社会問題小説・評論板
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- 花言葉の約束 完結しました、有難うございました。
- 日時: 2010/12/04 14:07
- 名前: 空花 (ID: 44GDRR0m)
sorakaに名前変更しました。大して変わっていません。
小説の実力はあまりないですが、宜しくお願い致します。
以前この話は「キャスフィ」というサイトでも書いていました。
文章とか題名とか違いますが、でももうそっちの方は挫折してしまったのでこちらのサイトでは完結させます。
前、ここでも同じような内容(っていうか同じですが)の小説を書いていました。それはその修正版です。
前は「心に刻まれたこの傷を —虐待—」っていうタイトルでした。
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2010年 夏の小説大会大賞、有難うございます!
※この小説は完結しました。今まで応援してくれた方々、本当に有難うございました。
次回作でまたお会いしましょう。
- Re: 花言葉の約束 ( No.222 )
- 日時: 2010/10/14 17:06
- 名前: 空花 ◆h/HZltt1j. (ID: 44GDRR0m)
七海目線
「未来……なんて……」
「私にはないって思ってるの?」
そう。
私には、きっとないんだ。
それでいい。
「なくていい、未来なんか」
「また自.殺しようとする気なの?」
本当はいつだって死にたかった。
もう戻るはずのないお母さんが戻るって信じてるのが嫌で。苦しくて。
バカみたいに信じてる自分なんかいなければいい。
本気でそう思った。
琴音だってとっくに分かっているはず。
お母さんがもう戻るはずないって。
「二度とお母さんが戻ることはないってことくらい琴音でも分かるでしょ!? もうこんなのは嫌なの!」
- Re: 花言葉の約束 ( No.224 )
- 日時: 2010/10/22 22:02
- 名前: 空花 ◆h/HZltt1j. (ID: UDFSasR1)
優奈目線
「現実逃避」
少しずつ動いていく雲を見上げながら、私は呟く。
きっとその言葉が今の私にピッタリなんだろう、と思う。
これで、良かったんだろうか?
私がこのまま消えてしまえば良い。
川にでも飛び込んでしまえば良い。
……自問自答してみる。
それは既に知っている答え。
私は街外れにある川の近くに座りながらこう考えてみた。
ここは、家からどれくらい離れているのだろうか。
多分、かなり離れているのだろう。
私は自問自答する。
私の家の近くは色々な建物が並び、とても賑やかな街なのに、ここは周りに建物も見当たらない。
同じ市のはずなのに、こんなに静かで人気がないところがあるなんて、私は今日まで思いもしなかった。
私は冷えて赤くなった手で膝をさすりながら川を眺めた。
静かに流れていくその川。
ここに飛び込めばいいんだ。
立ち上がり、私は川へと近づいていく。
——これで、終わりだ。
私は強く目を瞑る。
このまま私は消えていくはずだった。
なのに、どうして?
どうして……出来なかった?
私は……消.えたいはずだったのに。
やっと解放されるはずだった。
私も、七海も。
- Re: 花言葉の約束 ( No.225 )
- 日時: 2010/10/17 20:19
- 名前: 空花 ◆h/HZltt1j. (ID: 44GDRR0m)
七海目線
琴音が少し黙った。
——ねえ、やっぱりそうでしょう? 戻るはずなんか、ないんだよ。
私はそう言おうとしたけれど、声にならない。
真っ赤に染まった空が、私達を照らす。
私も、琴音も、黙ったまま。
その間、どんどん時間は過ぎて行く。
風も冷たくなってきた。
「……信じよう、ね?」
琴音が溜め息交じりに言った言葉は、それだった。
もう……信じられるはずなんて、無い。
「無理だよ……」
私はお母さんを殺.してやろう、何度もそう考えた。
散々傷ついてきたんだ、私は。
そんな日々の中で見える希望は、ほぼ無い状態。
なのに。
- Re: 花言葉の約束 ( No.226 )
- 日時: 2010/11/03 10:56
- 名前: 空花 ◆h/HZltt1j. (ID: jUXSyEEQ)
七海目線
——琴音は、知らないんだ。
傷ついて一日中泣いたりとか、自分の為に人を傷つけたりとか。
誰かを本気で殺.してやりたいと思った事もないだろう。
琴音は、今考えてみれば出会った時から綺麗な言葉を重ねていた。
その時は落ち着いてなかったから分からなかったけれど。
「琴音は分からないでしょ? すごく傷ついたりとかしたことないでしょ? なのに、何にも知らないくせに、信じなよとか言わないでよ!!」
分かったような言葉並べて、『あの子は可哀想ね』とか言う人が一番嫌いだ。
琴音は、友達だけど。
だけど——もう——誰も、信じられない。
「……僕だって、傷ついたことあるよ」
「嘘つき!! じゃあその時のこと話してよ!」
私は何もかも無くしていた。
唯一の光は、琴音だけで。
だけど——私は自らその光を閉ざした。
見たくない、そんな光。
「七海は、桜に似てるから」
……何?
「桜は、私のせいで死.んじゃった」
独り言のように琴音は喋り続ける。
「私が助けてあげてれば、気付いてあげれば、桜は死.ななかったのかもしれないのに」
「……どういう事?」
「僕が今までの中で一番傷ついた事」
どうせ……嘘なんじゃない?
そんな気持ちがまだあるけれど。
少しだけなら、耳を傾けてもいいかもしれない。
「桜は、私の親友だった。いつも明るくて優しくて人気者だったけど、中学の時、桜は……」
琴音はベンチの傍の木を見上げながら続けた。
「自.殺した」
「……辛かったくせに何も話さないから気付けなかったんだ、僕は」
琴音の目はもう私を見ていなかった。
そこに居ないはずの人を見つめているかのように。
「ねえ——七海だって辛かったのにここまで自分の気持ち押し殺して、耐えて生きてきたんでしょ?」
琴音の目が再び私を見ている。
答えは……もう分かる。
「そうだよ」
そうとしか、答えようが無かった。
琴音は分かっていたから。
「……お母さんを捜しに、行こう」
琴音は私の返事に答えずに、ただそれだけ言ってベンチから立ち上がった。
「信じても無駄」
私はそう言って、立ち上がらなかった。
立ち上がる気がしない。
「いいから捜しに行こう。何か、変わるかもしれない」
冷たい琴音の表情と言葉。
さすがに私は首を振ることも出来ずに、頷いてベンチから立ち上がった。
琴音は先をスタスタと歩き、振り向きもしない。
そこにはもう、優しい琴音の姿はなかった。
ただ、悲しげな風が吹いているだけで。
- Re: 花言葉の約束 ( No.228 )
- 日時: 2010/11/19 21:36
- 名前: 空花 ◆h/HZltt1j. (ID: 3WEStcxt)
七海目線
何も言わずただ先を歩いていく琴音。
黙ってその後をついていく私。
……それが、ずっと続いていた。
まるで、出口のない迷路を永遠に彷徨っているみたいに。
ふと立ち止まり空を見上げると、空は少しだけ夜に近づいていた。まだ周りの風景もはっきりと見える。
立ち止まっている私に気付き、琴音が私の方を振り向き、立ち止まった。
ただ黙って私を見つめるだけの琴音。
"早く行こう"
まるで、そう言っているかのように。
何も琴音に出来ず、私は再び歩き出す。
——色んなところを歩き回ってみたけれど、お母さんは見つからないまま。
一体、どこに居るというのだろう。
このまま捜していても見つからないんじゃないか、なんて何度も思った。
けれど琴音は何も言わない。
そして私も黙っている。
何も、言えなかった。
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