: あやかし荘 ( No.136 )
日時: 2010/11/08 17:25
名前: 杵島 茄武 ◆wWr1IKfGtA (ID: EUGuRcEV)

カルい感じがするんですよ、コメディ

シリアスと違って箱だけ作って後ボイコット
シリアスは責任を持って書いている人が多いので
本当に読みやすいですよ

Re: あやかし荘 ( No.137 )
日時: 2010/11/08 18:35
名前: 水妖 (ID: 8hgpVngW)

森の主にハマりました(笑)
可愛いですっv

あと、林太郎の敬語がいいですねっ!

Re: あやかし荘 ( No.138 )
日時: 2010/11/09 12:37
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

コメディは、恋愛もの多いですよね。
恋愛とか、人の気持ちの移り変わりを丁寧に表している小説には憧れる……っていうか、惹かれます。
自分もコメディよりはシリアスの方が読みやすい…というか、書きやすいです
>杵島茄武さん


森の主、略してモリヌシ笑
林太郎はふてぶてしいイメージあります笑
>水妖さん

Re: あやかし荘 ( No.139 )
日時: 2010/11/09 13:52
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

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明弥の言葉に姫斗が寒気を感じ、
林太郎が自分の部屋を掃除しているとき、


里深神社の掃除をしていた与一は、ふと何かを思い出したように神社を出て、その裏にある倉を除く。
厳重に鍵をかけた倉。
与一しか持っていない鍵を開けると、

「おお、あったあった」

倉の中に、小さな竹籠があった。
器用に作られており、そこに桃色の布団が敷かれていた。

「懐かしいのう」
「そこに、“鬼” がいたんすね。 里深の旦那」

後ろから声がして、長年与一を親しい烏天狗が、愛しそうに竹籠を見つめていた。

「知っとったのか」
「気づいてました。 それこそ、里深の旦那──奏さんが戻ってきてから、ずっと」
「……そうか。 お前だけか?」
「おそらく」

烏天狗の言葉に、与一は安堵した素振りを見せた。
老いて行く友人に、烏天狗は微笑んで。

「大丈夫。 我らの鬼姫さまは、そんな事でへこたれないさ」



           ♪
         


「ちょっくら出かけてくるわ。 洗剤がなくなった」

林太郎はそう言って、糸目荘唯一の移動手段、自転車に乗って近所の小さいスーパーに急ぐ。
いつも着物姿だから、レジの人に顔を覚えてもらっているほどだ。

──てかあいつらも働けよな〜。 なんで一番年上のオレがこんなさ、働いてるわけよ〜。

25歳とは思えないほど大人気ない事を思いながら、下り坂を下る。
風を切り、早いスピードで下りていると。

「……………あ?」

赤フードの、少女がいた。
左手に可愛らしいぬいぐるみをはめており、それが口をパクパクさせている。
慌てて自転車をとめて、改めて彼女を見た。

「……………」

声には出さなかったが、林太郎は気付いた。
彼女が、半妖であると。

『ヒッチハイク〜』
「……………ああ?」

腹話術で話す彼女を、不審な目で見る林太郎。
ギョロリとした目が猫を連想させる。

『ヒッチハイクだよ、ヒッチハイク。 お前さ、糸目荘の大家さんでしょう。 僕さ、そこに住んでる里深姫斗って人に会いたいの。 同じクラスなわけ』

──姫斗と半妖が同じクラス……ねぇ。

『お前も半妖でしょ?』 

そう言われ、林太郎が顔をしかめる。

「年上にお前はねぇだろ。 礼儀を学べ、礼儀を。 ガキが」
『ただの半妖のくせに生意気なんだよねぇ。 これだから田舎者はダメだよ。 鬼倫に喰われろ』

鬼倫、に林太郎の動きが止まる。
ゆっくりと彼女──千登里を見て、

「───っっ!」

思い切り、胸を抉られた。

倒れる。 自転車も、林太郎も。
坂道を転げまわりそうだったけど、なんとか林太郎はとどまった。

「がっっ、がはっ」
『不意打ちになれてないの〜? ダメじゃん。 ちゃあんと相手が敵かどうか見定めなきゃぁ』

右手の鋭い爪には、林太郎の血がついていた。
それを舐めとり、千登里が含み笑いする。 目が、金色に光る。

「てめ……っ、鬼倫の……っ」
『鬼倫に賛成はしてないよお? 時々、お前らのほうが正論に見えるもん。 だけど、僕は鬼倫が好きだ。 お前らが崇める、鬼姫さまよりはねぇ』

何を言っているかが、分からなかった。

──お前ら? オレらが崇めるなんだってんだ。

『まだ気づいてないのお? 鈍いよ』
「……っ、!? がああああああああああああっ」

突如、林太郎が酷く苦しみ出した。
その背後には翡翠が立っている。

「僕、日の光に弱いんだってば」
「……っ、狐火!」

半妖化し、自分の周りを焔で包む。
人通りの少ない坂道だ。 見られる事もないだろう。
万物を燃やす事はなく、妖怪を燃やす事のできる狐火は、燃え広がることもない。

『威勢だけはいいねぇ』
「千登里、もう終わろう。 目立つと鬼倫に怒られるよ」

翡翠にそう言われ、千登里が物足りなさそうに林太郎の血を舐めとる。

「半妖だから胸を抉っても死なないか……。 でも殺せとは言われてないから、千登里にしては上出来だな」
『うるせぇよ。 とっとと帰ろう』

二人が林太郎を残して去ろうとした時だった。
倒れてる林太郎を見て、彼女は──



姫斗は、目を赤く光らせた。

Re: あやかし荘 ( No.140 )
日時: 2010/11/09 14:31
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

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なんで姫斗が日本刀を持っているんだとか、なんでここにいるんだとか、色々と質問してみたい気もするけど。
意識を無くす寸前の林太郎のぼやけた視界では、まるで──、

──鬼?

『お? なんか自分から来てくれちゃったらしいよ』
「……めちゃめちゃ怒ってるじゃん」

姫斗の視線が、倒れている林太郎から二人に目が行く。
手には、林太郎の日本刀。 いつも部屋の和室の隅に飾ってあるものだった。

「り……、たろ……さ───」

もう、失うのは嫌だと。
姫斗は、クラスメイトである千登里に刃を向けた。

「………?」

違和感を感じたのは、林太郎だった。
いつもの姫斗じゃない。 こんな表情を、彼女はしない。
いや、そうではなく。

──あいつじゃない。

林太郎は、目を丸くして、やっと気づいた。
妖気。
姫斗の体から放たれているのは、半妖の自分が蹴落とされそうな、

凄まじい妖気である事に。



「ねえ、十分気をつけてよ。 今まで人間として育ったとはいえさあ──」
『分かってるよ。 殺されたりしねぇよ』

千登里と翡翠がそう言い、半妖化する。
千登里には黒猫の耳としっぽが生え、ありえないほど爪が鋭い。 八つ裂きにされれば、即死してしまそうなほど。 
翡翠にも狼と似た外見になり、口元から牙がのぞく。

考えなしに。
そう、考えなしに、姫斗は二人につっかかっていた。
日本刀を構え、振り下ろす。 華奢な少女が扱っているとは思えない。

『メチャクチャじゃんか!』
「うわ……、しかも速……」

髪を少しばかり切られた翡翠が、ムッとした様子で言う。

「だけど、理性を失ってる獣だよ」

その声が、林太郎にも届く。 
獣。
ケモノ。

「……めろ、ひめ……」

声は届かず。
姫斗の刀が、思い切り千登里の左手をブッ刺す。

「ぃっ」 か細く、千登里の口から声がした。

そのまま押し倒し、馬乗りになる。 左手の甲を刀が貫通しているため、ぬいぐるみが血で染まって行く。

「………っ、ぎぎ……っ」

痛さを我慢しているのか、千登里の噛んでいる唇から血が流れた。
手の甲から日本刀をズルリと抜き、今度は──、
頭。

「やめろ……ひめと……」
「千登里っ」

翡翠が後ろから姫斗の腕を掴む。 姫斗はすぐさま立ち上がり、翡翠の腹部を蹴った。

「がっ……!」 倒れる寸前の翡翠には、上から姫斗が日本刀を振り下ろすのが見えた。

「ぎゃあああああああああああっ」
「…………」

翡翠が胸を貫かれ、わざと急所を外されたため死ねず、悲鳴が辺りを包みこむ。
何も言わず、表情も変えず、ただただ赤く目を滾らせて。
姫斗は、翡翠という半妖を殺した。

赤く血を漏らしながら、痙攣する翡翠を見て、千登里は左手を抑えながら震えていた。

──迂闊だった。 甘かった。 弱かった。

灰となる翡翠の体を見つめ、千登里は震える体を抑える事ができなかった。
姫斗が、振り返る。
千登里と、目があう。

「…………………」
「……………っ」

刀を、もう一度。
構える仕草を見せた。 妖気を、最高潮に高くなる。
千登里を斬ろうと、姫斗が詰め寄ろうとしたとき。

「姫斗っ!」

刀の刃を掴んで彼女を止めたのは、負傷したはずの林太郎だった。


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