社会問題小説・評論板
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- 花言葉の約束 完結しました、有難うございました。
- 日時: 2010/12/04 14:07
- 名前: 空花 (ID: 44GDRR0m)
sorakaに名前変更しました。大して変わっていません。
小説の実力はあまりないですが、宜しくお願い致します。
以前この話は「キャスフィ」というサイトでも書いていました。
文章とか題名とか違いますが、でももうそっちの方は挫折してしまったのでこちらのサイトでは完結させます。
前、ここでも同じような内容(っていうか同じですが)の小説を書いていました。それはその修正版です。
前は「心に刻まれたこの傷を —虐待—」っていうタイトルでした。
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2010年 夏の小説大会大賞、有難うございます!
※この小説は完結しました。今まで応援してくれた方々、本当に有難うございました。
次回作でまたお会いしましょう。
- Re: 花言葉の約束 参照300突破です!ありがとうございます! ( No.80 )
- 日時: 2010/07/30 14:35
- 名前: 空花 (ID: zhnbqHwV)
「大丈夫だよ。ちょっと嫌な事を思い出しただけだから……」
そう言って琴音は笑った。
作り笑いだ。
それくらい、私でも分かるよ。
無理して笑わないで。
「……全然大丈夫じゃないよっ! どうしたの!?」
「いや……大丈夫」
琴音は弱弱しい声で言った。
「ほら、大丈夫だって」
琴音は再び立ち上がった。
そして、段々明るい表情を取り戻した。
「ごめん、心配かけて……」
「ううん、大丈夫ならいいよ。何か……嫌な事思い出してた?」
「……えっ」
図星だ。
言ったくせに。
「『悲しいこと』より『楽しいこと』を考えて時間を使ったほうがいいよって言ったばかりなのに。」
言葉が溢れてしまう。
どうしよう、止まらない……!
「人に言ったばかりなのに自分は悲しいこと考えちゃうんだ」
違う! そんな事思ってない!!
思ってないのに……どうして?
私がバカだから?
怒ってもいい。
琴音。
「……そうだよね、人に言ったばかりなのに自分は悲しいこと考えちゃうんだよね。僕は」
琴音は俯いて言った。
正直、驚いた。
絶対怒ると思ったのに……。
思ってなくても。
でも、言ってしまったから。
謝らなきゃ。
- Re: 花言葉の約束 参照300突破です!ありがとうございます! ( No.81 )
- 日時: 2010/07/30 14:47
- 名前: 空花 (ID: zhnbqHwV)
「ごめん……!」
私は謝った。
どうして、こんな事言っちゃったんだろう。私はバカだ。と何度も頭の中で繰り返す。
私が虐待で傷ついてきたように、 琴音も【何か】で傷ついてきたの……?
琴音のあんな姿、初めて見た。
「……もういいよ、」
琴音は何か言いたげだったけど、言いかけてやめた。
「そっか……」
何だか暗い雰囲気になってしまった。
息苦しい。
公園の時計を見ると、もう午後9時半近く。
私達、結構長く一緒に居たんだな……。
いつの間にか雨は止んでいた。
「もう……9時半近いよ? 琴音。帰らなくて平気?」
「そうだね……」
琴音は頷くように言った。
「もう、帰らなくちゃね。でも、七海、平気?」
琴音は心配するように聞いた。
「何って……」
言いかけて言葉が詰まる。
そうだ。
私は、お母さんに、虐待されてたんだ。
毎日罵られて殴られて。
時には真冬のマンションの廊下に放り出されたり。
【虐待】
たったこれだけの文字なのに、
その文字には、辛い、悲しい意味がたくさん詰まっている。
- Re: 花言葉の約束 参照300突破です!ありがとうございます! ( No.82 )
- 日時: 2010/07/30 17:51
- 名前: 空花 (ID: zhnbqHwV)
「琴……音」
「七海、どうしたの?」
琴音は私の瞳を真っ直ぐ見つめた。
「私、もう虐待なんてされたくない……!」
家になんて帰りたくない。嫌だ!!
「僕、虐待受けたことないから分からないけど虐待は酷いことだって思う。酷いことされたくないのは僕も一緒だよ。 でも……強くなってほしい、七海には」
「強くなれるの? こんな私でも……?」
「なれるよ、きっと」
琴音は私の手を握った。
本当に強くなれるような気がした。
- Re: 花言葉の約束 参照300突破です!ありがとうございます! ( No.83 )
- 日時: 2010/12/31 13:58
- 名前: 空花 (ID: 8qWxDU4Y)
「すごく辛いことや苦しいことを負けないでちゃんと乗り越えられた人はきっと優しく強くなれるって、僕はそう信じてるよ」
琴音は握っている私の手に少し力を込めた。
いつまで虐待が続くかは分からない。
——でも
今の私なら、【虐待】と戦えるかもしれない。
もう少しだけ、戦おう。
強くなるために。
「琴音、今夜はありがとう。もう帰っていいよ」
私は決意を決めたあと、琴音にそう言った。
琴音は握っていた私の手をパッと離した。
「ねえ……ネリネの花言葉、知ってる?」
ネリネ?
私は花が好きだから、花言葉ぐらいは知っている。
「……【華やか】【また会う日を楽しみに】【幸せな思い出】【輝き】【忍耐】【箱入り娘】だよね?」
私はそう答えた。
すると、琴音は、
「その二番目の、【また会う日を楽しみに】……僕はこれが好きなんだ」
と楽しそうに言った。
「じゃあ、僕はもう帰るね」
琴音はそう言ったあと、付け足した。
「覚えててね、ネリネの花言葉はまた会う日を楽しみに」
……と。
- Re: 花言葉の約束 参照400突破です!ありがとうございま ( No.85 )
- 日時: 2010/12/31 13:58
- 名前: 空花 (ID: 8qWxDU4Y)
その後、私はずっとそこに立ち尽くしていた。
——夢。
みたいだった……
風のように現れて、風のように去った琴音。
琴音の言葉に私はすごく励まされた。
また私は、あの家に戻る。
でも、もう怖くない。
きっと、大丈夫。
そう、琴音が教えてくれたから。
琴音にまた会えるはずだから。
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