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神的少女は殺戮がお好き【優美の記憶が……】
日時: 2012/03/23 11:29
名前: 奈美 ◆a00JQBXv3o (ID: 4pBYKdI8)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode=view&no=17021

こんにちは! 奈美です。
これは……三作目ですね、二作目は途中で挫折しましたけど、これは絶対に完結させます!
今から読み始める人は、あらすじ(>>173)を読んでみてください。
前作(完結)を読みたい方は参照へどうぞ♪
脱字・誤字・アドバイス・感想等あれば、どんどんコメントしてください!

〜あらすじ
 >>173へどうぞ。第一、第二部がざっと分かります(多分……

〜用語解説 >>111

〜登場人物リスト >>135

〜目次 >>178

‐神殺通信‐
 ver1 >>149
 ver2 >>153
 ver3 >>161
 ver4 >>172

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37



Re: 神的少女は殺戮がお好き【神殺通信更新!!】 ( No.164 )
日時: 2011/12/27 09:59
名前: 奈美 ◆a00JQBXv3o (ID: m3TMUfpp)

第十三章 殺しの依頼

 下校途中。朱里はショートカットの髪をふんわりと揺らしながら、静かな住宅街を歩き自分の家を目指していた。

 下校途中。美百合は高く結ったポニーテールを左右に元気よく揺らしながら、朱里の歩く町並みとは一変、同じ町にそんな場所があるのかというほど田畑が広がり、自然豊かなあぜ道を歩いていた。

 それと同じ頃。女神——柊木華香は、再び人間界へと降り立っていた。今度は広い田畑の真ん中に立つ、新しそうだけれど誰も住んでいないような静けさに包まれた家の、クローゼットから。
 なんでまたこんなところから? 死神少女は静かな住宅街に住んでいるはずなのに。こんなボロ家、住宅街にあるはずないわ。私が確認したのは、桐ヶ谷の静かな住宅街に住む、花園朱里と田中奏。この二人だけよ。
 華香は心の中でそうつぶやいた。とにかく行くしかない。華香はボロ家を出て、その風景に唖然した。
 目の前には、広大な田畑が広がっている。家といえば、このボロ家のほかに新しそうな家が一二軒、建っているだけだ。どうやらここは、森に囲まれているらしい。ここから抜ける手立てといえば、あそこにある森の切れ目だろう。
 見晴らしはいいが、隠れていたい華香にとっては不都合だ。華香は森の切れ目へ向かった。
 土が固められただけのあぜ道を歩いていると、制服を着た少女がこちらに向かってきた。
 中学生か。
 華香は足を速め、顔を見られないように左を向いた。
 少女はこちらを見向きもせずに、前を向いて歩いていった。華香は少女の顔を盗み見る。と、どこかで見たことのあるような顔だ。あれは……そうだ、死神少女候補の一人だったはずだ。

Re: 神的少女は殺戮がお好き【第十三章更新!!】 ( No.165 )
日時: 2011/12/29 17:19
名前: 奈美 ◆a00JQBXv3o (ID: m3TMUfpp)

名前は……武藤美百合と言っただろうか。華香は少女を呼び止めた。
「武藤美百合! 桐ヶ谷第二の死神少女!」
「なんでそれを知ってるの!?」
「それは……」
 ハッと息を飲んだ。何も考えずに呼び止めたのが失敗だった。思わず言ってはいけない事を、人間には聞かれてはいけない事を、大声で叫んでしまったのだから。ここが、森に囲まれている人気のない場所で助かった。華香は手をかたく握り込む。
「私が……女神だからだ」
 美百合は、まじまじと華香を見つめた。女神だと言う、彼女を。一瞬の驚きをしまいこみ、冷静に聞いた。
「女神? 本当でしょうね。信じてもいいの?」
「ええ。それでなければ、私があなたのことを知っているわけがないでしょう」
「……そうね。そうよ、私は武藤美百合。桐ヶ谷第二の——いえ、第三の死神少女と言った方が正確ね。それより、何の用でここへ? ただでさえ人間界へ来るのは特例だと聞いたわ」
「あなたにある人を殺してほしいの。それに、私は数多くの危険を犯してここに来たわ。私は特例中の特例。もう許されないかもしれないの。だから、お願い。私の娘のために、貴方たち神的能力者のために」
「あなたの娘?」
「樹奈よ。今、二年生なの。お願い、死神を殺して、世界に平穏をもたらして!」
 華香は、今にも泣き出しそうな勢いだった。美百合は困りはてる。
「望みはかなえるわ! お願い! 樹奈を助けて! 世界を助けて!」
「分かった。でも——先に望みをかなえてほしいの。優美を……朱里の唯一無二の親友を……桐ヶ谷第一の死神少女を……生き返らせて」
 華香は顔をあげた。
「無理。死んだ人を生き返らせるなんて危険すぎるわ」
「なんで!? あなたは危険なことをたくさんやってきたんでしょ! なら出来るじゃない!」
「そうしたら私は代わりに殺されるわ! 人の命があって、人の命は救われるの。それに、私は樹奈を助けてあげなくちゃならない。抱きしめてあげなくちゃならない!」
 セーラー服を着た美百合は震えだした。そして、今までため込んでいた怒りを押し出すように、大きな声で叫んだ。
「そんなきれいごとを言うためにここに来たの!? あなたは、樹奈先輩を助けるために、世界を救うためにここまでやって来たんじゃない。危険だって何度も犯してきたんでしょ! だったらそれくらい出来るでしょ!」
「出来るわ、出来るけど……そうしたら私は——」
「出来るならやればいいじゃない。そしたら私は何?樹奈先輩は一人でここまでやってきたのよ、あなたがいないくらいでくじけるような人じゃないわ、私は分かる。ねえ、お願いよ。何か隠してるんでしょう? 全て話して。朱里たちに」
「死神少女たちに?」
「そうよ。そうしたら、朱里はやってくれるわ。朱里の誰かに対する優しさは、きっとあなたを助けてくれる。ねえ、全部話して! 私たちは全てを知る権利がある。神的能力者として」
 華香は考え込んだ。体に突き刺さるような秋の冷たい風が、二人の周りをかけぬけていく。華香は虚ろな目を輝かせ、美百合に向き合った。
「分かったわ。全て、貴方たちに話す。でもその代わり、死神を殺して。死神少女を生き返らせてあげるわ」
 美百合はニッコリと微笑んだ。
「ありがとう。ちょっと待って、みんなに電話してくるから。ああ、よかったら、家にきてよ。今日は誰もいないから」
 二人は、森の中に広がる、田畑の中にぽつんと建っている家を目指した。

第十三章 結

Re: 神的少女は殺戮がお好き【第十三章更新!!】 ( No.166 )
日時: 2012/01/05 17:22
名前: 奈美 ◆a00JQBXv3o (ID: m3TMUfpp)

読者の皆様、遅れましたが、新年あけましておめでとうございます。
私が挫折せずにここまでこれたことが、不思議に思う一年でした。
どうぞこれからも宜しくお願いします。

Re: 神的少女は殺戮がお好き【第十三章更新!!】 ( No.167 )
日時: 2012/01/05 17:22
名前: 奈美 ◆a00JQBXv3o (ID: m3TMUfpp)

第十四章 全てを話して

 華香を始め、朱里、美百合、奏、梓、渚、優奈、闇、絵里佳、そして樹奈と流星、千秋が、学校裏の桜の木——今はもう葉一つ付いていなくて、寂しそうに揺れていた——の下に集まった。朱里と奏は、懐かしそうにその木を見上げている。
「みんなゴメンね、いろいろ用事があったのに。今日きてもらったのにはね、話があるからよ……」
 美百合は樹奈に視線を移して、
「この人は、記憶を司りし女神。人間名が柊木華香。そして——」
 口をいったん閉じ、華香を見た。華香は、切られた言葉を継ぐように言った。
「樹奈の母親よ」
 沈黙のざわめきがあった。それを、なんとなく感じられる。樹奈の一瞬輝いた顔には、うっすらと涙が見え隠れしていた。樹奈の母親——華香は、話し始める。

Re: 神的少女は殺戮がお好き【第十四章更新!!】 ( No.168 )
日時: 2012/01/16 19:50
名前: 奈美 ◆a00JQBXv3o (ID: m3TMUfpp)

「あなたたち神的能力者には、ある使命があるの。一つは、この世界を守るため。もう一つは、神たちの私利私欲のため。元々、神には表面の能力と、隠れた裏の能力があった。でもそれを十分活用できるのは、ある優秀な一部だけ。そこで作られたのが神的能力者。人間界からよさそうな人間を選び、神が自分で開花出来なかった裏の能力を分け与えて作ったものよ。一番やりやすかったのが子どもだったわ。これなら、十中八九能力を開花できる。そして色々な能力が作られて行った。存在抹消能力、過去飛来・未来予知能力、情報収集能力など、その数は増えていくばかり。その中で、存在抹消能力を持った能力者たちが人間界へ人知れず帰っていったわ。そして“神的少年・少女殺戮伝説”が出来たの」
「それを止めたのは——神に作られた人造人間だったわよね? 見たわよね、渚」
 梓が口をはさむ。華香は、正直言っていい顔はしていなかった。姉の言葉に、うなずく。
「そうよ、神に作られた“モノ”たちよ。その“モノ”たちは、人間界に存在する神的能力者を全員殺してしまったらしいわ。存在抹消能力に留まらずにね。それに、能力を持った人間も殺された。人間も、人間離れした能力を誰もが持っている。それを人知れず開花させ、表面に能力が浮き出たのね。私はその時生まれていなかったから、よくわからないの。それに、元人間だから」
「ええぇ!! 女神さま、元人間だったのぉ〜。千秋、聞いたぁ〜? 元人間だって、聞いたぁ〜?」
「聞いた聞いた」
 今度は、千秋が嫌な顔をした。腕をつかまれて、体が揺らめいている。
「ええそうよ。元人間。私は、神の子との間に、子——樹奈を作ってしまったの」
「そんな話より、もっと言うべきことがあるんじゃないんですか?」
 控え目で落ち着いた、澄んだ声が聞こえる。それは小さく、ここ最近、声を出していないようだった。声のした方を向くと、それは絵里佳だった。華香の心でも読んだのだろうか、華香は顔をしかめた。
「——まだ言ってなかったわね、そういえば。なぜ私があなたたちにこんな話をしに来たのかというと、あることを依頼するためよ。死神を殺してほしいの。そうしたら、平穏な暮らしが出来るようになるわ。もちろん、出来ることなら望みをかなえてあげられる。優美っていう死神少女を生き返らせることだって」
「ッ優美をっ!! 優美!! ぜひともお引き受けいたしますっ!! だから優美……ぐぇぇ」
「静かにしろよ、聞こえねぇだろ!」
「そんなに騒がないで、話を続けるわよ。もしあなたたちが引き受けてくれたら、全面協力するわ。先に願いを叶えてあげてもいい。
「でも、もしあの天才的でグロ的な優美が生き返ったら、殺戮が開始されるんじゃないかしら? 今度は“モノ”たちは助けには来ないんじゃなくて?」


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