複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- さぁ 正義はどっち ? 参照13600ありがとう御座います!
- 日時: 2016/08/23 00:57
- 名前: メルマーク (ID: KzMBmi6F)
戦争と平和は正反対のものと考える人が多い世の中
それは本当なの?正義って何?悪って何?
答えが見つからないなら探せば良い。
多分異色な今までにない、正義についてのお話し。
答えはありませんが、きっと終わった後 何が正解か思い浮かぶはず。
時代は古きよき時代、中世頃にしようかと
オリキャラ募集一応締め切らせていただきます!
終章にもうじき突入予定なので‥・もしかしたらまた募集するかも・・・?
名前
性別
年齢
容姿
A国B国どちらの味方?(国名は長いので省略
性格
武器
サンボイ「」
職業は?下から選択下になければ新職業を書いてくれるとうれしいです
騎士 傭兵 盗賊 貴族 海賊 海軍 王室(王族をのぞく外交官・メイド・執事・王族のいとこ)関連
占い師 科学者(錬金術師) 芸術家 哲学者 商人 国民 旅人 魔法使い など
武器や変わった特徴などの要望も即採用です
結構な確率で”死ぬケース”もあるのでご了承ください!!
◇目次◆
王国ルート001 >>5 帝国ルート001 >>43
王国ルート002 >>15 帝国ルート002 >>49
王国ルート003 >>20 帝国ルート003 >>50
王国ルート004 >>23 帝国ルート004 >>54
王国ルート005 >>31 帝国ルート005 >>63
王国ルート006 >>66 帝国ルート006 >>81
王国ルート007 >>67 帝国ルート007 >>83
王国ルート008 >>68 帝国ルート008 >>90
王国ルート009 >>71 帝国ルート009 >>91
王国ルート010 >>74 帝国ルート010 >>93
王国ルート011 >>101 帝国ルート011 >>114
王国ルート012 >>103 帝国ルート012 >>117
王国ルート013 >>106 帝国ルート013 >>118
王国ルート014 >>108 帝国ルート014 >>120
王国ルート015 >>110 帝国ルート015 >>122
王国ルート016 >>123 帝国ルート016 >>183
王国ルート017 >>127 帝国ルート017 >>184
王国ルート018 >>133 帝国ルート018 >>187
王国ルート019 >>142 帝国ルート019 >>191
王国ルート020 >>144 帝国ルート020 >>193
王国ルート021 >>194 帝国ルート021 >>207
王国ルート022 >>197 帝国ルート022 >>208
王国ルート023 >>200 帝国ルート023 >>209
王国ルート024 >>203 帝国ルート024 >>210
王国ルート025 >>204 帝国ルート025 >>212
王国ルート026 >>214 帝国ルート026 >>232
王国ルート027 >>217 帝国ルート027 >>238
王国ルート028 >>219 帝国ルート028 >>239
王国ルート029 >>223 帝国ルート029 >>246
王国ルート030 >>224 帝国ルート030 >>258
王国ルート031 >>286 帝国ルート031 >>298
王国ルート032 >>287 帝国ルート032 >>304
王国ルート033 >>288 帝国ルート033 >>309
王国ルート034 >>292 帝国ルート034 >>312
王国ルート035 >>295 帝国ルート035 >>314
王国ルート036 >>317 帝国ルート036 >>329
王国ルート037 >>319 帝国ルート037 >>331
王国ルート038 >>321 帝国ルート038 >>334
王国ルート039 >>325 帝国ルート039 >>335
王国ルート040 >>326 帝国ルート040 >>336
王国ルート041 >>340 帝国ルート041 >>372
王国ルート042 >>347 帝国ルート042 >>375
王国ルート043 >>352 帝国ルート043 >>378
王国ルート044 >>353 帝国ルート044 >>382
王国ルート045 >>357 帝国ルート045 >>386
王国ルート046 >>387 帝国ルート046 >>399
王国ルート047 >>390 帝国ルート047 >>402
王国ルート048 >>393 帝国ルート048 >>407
王国ルート049 >>395 帝国ルート049 >>408
王国ルート050 >>398 帝国ルート050 >>409
王国ルート051 >>425 帝国ルート051 >>431
王国ルート052 >>426 帝国ルート052 >>433
王国ルート053 >>428 帝国ルート053 >>434
王国ルート054 >>429 帝国ルート054 >>436
王国ルート055 >>430 帝国ルート055 >>437
王国ルート056 >>442 帝国ルート056 >>450
王国ルート057 >>443 帝国ルート057 >>451
王国ルート058 >>446 帝国ルート058 >>453
王国ルート059 >>447 帝国ルート059 >>454
王国ルート060 >>449 帝国ルート060 >>461
王国ルート061 >>462 帝国ルート061 >>471
王国ルート062 >>465 帝国ルート062 >>472
王国ルート063 >>466 帝国ルート063 >>476
王国ルート064 >>467 帝国ルート064 >>477
王国ルート065 >>468 帝国ルート065 >>480
王国ルート066 >>482 帝国ルート066 >>492
王国ルート067 >>483 帝国ルート067 >>493
王国ルート068 >>487 帝国ルート068 >>495
王国ルート069 >>488 帝国ルート069 >>496
王国ルート070 >>489 帝国ルート070 >>499
王国ルート071 >>504 帝国ルート071 >>516
王国ルート072 >>506 帝国ルート072 >>517
王国ルート073 >>507 帝国ルート073 >>520
王国ルート074 >>509 帝国ルート074 >>521
王国ルート075 >>510 帝国ルート075 >>525
王国ルート076 >>528 帝国ルート076 >>539
王国ルート077 >>533 帝国ルート077 >>543
王国ルート078 >>534 帝国ルート078 >>545
王国ルート079 >>537 帝国ルート079 >>547
王国ルート080 >>538 帝国ルート080 >>548
王国ルート081 >>551 帝国ルート081 >>560
王国ルート082 >>552 帝国ルート082 >>562
王国ルート083 >>553 帝国ルート083 >>563
王国ルート084 >>557 帝国ルート084 >>564
王国ルート085 >>558 帝国ルート085 >>566
王国ルート086 >>571
王国ルート087 >>574
王国ルート088 >>575
王国ルート089 >>578
王国ルート090 >>579
◇カメルリング王国味方
>>2 ルーク 主人公
>>1 ミルフィーユ 発明家・美食家・資産家
>>4 キリエ 牧師・哲学者
>>16 ノイアー 傭兵
>>25 ラグ 執事
>>28 サイト 商人
>>29 リグレット 僧侶
>>39 ツバキ 軍人
>>55 ユニート 魔導師
>>58 ラルス 騎士
>>58 リリー 暗殺者
>>75 ジョレス 傭兵
>>78 フランチェスカ 王女
>>87 ハニー 妖精
>>99 シラン 術士
>>221 カルマ 学者・錬金術師・魔術師
>>289 フランキール 王子
>>440 シュバルツ 海賊
>>457 リレーナ 竜騎士
◆ミカイロウィッチ帝国味方
>>14 エドウィン 主人公
>>6 ヴィトリアル 盗賊
>>11 アーリィ 魔女
>>12 ゼルフ 黒騎士
>>12 リン メイド
>>27 シフォン 貴族騎士
>>30 イヴ 術士
>>37 ウィンデル 大道芸人
>>59 クウヤ 剣士
>>60 ツヴァイ 科学者(薬学)
>>76 ミレア 傭兵
>>78 シェリル 皇女
>>85 ディルム 精霊
>>96 ライヤ 偵察兵
>>98 セイリーン ドッペルゲンガー
>>278 レイ 魔女
>>305 故)フィア 魔女の弟子
>>305 故)キオ 魔女の弟子
◎味方につかない者
>>163 ソーサラー(呼称) 占星術師・幻術師
>>163 スキンヘッドハゲ(呼称) 盗賊
>>227 ヨメナイヤツ アドバイザー
キャラ応募してくださった皆様心よりお礼申し上げます!素敵なキャラをありがとう!!
◇番外編◆
参照四桁祝
・イヌ派ネコ派の王国日常 >>146
・絶対に信じちゃいけない言葉で帝国日常 >>150
・執事採用試験 >>156
・団長の足取り >>157-158>>160
・ある幻術師の思い出 >>162>>164>>170>>173>>175>>176
参照二千祝
・とあるメイドの追走劇 >>248>>254>>257>>260
・傭兵の黒と従者の白 >>263>>264>>269>>272>>274>>280>>281>>282>>283
参照三千&四千祝
・魔法使いの弟子 >>360>>363>>364>>367-368
・帝国サイド盗賊団と加担者でチビキャラ全員集合イラスト >>371
参照4500祝
・王国・番外ルートで抜粋チビキャラ集合イラスト >>404
銀賞&殿堂入り祝
・メイドと騎士と仲介人 >>415>>417-418>>421>>423
参照5000祝
参照6000祝
参照7000祝
金賞祝
参照8000祝
参照9000祝
参照10000祝!
参照11000祝!!
参照12000&13000祝!!!
保留
どんどん保留祝が増えて行っている…本編終わったら一気に大感謝祭とかやりたいなぁ、なんて考えてます
・・・業務連絡・・・
2014の冬の小説大会で銀賞もらえました!ありがとうございます!
2015の夏の小説大会で金賞もらえました!!ありがとうございますっっ!
参照5000祝いと6000祝、7000祝、8000祝9000祝そして10000祝。11000祝はのちほど…ッ!
時間軸まとめ >>234
- さぁ 正義はどっち ? 参照6200ありがとう御座います! ( No.487 )
- 日時: 2015/04/15 19:38
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
068 カメルリング王国ルート
「すまない、サイオンジ殿。側近も、フランチェスカを見ていてくれないか?」
キールはフランチェスカを礼拝堂の祈りの椅子に座らせ、一身に祈りをささげつぶやくように聖歌を歌う修道士たちの方を眺めながら声を潜めて囁いた。
ほの暗く、数多の蝋燭に照らされた礼拝堂はこの世のものとは思えないほどの雰囲気をしており、簡単に幻想的などと言えないほどの不気味な神聖さを讃えている。
その闇に溶けてしまうような黒髪のツバキが、なぜ、というように小首をかしげて鋭くキールを見た。側近もどこに行くつもりかと慌てて問い詰める。
「俺は父上と母上の元に戻る。尋問の内容が気になるんだ。おそらく、あのライヤとかいうスパイ容疑者は今頃拷問も兼ねた尋問を受けていると思うから——」
言いながらキールはフランチェスカを探るように見つめ、その深海色の瞳が蝋燭の灯で揺らめくのを見て、目を伏せた。
側近は困ったという様に椅子に腰かけるフランチェスカとドア付近に立つキールを交互にみつめ、どちらの側にいるべきか測りかねているようだった。
「二人とも妹の側にいてくれ。俺は一人でも戻れる」猛反論を繰り出そうと口を開いた側近を片手で制し、もちろんと付け加える。
「もちろん廊下も部屋も今日はいたるところに騎士や使用人がいる。どこにいようが百人の騎士に囲まれているのと同じくらい安全だ。違うか?」
側近の心配げなまなざしを冷たくあしらい、キールはくれぐれも妹をよろしくと言い残し、扉に手をかけて礼拝堂から出て行った。
無事に側近とツバキから離れられたことに安堵しながら、キールは妹の不可解な表情を思い出し、唇をかんだ。
ライヤというスパイが鎖でがんじがらめに縛られていても、敵国の差し金ならばキールも他の多くの人物も当然の報いだとみていられるが、妹は違う。
歩き出しながら、キールは答えを求める哲学者のように腕組みをした。
フランチェスカは類を見ないほどの平和主義者であり、彼女と意見がピッタリ合うのは牧師や修道士しかいないのではないかというほど、慈愛の心をたんまりと抱え込んでいる。
そもそも長女が死産だったこともあり、その死を丸3年間嘆き悲しんだ王国が望みに望んだ待望の次女がフランチェスカだったわけである。
小さなころから死んだ姉の話を聞かされ、王国の国民全員がどれほど嘆き悲しんだかを耳にタコができるほど聞かされ大切に育てられれば、どんな命も尊重する心優しき子供に育つだろう。
フランチェスカの場合、自信に宿った強烈な魔力のおかげでそれが異常なまでに顕著に表れ、もはや偽善者の領域を吹っ飛ばし聖人の域に達してしまっている。
それが美徳だったはずだったのだが…その光景を思い出し、キールは首をひねる。
スパイが尋問において答えるのを拒否した際、手荒く扱われたというのに、フランチェスカは無表情でその光景を見ていたのだ。
「絶対にありえない…今までこんなことはなかった…」
キールに深々とお辞儀をする騎士たちを追い越して、その足は徐々に城の上層部へと向かっていく。もともと、玉座の間に戻るつもりはなかった。
一つの懸念事項がキールの思考回路をのっとったように彼を悩ませた。
フランチェスカは悩み事が、それも身内に対しても明かしてはならない隠し事があるに違いない、とキールは階段を駆け上がりながら自分自身を納得させようと努力していた。
だから、スパイがむごい拷問を受けそうになってもそれを無表情で眺められたのだ。いや、むしろ、重大な考え事をしていて上の空だったのだ。
そうでなければいままでの、現在牢獄に放り込まれ終身刑を言い渡されている七人の盗賊たちへの死刑撤回を悲痛に訴えていたような行動の意味が解らなくなってしまう。
(フランチェスカは何かを隠している。それがもしかしたら…)
城のてっぺん、最上階にたどり着いたキールは、自分の部屋とは反対方向にある妹の部屋へと視線を投げた。
カメルリング王家の紋章が施された優雅な扉に、ためらいながら近づくと、周囲を見渡して誰もいないことを確認した。
(もしもフランチェスカが昨夜忍び込み魔導剣士によって深手を負った二人組を保護し、匿っていたら…)
この扉を開けて中にいる人物たちを使用人たちに目撃されたら、フランチェスカが大きな罪をかぶることになる。妹のやさしさを知る兄としてはそれは避けたかった。
扉に耳をつけ、中から物音が聞こえてこないかと息を殺しながら考える。
(妹と同じくらい慈悲深いキリエ牧師や、妹に尊敬され忠実な先生役を果たしているリグ僧侶とユニートが、もしかしたらここに閉じこもって怪我人を手当てしているのかもしれない…?)
思い違いであってほしいと願いつつ、そっと扉を開け、部屋に一歩踏み込んだ途端、がたがたごとごとと、奇妙な音が耳についた。
絶望的な思いで音の根源であるクローゼットまで歩み寄り中をのぞくと、そこには縛り上げられてもがくように身じろぎする三人組が放り込まれていた。
こんばんはコッコさん!
やっと発明家一家が修繕されましたね。これについでバラバラになった人たちが彼らみたいにまた再会を果たせたらいいですねぇ…((意味深
コメントありがとうございます!
- さぁ 正義はどっち ? 参照6200ありがとう御座います! ( No.488 )
- 日時: 2015/04/17 21:00
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
カメルリング王国ルート 069
「どうなっているんだ…」
一瞬呆然としたものの、キールはすぐさま縛り上げられた三人組を引きずり出し、縄紐をほどいた。びっくりするほど簡単にほどける縄に戸惑いつつ、キールは三人組—キリエ牧師、ユニート、リグ僧侶の様子にさらに混乱する。
今まで行方不明だったはずの三人が、なぜかゆるく縛られ妹の部屋のクローゼットに放り込まれている時点で不可解なのだが、縄を解かれた彼らは一言もしゃべらずただもがくように手足を動かし、開いている目はキールを確かに映しているはずなのに、まったく反応しない。
「キリエ牧師殿…?」
魔術の気がないキールはめったにリグ僧侶とユニートに顔を合わせることはないが、月に一度ひらかれる王族の礼拝堂での夕べの祈りにはキリエ牧師が毎度足を運んでおり、その際に話をしたことがあった。
その際のキリエは宗教と哲学は実は切り離して考えられる、と少しはかなげに笑っていたのを覚えている。
少なくとも夢遊病患者のようにうつろな目をして身じろぎするような人では無い。
こんなことをしたのはいったい誰であるのか、もしかしたら本当にフランチェスカたち4人が逃亡者を保護し、手当てをしていたが、治療後恩をあだで返されてクローゼットに放り込まれた?
見渡す部屋には血の跡は見えず、椅子の下や本棚の影にも包帯のくずはない。ただ絨毯の上に大型の書物が開かれておいてあるだけだ。
なんとか三人を立たせて玉座の間へと連れて行きたかったが、すぐ思い直し、ふらふらとゾンビの用に歩き出した三人が転落死しないようにバルコニーを閉め、シランを求めて二段飛ばしで飛び降りるように階段を下った。
玉座の間の扉の前まで戻ると、今度こそ扉をけ破られまいと警備を増した黒塗りの扉の前は騎士でいっぱいだった。
そのうちの一人に走り寄りながら声を掛ける。
「幻術師殿はいるか?呼んできてほしい」
「いえ、幻術師殿は地下牢へ参りましたが…なんでもスパイの尋問を地下牢で行えと国王様が仰しましたのでそちらに—」
そうかありがとう、と素早く踵を返しうろたえる騎士を置いておよそ王族には縁のない地下牢獄へと走る。
シランは一番目の牢獄の前にしゃがみ込んでおり、キールが歩み寄るとあわてて立ち上がろうとしたが、青ざめた顔でまたしゃがみ込んだ。
同じように告白証人であるシュタイン亭の貴婦人とその上々客である体格の大きな男が腰が抜けた様に牢獄の床にへたり込んでいる。
シュタイン亭の貴婦人はその腕の中に、最年少の傭兵であるノイアーという少女をしっかりと抱きしめており、ノイアーは首だけを無理やり巡らせて、長く牢獄が連なる方向へ目を向けている。
「フランキール王子…その、向こうにはいかない方が…尋問が始まってそれで…」
何があったのかと眉根を寄せて彼らを眺めていると、シランが恭しく頭を垂れながら口を開いた。
耳をすませば確かに、押し殺したうめき声と、質問を繰り返し投げかける声が聞こえてくる。
確かに玉座の間では尋問を続けられないわけだ、と頭の中に血がしみこむ絨毯を想像して一人納得する。
「幻術師殿、あなたに見てもらいたいものがある。ついてきてくれないか」
苦痛を訴える声に耳を塞ぎ、キールはシランに有無を言わさずついてくるように指示し、シランは牢獄の奥へ一瞬目をやり、頷いてついてきた。
「取り乱さずに落ち着いて分析して見せて欲しい」と言いながら、たどり着いた扉を開けてシランを部屋の中へと招いた。
部屋の中を一見してみると、誰もいないように見えたが、部屋の隅や本棚の前に転んだ状態の彼らを見つけ、シランはぎょっとして紅い目を見開いた。
「ユニートさん!なんで本棚の前でアホみたいにバタバタしてるんですか?」
「どうやらみんな我々を認識できず、自分自身がどのような行動をとっているのかも分かっていないらしい」
ユニートの側に跪き、診察するように片目を指で押しあけながら眉を寄せているシランに告げれば、シランは深刻な顔をして「これは幻術の影響です」とつぶやいた。
その証明であるかのように、シランはユニートのめがねを掲げながら、「 火の第九室 解除 」と唱えれば、ユニートの支店の定まらない瞳が、ぼんやりと焦点を結びだした。
部屋の隅に向かって歩き続けていたリグ僧侶も、途方に暮れた様に棒立ちしてあたりをきょろきょろ見ていたキリエ牧師も、やがて正気を取り戻した。
「……?」
「気づきました?ユニートさん。幻術に掛かってたんですよー?」
術が解けた影響でぼうっとしているユニートに無理やり眼鏡を掛けながら、意識を取り戻した患者にしゃべりかけるようにシランがしゃべりだす。
「直前にこの人たちを見ましたよね?」
貴方たちもこちらに、とキールがぽかんとしているキリエ牧師とリグ僧侶の腕を引いてシランの前に座らせる。
「この世は終わったはずでは?」「さっきの砂漠はどこに?」「さっきまで底なし沼にはまってたのに」などと困惑して呟いていた人物たちは、シランが3つのマスコットを三人の目の前にぶら下げると黙り込んだ。
「確かに、見た気がする…」ユニートが眼鏡をかけ直しながら顔をしかめ、なぜ体中がずきずきするのか訳が分からないと辺りを見回し、ガラス張りのバルコニーを見て驚愕したように叫んだ。
「今は朝?!」
「なんですって?!」
「おや本当に…?」
ユニートがバルコニーを指差してわめくと、キリエとリグがそれぞれ反応する。その光景に笑い出しそうになるシランだったが、キールがそれをさえぎる様に口を開いた。
「少し話を聞きたい。正直に話してほしい。昨晩、フランチェスカと共にここで誰かを匿い、治療したか?例えば、血まみれのメイドと執事だとか…」
しかし帰ってきたのは「いいえ」の三人合唱で、シランが三人を弁護するように横から口を挟んだ。
「ツバキ団長によれば血まみれの二人組は自分たち自身で治療をし、そのまま窓から城の外庭へ脱出したって聞きましたけど。その証拠として一階の部屋に靴跡や血の跡などが残っていますよ」
「あなたたちとフランチェスカは、晩餐会が開始してから三十分後にフランチェスカが就寝するために別れたと聞きました。その後に幻術師に出会ったのか?そして深夜に賊侵入を聞きフランチェスカが部屋を離れた際にあそこのクローゼットに押し込まれたと?」
シランの言葉に目を伏せたが、キールはそれではと三人と目を合わせながら奥のクローゼットを指差した。
「いえ、そうではありません」すかさずキリエが声を上げ、バルコニーから差し込む太陽の光に呆然としながら「私たちは晩餐会が開始してから、ずっと王女様と共にいました。就寝なさるなどは一言も聞いておりません。ただ、そこにある魔導書を見ていたとき、使用人の二人組が居たことは覚えていますがそれっきり記憶が…」
差し込む太陽光線から目をそらし絨毯の上に開かれた大型の魔導書を手に取るキリエに、ユニートもリグレットも同意する。
「その使用人二人組っていうのが、このイヴとクウヤだよね?でも…それならなぜ王女様はこの三人と別れただなんて言ったんだろ?」
イヴとクウヤのマスコットをもてあそびながらシランが口にすれば、キールが腕組みをして部屋の中をうろうろと歩き出す。
「フランチェスカと話す必要がある…もしかしたらフランチェスカの慈悲をあてにした奴らが、見逃してくれるように頼んだ可能性もある…」そして尋問中に肉親にも言えない秘密を抱え込んだことで良心の呵責を起こし無表情だったのかもしれない。
意を決したキールは腕をほどき、扉に手をかけて四人を振り返った。
「あなたたちはここから一歩も出ないでほしい。すべて済んだら、声を掛ける。よろしく頼む」
そして有無を言わせず扉を閉ざした。
参照6300ありがとうございます!
そして今夜は連弾ですっ
- さぁ 正義はどっち ? 参照6200ありがとう御座います! ( No.489 )
- 日時: 2015/04/17 21:13
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
カメルリング王国ルート 070
礼拝堂の扉の前で、キールは一瞬扉を開けるのをためらった。尋問の最初しか聞いていないが、すでに帝国の賊どもは王都から脱出したという。それならわざわざ妹の秘密を暴く必要などないのでは?
(でもやはり…フランチェスカはどこかおかしい)
扉に寄りかかりながら、晩餐会以前のフランチェスカならばとる行動を思い浮かべてみる。
まず、修道院が破壊されたことで祝う気分など起きないと、晩餐会を欠席する。実際に欠席しており妹らしい行動である。
しかし、今日の尋問の最中、彼女は顔を覆いもせず無表情で尋問を眺めていた。もし思い悩んでいたとしても、そんなことありうるのだろうか?
そしてもう一つ不可解なのは、尋問会場から大人しく出ていき礼拝堂へやってきたことだ。フランチェスカが礼拝堂へ移ったところでスパイへの尋問や拷問は止まることはない。
しかし、会場に残れば暴力のかけらを見つけ次第声を上げて止めさせることが出来るのに、礼拝堂へ移動した妹。
妹の落ち着いた表情で椅子に座る姿を思い出し、キールは顔をしかめる。まるで別人のようだ。
これははっきりさせなければならないと、キールは礼拝堂の扉を押しあけてフランチェスカの名前を呼んだ。
「お兄様?」
不思議そうに小首を傾げ、こちらに歩いてくるその姿が闇の中からぼんやりと近づいてくる。その姿にどこか不審な点はないかと目を凝らすが、髪飾りも、髪の色の、瞳の色も、記憶のままのフランチェスカだった。
ツバキや側近がそのあとに続いてくるが、どうしても撒かなければならない。この話は兄妹だけでしたい。
「少し話がしたいんだ」
じっとフランチェスカはキールの目を見つめ、ゆっくり頷いた。
「それでは中庭でお話ししましょう」
「わっち等もお供いたします。勿論、話の内容は聞くつもりなど御座いません」
歩き出したフランチェスカについてツバキがきっぱりと宣言し、キールは思わず了承して眉根を寄せた。
「俺のいない間妹はスパイのために祈っていたのか?」
妹とツバキの背中を見ながら側近に耳打ちすると、側近はいいえと首を振った。
「スパイが盗んだ本を熱心に読んでなされていました。我国の歴史書を熱心に読むのはよいことですね」
そうだな、と曖昧にうなづきながら、キールは視線を妹へ投げた。
中庭にも騎士は大勢いたが、皆慌ただしく動き回っているので立ち聞きされることはないだろうとキールは安心する。
既にツバキと側近はこれほどの騎士たちがいるのだから平気だろうと後方をゆっくりと歩いていた。
フランチェスカと並んで歩きながら、キールはすぐに尋ねた。
「嘘をついたな」
「え?」
歩く速度を緩めずに、フランチェスカは周囲に目を向けながら不思議そうに聞き返してくる。何かを探しているように可憐な花壇には見向きもせずに視線を投げる様子は少し奇妙だった。
「昨晩、晩餐会開始後から三十分経ってからキリエ牧師、ユニート、リグ僧侶と別れたと言っていた。でもそれは嘘だ、そうだろう」
「なぜそう思うのですか?」
ますます歩く速度を増しながらフランチェスカが白を切ろうとする。年齢は離れているが仲のいい兄妹だと思っていたのだが、と少し信用されないことにがっかりしながらキールは先を続けた。
「お前の部屋のクローゼットの中から、行方不明中のキリエ牧師達三人が出て来た。彼らは幻術に掛かっていて、幻術師の兄妹に術を掛けられる直前までお前と一緒にいたと言っていた」
フランチェスカが黙り込み、芝生を踏む速度が少しのろくなった。どこかでグルグルと喉を鳴らすような奇妙な音が聞こえたがキールは無視した。
「お前だけは幻術を掛けられなかった。どうしてだ?見逃してくれと言われたのか?」
フランチェスカが足を止め、ようやくまともにキールの目を見た。しかしなぜだか、値踏みされるような攻撃的な視線のように感じられ、思わず一歩離れそうになった。
「それに、お前は罪人にさえ慈悲を掛けるような性格だったはずなのに、なぜ尋問の最中あんなに冷静だったんだ?まるで別の人間がお前にすり替わったみたいに奇妙だ」
自分自身で言った言葉なのに、妙に納得し、キールは妹の顔をまじまじと見た。
「ほんとうに…別の人間にすり替わったみたいだ。外は同じでも、中身がまるで違う…」自分と同じ色の深い海の底のような瞳をじっと見ていると、今までにはない色がちらりと走るように見えた。
「わたくしにはお兄様がおっしゃることがわかりません。なぜそのような酷いことを言うのですか?」
悲しみを讃えた顔でフランチェスカが胸に本を抱きながら静かに兄に訴えかけるが、キールはその本を指差した。
「その本、スパイがお前の部屋から借りたと言っていたが…そんなもの以前あったか?貸してみろ」
しかしフランチェスカは後ずさりし、それを拒否した。
更に不信感が募り、キールは無理やり本を奪い取ろうと手を伸ばす。
後にいるツバキと側近がどうしたのだろうという様に顔を見合わせるのが視界の端に映った。
「おやめくださいお兄様」
伸ばされたキールの手から逃れ、フランチェスカは兄を睨みつけた。その形相の鋭さに、咄嗟に答えがひらめくほどの殺意が込められていた。
「晩餐会の夜、誰かが幻術師兄妹と共にフランチェスカの部屋に入り、本物とすり替わっていたとしたら…スパイがお前に何かを渡す意味も理解できるが…?」
今ここで殺されるかもしれない、と思うほどの視線で睨まれながら、キールはフランチェスカに呟いた。
「もしそうならお兄様……頭のいいお兄様には——次にどうなるかも想像できるよねェ?」
フランチェスカは口が裂けるほどの笑みを浮かべ、横っ飛びに走り出した。呆然とした兄を残し、庭にある大きな茂みの奥に飛び込むと、次の瞬間何か巨大なものがバタバタと飛び出し空に舞い上がった。
「なん…あれは、リレーナのドラゴン…?」
何が起こったのか理解できないうちに、上空に舞い上がったドラゴンが足に本を掴んで小ばかにするようにケタケタと笑うのが聞こえた。
「こんなに早くばれちゃうとは予想外。でももう気付いたって遅いもンねェ〜」
この若い女のような甲高い捨て台詞により、フランチェスカの形をしていた人物が、ワイバーンにとって代わって逃げ去っていくということが理解できた。
「弓隊はあのワイバーンを撃ち落せ!奴は敵だ!そしてヤツの持っている本を回収しろ!」
指示を出した後、いったいなぜ人がドラゴンに変わることが出来たのか探る様に茂みの奥を見ると、鎖に繋がれて寝転がる本物であろうワイバーンが何事かと見つめ返していた。
ドラゴンの目を見つめながら、キールはもう一度空を振り返り、妹だったワイバーンを見上げた。
本物のフランチェスカは帝国の賊にさらわれしまったのかもしれないと考えると、ふつふつと怒りがこみ上げると同時に、もうどうしたらいいのだろうと脱力感に襲われた。
今回も多い…;
まぁ解決話だからしょうがないけど、読みにくくなければいいんですが…
- Re: さぁ 正義はどっち ? 参照6300ありがとう御座います! ( No.490 )
- 日時: 2015/04/17 21:57
- 名前: コッコ (ID: ePP2bIPh)
フランチェスカの正体が見破られ逃亡しましたね。この結果がどうなるのか気になりますね。
- さぁ 正義はどっち ? 参照6300ありがとう御座います! ( No.491 )
- 日時: 2015/04/17 22:58
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
今晩はコッコさん!そしてコメントありがとうございます!
まき散らしたフラグを回収していくのは楽しいですねぇ
少なくとも次回のルートのどこかには長期間影が薄かったW主人公の一人がやっと動き出すでしょうたぶんおそらくは…うん、たぶん…
最終章を今飲み込みかけてるとこですかね!しかしエピローグをカウントすると終わりはまだ先ではある
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