複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- さぁ 正義はどっち ? 参照13600ありがとう御座います!
- 日時: 2016/08/23 00:57
- 名前: メルマーク (ID: KzMBmi6F)
戦争と平和は正反対のものと考える人が多い世の中
それは本当なの?正義って何?悪って何?
答えが見つからないなら探せば良い。
多分異色な今までにない、正義についてのお話し。
答えはありませんが、きっと終わった後 何が正解か思い浮かぶはず。
時代は古きよき時代、中世頃にしようかと
オリキャラ募集一応締め切らせていただきます!
終章にもうじき突入予定なので‥・もしかしたらまた募集するかも・・・?
名前
性別
年齢
容姿
A国B国どちらの味方?(国名は長いので省略
性格
武器
サンボイ「」
職業は?下から選択下になければ新職業を書いてくれるとうれしいです
騎士 傭兵 盗賊 貴族 海賊 海軍 王室(王族をのぞく外交官・メイド・執事・王族のいとこ)関連
占い師 科学者(錬金術師) 芸術家 哲学者 商人 国民 旅人 魔法使い など
武器や変わった特徴などの要望も即採用です
結構な確率で”死ぬケース”もあるのでご了承ください!!
◇目次◆
王国ルート001 >>5 帝国ルート001 >>43
王国ルート002 >>15 帝国ルート002 >>49
王国ルート003 >>20 帝国ルート003 >>50
王国ルート004 >>23 帝国ルート004 >>54
王国ルート005 >>31 帝国ルート005 >>63
王国ルート006 >>66 帝国ルート006 >>81
王国ルート007 >>67 帝国ルート007 >>83
王国ルート008 >>68 帝国ルート008 >>90
王国ルート009 >>71 帝国ルート009 >>91
王国ルート010 >>74 帝国ルート010 >>93
王国ルート011 >>101 帝国ルート011 >>114
王国ルート012 >>103 帝国ルート012 >>117
王国ルート013 >>106 帝国ルート013 >>118
王国ルート014 >>108 帝国ルート014 >>120
王国ルート015 >>110 帝国ルート015 >>122
王国ルート016 >>123 帝国ルート016 >>183
王国ルート017 >>127 帝国ルート017 >>184
王国ルート018 >>133 帝国ルート018 >>187
王国ルート019 >>142 帝国ルート019 >>191
王国ルート020 >>144 帝国ルート020 >>193
王国ルート021 >>194 帝国ルート021 >>207
王国ルート022 >>197 帝国ルート022 >>208
王国ルート023 >>200 帝国ルート023 >>209
王国ルート024 >>203 帝国ルート024 >>210
王国ルート025 >>204 帝国ルート025 >>212
王国ルート026 >>214 帝国ルート026 >>232
王国ルート027 >>217 帝国ルート027 >>238
王国ルート028 >>219 帝国ルート028 >>239
王国ルート029 >>223 帝国ルート029 >>246
王国ルート030 >>224 帝国ルート030 >>258
王国ルート031 >>286 帝国ルート031 >>298
王国ルート032 >>287 帝国ルート032 >>304
王国ルート033 >>288 帝国ルート033 >>309
王国ルート034 >>292 帝国ルート034 >>312
王国ルート035 >>295 帝国ルート035 >>314
王国ルート036 >>317 帝国ルート036 >>329
王国ルート037 >>319 帝国ルート037 >>331
王国ルート038 >>321 帝国ルート038 >>334
王国ルート039 >>325 帝国ルート039 >>335
王国ルート040 >>326 帝国ルート040 >>336
王国ルート041 >>340 帝国ルート041 >>372
王国ルート042 >>347 帝国ルート042 >>375
王国ルート043 >>352 帝国ルート043 >>378
王国ルート044 >>353 帝国ルート044 >>382
王国ルート045 >>357 帝国ルート045 >>386
王国ルート046 >>387 帝国ルート046 >>399
王国ルート047 >>390 帝国ルート047 >>402
王国ルート048 >>393 帝国ルート048 >>407
王国ルート049 >>395 帝国ルート049 >>408
王国ルート050 >>398 帝国ルート050 >>409
王国ルート051 >>425 帝国ルート051 >>431
王国ルート052 >>426 帝国ルート052 >>433
王国ルート053 >>428 帝国ルート053 >>434
王国ルート054 >>429 帝国ルート054 >>436
王国ルート055 >>430 帝国ルート055 >>437
王国ルート056 >>442 帝国ルート056 >>450
王国ルート057 >>443 帝国ルート057 >>451
王国ルート058 >>446 帝国ルート058 >>453
王国ルート059 >>447 帝国ルート059 >>454
王国ルート060 >>449 帝国ルート060 >>461
王国ルート061 >>462 帝国ルート061 >>471
王国ルート062 >>465 帝国ルート062 >>472
王国ルート063 >>466 帝国ルート063 >>476
王国ルート064 >>467 帝国ルート064 >>477
王国ルート065 >>468 帝国ルート065 >>480
王国ルート066 >>482 帝国ルート066 >>492
王国ルート067 >>483 帝国ルート067 >>493
王国ルート068 >>487 帝国ルート068 >>495
王国ルート069 >>488 帝国ルート069 >>496
王国ルート070 >>489 帝国ルート070 >>499
王国ルート071 >>504 帝国ルート071 >>516
王国ルート072 >>506 帝国ルート072 >>517
王国ルート073 >>507 帝国ルート073 >>520
王国ルート074 >>509 帝国ルート074 >>521
王国ルート075 >>510 帝国ルート075 >>525
王国ルート076 >>528 帝国ルート076 >>539
王国ルート077 >>533 帝国ルート077 >>543
王国ルート078 >>534 帝国ルート078 >>545
王国ルート079 >>537 帝国ルート079 >>547
王国ルート080 >>538 帝国ルート080 >>548
王国ルート081 >>551 帝国ルート081 >>560
王国ルート082 >>552 帝国ルート082 >>562
王国ルート083 >>553 帝国ルート083 >>563
王国ルート084 >>557 帝国ルート084 >>564
王国ルート085 >>558 帝国ルート085 >>566
王国ルート086 >>571
王国ルート087 >>574
王国ルート088 >>575
王国ルート089 >>578
王国ルート090 >>579
◇カメルリング王国味方
>>2 ルーク 主人公
>>1 ミルフィーユ 発明家・美食家・資産家
>>4 キリエ 牧師・哲学者
>>16 ノイアー 傭兵
>>25 ラグ 執事
>>28 サイト 商人
>>29 リグレット 僧侶
>>39 ツバキ 軍人
>>55 ユニート 魔導師
>>58 ラルス 騎士
>>58 リリー 暗殺者
>>75 ジョレス 傭兵
>>78 フランチェスカ 王女
>>87 ハニー 妖精
>>99 シラン 術士
>>221 カルマ 学者・錬金術師・魔術師
>>289 フランキール 王子
>>440 シュバルツ 海賊
>>457 リレーナ 竜騎士
◆ミカイロウィッチ帝国味方
>>14 エドウィン 主人公
>>6 ヴィトリアル 盗賊
>>11 アーリィ 魔女
>>12 ゼルフ 黒騎士
>>12 リン メイド
>>27 シフォン 貴族騎士
>>30 イヴ 術士
>>37 ウィンデル 大道芸人
>>59 クウヤ 剣士
>>60 ツヴァイ 科学者(薬学)
>>76 ミレア 傭兵
>>78 シェリル 皇女
>>85 ディルム 精霊
>>96 ライヤ 偵察兵
>>98 セイリーン ドッペルゲンガー
>>278 レイ 魔女
>>305 故)フィア 魔女の弟子
>>305 故)キオ 魔女の弟子
◎味方につかない者
>>163 ソーサラー(呼称) 占星術師・幻術師
>>163 スキンヘッドハゲ(呼称) 盗賊
>>227 ヨメナイヤツ アドバイザー
キャラ応募してくださった皆様心よりお礼申し上げます!素敵なキャラをありがとう!!
◇番外編◆
参照四桁祝
・イヌ派ネコ派の王国日常 >>146
・絶対に信じちゃいけない言葉で帝国日常 >>150
・執事採用試験 >>156
・団長の足取り >>157-158>>160
・ある幻術師の思い出 >>162>>164>>170>>173>>175>>176
参照二千祝
・とあるメイドの追走劇 >>248>>254>>257>>260
・傭兵の黒と従者の白 >>263>>264>>269>>272>>274>>280>>281>>282>>283
参照三千&四千祝
・魔法使いの弟子 >>360>>363>>364>>367-368
・帝国サイド盗賊団と加担者でチビキャラ全員集合イラスト >>371
参照4500祝
・王国・番外ルートで抜粋チビキャラ集合イラスト >>404
銀賞&殿堂入り祝
・メイドと騎士と仲介人 >>415>>417-418>>421>>423
参照5000祝
参照6000祝
参照7000祝
金賞祝
参照8000祝
参照9000祝
参照10000祝!
参照11000祝!!
参照12000&13000祝!!!
保留
どんどん保留祝が増えて行っている…本編終わったら一気に大感謝祭とかやりたいなぁ、なんて考えてます
・・・業務連絡・・・
2014の冬の小説大会で銀賞もらえました!ありがとうございます!
2015の夏の小説大会で金賞もらえました!!ありがとうございますっっ!
参照5000祝いと6000祝、7000祝、8000祝9000祝そして10000祝。11000祝はのちほど…ッ!
時間軸まとめ >>234
- さぁ 正義はどっち ? 参照4400ありがとう御座います! ( No.395 )
- 日時: 2014/12/26 12:52
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
049 カメルリング王国ルート
目の前でバランスを崩した人物は、驚いたことに左右の瞳の色が異なったミステリアスな雰囲気漂う不思議な少年だった。
瞬時に二人組の芸人の事がフラッシュバックして、思わず口走った。
「もしかして、今夜の晩餐会に出る二人組の手品師さん?」
するとすぐ、ルークの差し出された手を取ってバランスを取り戻したオッドアイ少年が「そうだけど?」と頷く。
そのオッドアイ少年の背後で、天使のようにきれいな相方として噂されていた美少年がこちらを見て微笑んだ。
その両手には猫と犬のパペットがはめてあり、今は両方ともだらりと足元に向かって下げられている。
俄然彼らに興味があったルークはすぐさま先を続ける。どうやら彼らは王都では数えるほどの規模の大きい薬師の店から出て来たようで、
「薬師の店に行ってたみたいだけど、どこか悪いの?」と声を掛ける。
何やら腕組みをしているオッドアイ少年の代わりにその背後から顔をのぞかせるまばゆいほどの笑顔を持つ美少年が答えた。
「ううん、実を言うと手に入れたいものがあったんです。でもどこにもなくて困っちゃった」
こんな大規模な薬師の店でさえ手に入らないなんて、彼らはいったい何を探しているんだろうと首をひねるルークだったが、ぶつかってしまったお詫びと、彼らに興味津々だったのとで、何を探しているのか尋ねる。
そうすれば、完全にあてにしていないような口調でオッドアイ少年が長い薬品の名前を挙げ連ねていく。
もし一般人だったら目をまん丸くしてひきつった笑みを浮かべていただろう。
しかし数時間とはいえ科学書を必死に読み漁り尚且つ発明家の仮弟子の身分だったルークはあぁそれならと柔和な笑みを浮かべて答える。
「僕についておいでよ。知り合いの発明家はそういう化学薬品も取り扱ってるから」
驚いたような顔を一瞬されたが、オッドアイ少年はすぐさま興味をひかれたように案内してよと少し生意気な口調でルークにせがむ。
遠い実家においてきた弟の事を思い出させるような口調であり、ちょうど背丈も似ていたためルークは慣れたように微笑みながら案内する。
館につけば、ついたで服装と住んでる家が違いすぎるなぁという視線にさらされるも、「ここは後継人代わりの有名な発明家の家だ」と択一説明してやればふぅんと納得される。
弟と同じ年齢のくせにこんな豪華な館を目にしてもあまり興奮して騒がないところを見ると、彼らはうわさに聞くだけの名高い手品師らしい。
そのままミルフィーユの籠る部屋を通り過ぎ、悩ましげな顔を振り切ってたどり着いた実験室兼倉庫。
錬金術師でもあるカルマなら目を輝かせただろう。少し狭めだが、円状の部屋をぐるりと取り囲む高い棚には薬品が詰まっており、部屋の中心には机と炉が設置されている。
ミルフィーユさんも錬金術に手を出していたのかな?と最初にここに来た時はそう思った。
だが現在の彼は発明を手掛け、この実験室は立派ではあるが確実に倉庫になりつつある。
飽きたのだろうか、それとも…。
扉を開けてそんなことを一瞬考えたルークだったが、オッドアイ少年が目を輝かせたのですぐ棚に向かいなあら声を掛ける。
「火薬系に使える薬品以外はあまり手を付けないから、滅多にここには来ないんだ」
言いながら彼らの求める薬品を薬瓶に詰め込み差し出す。すると彼らは結構な値段だというのに、顔色一つ変えずにお金を差し出してくる。
それにびっくりしたが、定価はこれくらいだったよね、というその言葉に本当に彼らは有名な手品師なんだなぁと思い知る。
薬品を化学変化させておく必要があると言い切ったオッドアイ少年に、「じゃあこれを着ていいよ」とミルフィーユが来ていたであろう大きめの白衣を差し出せば、彼は懐かしそうにそれに飛びつき、にやりと笑う。
なんだかこの二人組は癖のある人物らしい。すると行儀よくルークの隣にたたずんでいた美少年が、ルークの服の袖を犬のパペットで銜えて数度引張り気を引いてきた。
見れば猫のパペットをパクパク動かしながら、愛想をふりまきフランチェスカ王女の強すぎる魔力について質問してくる。
「すごい魔法使いなんですって?」という言葉に、ルークは頷いた。
この美少年の背丈が自分の弟に似ていた為、何となく懐かしくなり頬が緩む。
王女の魔力で先日の帝国の刺客が修道院を襲撃した際、王女に太刀打出来なかったことを話してやると、美少年は少し青ざめたように犬のパペットで口元を覆う。
なぜ帝国の刺客だとしっているの、と尋ねられて、ルークは話せるぎりぎりまで教える。
帝国の差し金だと揶揄する情報が伝えられた事を話せば、一瞬だけ美少年の顔に冷酷な色が差したように思えたが、次の瞬間には笑顔になっている。
そして矢継ぎ早に新たな質問をしてきたとき、オッドアイ少年が実験に失敗したのだろうか爆発が起きた。
消火後、帰る間際美少年にまた会えるかと尋ねられ、ルークは頷いた。
- Re: さぁ 正義はどっち ? ( No.396 )
- 日時: 2014/12/26 13:33
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
メルマークさんへ
ウィンデル君が可愛すぎですね!弟にしたいぐらい可愛いです!
- さぁ 正義はどっち ? 参照4400ありがとう御座います! ( No.397 )
- 日時: 2014/12/26 16:48
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
モンブランさんこんばんは!!
ウィンデル君にはまだまだ愛想を振りまくってもらうつもりですw
そのうちあーうるさいとか同行者のツヴァイ君にパペットむしりとられて始終無言なところも見てみたry
コメントありがとうございましたっ!
- さぁ 正義はどっち ? 参照4400ありがとう御座います! ( No.398 )
- 日時: 2014/12/27 03:02
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
050 カメルリング王国ルート
「たぶん今日の晩餐会で会えるんじゃないかな」と二人組に返事して見送ってから数時間は経過しただろうか?
魔導書を膝の上に乗せたまま化学実験室のほこりをかぶった椅子の上でぐるぐるとまた考え事をしていたルークは、古ぼけた鳩時計を見上げてその秒針を凝視した。
全くもって動いていないその時計は朝だか夜だかわからないがちょうど六時で停止している。
この瞬間があの時計みたいに停止すればいいのに…。そんな考えを振り切ってルークはしっかりしろと魔導書に目を戻す。
ぐにゃぐにゃと湾曲する古代の文字たちがルークをからかう様に浮かんでは消えて、その書物に託された物と隠れん坊しているみたいだ。
けれど努力は報われるもので、その呪詛との隠れん坊は最終ページをめくることでやっと終結した。
丸一冊を読み解き終わり、遠い祖先の血縁からたまたまルークに授かった魔力と呪詛とがようやく結びついて体になじむような気がする。
「変な本だね君は。僕の頭の中に全て吸い込まれちゃったみたいだ」
ルークは読み解いたことですっかり変貌した魔導書に呟き掛ける。最初に戻ってページをめくっても、もうすっかり白紙になっている。しかしルークが指先で触れれば、そこからインクが滲み出る様に文字が再び見えてくる。
僕の魔力の中に文字が溶けてしまったのかな。そう文字をなぞったルークは考える。
「次の魔導書も読み込まなきゃ」呟き、ついでにと伸びをしながら固まった肩をほぐして考える。
ついでに、ほんのちょっと、晩餐会に顔をのぞかせよう。芸人の手品を見てみよう。
晩餐会の賑わいっぷりは、開始したての午後7時半ですでに好調だということがわかる程だった。会場は城内だというのに、招待されない一般市民達が王城前まで押しかけ、門番達がそれを押しとどめる。それを横目にルークは城に入り、会場を目指す。途中ルークを一般市民と勘違いしものすごい剣幕で追い出されそうになったが、無事到着すればちょうど手品が披露されているところだった。
広いホールに、玉座が四つ。国王夫妻とフランキール王子が座っており、フランチェスカ王女は姿が見えなかった。
だがそんなこと直ぐに忘れてしまうほど、その見世物は心を奪うものだった。
オッドアイ少年が円形の舞台に美少年を誘い、その周囲に油をまいてにんまりしながら炎を放つ。
炎の輪の中に囚われた美少年。それを息をのみ眺める人々。
美少年が踊りを舞うように人々を魅了しながら炎に手を振るようなしぐさをすると、辺りを取り囲む炎の色が七色へと変化する。
右手を軽く振れば赤い炎が緑へ、青へ、紫へ。そして左手を振れば炎が金色に輝き出し、彼がウウィンクしながら両手を掲げると炎が美しいピンク色へ変貌する。
そのたびに歓声を上げていた人々は、次にオッドアイ少年に注目する。
彼が運んできた大樽をひっくり返すと、中から世にも奇妙な物体が踊りだす。
真紫の大型犬ほどの半透明の物質は、でろでろと動いていたがやがて徐々にオッドアイ少年の後をついていくようにずるずると動き出す。
その不気味な物体の正体が掴めず人々が絶句していると、オッドアイ少年はにやりと微笑む。
あれはいったい何なんだ?あんな生き物見たことがない。そう言った声に、
「コイツはスライム。勿論生きてない。けど動くんだ」と友達でも紹介するように軽く言ってのける。
現にオッドアイ少年が歩けばずるずると後をついてくるその巨大スライムに、人々が息をのむ。中には錬金術で作り出された生命体では?と疑うような掛け声が飛ぶが、オッドアイ少年はにこやかに無視する。そしてそのスライムに炎を鎮火させると、美少年を救い出しお辞儀して見せた。
もっと見たい、そう心から切望したけれど、ルークはその欲求を胸にしまいこみ会場から立ち去る。
最後まで見続けたら牢獄に囚われたラグやミルフィーユに申し訳ないという気持ちが勝り、おまけにフランチェスカ王女が欠席した理由を知り自分も見習わなきゃと思ったからだった。
戦争開始まで一カ月を切る今この時に、めでたいことなど考えられないと自室に籠るフランチェスカ王女は、ユニートやリグ僧侶、キリエ牧師達と共に癒しの呪詛を習得しているという。
「僕も頑張らなきゃ」
聞けばそのほか沢山の知り合いも晩餐会に不参加だった。シランはここしばらくの間忙しいルークの代わりに、ラグの話し相手になることを引き受けてくれ、今晩もラグの側についているという。
ただ錬金術師のカルマは手品を見破ってやろうと意気込んでいる為か、研究室の扉を開いても中は空っぽだった。
さぁやるか!と意気込んで棚から癒しに関する魔導書を引いてしばらくすると、扉の開く音がした。
カルマが帰ってきたのだろう、と振り返らずに静かに薄暗い部屋の一番奥で本の読み時を開始したルークに、聞きなれない声が届く。
「ホントに本ばっかだな。—で、どいつを盗りゃあいいんだ?」
- さぁ 正義はどっち ? 参照4400ありがとう御座います! ( No.399 )
- 日時: 2014/12/27 18:34
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
046 ミカイロウィッチ帝国ルート
晩餐会は今宵七時半より開始される。だが開始の二時間前にはすでに、会場に押し掛ける招待客であふれていた。
登場と同時に歓声を浴びて城内部へと導かれていく劇団組の二人は、溢れるばかりの人々の波に使用人に化けた仲間を見つけ、ちらりと目で合図する。彼らは人の良さそうな笑みを口元に浮かべ、微笑むように目を細める。
うまくやれよな、そんな無言の視線を交し合った後、二人は拍手喝采の中をすました顔で歩いていく。
晩餐会の催されたホールは広く、高い天井と豪華なステンドグラスが張り込まれた大きめな窓が印象的な所だ。
飴色の分厚い窓からは、入れないというのに淡い期待を抱いて群がる市民の姿と、それを押しとどめる騎士たちの攻防が見下ろせる。
国王の開会の挨拶中、ウィンデルは目を人々の波の中に巡らせていた。
先程の発明家の居候という灰髪童顔少年を見つけることが出来れば、王女を攫った後わざわざ会いに行かなくとも今ここで情報収集ができる。
しかしながら、彼の姿は見つけることが出来ない。ま、いいかと心の中で独り言をいうウィンデル。目当ての王女は何故か出席を拒んだのだが、こちらにとって都合がよい。
本当は王女に手品に参加してもらい、アーリィ・メルキオーゼの使い魔であるドッペルゲンガーとすり替え、幻術で精神を弱らせて拉致する予定だったのだが、不審がられたり申し出が却下された場合面倒事になる。
その点部屋で大人しくしてもらった方が襲いやすい。
「—では皆の者、今宵の晩餐会を存分に楽しむがよい」
国王の挨拶が終わり、王の側近がウィンデルとツヴァイに手品を披露するように声を掛ける。
ワルツを踊るような円形の何もない空間に二人で進み出ると、ウィンデルは思い切り愛想のよい笑顔を存分にふりまく。
「さぁ、それじゃあ皆様!お楽しみください」
舞台に炎が放たれれば、驚いたように人々が目を見張る。炎の渦に囚われたウィンデルが天使の笑みで両手を振り上げれば、その炎の色が七色へと移り変わる。
一体この中で何人が僕の手品のタネをわかってるんだろう、とツヴァイはマッチ片手に辺りに目を向ける。
特定の金属を液体にして炎に投げ込めば、炎色反応が起こり、炎の色が変わる。
そして目の前でぶちまける樽の中身、巨大な紫のスライムには鉄粉が交ぜてあるから、ボクの服の中にある磁石に反応して生き物のようにあとをついてくる。
適当に観客の中にいる人を選び出し水と酒をぶっかけて燃やす手品は、炎のすさまじい熱エネルギーが水を蒸発させる為にほとんど使われて、人の皮膚を焼くほどのエネルギーが無いから熱くないのだ。
その他にも長年使用して錆びた鎧を酒を使って錆を消し去り新品同様にした。
なかでも観客の反応がおかしかったのが、鉄をも溶かす威力のある酸と触れれば皮膚を溶かす水酸化物系の酸を混ぜて、飲んだ時だった。
それがどれほど危険かを見せつけた後に、二つを混ぜてコップに注ぎ、青ざめるウィンデルと共に乾杯して飲み干すと、悲鳴がいくつも上がり、卒倒しかけたものもいた。
そのためか、衝撃的な演目の合間合間に、ウィンデルがぼやくようにツヴァイに呟く。
「危ない橋は渡りたくないよ。特にきみとはね」
まだまだこれからなんだけど、と言えばげんなりするウィンデルに、ツヴァイはにやりと微笑んだ。
そんな猟奇的な演目の裏で、王城の召使いの格好をした5人がそれぞれ行動していた。
不参加の王女と師匠と兄弟弟子を探す幻術師兄妹とアーリィの三人組、王城にあるという魔術研究室より魔術に関するものを強奪するヴィトリアルとリンの二人組。ライヤは偵察を行う身の上から、危険な表舞台には姿を表わせず王女拉致後の脱出ルート、馬車、農民の服を調達している頃だ。
「いーい?王女を捕まえたら黄色の花火。撤収の合図は真っ赤な花火だからね!」
「念のため、王女をとっ捕まえてから一時間以内には撤収するからな?撤収花火を確認したらすぐ脱出しろよ」
別れる間際お互いに念を押しあい、イヴとクウヤが真剣な面持ちで頷く。
イヴとクウヤにとってはこの作戦は4年もの間引き裂かれた師匠と兄弟弟子との再開の可能性を示唆するものであり、彼らの顔には緊張の色が見える。
「よし、それじゃ解散。うまくやれよな」
トレードマークのバンダナを解き落ちてくる髪をかき上げながら団長が言えば、それぞれ何事もなかったように、すれ違うように歩き出しながら解散した。
「ライヤさんの調査によるとここらしいです。魔術の研究室というのは…」
王国のメイド服に身を包むリンが小さな地図から目を上げて言えば、使用人服を身にまとうヴィトリアルがその扉をゆっくりと開ける。
なかは薄暗く、四角く切り取ったようなこの入口の輪郭だけが光源らしい。
四方を囲う本棚に目をやり、本嫌いなヴィトリアルはあきれたようにつぶやく。
「ホントに本ばっかだな。で、どいつを盗りゃあいいんだ?」
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