複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- さぁ 正義はどっち ? 参照13600ありがとう御座います!
- 日時: 2016/08/23 00:57
- 名前: メルマーク (ID: KzMBmi6F)
戦争と平和は正反対のものと考える人が多い世の中
それは本当なの?正義って何?悪って何?
答えが見つからないなら探せば良い。
多分異色な今までにない、正義についてのお話し。
答えはありませんが、きっと終わった後 何が正解か思い浮かぶはず。
時代は古きよき時代、中世頃にしようかと
オリキャラ募集一応締め切らせていただきます!
終章にもうじき突入予定なので‥・もしかしたらまた募集するかも・・・?
名前
性別
年齢
容姿
A国B国どちらの味方?(国名は長いので省略
性格
武器
サンボイ「」
職業は?下から選択下になければ新職業を書いてくれるとうれしいです
騎士 傭兵 盗賊 貴族 海賊 海軍 王室(王族をのぞく外交官・メイド・執事・王族のいとこ)関連
占い師 科学者(錬金術師) 芸術家 哲学者 商人 国民 旅人 魔法使い など
武器や変わった特徴などの要望も即採用です
結構な確率で”死ぬケース”もあるのでご了承ください!!
◇目次◆
王国ルート001 >>5 帝国ルート001 >>43
王国ルート002 >>15 帝国ルート002 >>49
王国ルート003 >>20 帝国ルート003 >>50
王国ルート004 >>23 帝国ルート004 >>54
王国ルート005 >>31 帝国ルート005 >>63
王国ルート006 >>66 帝国ルート006 >>81
王国ルート007 >>67 帝国ルート007 >>83
王国ルート008 >>68 帝国ルート008 >>90
王国ルート009 >>71 帝国ルート009 >>91
王国ルート010 >>74 帝国ルート010 >>93
王国ルート011 >>101 帝国ルート011 >>114
王国ルート012 >>103 帝国ルート012 >>117
王国ルート013 >>106 帝国ルート013 >>118
王国ルート014 >>108 帝国ルート014 >>120
王国ルート015 >>110 帝国ルート015 >>122
王国ルート016 >>123 帝国ルート016 >>183
王国ルート017 >>127 帝国ルート017 >>184
王国ルート018 >>133 帝国ルート018 >>187
王国ルート019 >>142 帝国ルート019 >>191
王国ルート020 >>144 帝国ルート020 >>193
王国ルート021 >>194 帝国ルート021 >>207
王国ルート022 >>197 帝国ルート022 >>208
王国ルート023 >>200 帝国ルート023 >>209
王国ルート024 >>203 帝国ルート024 >>210
王国ルート025 >>204 帝国ルート025 >>212
王国ルート026 >>214 帝国ルート026 >>232
王国ルート027 >>217 帝国ルート027 >>238
王国ルート028 >>219 帝国ルート028 >>239
王国ルート029 >>223 帝国ルート029 >>246
王国ルート030 >>224 帝国ルート030 >>258
王国ルート031 >>286 帝国ルート031 >>298
王国ルート032 >>287 帝国ルート032 >>304
王国ルート033 >>288 帝国ルート033 >>309
王国ルート034 >>292 帝国ルート034 >>312
王国ルート035 >>295 帝国ルート035 >>314
王国ルート036 >>317 帝国ルート036 >>329
王国ルート037 >>319 帝国ルート037 >>331
王国ルート038 >>321 帝国ルート038 >>334
王国ルート039 >>325 帝国ルート039 >>335
王国ルート040 >>326 帝国ルート040 >>336
王国ルート041 >>340 帝国ルート041 >>372
王国ルート042 >>347 帝国ルート042 >>375
王国ルート043 >>352 帝国ルート043 >>378
王国ルート044 >>353 帝国ルート044 >>382
王国ルート045 >>357 帝国ルート045 >>386
王国ルート046 >>387 帝国ルート046 >>399
王国ルート047 >>390 帝国ルート047 >>402
王国ルート048 >>393 帝国ルート048 >>407
王国ルート049 >>395 帝国ルート049 >>408
王国ルート050 >>398 帝国ルート050 >>409
王国ルート051 >>425 帝国ルート051 >>431
王国ルート052 >>426 帝国ルート052 >>433
王国ルート053 >>428 帝国ルート053 >>434
王国ルート054 >>429 帝国ルート054 >>436
王国ルート055 >>430 帝国ルート055 >>437
王国ルート056 >>442 帝国ルート056 >>450
王国ルート057 >>443 帝国ルート057 >>451
王国ルート058 >>446 帝国ルート058 >>453
王国ルート059 >>447 帝国ルート059 >>454
王国ルート060 >>449 帝国ルート060 >>461
王国ルート061 >>462 帝国ルート061 >>471
王国ルート062 >>465 帝国ルート062 >>472
王国ルート063 >>466 帝国ルート063 >>476
王国ルート064 >>467 帝国ルート064 >>477
王国ルート065 >>468 帝国ルート065 >>480
王国ルート066 >>482 帝国ルート066 >>492
王国ルート067 >>483 帝国ルート067 >>493
王国ルート068 >>487 帝国ルート068 >>495
王国ルート069 >>488 帝国ルート069 >>496
王国ルート070 >>489 帝国ルート070 >>499
王国ルート071 >>504 帝国ルート071 >>516
王国ルート072 >>506 帝国ルート072 >>517
王国ルート073 >>507 帝国ルート073 >>520
王国ルート074 >>509 帝国ルート074 >>521
王国ルート075 >>510 帝国ルート075 >>525
王国ルート076 >>528 帝国ルート076 >>539
王国ルート077 >>533 帝国ルート077 >>543
王国ルート078 >>534 帝国ルート078 >>545
王国ルート079 >>537 帝国ルート079 >>547
王国ルート080 >>538 帝国ルート080 >>548
王国ルート081 >>551 帝国ルート081 >>560
王国ルート082 >>552 帝国ルート082 >>562
王国ルート083 >>553 帝国ルート083 >>563
王国ルート084 >>557 帝国ルート084 >>564
王国ルート085 >>558 帝国ルート085 >>566
王国ルート086 >>571
王国ルート087 >>574
王国ルート088 >>575
王国ルート089 >>578
王国ルート090 >>579
◇カメルリング王国味方
>>2 ルーク 主人公
>>1 ミルフィーユ 発明家・美食家・資産家
>>4 キリエ 牧師・哲学者
>>16 ノイアー 傭兵
>>25 ラグ 執事
>>28 サイト 商人
>>29 リグレット 僧侶
>>39 ツバキ 軍人
>>55 ユニート 魔導師
>>58 ラルス 騎士
>>58 リリー 暗殺者
>>75 ジョレス 傭兵
>>78 フランチェスカ 王女
>>87 ハニー 妖精
>>99 シラン 術士
>>221 カルマ 学者・錬金術師・魔術師
>>289 フランキール 王子
>>440 シュバルツ 海賊
>>457 リレーナ 竜騎士
◆ミカイロウィッチ帝国味方
>>14 エドウィン 主人公
>>6 ヴィトリアル 盗賊
>>11 アーリィ 魔女
>>12 ゼルフ 黒騎士
>>12 リン メイド
>>27 シフォン 貴族騎士
>>30 イヴ 術士
>>37 ウィンデル 大道芸人
>>59 クウヤ 剣士
>>60 ツヴァイ 科学者(薬学)
>>76 ミレア 傭兵
>>78 シェリル 皇女
>>85 ディルム 精霊
>>96 ライヤ 偵察兵
>>98 セイリーン ドッペルゲンガー
>>278 レイ 魔女
>>305 故)フィア 魔女の弟子
>>305 故)キオ 魔女の弟子
◎味方につかない者
>>163 ソーサラー(呼称) 占星術師・幻術師
>>163 スキンヘッドハゲ(呼称) 盗賊
>>227 ヨメナイヤツ アドバイザー
キャラ応募してくださった皆様心よりお礼申し上げます!素敵なキャラをありがとう!!
◇番外編◆
参照四桁祝
・イヌ派ネコ派の王国日常 >>146
・絶対に信じちゃいけない言葉で帝国日常 >>150
・執事採用試験 >>156
・団長の足取り >>157-158>>160
・ある幻術師の思い出 >>162>>164>>170>>173>>175>>176
参照二千祝
・とあるメイドの追走劇 >>248>>254>>257>>260
・傭兵の黒と従者の白 >>263>>264>>269>>272>>274>>280>>281>>282>>283
参照三千&四千祝
・魔法使いの弟子 >>360>>363>>364>>367-368
・帝国サイド盗賊団と加担者でチビキャラ全員集合イラスト >>371
参照4500祝
・王国・番外ルートで抜粋チビキャラ集合イラスト >>404
銀賞&殿堂入り祝
・メイドと騎士と仲介人 >>415>>417-418>>421>>423
参照5000祝
参照6000祝
参照7000祝
金賞祝
参照8000祝
参照9000祝
参照10000祝!
参照11000祝!!
参照12000&13000祝!!!
保留
どんどん保留祝が増えて行っている…本編終わったら一気に大感謝祭とかやりたいなぁ、なんて考えてます
・・・業務連絡・・・
2014の冬の小説大会で銀賞もらえました!ありがとうございます!
2015の夏の小説大会で金賞もらえました!!ありがとうございますっっ!
参照5000祝いと6000祝、7000祝、8000祝9000祝そして10000祝。11000祝はのちほど…ッ!
時間軸まとめ >>234
- さぁ 正義はどっち ? 参照10000ありがとう御座います! ( No.534 )
- 日時: 2016/01/14 01:53
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
カメルリング王国ルート 078
ワイバーンの額に腕を乗せながら、こちらに向けられる怯えの混じる好奇な視線を次々と容赦なく撫で斬りにしつつ、リレーナは人の波に視線を走らせる。
謁見の間には再び人がごった返しており、一度は訓練場に散っていた騎士や傭兵たちも練習着のまま石畳にたむろしている。
と、ようやく魔導部隊の輩が黒い扉を潜り抜けて謁見の間にやってきた。
彼らが最後であり、最後尾の少年が通り抜ければすぐに黒塗りの重厚な扉は閉ざされた。
「さて、集まったか」
玉座からぐるりと首を巡らせ、国王が満足そうに髭を揺らして頷く。だがその目は笑みをたたえておらず、リレーナのもたらす情報に少々神経質になっているように見える。
ただでさえ娘の安否が心配だろうに、何を思ってか国王はリレーナに主要な戦闘部隊の招集を直ちにせよと命令を下したのだ。
「よくぞ樹海から帰還した。さっそく樹海で見聞したことを申せ」
膝の上で神経質そうに両手を組み合わせ、国王は探るようにリレーナを見下ろした。その態度は一言も聞き漏らすまいと、まるで嘘をついても無駄だと言いたげのようだ。
王女の無残な亡骸を見たとしても、包み隠さずありのままに伝えよ。そう無言の威圧で伝えているように感じる。
リレーナはぐっと顎を引いて力強くうなづいてみせた。
王女の亡きがらほどではないが、異様な光景を見てきた彼女。それをどう伝えようか考えあぐねていたが、国王に免じてはっきりと言うことにした。
「私が樹海で見たものは、二組で構成されたと思しき足跡と—」
ひっそりと静まり返った中で声を響き渡せながら、リレーナは視線をライヤに向ける。
ライヤは左下のタイルにじっと視線を注いでいたが、リレーナに気付くと真剣なまなざしでこちらを見返してきた。
そこに動揺が紛れているのではないかと考えを読み取ろうとするが、さすがはスパイなのか、真剣に話を聞いているようにしか受け取れない表情のままだ。
「—得体のしれない巨大な爬虫類の死骸、そして荒れた樹海です」
「足跡と…得体の知れぬ…?」ざわりと揺れる謁見の間に、国王も眉を寄せて思わずつぶやく。
王妃はさらに強くハンカチを握りしめ、リレーナに食い入るような視線を送る。
「その爬虫類はその後すぐ息絶えたようですが、その際、老人と若者の二人組と親しげに会話をしていた…」
自分で報告すればするほど異様な光景であったことが思い出され、リレーナはワイバーンに視線を投げた。
相棒はきちんと口にポシェットを咥え、従順な忠犬の様にこちらを見つめる。そのぎらつく牙の並ぶ間に挟まる鞄の口から、すっかり涎まみれになったシュバルツからの手紙が見え、安心する。
やはりあの樹海で見聞きしてきたことは夢ではなかったのだ。
「その二人組は帝国に向かうと爬虫類の死後話し合っており、私はその先の捜索をシュバルツに任せ、一端報告に戻ってきた次第であります」
「では…フランチェスカと差し金どもはまだ樹海をさまよっているのだな…?」
若干爬虫類の話による動揺が隠し切れない声音で、国王がリレーナに尋ねる。「まだ無事なのだな?」
「それが…どうやらその爬虫類は差し金どもに襲い掛かったらしく、そのせいで樹海が凄惨な状態になっておりました」
辺りに血が飛び散る様を話してやると、王妃が声にならないうめき声を立てて顔をうずめる。
瞳に苦痛の色をにじませた国王は、こぶしを握って玉座の手すりを神経質に叩いた。
「しかし、爬虫類の最期の言葉によれば、どうやら狙った全員を殺すことは出来なかったようです」
あぁ神様!とリレーナの言葉に王妃がか細くつぶやき、傍らに立つキール王子の手のひらをぎゅっと握りしめる。
愛娘だけは助かっていて欲しいと神に祈っているようだ。
「その爬虫類とやらは帝国の手先を襲ったようだが、我が国にとっても敵なのか?」
若干安堵した表情で国王が口にするが、リレーナは首をかしげるしかできない。
「わかりません。爬虫類は戦争を止める為に動いていたようですね。どういうわけか我々の知りえないところで帝国勢の動きを察知し、彼らを殺すために襲ったと思われます…」
ふむ、と国王は思案深げに目をさまよわせ、玉座に深く身を沈ませた。帝国の敵が必ずしも王国の味方とは限らない。
戦争を終わらせようとする第三勢力が樹海で大暴れしているとなると、そこを依然逃走中と思しき差し金どもと行動を共にしているフランチェスカの安否は保障されない。
何やら決心した国王は玉座から身を乗り出すと、確乎たる決心を瞳に讃えて口を開いた。
「シュバルツに樹海から直ちに脱出し、全兵を船に乗せ、海よりミカイロウィッチに進出せよと伝えよ」
「…?しかし?」
フランチェスカ様の捜索はどうするのです、とリレーナが戸惑った顔をすると、国王は一瞬遠くを見つめ、小さく首を振った。
「フランチェスカがたとえ生きていたとしても1、2週間もすれば帝国へ連れ去られてしまうだろう。帝国の本格的な人質となれば、帝国に有利な状況となる」
さらに現在生きているかわからないのに、危険な樹海へ戦力を投入する訳にはいかないと、国王は厳しい声で告げる。
「もしも生きていたとしたら、フランチェスカが帝国へと到着する前に帝国を落城させる必要がある。さすれば人質を気にすることなくわが兵は戦うことが出来る…」
そうするしかあるまい、と国王が断腸の思いで言い切った。娘と王国まるまるひとつ。
どちらが大切か、ではなく、どちらを優先させるべきか、である。
命の数で考えれば、答えは言うまでもない。
「直ちに全兵は出動の準備をせよ。シュバルツの船が用意出来次第、出陣する!」
妻の声を出さずに泣く姿を横目に、国王は無常だと思いながらも、そう宣言した。
?!
参照が5桁いきました?!
ありがとうございます?!
- Re: さぁ 正義はどっち ? 参照10000ありがとう御座います! ( No.535 )
- 日時: 2016/01/14 08:11
- 名前: コッコ (ID: ejGyAO8t)
お久しぶりです。ついに王国が進行を開始しましたね。この後の転回が楽しみです。
- さぁ 正義はどっち ? 参照10000ありがとう御座います! ( No.536 )
- 日時: 2016/01/14 16:54
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: A1qYrOra)
今晩はコッコさん!あけましておめでとうございますっ
王国も帝国もどちらにもつかない者も、ようやくと動き出します。
ここからは時間軸勝負なので、ミスしないように頑張りたいと思いますね!
毎回コメントありがとうございます!うれしいです!
- さぁ 正義はどっち ? 参照10100ありがとう御座います! ( No.537 )
- 日時: 2016/01/19 17:07
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: A1qYrOra)
カメルリング王国ルート 079
「では行ってくる」
ラルスと最後の抱擁を交わし、リレーナはワイバーンに跨って素早く夜の闇へと駆け上がる。
シュバルツと呼ばれる海賊に帰還命令を下しに行くのだ。そして、戦争の開幕も。
(船が戻ったら戦争が始まる…あと数時間後にはここから消えていなくなる人が沢山いるんだ…)
空の開け放たれた中庭から、ごった返す人々を眺めると悲壮感が押し寄せる。
今初めて顔を合わせた人も、目さえ合わせたことさえない人々も、戦争が終わった後には誰かいなくなっているかもしれないのだ。
せっかく同じ国に生まれて同じ空間にいるのに、関わり合いを持つ前に死んでしまうのだ。
(……)
こんなことを考えていたらきりがないと、ルークは人の波に身を任せた。すでにリレーナの見送りをしていたラルスやリリーたちを見失ってしまった。
家族同士の別れに水を差すのがためらわれて遠くから見送っていたせいもあるし、戦争に対する心構えの切り替えの早さに、歴戦の戦士と差があったせいでもあった。
「身支度が整ったものは、数時間だけ最後の挨拶に行くことを承諾すると国王様より賜った!」
ルークが中庭から城内に戻ると、騎士たちが廊下を走り回って大声で触れ回っていた。
「挨拶…」
そうか、家族にお別れを言わなくちゃいけないんだ。
騎士達は顔にうれしそうな色を浮かべて慌てて支度を終わらせにかかっている。
しかしながら会いたくてもルークの家族は王国郊外の樹海の側にいるのだ。馬を走らせても往復でへろへろになって、戦争に挑むどころではない。
「ルーク!」
家族に二度と会えない覚悟で上都してきたのだが、死に際にせめて感謝の気持ちくらい伝えたかったと物思いに沈んでいるルークに、背後からカルマが声を掛けた。
「どうしたの?」
カルマは両手にたっぷり巻かれた羊皮紙とインク瓶を抱えていた。若干句が零れてせっかくの白い学者服に染みを付けている。
「どうかしたかとはなにごとか」呆れた様にルークを眺めてカルマが口を開く。「家族に最後の挨拶をしにいかんでいいのか?確か家族がいたろう」
「僕の家族は郊外に住んでるんだ。だから会いたくても会いに行けないんだ」
肩をすくめてルークが言うと、カルマは同情する様にルークを眺めた。そして羊皮紙を差出、「それでは遺書組だな」とつぶやく。
「ここに家族への手紙をしたためれば、あとはメイドやら何やらが家族の元まで届けてくれる。きちんと宛先も宛名も忘れずに書くことだ」
書き終わったら手じかなメイドたちに渡せばいいから、とカルマは研究室の方へ歩いていった。
「遺書か…」長い羊皮紙を見下ろして何を書こうと悩んでしまう。伝えたいことは確かにあるけれど、どれも今際の際に言うような言葉ではない気がする。
でも、家族からすれば立派な別れ文句よりもたわいない言葉が欲しいはずだ。
死ぬ前に一目でも会いたかった。戦争が始まったら樹海の側は危険だし、どこかに移住して安全に身を潜めていてほしい。もし王国が滅んだときのことも考えて、僕に気にせず引越しをしてほしい。
書きたいことがまとまって来て、羊皮紙を引きずりながら書き物机を求めてルークは歩き出す。
書き切れるだろうか?羊皮紙を両手に手繰りあげてその長さを心配そうに見つめる。
どれぐらい書けば僕が死んだときに納得して、諦めがつくくらいのさようならが言えたことになるだろうか?
研究室の扉を開けると、ロングテーブルにカルマとリグ僧侶が座っていた。貴重な時間が過ぎていく中で、なんだか暇そうに見える。
「ん、どうしたのだ?」
頬杖をついていたカルマがルークに気付いてそのままの姿勢で声を飛ばす。リグ僧侶は世界の終わりが間近だとでも言いたげに、顔色が一段と悪くなっている。
「机を借りようと思って…」
おずおずと椅子の一つに腰かけ、くるりとした折り目のついた羊皮紙を肘で慣らしながらそっと二人の様子をうかがってみる。
二人ともやはり手持無沙汰で、たまに魔導書に手を伸ばしてはぺらぺらとめくっている。もしかしたら、そう見えないだけで戦いの前の精神統一をしているのかもしれない…。
羊皮紙にペンを走らせて、伝えたいことを書き募っていると、窓を震わせて時計の鐘が響いた。完全に集中したため飛び上がるほど驚いた。
気付けば一時間経過しており、羊皮紙も黒いインクでほとんど埋まっている。
ずいぶんと書いたなぁと、自分でも驚いて遺書を眺める。しかしもう書くことがないとはいえ、なんだか物足りない気分がずっと続いている。
「遺言書作成…終わったんですか」
はい、と返事して先程と同じ姿勢で腰かけるリグ僧侶を眺める。
「あの、二人は…遺書とか最後の挨拶とかいろいろと…もうしてきたんですか?」
羊皮紙のインクが乾くのを待つ間、ルークは思い切って尋ねてみた。
すると、カルマとリグ僧侶は顔を見合わせて同時に肩をすくませた。
「書く相手がまずいないわけです。生まれはここではありませんし。出家して僧侶となった今では、世俗とのかかわりは何年も前に立たれています」
「私も同じようなものだ。アルビノとして祖国を追われたため、家族もない。最後に見ておきたい懐かしい場所と言われても、この研究室で大半の時間を過ごしてきたし、リグ僧侶の場合は修道院が失われた今、私と同じ境遇なわけだ」
最後に顔を合わせるどころか、遺書を書く相手もいない、最後にもう一度行きたい場所も失われた人物たちが少なからずいることにルークは言葉を失った。
「さぁ、手紙は私が出しておくから、最後の挨拶に行ってきたまえ。時間を無駄にしてはならん」
そういわれて遺書をひったくられると、何か言う前に研究室から追い出された。
参照10100ありがとうございます!
- さぁ 正義はどっち ? 参照10100ありがとう御座います! ( No.538 )
- 日時: 2016/01/19 23:06
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
カメルリング王国ルート 080
研究室を追い出されると、再び活気と緊張感の漂う賑わいが辺りに立ち込める。廊下には相変わらず騎士やメイドが駆け回り、時間が早回りになった気がして少し焦る。
「最後に見ておきたいところ…」
それはやはりあの一家だろう。
今は発注された発明品を大量生産するのにあくせく働いているだろう。邪魔になってはいけないと思いながらも、死ぬ前には第二の家族と言える彼らに会っておきたい。
夜の帳の降りた貴族街を下り、目当ての館の前で立ち止まる。明かりがこうこうと灯された館の庭で、大量の木箱が積まれている。
「ラグ、紅茶を頼むよ。そう、ミルク抜きのストレートでね」
積み木のように積まれた木箱の影で、懐かしい声がくたびれた様にラグに話しかけているのが聞こえる。
重い荷物を運んだせいで腰がいたいとブツブツつぶやき、背中を伸ばそうとするミルフィーユに、ラグが早速紅茶を盆にのせて戸口から出てくる。
柔らかい湯気が漂う紅茶は、とてもおいしそうに見えた。
「ミルフィーユさん、ラグ!」
「おお、ルーク君か。よく来たね、紅茶をどうだい?」
戦争が始まるというのに呑気そうに紅茶をすすめるミルフィーユと、素早くティーカップを新たに用意しておまけにクッキーまで持ってきたラグに、思わず頬が緩んだ。
「いただきます」
ケーキもすぐご用意いたしますよ!とラグが目を輝かせてキッチンに飛んでいき、木箱を簡易テーブルにして小さなお茶会が開かれる。
ただ、テーブルになっている木箱には不正に開閉された際に爆発できるよう起爆スイッチが付いているため、気が気ではないお茶会ではあったが。
ひとしきりたわいもない会話を楽しんだ後、ルークは2杯目の紅茶を飲みほして受け皿の上に置いた。
心のきり変わりが見えたのか、ラグはお代わりを継がずにミルフィーユと共に微笑みを浮かべたままルークを眺めた。
なんだか旅立つ友人を見送る、さみしげな微笑に見えた。
「僕、戦争に行きます。今日、出発なんです。もう、会えないかもしれません」
自分で言っておいて悲壮感も何も感じなかった。もう心残りはないというような、不思議な満足感があった。
「あぁ、さっきユニートやリリーがなんかそんなことを言いに来ていたね。世話になったとかなんとか」
「女将さんの所へもジョレス様やノイアー様、他の大勢の騎士様がたも挨拶に来ておられましたね」
ラグの言葉に紅茶片手に頷いて、まったく別れ際ばっかり馬鹿丁寧にあいさつなんかして、と少々呆れながら目を回した。
その言葉に声を漏らして笑い、ルークはそれじゃあ、と嘆息した。
「僕はもう行きます。すごく、楽しかったです…いままでずっと、ありがとうございました」
不思議な、ルークにはわからない表情を浮かべたミルフィーユとラグ。そのままの表情でルークの肩を力強くたたいた。
「幸運を祈ってるからね」
「ご武運を!そして、心ばかりですけどこのクッキーを持って行ってください!」
ラグが泣くまいと懸命に涙をこらえて袋に入ったクッキーを差し出す。つぶらな瞳には今にも零れ落ちそうなほど涙があふれていた。
「ありがとう。さようなら」
ラグの涙がこぼれる前に、ルークはクッキーを受け取って踵を返した。そして紅茶で暖まった息を吐き出して、シュタイン婦人に会いにさらに貴族街を下って行く。
去っていく小さな背中に目をやりながら、ついに泣き出したラグの肩を叩き、ミルフィーユも肩を揺らしてため息をついた。
弟子は行ってしまった。
「まぁ、最後の別れだとか言っているけどね。この国にも遅かれ早かれ戦火は飛んでくるだろうし、もしかしたら私たちの方が死んでいるかもしれないってことに気付いていないようだね」
涙で視界のゆがんだラグに代わり、ティーカップを盆に載せたミルフィーユは視線を落として呟く。
「でも気付かないままでいてくれた方がかえって戦争に集中できるし、私たちも安心できる」
「目を覚ましなさい、話がしたいの」
溢れるほどの幸福感が次第にかすんでいき、夢から覚めるように目を瞬きさせる。
幸せの余り零れた涙でにじんでいた景色が、瞬きを繰り返すうちにだんだんと形をはっきり現し始めた。
「ここは…?」
周囲を見渡したフランチェスカは、そこが見慣れた自分の部屋ではない事に気付いて不安げに手を組み合わせた。
共にいたリグ僧侶やキリエ牧師、ユニートの姿は見えない。
「あなたは…」
その代りに目の前に少女が足を組んで椅子に座っている。赤いじゅうたんがまんべんなく敷かれた空間に、そのほか見知らぬ組み合わせが幾人かおり、少女の座る玉座の隣で、父上ほどの年齢の威厳のある男性が座っている。
その頭に乗る荘厳な王冠を見て、はっと息を呑んだ。体をのけぞらせると、背中がどんっと何かにぶつかり、そこではじめて自分が幾重にも張られたシールドで囚われている事実を悟った。
「ここはミカイロウィッチ帝国よ。あなたは晩餐会の夜を経て、私の部下に宮殿まで連れてこられたの」
時間は無駄にはしたくないの、と言いたげに困惑するフランチェスカに答えを投げる少女。その答えを拾い上げるかどうかまでは面倒見ないわと、と答えだけを与えた少女はさっそく身を乗り出した。
「今晩はフランチェスカ王女。私はミカイロウィッチ帝国のシェリル・ミカイロウィッチよ、聞いたことくらいあるんじゃないかしら」
その名を聞いて、フランチェスカは身をこわばらせた。うすうす彼女の正体に気付いてはいたが、実際には名前を知っているだけでその姿を見たことはなかった。
しかし、風の噂で届く隣国の皇女の情報はしっかりと記憶されている。
戦ごとに興味を持ち、自らも鞭をふるって他国や自国構わず欲しい人材がいれば誘拐めいたこともするといわれている。
「遠慮なく言わせてもらえば、あなたは人質よ。そしてあなたに聞きたいことがあるの」
するりとムチを手に絡み付かせて、シェリル皇女はからかう様にフランチェスカを見つめた。
「あなたの王族としての誇りを傷つけるつもりはないわ。けれど、あなたが何も答えることがないのなら、残念だけど遠慮せずにムチを振らせてもらうわ」
ぞっとして体に震えが走るフランチェスカは、自分とは正反対の性格の彼女を見つめて半ば悲しげに憐れむような感情を覚えた。
(この国には平和を祈る神様はいないのでしょうか…)
城で過ごす時間よりも修道院で過ごした月日が多いため、フランチェスカの心の大部分は平和と平穏に占められていた。
祈り、人を大切にし、決して傷つけたくない。神に祈ることで得られる安堵と愛情を多くの人に与えたい。それが王家に生まれたのなら尚更、国民を愛し、幸せにしなければならない者の務めであると考えていた。
しかし目の前の皇女は簡単に武器をちらつかせ、相手から欲しいものを強制的に搾取するという噂の持ち主だった。
いったいなぜ、そのような行為に及ぶのか、フランチェスカには理解不能だった。
「わたくしも、あなたとお話したいことがあります」
フランチェスカは凛として顔を上げた。彼女と話さなければならな。戦争などくだらないことを、理解してもらわなければならない。
これはチャンスであると、フランチェスカはきつく指を組み合わせた。
神様から与えられた、最後の戦争を回避するチャンスなのかもしれない。平和を祈り続けた自分を試す時が、ついに来たのではないか?
「二人で、この戦争について対談しなければなりません」
フランチェスカが背筋を伸ばして王女らしく堂々と言うと、シェリルは馬鹿にした笑みを少し取り下げてほほ笑んだ。
「お父様、いいかしら、私も王女と話したいことがあるの」
二人の少女の瞳に射抜かれて、帝王はその場の最高権力者であるにもかかわらず、今まで纏わせていた覇気が急激にかすれて行くように見えた。
「有用な情報を引き出すのだ」
言って、帝王はマントを翻し、シェリル皇女をどこか懐かしそうに眺めて退出した。
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