複雑・ファジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

さぁ 正義はどっち ? 参照13600ありがとう御座います!
日時: 2016/08/23 00:57
名前: メルマーク (ID: KzMBmi6F)

戦争と平和は正反対のものと考える人が多い世の中
それは本当なの?正義って何?悪って何?
答えが見つからないなら探せば良い。

多分異色な今までにない、正義についてのお話し。
答えはありませんが、きっと終わった後 何が正解か思い浮かぶはず。
時代は古きよき時代、中世頃にしようかと

オリキャラ募集一応締め切らせていただきます!
終章にもうじき突入予定なので‥・もしかしたらまた募集するかも・・・?


名前
性別
年齢
容姿
A国B国どちらの味方?(国名は長いので省略
性格
武器
サンボイ「」
職業は?下から選択下になければ新職業を書いてくれるとうれしいです

騎士 傭兵 盗賊 貴族 海賊 海軍 王室(王族をのぞく外交官・メイド・執事・王族のいとこ)関連
占い師 科学者(錬金術師) 芸術家 哲学者 商人 国民 旅人 魔法使い など

武器や変わった特徴などの要望も即採用です
結構な確率で”死ぬケース”もあるのでご了承ください!!

◇目次◆   


王国ルート001 >>5    帝国ルート001 >>43
王国ルート002 >>15    帝国ルート002 >>49
王国ルート003 >>20    帝国ルート003 >>50
王国ルート004 >>23    帝国ルート004 >>54
王国ルート005 >>31    帝国ルート005 >>63
王国ルート006 >>66    帝国ルート006 >>81
王国ルート007 >>67    帝国ルート007 >>83
王国ルート008 >>68    帝国ルート008 >>90
王国ルート009 >>71    帝国ルート009 >>91
王国ルート010 >>74    帝国ルート010 >>93
王国ルート011 >>101   帝国ルート011 >>114
王国ルート012 >>103   帝国ルート012 >>117
王国ルート013 >>106   帝国ルート013 >>118
王国ルート014 >>108   帝国ルート014 >>120
王国ルート015 >>110   帝国ルート015 >>122
王国ルート016 >>123   帝国ルート016 >>183
王国ルート017 >>127   帝国ルート017 >>184
王国ルート018 >>133   帝国ルート018 >>187
王国ルート019 >>142   帝国ルート019 >>191
王国ルート020 >>144   帝国ルート020 >>193
王国ルート021 >>194   帝国ルート021 >>207
王国ルート022 >>197   帝国ルート022 >>208
王国ルート023 >>200   帝国ルート023 >>209
王国ルート024 >>203   帝国ルート024 >>210
王国ルート025 >>204   帝国ルート025 >>212
王国ルート026 >>214   帝国ルート026 >>232
王国ルート027 >>217   帝国ルート027 >>238
王国ルート028 >>219   帝国ルート028 >>239
王国ルート029 >>223   帝国ルート029 >>246
王国ルート030 >>224   帝国ルート030 >>258
王国ルート031 >>286   帝国ルート031 >>298
王国ルート032 >>287   帝国ルート032 >>304
王国ルート033 >>288   帝国ルート033 >>309
王国ルート034 >>292   帝国ルート034 >>312
王国ルート035 >>295   帝国ルート035 >>314
王国ルート036 >>317   帝国ルート036 >>329
王国ルート037 >>319   帝国ルート037 >>331
王国ルート038 >>321   帝国ルート038 >>334
王国ルート039 >>325   帝国ルート039 >>335
王国ルート040 >>326   帝国ルート040 >>336
王国ルート041 >>340   帝国ルート041 >>372
王国ルート042 >>347   帝国ルート042 >>375
王国ルート043 >>352   帝国ルート043 >>378
王国ルート044 >>353   帝国ルート044 >>382
王国ルート045 >>357   帝国ルート045 >>386
王国ルート046 >>387   帝国ルート046 >>399
王国ルート047 >>390   帝国ルート047 >>402
王国ルート048 >>393   帝国ルート048 >>407
王国ルート049 >>395   帝国ルート049 >>408
王国ルート050 >>398   帝国ルート050 >>409
王国ルート051 >>425   帝国ルート051 >>431
王国ルート052 >>426   帝国ルート052 >>433
王国ルート053 >>428   帝国ルート053 >>434
王国ルート054 >>429   帝国ルート054 >>436
王国ルート055 >>430   帝国ルート055 >>437
王国ルート056 >>442   帝国ルート056 >>450
王国ルート057 >>443   帝国ルート057 >>451
王国ルート058 >>446   帝国ルート058 >>453
王国ルート059 >>447   帝国ルート059 >>454
王国ルート060 >>449   帝国ルート060 >>461
王国ルート061 >>462   帝国ルート061 >>471
王国ルート062 >>465   帝国ルート062 >>472
王国ルート063 >>466   帝国ルート063 >>476
王国ルート064 >>467   帝国ルート064 >>477
王国ルート065 >>468   帝国ルート065 >>480
王国ルート066 >>482   帝国ルート066 >>492
王国ルート067 >>483   帝国ルート067 >>493
王国ルート068 >>487   帝国ルート068 >>495
王国ルート069 >>488   帝国ルート069 >>496
王国ルート070 >>489   帝国ルート070 >>499
王国ルート071 >>504   帝国ルート071 >>516
王国ルート072 >>506   帝国ルート072 >>517
王国ルート073 >>507   帝国ルート073 >>520
王国ルート074 >>509   帝国ルート074 >>521
王国ルート075 >>510   帝国ルート075 >>525
王国ルート076 >>528   帝国ルート076 >>539
王国ルート077 >>533   帝国ルート077 >>543
王国ルート078 >>534   帝国ルート078 >>545
王国ルート079 >>537   帝国ルート079 >>547
王国ルート080 >>538   帝国ルート080 >>548
王国ルート081 >>551   帝国ルート081 >>560
王国ルート082 >>552   帝国ルート082 >>562
王国ルート083 >>553   帝国ルート083 >>563
王国ルート084 >>557   帝国ルート084 >>564
王国ルート085 >>558   帝国ルート085 >>566
王国ルート086 >>571
王国ルート087 >>574
王国ルート088 >>575
王国ルート089 >>578
王国ルート090 >>579


◇カメルリング王国味方

>>2 ルーク 主人公
>>1 ミルフィーユ 発明家・美食家・資産家
>>4 キリエ 牧師・哲学者
>>16 ノイアー 傭兵
>>25 ラグ 執事
>>28 サイト 商人
>>29 リグレット 僧侶
>>39 ツバキ 軍人
>>55 ユニート 魔導師
>>58 ラルス 騎士
>>58 リリー 暗殺者
>>75 ジョレス 傭兵
>>78 フランチェスカ 王女
>>87 ハニー 妖精
>>99 シラン 術士
>>221 カルマ 学者・錬金術師・魔術師
>>289 フランキール 王子
>>440 シュバルツ 海賊
>>457 リレーナ 竜騎士

◆ミカイロウィッチ帝国味方

>>14 エドウィン 主人公
>>6 ヴィトリアル 盗賊
>>11 アーリィ 魔女
>>12 ゼルフ 黒騎士
>>12 リン メイド
>>27 シフォン 貴族騎士
>>30 イヴ 術士
>>37 ウィンデル 大道芸人
>>59 クウヤ 剣士
>>60 ツヴァイ 科学者(薬学)
>>76 ミレア 傭兵
>>78 シェリル 皇女
>>85 ディルム 精霊
>>96 ライヤ 偵察兵
>>98 セイリーン ドッペルゲンガー
>>278 レイ 魔女
>>305 故)フィア 魔女の弟子
>>305 故)キオ 魔女の弟子

◎味方につかない者

>>163 ソーサラー(呼称) 占星術師・幻術師
>>163 スキンヘッドハゲ(呼称) 盗賊
>>227 ヨメナイヤツ アドバイザー

キャラ応募してくださった皆様心よりお礼申し上げます!素敵なキャラをありがとう!!

◇番外編◆

参照四桁祝
・イヌ派ネコ派の王国日常 >>146
・絶対に信じちゃいけない言葉で帝国日常 >>150
・執事採用試験 >>156
・団長の足取り >>157-158>>160
・ある幻術師の思い出 >>162>>164>>170>>173>>175>>176

参照二千祝
・とあるメイドの追走劇 >>248>>254>>257>>260
・傭兵の黒と従者の白 >>263>>264>>269>>272>>274>>280>>281>>282>>283

参照三千&四千祝
・魔法使いの弟子 >>360>>363>>364>>367-368
・帝国サイド盗賊団と加担者でチビキャラ全員集合イラスト >>371

参照4500祝
・王国・番外ルートで抜粋チビキャラ集合イラスト >>404

銀賞&殿堂入り祝
・メイドと騎士と仲介人 >>415>>417-418>>421>>423

参照5000祝
参照6000祝
参照7000祝
金賞祝
参照8000祝
参照9000祝
参照10000祝!
参照11000祝!!
参照12000&13000祝!!!
保留
どんどん保留祝が増えて行っている…本編終わったら一気に大感謝祭とかやりたいなぁ、なんて考えてます

・・・業務連絡・・・

2014の冬の小説大会で銀賞もらえました!ありがとうございます!
2015の夏の小説大会で金賞もらえました!!ありがとうございますっっ!
参照5000祝いと6000祝、7000祝、8000祝9000祝そして10000祝。11000祝はのちほど…ッ!


時間軸まとめ >>234

さぁ 正義はどっち ? 参照13200ありがとう御座います! ( No.575 )
日時: 2016/08/16 12:08
名前: メルマーク (ID: KzMBmi6F)

カメルリング王国ルート 088


 分厚い雲の海まぎれ、時折顔をのぞかせて眼下に目を配るリレーナは、腰につけたポシェットを掻き回して、目当ての物に軽く目をやった。
滑らかな球状の危険物を掴むと、指を滑らせてくぼみに軽く触れる。
「どこにして欲しい?」
ワイバーンに囁くと、ワイバーンは喉をグルグル鳴らしながら宮殿のあちこちへと首を巡らせる。そしてある一点を鼻先で指すように指示してしわがれたカラスのような声で鳴いた。
「うん?」雲の合間から見渡すと、屋根の途切れた外廊下から、騎士の一団があふれ出す光景が見えた。黒塗りの服装に剣を携える姿からすると、彼らが国外でも有名な帝国の黒騎士団なのだろう。リレーナはよく見つけた、とワイバーンの額を撫でた。
「さぁ、滑空して」
ハーネスをがっちりとつかんだリレーナは、馬にやるように軽く相棒の脇腹を蹴った。その直後、内臓がひねられるような浮遊感と共に景色が迫ってくる目の回るような感覚が神経を支配する。ぐっと屈みこんで吹き飛ばされそうな風圧を避けると、ワイバーンがぐっと身を起こして落下速度を緩めた。
その途端大勢のうろたえた声が身近に迫り、リレーナは握りしめていた装置を思い切り地面に放り投げた。
輝く閃光と驚きの叫びから逃れるように、ゆるく回転しながら再び空に舞い上がるワイバーンとリレーナ。雲と同じ高さまで舞い戻った彼らは、そろって結果を見つめた。黒い一団はかすかに移動するものの、まばゆい光に飲まれて視界を奪われたようだ。
「使えるじゃないか、これは」
あの発明家のことを見直した、とポシェットに入る装置を撫でてつぶやく。そして獲物を見つめる猛禽類のような瞳で再び黒騎士達を眺めると、唇の端を釣り上げて笑う。
リレーナとワイバーンの持ち場は上空であり、そこから地上部隊に有利に物事が運ぶように線公団を上空からばら撒く役を仰せつかったのだが、リレーナもワイバーンも立派な武器がある。こう上空から戦闘を見つめると、彼らと同じように武器をふるいたくて仕方なくなる。
「…私たちもひと暴れしようか、相棒?」
返事する様にカラスのような声を響かせたワイバーンは、再び急降下し始めた。

分厚い風をまとわせて着陸したワイバーンは、その長い尻尾で手じかな黒騎士を一人跳ね飛ばすと、満足げに鳴き声を上げた。
「敵だ!」
目がかすんでもさすがに黒騎士らしく、気配だけを頼りに夜色の剣を構えた騎士達がぞろぞろと包囲してくる。
それを不適そうに眺めたリレーナは剣を抜き、かかってこいと高笑いした。
向けられた剣をはじき、まるで踊るように敵をなぎ倒す様子を、良くラルスは戦乙女とかいう言葉で呼ぶ。よくもまぁ、赤毛と同じほど身体中を血で染め上げた姿を見ておののかないものだ、と呆れてしまう。初めてラルスと出会ったところは、どこだっただろうか…。
そんなことを考えながら敵を足げにしていると、彼らの視界も回復したのだろうか、一突きの剣がリレーナの脇腹をこすった。
(少し遊びすぎたか…)
痛みに顔をしかめてその騎士を刺し貫くと、再びポシェットに指をすべり込ませて発明家の装置を取り出す。
(そろそろ本来の持ち場に戻らないと…)
くぼみをぐっと押し込んで向かってくる騎士の顔面にたたきつけた瞬間、再びすさまじいほどの閃光が周囲を包み込む。
腕で目を覆ったリレーナは、光がやむとすぐにワイバーンの元へ駆け出した。ハーネスを片手でつかんでひらりとその背中に跨ると、すぐにとびたてと命じる。
「なんだあれは?!」
ワイバーンが飛び立つ直前、鋭い声がリレーナを思わず振り返らせた。
宮殿の外廊下に立って唖然とこちらを見る二人組がいる。黒髪の男女は即座に剣を抜くが、一足遅かった。彼らが血塗れの芝生へと足を出す事にはすでにリレーナは上空に舞い上がっていた。

Re: さぁ 正義はどっち ? 参照13200ありがとう御座います! ( No.576 )
日時: 2016/08/16 12:10
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: KzMBmi6F)

上のやつシャープのあとのやつ打つの忘れましたっっ!

Re: さぁ 正義はどっち ? 参照13200ありがとう御座います! ( No.577 )
日時: 2016/08/16 13:04
名前: コッコ (ID: 0aJKRWW2)

お久しぶりです。

王国の新兵器が使われましたね。使われた黒騎士団はたまったものではないですね。これからも頑張ってください

さぁ 正義はどっち ? 参照13200ありがとう御座います! ( No.578 )
日時: 2016/08/16 17:11
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: KzMBmi6F)

カメルリング王国ルート 089


 「国王様!お着きになられましたか!」
カメルリング国王は差しのべられた手を取ると、船から一歩、敵地へと踏み出した。
とても狭い足場だが、敵地でやっと確保した安全地帯だ。文句は言えまい。
周囲を見渡すと、あちらこちら血が目に入る。今のところ、奇襲をかけたカメルリング勢が有利に立っているらしいと、転がる兵士たちからそう推測する。
「負傷者もいます。魔導部隊たちや軍医は…」
ラルスの問いに、国王は海を軽く顎で示した。
「あの船だ。彼らには安全地帯を確保してから上陸してほしかったからな。何—」懐から懐中時計を取り出してちらりと眺め、「十分もせんうちにこちらへ来る」


 国王の告げた通り、魔導舞台と軍医、最後の荷具などを乗せた船が既に停泊していた船に横付けして到着した。船に板を渡して一つ一つ船を渡って来た彼らは、ラルスと国王が一緒なのを見て安心したように息を吐いた。
「ただいま到着いたしました」魔導部隊団長のユニートがぺこりと頭を下げると、国王はよい、と手を振って止めさせた。
「負傷者がいる。急を要する重傷者を魔導部隊が処置し、後は軍医に任せよ。そして、魔導部隊の面々は帝国の魔女と戦う事を優先とする」
帝国の魔女と聞いただけで、魔導部隊の顔色がさっと変わった。たしかに、帝国の魔女は単純に魔力の量ならばフランチェスカには劣ったが、戦闘力に関してはこの付近の国で随一だろう。しかし何も倒して来いというわけではない。
「魔女とはいえ、奴も帝王ではない。あくまでも、帝王を殺すまでの間、邪魔が入らぬように足止めをしていてもらいたいのだ」
「…帝王を殺す——まさか国王様!」
さらりと告げたつもりが、びっくりしたようにラルスとユニートが同時に声を上げるので煙たそうに眉根を寄せる。


 「いけません!国王様の首がとられたら…その、王国の負けです…!」
「国の主がここで立たなくてどうする!」
王の鋭い視線に目を泳がせながらつぶやくユニートに、ラルスが真剣に国王に詰め寄る。
 ユニートの言う通り、ここで国王が死なれでもしたら、王国は負けである。ここで一時ひいたとしても、国王の死で士気は格段に低下するだろう。キール王子も、フランチェスカ王女と同様に一応は平和主義者なのだ。さすがに父と妹を殺されでもしたら、戦いに走るだろうが、その方がかえって冷静な判断を失っている分危険だ。
ここは何とか国王をなだめて、安全地帯からいつもの様に指示を飛ばしてくれるだけでよい。
「国王様、僭越ながら国王様がおられるだけで、我々の士気は確実に高まりました。しかし国王様が戦いにまで参加なされると、騎士達も国王様に遠して戦いに集中できなくなります」
そんなことを今更気にすることはないのだ、と国王が苛ただしげに腰から剣を抜いて戦いに参加しようとするため、ラルスは怒りを買うのを覚悟にその前へ飛び出した。

 「貴様」なんのつもりだ、と国王がラルスの顔をまじまじと見た。しわの多いその顔に、今ははっきりと怒りが表れている。
国王の奥で魔導軍団たちが心配そうな表情でこちらを見ているのが目に入る。特に、一時は弟子のつもりで剣を教えたルークが、心底青ざめた顔で事の成り行きを見つめている。
「失礼ながら、国王様。ご無礼を承知で申しあげます」
切りかかられても応戦できる騎士だからこそできる口出しである。「国王様には我々と共に戦う戦力ではなく…どうか、我々が敵を倒すための餌となっていただきたいのです…!」


こんばんは!コッコさん!
ミルフィーユさんの武器1が登場しましたが、まだまだこれからです!
黒騎士もさすがに科学力の前ではry
コメントありがとうございます!!!!

さぁ 正義はどっち ? 参照13200ありがとう御座います! ( No.579 )
日時: 2016/08/23 00:53
名前: メルマーク ◆gsQ8vPKfcQ (ID: KzMBmi6F)

カメルリング王国ルート 090


 まるで雪が降ったように、その場にしんとした沈黙が下りた。しずかにマントを揺らして、国王がラルスを振り返る。ふわりと舞う刺繍の金糸が、国王の静かな怒りをはらむように風に踊っている。
「何と言った、ラルス」
やがて静かに国王が口を開き、隠し事が何もできなくなるような例の深海色の目でじっとラルスを眺めた。
 「……」一つ間違えれば激高した国王に何をされるかわからない状況を目の当たりにし、ルークは固唾をのんで成り行きを見守る。たとえ国王に斬りかかられたとしても、ラルスなら、その一撃を受け止められるだろう。しかし心配なのはそこではないのだ。
(ラグみたいに、ラルスさんの大切な人が監禁でもされたら…?)教会の爆破を命じ、幼いラグを牢屋に放り込んだ国王の事だ、いまいち信用できない。
「はい、国王様」と、ラルスが重々しくうなづいてゆっくりと口を開いた。「国王様に、敵を集める餌に…罠になっていただきたいと、そう申し上げました」
「餌」
無表情のままオウム返しする国王は、握っていた剣を地面に突き刺し、ラルスを見下ろす。
「それはかまわん。しかし、安全地帯にいようといまいと、餌が餌として敵地を歩き回ることに誰も異議は唱えられぬはずだ。私も剣を抜いて、餌として務めを果たさなくてはならぬ」
剣をさらに深く地面に突き刺しながら、国王は周囲を見回した。白騎士団員がひと塊、安全地帯を囲うように立っている。怪我人や安全地帯の確保に追われる傭兵の一団がさらなる領土拡大を目指して何やら作戦を立てているように見える。
「しかし、それでは安全地帯が確保できません」剣を引き抜いて、作戦確認を使用と歩みだした国王のあとについて、ラルスはなおも食い下がる。
移動を開始し始めた国王たちをうろたえた様に目で追っていた魔導士たちは、やがて負傷者の元へ呼び寄せられた。
それを横目に、国王はうるさそうにラルスを振り返る。
「国王様の護衛に白騎士の団員を割いてしまえば、負傷者たちや船に残る武器や荷具を守護する騎士の数が激減してしまいます。安全地帯が奪われたら…有利な形成が逆転してしまいます!」
「……」
国王がため息とともにラルスを見る。老け込んでしまったその顔は、私が行動を起こさなければならない、という強い使命感にあふれていた。
「お前の言う通りだな、ラルスよ…」振り返った国王は、船に積まれた荷物を見つめて、頭に登っていた熱気を覚ました。
フランチェスカの命が危うくなる中、その命を父でありながら見捨て、国を優先したのだ。ここでどうにかして勝たなければ、憎い帝王を自らの手で刺し貫いてやらなければと気張りすぎていた。
「効果は一時とはいえ、奇襲攻撃は成功したのだ。ここから一斉に攻めなくては無策に陥るぞ」だからこそ、と国王は強い意志をたたえたまま憎き敵の住まう宮殿を仰いだ。「だからこそ、お前たちには期待しておる」
こぶしを握って言い切ると、あちらこちらから王国兵の奮い立った声が飛び交い、一瞬流れた不穏な空気が一斉に薄れた。
「国王様のために椅子を—!」
その様子に安堵したラルスは、こちらを心配げにみる魔導舞台に微笑みかけてから、船舶に残る連中に声を張り上げて、国王の椅子を持ってくるよう伝えた。


 震えが止まらない。
(なんですかこれは…)
周囲にはすでに一戦を終えて壁に倒れ掛かる騎士たちの、凄惨な痕が生々しくこびりついている。しかし、なによりもキリエをぞっとさせるのは、踏みつけられて痛んだ絨毯に残る、指のあと。
それが延々と、まるで誘い込むように幾重もの角を曲がって続いているのだ。
 「キリエ、どこ行くんだ?」
名を呼ばれ、青ざめた顔をはっとあげると、はるか先を抜けて行ったはずのノイアーに出会った。
廊下の角からひょっこり出て来た少女。そのブーゲンビリア風の白いワンピースが、目を覆いたくなるほどの赤で黒ずんでいる。息を切らさずに鎌を肩にかけて悠々と歩いてくる彼女は、きょろきょろと辺りを見回す。
「なんだ、ここら一帯はもう敵がいないのか。つまらん!」
ふん、と軽く鼻を鳴らすと、初めて興味が湧いたという様にじろじろとキリエを見上げる。
「な、なんですか?」その人を殺戮するには無垢すぎる青い目で見つめられ、居心地が悪そうにキリエが身じろぎする。「ジョレスはどうしたのです?はぐれてしまいましたか?」
その無垢な瞳が自分の胸元に向けられたのを見て取って、十字架の件に振られる前に自分から切り出した。
ノイアーは開きかけた唇を一時停止して、周囲を見渡し、ジョレスがいないことに気付いたようだった。
「はぐれてしまったのですね。私もツバキ団長を見失ってしまって…」
ため息とともにそうつぶやくと、ノイアーが急にピンと背筋を伸ばして目を輝かせた。みるみる頬が高揚して、いきなり鎌を振りかざす。
「見ろ!敵だ!獲物だあッ!」
そう嬉しそうに咆哮を上げると、キリエのそばを駆け抜けて廊下の奥に姿を現した帝国の騎士目掛けて走り出した。
 「ノイ—」
水気のない青い髪が躍る背中に手を伸ばそうとした途端、何か啓示を受けた様にピタリと身を止めた。
ノイアーたちがはじき合う剣の金属音に入交じり、何か激しく転がり落ちるような騒々しい思い金属音が耳についた。
息を止めてゆっくりと振り返ると、指のあとがふっつりと途絶えている。思い切って歩み寄ると、思わず転落しそうになった。
暗く縁どられていたため黒い扉だと思っていたが、そこは螺旋を描いて降りていく、じめじめした暗い階段だった。
こくりと喉を鳴らすと、キリエは行き先も知らぬまま、暗い階段に爪先を差し出した。


 「あー、チックショ」堅牢な鎧に身を包む騎士を前に、ジョレスは歯がゆそうに苛立った。階級の高い騎士は、死なないようにとスピードと攻撃力を犠牲にして重厚な鎧に身を固めている。傭兵や一介の騎士ならば突き通すこともできる剣も、守りに入った貴族の鎧の前にはなすすべもない。
「ノイアーも見失っちまったし、こんなトロイ奴ら相手にしなきゃいけないし」
蹴り倒そうとしてもいったい何キロあるのか、渾身の力で足蹴にしてもよろめかない彼らは、鈍い動作でごてごてに装飾された宝刀を振りかざす。
しかし重いゆえにのろい動きは、簡単にみ切れてしまう。
 「ジョレス!」
傭兵の一人、大柄な男が思い切り突進して貴族騎士の足を狙い、そのうちの一人を転ばせた。派手な音を立てて転がるその騎士に縄を打つと、縄の切れ端をジョレスに放り投げてきた。
「こんな奴ら相手にしてねぇで先行こう。縛っておけば問題ない」
次々と体当たりされて転ばされた貴族たちは、兜の下から怒りに満ちた声を上げていたが、転んでしまえば容易に起き上がることが出来ない。
しかし彼らの叫びは、更に仲間を呼び寄せ、次に駈け込んで来た輩のその制服の色に、ジョレスは閉口してしまう。
広いホールを挟んで、対峙するのは黒い制服に黒い剣の面々。
「やっと黒騎士のお出ましだ」一人が叫ぶと、両者警戒したようににらみ合い、ゆっくりと陣営を描きながら相手のスキを見つけようとじりじりと間合いを詰める。
その中にゼルフの姿を探しながら、その姿が見えないとわかるとほっと安堵の息を吐き出す。
戦っても勝てる気がしないから、どうかゼルフ達が俺の目の前に飛び出して来る前にこの戦いに結末が来ますように!


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。