複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- さぁ 正義はどっち ? 参照13600ありがとう御座います!
- 日時: 2016/08/23 00:57
- 名前: メルマーク (ID: KzMBmi6F)
戦争と平和は正反対のものと考える人が多い世の中
それは本当なの?正義って何?悪って何?
答えが見つからないなら探せば良い。
多分異色な今までにない、正義についてのお話し。
答えはありませんが、きっと終わった後 何が正解か思い浮かぶはず。
時代は古きよき時代、中世頃にしようかと
オリキャラ募集一応締め切らせていただきます!
終章にもうじき突入予定なので‥・もしかしたらまた募集するかも・・・?
名前
性別
年齢
容姿
A国B国どちらの味方?(国名は長いので省略
性格
武器
サンボイ「」
職業は?下から選択下になければ新職業を書いてくれるとうれしいです
騎士 傭兵 盗賊 貴族 海賊 海軍 王室(王族をのぞく外交官・メイド・執事・王族のいとこ)関連
占い師 科学者(錬金術師) 芸術家 哲学者 商人 国民 旅人 魔法使い など
武器や変わった特徴などの要望も即採用です
結構な確率で”死ぬケース”もあるのでご了承ください!!
◇目次◆
王国ルート001 >>5 帝国ルート001 >>43
王国ルート002 >>15 帝国ルート002 >>49
王国ルート003 >>20 帝国ルート003 >>50
王国ルート004 >>23 帝国ルート004 >>54
王国ルート005 >>31 帝国ルート005 >>63
王国ルート006 >>66 帝国ルート006 >>81
王国ルート007 >>67 帝国ルート007 >>83
王国ルート008 >>68 帝国ルート008 >>90
王国ルート009 >>71 帝国ルート009 >>91
王国ルート010 >>74 帝国ルート010 >>93
王国ルート011 >>101 帝国ルート011 >>114
王国ルート012 >>103 帝国ルート012 >>117
王国ルート013 >>106 帝国ルート013 >>118
王国ルート014 >>108 帝国ルート014 >>120
王国ルート015 >>110 帝国ルート015 >>122
王国ルート016 >>123 帝国ルート016 >>183
王国ルート017 >>127 帝国ルート017 >>184
王国ルート018 >>133 帝国ルート018 >>187
王国ルート019 >>142 帝国ルート019 >>191
王国ルート020 >>144 帝国ルート020 >>193
王国ルート021 >>194 帝国ルート021 >>207
王国ルート022 >>197 帝国ルート022 >>208
王国ルート023 >>200 帝国ルート023 >>209
王国ルート024 >>203 帝国ルート024 >>210
王国ルート025 >>204 帝国ルート025 >>212
王国ルート026 >>214 帝国ルート026 >>232
王国ルート027 >>217 帝国ルート027 >>238
王国ルート028 >>219 帝国ルート028 >>239
王国ルート029 >>223 帝国ルート029 >>246
王国ルート030 >>224 帝国ルート030 >>258
王国ルート031 >>286 帝国ルート031 >>298
王国ルート032 >>287 帝国ルート032 >>304
王国ルート033 >>288 帝国ルート033 >>309
王国ルート034 >>292 帝国ルート034 >>312
王国ルート035 >>295 帝国ルート035 >>314
王国ルート036 >>317 帝国ルート036 >>329
王国ルート037 >>319 帝国ルート037 >>331
王国ルート038 >>321 帝国ルート038 >>334
王国ルート039 >>325 帝国ルート039 >>335
王国ルート040 >>326 帝国ルート040 >>336
王国ルート041 >>340 帝国ルート041 >>372
王国ルート042 >>347 帝国ルート042 >>375
王国ルート043 >>352 帝国ルート043 >>378
王国ルート044 >>353 帝国ルート044 >>382
王国ルート045 >>357 帝国ルート045 >>386
王国ルート046 >>387 帝国ルート046 >>399
王国ルート047 >>390 帝国ルート047 >>402
王国ルート048 >>393 帝国ルート048 >>407
王国ルート049 >>395 帝国ルート049 >>408
王国ルート050 >>398 帝国ルート050 >>409
王国ルート051 >>425 帝国ルート051 >>431
王国ルート052 >>426 帝国ルート052 >>433
王国ルート053 >>428 帝国ルート053 >>434
王国ルート054 >>429 帝国ルート054 >>436
王国ルート055 >>430 帝国ルート055 >>437
王国ルート056 >>442 帝国ルート056 >>450
王国ルート057 >>443 帝国ルート057 >>451
王国ルート058 >>446 帝国ルート058 >>453
王国ルート059 >>447 帝国ルート059 >>454
王国ルート060 >>449 帝国ルート060 >>461
王国ルート061 >>462 帝国ルート061 >>471
王国ルート062 >>465 帝国ルート062 >>472
王国ルート063 >>466 帝国ルート063 >>476
王国ルート064 >>467 帝国ルート064 >>477
王国ルート065 >>468 帝国ルート065 >>480
王国ルート066 >>482 帝国ルート066 >>492
王国ルート067 >>483 帝国ルート067 >>493
王国ルート068 >>487 帝国ルート068 >>495
王国ルート069 >>488 帝国ルート069 >>496
王国ルート070 >>489 帝国ルート070 >>499
王国ルート071 >>504 帝国ルート071 >>516
王国ルート072 >>506 帝国ルート072 >>517
王国ルート073 >>507 帝国ルート073 >>520
王国ルート074 >>509 帝国ルート074 >>521
王国ルート075 >>510 帝国ルート075 >>525
王国ルート076 >>528 帝国ルート076 >>539
王国ルート077 >>533 帝国ルート077 >>543
王国ルート078 >>534 帝国ルート078 >>545
王国ルート079 >>537 帝国ルート079 >>547
王国ルート080 >>538 帝国ルート080 >>548
王国ルート081 >>551 帝国ルート081 >>560
王国ルート082 >>552 帝国ルート082 >>562
王国ルート083 >>553 帝国ルート083 >>563
王国ルート084 >>557 帝国ルート084 >>564
王国ルート085 >>558 帝国ルート085 >>566
王国ルート086 >>571
王国ルート087 >>574
王国ルート088 >>575
王国ルート089 >>578
王国ルート090 >>579
◇カメルリング王国味方
>>2 ルーク 主人公
>>1 ミルフィーユ 発明家・美食家・資産家
>>4 キリエ 牧師・哲学者
>>16 ノイアー 傭兵
>>25 ラグ 執事
>>28 サイト 商人
>>29 リグレット 僧侶
>>39 ツバキ 軍人
>>55 ユニート 魔導師
>>58 ラルス 騎士
>>58 リリー 暗殺者
>>75 ジョレス 傭兵
>>78 フランチェスカ 王女
>>87 ハニー 妖精
>>99 シラン 術士
>>221 カルマ 学者・錬金術師・魔術師
>>289 フランキール 王子
>>440 シュバルツ 海賊
>>457 リレーナ 竜騎士
◆ミカイロウィッチ帝国味方
>>14 エドウィン 主人公
>>6 ヴィトリアル 盗賊
>>11 アーリィ 魔女
>>12 ゼルフ 黒騎士
>>12 リン メイド
>>27 シフォン 貴族騎士
>>30 イヴ 術士
>>37 ウィンデル 大道芸人
>>59 クウヤ 剣士
>>60 ツヴァイ 科学者(薬学)
>>76 ミレア 傭兵
>>78 シェリル 皇女
>>85 ディルム 精霊
>>96 ライヤ 偵察兵
>>98 セイリーン ドッペルゲンガー
>>278 レイ 魔女
>>305 故)フィア 魔女の弟子
>>305 故)キオ 魔女の弟子
◎味方につかない者
>>163 ソーサラー(呼称) 占星術師・幻術師
>>163 スキンヘッドハゲ(呼称) 盗賊
>>227 ヨメナイヤツ アドバイザー
キャラ応募してくださった皆様心よりお礼申し上げます!素敵なキャラをありがとう!!
◇番外編◆
参照四桁祝
・イヌ派ネコ派の王国日常 >>146
・絶対に信じちゃいけない言葉で帝国日常 >>150
・執事採用試験 >>156
・団長の足取り >>157-158>>160
・ある幻術師の思い出 >>162>>164>>170>>173>>175>>176
参照二千祝
・とあるメイドの追走劇 >>248>>254>>257>>260
・傭兵の黒と従者の白 >>263>>264>>269>>272>>274>>280>>281>>282>>283
参照三千&四千祝
・魔法使いの弟子 >>360>>363>>364>>367-368
・帝国サイド盗賊団と加担者でチビキャラ全員集合イラスト >>371
参照4500祝
・王国・番外ルートで抜粋チビキャラ集合イラスト >>404
銀賞&殿堂入り祝
・メイドと騎士と仲介人 >>415>>417-418>>421>>423
参照5000祝
参照6000祝
参照7000祝
金賞祝
参照8000祝
参照9000祝
参照10000祝!
参照11000祝!!
参照12000&13000祝!!!
保留
どんどん保留祝が増えて行っている…本編終わったら一気に大感謝祭とかやりたいなぁ、なんて考えてます
・・・業務連絡・・・
2014の冬の小説大会で銀賞もらえました!ありがとうございます!
2015の夏の小説大会で金賞もらえました!!ありがとうございますっっ!
参照5000祝いと6000祝、7000祝、8000祝9000祝そして10000祝。11000祝はのちほど…ッ!
時間軸まとめ >>234
- さぁ 正義はどっち ? 参照4500ありがとう御座います! ( No.406 )
- 日時: 2015/01/02 21:08
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
コッコさんあけましておめでとうございますっ
こちらこそよろしくお願い致します!
- さぁ 正義はどっち ? 参照4500ありがとう御座います! ( No.407 )
- 日時: 2015/01/03 04:29
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
048 ミカイロウィッチ帝国ルート
魔導書を抱えてこちらを見つめてくるその少年は、魔法で攻撃してきたにもかかわらずあまりにも無防備で幼く見える。
実はリンと同い年であるが、リンの方が背が高くその童顔と相まってこれからヴィトリアルと共に少年を痛めつけなくてはならない事を躊躇させる。
(気絶させてしまえば、痛めつけずに済む…。これもお嬢様のため)
リンは握りしめたマインゴーシュを軽く振りながら、少年の隙を窺うように間合いを詰めるヴィトリアルに習う。
魔法使いと戦うとなると、剣攻撃者は接近戦に持ち込むしかない。とにかく魔法を発動させなければいいのだ。
「おいチビ、お前は魔導士か?魔法使いか?ん、まぁ…喉切っちまえば魔導士でも魔法使いでも同じか?」
小脇に抱えていた分厚い書物を足元にばらばらと落としたヴィトリアルが、片手剣をぶらぶらさせながら場違いのように陽気に尋ねる。
急な問いかけに少年は一瞬なんでこんな時にこの人こんな質問するんだろ?と戸惑いの色を見せたが、黙り込む。
ますます警戒の色を強めた少年は、後ずさりしながら本をさらにきつく抱きしめた。
そして片手でベルトに触れながら、バチバチと音を発しながら何やら早口で何かを唱える。
だが唱え終わる前に、ぶった切るようなヴィトリアルの片手剣の攻撃に身をすくませたように目を見開き、あわてて後方へ逃げるように転ぶ。
だが本を抱えてうずくまり、殺人犯でも見るような目つきで見上げる少年に一撃加えようと剣を翳すその瞬間、思わぬ反撃を食らった。
少年が所持していた分厚い本を、ヴィトリアル目掛けてぶん投げたのだ。
それを体をひねって避けた隙を見計らい、少年が何か叫び声をあげる。
呪詛か何かを唱えようとしたのだろうか、しかし寸でのところでリンが少年を押し倒し、その口を平手打ちの如く思い切り手でふさぐ。
そして後頭部をマインゴーシュの柄でぶん殴ろうと振り上げ、はっと驚きで目を見開いた。
少年が明らかに目の色を変えて、どこから取り出したのか分からない小型の包丁を躊躇うことなくリンの胴体ど真ん中へ突き立てようと振りかぶる。
だがヴィトリアルがリンの襟首を引っつかみ、後ろへ思いきり引いて少年から引き離し、的を失った包丁は床へと突き立てられる。
バチバチ電光がはじける包丁が床を焼き、焦げ臭いにおいが辺りに立ち込める。
「妙な包丁ですね…あれってもしかして魔法剣ですか?」
少年が包丁を床から引き抜き、据わった目でこちらを見る。その光景を警戒しながら見たリンは、その特徴的な電光を発する包丁と寡黙になった少年を見てゼルフに聞いた話を思い出す。
エディを背後から刺して麻痺させた少年。魔法剣を二つ所持していたという。
たぶんな、と頷く言葉にリンも目の色を変える。
「お嬢様を刺した少年が、まさか貴方だったとは」
もう手加減は無しです、という口調で吐き捨てるようにリンが目に怒りを灯して言えば、少年は確信したように目を細める。
心なしか先程より少し大人びたように見える。
「やっぱり、帝国の手先だったんだ…」そうつぶやいた少年はパシパシと音を立てる包丁をゆっくり構える。
迎え撃つようにリンが仁王立ちし、素早く絨毯を蹴り上げ突進する。
包丁のひと振りを避け、ツインテールを揺らしながら少年の腹に膝蹴りを一撃食らわせる。
ぐっと短い悲鳴を上げた少年は、だが素早く口を動かして両手でリンに掴み掛る。
その瞬間上半身に凄まじい衝撃が走り、一瞬思考も何もかも停止する。
声も何も出ない状態で電気が体中を走る感覚に息を呑んでいると、分厚い魔導書が少年の頭目掛けていくつも投げられ、少年が一冊の角をもろに眉間に受けてリンから手を放す。
「電気系の魔導士ってのは厄介だな。途中で切りかかればこっちまで感電だからな」
言いながらも角が尖っている魔導書をあえて選び、ばしばしと少年にぶん投げながらヴィトリアルが面倒臭そうに音を上げる。
「っ!」
仕返しとばかりに本を投げられ、身を縮める少年は包丁をぐっと握りしめ反撃の瞬間を狙う様に部屋の奥へと後退していく。
リンが感電のショックから回復し、ふらつきながら立ち上がり傾いで棚の外れた木枠を掴み上げ、鈍器のように構える。
「それでも、すぐに兵士たちに連絡されては困りますから…倒さなくちゃ」
片手に尖った角の魔導書、片手に木の板を構えた二人組に挟まれ、少年はさらに後退していく。
魔導書が投げられると、少年は本をそっと蹴って更に部屋の隅へ追いやっていく。
その様子をじっと見ていたヴィトリアルは、少年の行動の意味がただ単に本の攻撃を防ぐためだけでは無いことに気付いてにやりと笑う。
「なんかおかしいと思ったら、そういう事か。魔法が使える癖に広範囲攻撃してこないのは、この魔導書も一緒に黒焦げになっちまうからか」
言うなり魔導書を抱えてその数多のページを掴み、「貴重な魔導書を破られたくないなら降参しな」と笑った。
- さぁ 正義はどっち ? 参照4500ありがとう御座います! ( No.408 )
- 日時: 2015/01/05 22:20
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
049 ミカイロウィッチ帝国ルート
「ここね」
城の最上階であり最南端に位置する日当りのいい廊下を進めば、大きな両開きの扉が見えてくる。
T字に伸びた廊下には赤い絨毯が流れ、たかが廊下だというのにやたら凝ったデザインの紋章が柱や淡い色のステンドグラスに目立つ。
おそらくカメルリング王家の紋章なのだろう。
「ライヤの地図によればここが王女フランチェスカの部屋で、反対側が王子の部屋らしいわね」
地図をたたみながらアーリィが準備は良い?と言えば、イヴとクウヤは頷き合う。
「ここでミスする訳にはいかないんだ。まだシランと師匠を探せてないからな」
「見つかるよね?」というイヴの小声に、クウヤは力強くうなづきながら扉を三度ノックした。
どうぞ、という柔らかな声に導かれて扉を開けると、そこは風のよく抜ける美しい部屋だった。
全体的に白く、バルコニーと部屋とを仕切って風と踊るレースの長いカーテンがなびく日当りのいい部屋には4人の人物がいた。
皆床にしゃがみ込んでおり、牧師と服装からは職業が判別できない者に囲まれて王女がこちらを不思議そうに見つめている。
扉から彼らまでの距離は結構遠いが、彼らが一冊の大きな書物を囲んでいる様子がよく見える。
「どうなさったのですか?」
居住まいを少し正しながら王女が微笑みを讃えながら言えば、イヴとクウヤは同時に口を開く。
「 カプリコルン 」「 サギッタリアス 」
その言葉に彼らが眉根を寄せる頃にはもうそれぞれの部屋が開き、王女を除く3人の男—牧師と、三つ編みを銀髪にした男と手品師のような紫の服の眼鏡をかけた男—は五感覚を見えない部屋に閉じ込められ、驚いたように辺りに目を向ける。
彼らの視界にはそれぞれ何処か別の場所が広がり、クウヤかイヴが部屋を閉じない限りそこから抜け出すことは出来ない。仮に蹴飛ばされたり声を掛けられたりしたとしても、五感がすべて閉じ込められているために全く気付くことはない。
一方で王女に掛けられた「 カプリコルン 」では、王女の心の中の野望が彼女自身を捕え、彼女は慌てふためくように辺りを見回す3人の男に囲まれながら安堵に満ちた表情で床に膝をつく。
両手を組み合わせて涙目で遠くを見つめ、もう何も心配する出来事は起きないというような表情で彼女は海のように深い色の瞳をそっと閉じる。
涙の粒が柔らかな頬から転がり落ちると、イヴとクウヤの後から扉を開けて入ってきたアーリィが、後はアタシの仕事ね!とピンクの杖を振り上げる。
レースのカーテンからそよぐ風を受けて翻るゴシックロリータ服が白を基調とする部屋でやけに目立つ。
「『ヴェニーテ』!」その彼女が声高らかに唱えれば、幸福顔で涙を流す王女の前に真黒に淡くにじむ魔方陣が出現する。複雑な輪と文字がぐるぐると回転するその中へ、まるで手招きするように手を翳しアーリィは微笑んだ。
「おいでなさい、セイリーン!」
言われればすぐ、影のようにじんわりとしたシルエットが浮かび上がる。
それは身にまとう服のシルエットが少し異なっているだけで、召喚者のアーリィの影そのものに見える。
「へえ…これがドッペルゲンガーか」
表情さえ見て取れないその小柄なシルエットをまじまじと見つめる幻術師兄妹に、アーリィは得意げにほほ笑んでから命令に映る。
「そこのフランチェスカ・ギミナー・カメルリングに化けなさい」
「オッケィ」言われてすぐシルエットがはしゃいだように返答し、徐々に影のように透き通る体が王女の体へと変貌していく。
長くとぐろを巻く薄茶色の髪が床にこぼれれば、そこにはアーリィと目線を合わせて膝立ちする馬号事なき王女が居た。
少し異なると言われれば、その可憐な顔に浮かぶ笑みがどこか飢えたような人恋しさに見える事だけだった。
「完璧でしょ?ねぇ完璧でしょっ?」
おぉとその変身ぶりを見ていた兄妹が関心の声を上げれば、ドッペルゲンガーであるセイリーンはニヤッと笑ってアーリィに顔を寄せ、しつこく問いかける。
それをあーはいはい、と慣れた手つきであしらうとアーリィは人差し指をセイリーンの鼻先に突き付けて一気にしゃべりだす。
これ以上構ってらんないわという態度なのだが、セイリーンはニコニコしながら見つめ返す。
「アンタは王女で、兄と国王夫妻と共にこの城で暮らしてる。平和主義者で強力な攻撃魔法と魔導剣士の素質を持ってるの。属性は雷」
すると王女の可憐な顔で笑みを浮かべていたセイリーンが不満そうにつぶやく。
「今回は爆弾で暴れられないの?」
「アンタは強烈な平和主義者なんだからね?」そのぼやきに念を押すようにアーリィが口調を強める。
「それとここに転がってる男三人組はアンタの付き人で、その銀髪三つ編み男ならボコボコにしてもいいわよ?とにかく最低でもアタシ達が樹海につくまでの数日間は王女の不在がばれないようにして欲しいのよ」
いいわね?と強く言うと、セイリーンは合点と微笑んだ。
- さぁ 正義はどっち ? 参照4600ありがとう御座います! ( No.409 )
- 日時: 2015/01/07 22:20
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
050 ミカイロウィッチ帝国ルート
王女に化けたセイリーンに諸注意を施すアーリィに、幻術師兄妹はそわそわしながら扉へと後ずさりながら声を掛ける。
「それじゃあ俺達は師匠とシランを—」既にノブに手をかけている兄妹を振り返りながら、最後まで言わせずにアーリィは頷く。
「あぁ、いってらっしゃい。今から一時間後、必ず来んのよ?」
だが返事はすでになく、視界がとらえられたのは半開きのドアが風に揺れてわずかに動いているだけだった。
彼らは彼らなりに、大切な人を救えるかもしれないのだ。以前いた大切な二人組の事を思い出し、アーリィは無表情のまま揺れる扉を凝視する。
アタシは救えなかったけれど、あの兄妹ならば例え敵にわたっていたとしても引きずり回してでも連れ帰るだろう。
「ねぇねぇ?何してればいいの?」するとセイリーンが、神妙な面持ちのアーリィの気を引こうと袖のフリルを引っ張る。
セイリーンは人好きで人恋しい余り好きになれば痛めつけてでも思いに堪えて貰おうとする性質のため、このまま黙ったままでいるのは危険である。
すでに今にも噛み付いてきそうな飢えた目でこちらを見つめる彼女に、アーリィはバルコニーに歩きながら声を掛ける。
「そうね、アタシはまだやることがあるから…大人しく座っていなさい」
言うなり、白いレースのカーテンの向こう、ツヴァイが制作しておいた人の拳程度の火薬玉を放り投げ、それに火を放つ。
落下して見えなくなったその瞬間、眩いほどの黄色の花火がいくつも空を彩り、城の前でまだ押し問答していた一般人が嬉しそうに空を指差して歓声を上げる。
その声をどこか遠くに聞きながら、アーリィは花火を黙って見守った。
「兄さん、あと一時間しかないよ…」
二人して廊下を走り、血眼になって首を巡らせる兄妹は、人々の歓声と外より聞こえてくる花火の音にぐっと唇をかむ。
この広い城の中からたった二人の人物を探さなければならない中で、一時間というのは余りにも短い物だった。
「くそ、どこにいるんだ…!」
ライヤの描いた地図は幻術師兄妹も所持していたが、描かれた部屋は余りにも多すぎて、二人で手分けしたところで見回りきることなど到底出来やしない。
「なんでもいい、二人を探そう!」悲痛な顔をして頷き合った兄妹は、まるで迷子の子どもが親を探すように、手をつないで走り出した。
訓練場、礼拝堂、騎士たちの間、小間使いたちの間、客室、食堂、外庭と、小一時間でよくも回りきれたと言えるほどさんざん走り回り、階段を駆けあがるのだが、二人の大切な人物は見つからない。
走り回る二人を怪訝な顔をしてみるメイドや騎士たちがいたが、二人は気にしないで休まずに移動し続ける。
一度は危険を承知で小間使いの何人かに「シラン様とソーサラー様をみかけなかったか」と尋ねて回ったが、下っ端の小間使いはその所把握してい無いようで、騎士の何人かに尋ねたところ「お前達小間使いが知る必要はない」とあっさりと断られてしまった。
刻々と過ぎる時間にあせりにあせっていらだちも覚えていたクウヤは殴り掛りそうになるが、堪える。
イヴも今日だけはその優しげな瞳に鋭さを宿し、無碍なあしらい方をする騎士たちに殺気立っているように見える。
「どうすればシランやお師匠様に気付いてもらえるのかな」
壁にかかる大時計から目をそらし、イヴは兄を見上げる。彼らと兄妹をつなぐものはもう、星の幻術しかなかった。
奇跡的にリンクしているとすれば、シランもイヴもクウヤもそれぞれを偲んで小さなマスコットを作り、それを大切に所持しているのだが…。
目の前に居なければ確認できない点では同じである。
「だって、早くしないと—…」
イヴの悲痛な声に、非常な鐘の音が重なり響き渡る。
はっと後ろを振り返れば、美しい装飾のされた大時計が鐘の音を打ち鳴らしている。
その文字盤に並ぶ数字は、ちょうど、あれから一時間が経過したことを告げている。
「まっ—」
まだ見つかってないのに!とイヴが叫ぶ寸前、再び花火の腹に沈むような音が連発で聞こえてくる。
窓の外を見なくても分かる、退却を命じる赤い花火が夜空を彩っているに違いない。
タイムリミットだ。俺たちは見つけられなかった。
絶望的な顔でイヴがクウヤを見上げれば、彼女の兄は感情の消えた瞳でゆっくりとイヴを見下ろした。
参照4600ありがとうございます!!
この物語で断トツで不憫ルートを突っ走っている幻術師達…不憫な第二位は誰なんだろうか?
そしてようやくセイリーンちゃんを本編で出せました!あと一人の登場で、貰ったオリキャラたち全員出演ということに!
- さぁ 正義はどっち ? 参照4600ありがとう御座います! ( No.410 )
- 日時: 2015/01/08 20:51
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: Cji7ViEM)
えー…と、衝撃の事実を知ったので、ちょっと報告をば‥・
なんと、この小説が先の冬の小説大会2014複雑ファジー部門で銀賞に入っていたようです、はい…
今さっき知って驚愕しすぎてまだ理解できてないんですけども(なんか宇宙人を目撃したような感じがする).
え?みまちがいじゃないよなって感じで3回ほど行っては戻ってを繰り返して確認してた←
とにかく!ありがとうございます!!
まだ実感わかないんですが、これからも皆様のオリキャラを愛でながら最後まで書いていきたいと思います!
ありがとうございます、どうぞ終わりまでお付き合いください!
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