複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- さぁ 正義はどっち ? 参照13600ありがとう御座います!
- 日時: 2016/08/23 00:57
- 名前: メルマーク (ID: KzMBmi6F)
戦争と平和は正反対のものと考える人が多い世の中
それは本当なの?正義って何?悪って何?
答えが見つからないなら探せば良い。
多分異色な今までにない、正義についてのお話し。
答えはありませんが、きっと終わった後 何が正解か思い浮かぶはず。
時代は古きよき時代、中世頃にしようかと
オリキャラ募集一応締め切らせていただきます!
終章にもうじき突入予定なので‥・もしかしたらまた募集するかも・・・?
名前
性別
年齢
容姿
A国B国どちらの味方?(国名は長いので省略
性格
武器
サンボイ「」
職業は?下から選択下になければ新職業を書いてくれるとうれしいです
騎士 傭兵 盗賊 貴族 海賊 海軍 王室(王族をのぞく外交官・メイド・執事・王族のいとこ)関連
占い師 科学者(錬金術師) 芸術家 哲学者 商人 国民 旅人 魔法使い など
武器や変わった特徴などの要望も即採用です
結構な確率で”死ぬケース”もあるのでご了承ください!!
◇目次◆
王国ルート001 >>5 帝国ルート001 >>43
王国ルート002 >>15 帝国ルート002 >>49
王国ルート003 >>20 帝国ルート003 >>50
王国ルート004 >>23 帝国ルート004 >>54
王国ルート005 >>31 帝国ルート005 >>63
王国ルート006 >>66 帝国ルート006 >>81
王国ルート007 >>67 帝国ルート007 >>83
王国ルート008 >>68 帝国ルート008 >>90
王国ルート009 >>71 帝国ルート009 >>91
王国ルート010 >>74 帝国ルート010 >>93
王国ルート011 >>101 帝国ルート011 >>114
王国ルート012 >>103 帝国ルート012 >>117
王国ルート013 >>106 帝国ルート013 >>118
王国ルート014 >>108 帝国ルート014 >>120
王国ルート015 >>110 帝国ルート015 >>122
王国ルート016 >>123 帝国ルート016 >>183
王国ルート017 >>127 帝国ルート017 >>184
王国ルート018 >>133 帝国ルート018 >>187
王国ルート019 >>142 帝国ルート019 >>191
王国ルート020 >>144 帝国ルート020 >>193
王国ルート021 >>194 帝国ルート021 >>207
王国ルート022 >>197 帝国ルート022 >>208
王国ルート023 >>200 帝国ルート023 >>209
王国ルート024 >>203 帝国ルート024 >>210
王国ルート025 >>204 帝国ルート025 >>212
王国ルート026 >>214 帝国ルート026 >>232
王国ルート027 >>217 帝国ルート027 >>238
王国ルート028 >>219 帝国ルート028 >>239
王国ルート029 >>223 帝国ルート029 >>246
王国ルート030 >>224 帝国ルート030 >>258
王国ルート031 >>286 帝国ルート031 >>298
王国ルート032 >>287 帝国ルート032 >>304
王国ルート033 >>288 帝国ルート033 >>309
王国ルート034 >>292 帝国ルート034 >>312
王国ルート035 >>295 帝国ルート035 >>314
王国ルート036 >>317 帝国ルート036 >>329
王国ルート037 >>319 帝国ルート037 >>331
王国ルート038 >>321 帝国ルート038 >>334
王国ルート039 >>325 帝国ルート039 >>335
王国ルート040 >>326 帝国ルート040 >>336
王国ルート041 >>340 帝国ルート041 >>372
王国ルート042 >>347 帝国ルート042 >>375
王国ルート043 >>352 帝国ルート043 >>378
王国ルート044 >>353 帝国ルート044 >>382
王国ルート045 >>357 帝国ルート045 >>386
王国ルート046 >>387 帝国ルート046 >>399
王国ルート047 >>390 帝国ルート047 >>402
王国ルート048 >>393 帝国ルート048 >>407
王国ルート049 >>395 帝国ルート049 >>408
王国ルート050 >>398 帝国ルート050 >>409
王国ルート051 >>425 帝国ルート051 >>431
王国ルート052 >>426 帝国ルート052 >>433
王国ルート053 >>428 帝国ルート053 >>434
王国ルート054 >>429 帝国ルート054 >>436
王国ルート055 >>430 帝国ルート055 >>437
王国ルート056 >>442 帝国ルート056 >>450
王国ルート057 >>443 帝国ルート057 >>451
王国ルート058 >>446 帝国ルート058 >>453
王国ルート059 >>447 帝国ルート059 >>454
王国ルート060 >>449 帝国ルート060 >>461
王国ルート061 >>462 帝国ルート061 >>471
王国ルート062 >>465 帝国ルート062 >>472
王国ルート063 >>466 帝国ルート063 >>476
王国ルート064 >>467 帝国ルート064 >>477
王国ルート065 >>468 帝国ルート065 >>480
王国ルート066 >>482 帝国ルート066 >>492
王国ルート067 >>483 帝国ルート067 >>493
王国ルート068 >>487 帝国ルート068 >>495
王国ルート069 >>488 帝国ルート069 >>496
王国ルート070 >>489 帝国ルート070 >>499
王国ルート071 >>504 帝国ルート071 >>516
王国ルート072 >>506 帝国ルート072 >>517
王国ルート073 >>507 帝国ルート073 >>520
王国ルート074 >>509 帝国ルート074 >>521
王国ルート075 >>510 帝国ルート075 >>525
王国ルート076 >>528 帝国ルート076 >>539
王国ルート077 >>533 帝国ルート077 >>543
王国ルート078 >>534 帝国ルート078 >>545
王国ルート079 >>537 帝国ルート079 >>547
王国ルート080 >>538 帝国ルート080 >>548
王国ルート081 >>551 帝国ルート081 >>560
王国ルート082 >>552 帝国ルート082 >>562
王国ルート083 >>553 帝国ルート083 >>563
王国ルート084 >>557 帝国ルート084 >>564
王国ルート085 >>558 帝国ルート085 >>566
王国ルート086 >>571
王国ルート087 >>574
王国ルート088 >>575
王国ルート089 >>578
王国ルート090 >>579
◇カメルリング王国味方
>>2 ルーク 主人公
>>1 ミルフィーユ 発明家・美食家・資産家
>>4 キリエ 牧師・哲学者
>>16 ノイアー 傭兵
>>25 ラグ 執事
>>28 サイト 商人
>>29 リグレット 僧侶
>>39 ツバキ 軍人
>>55 ユニート 魔導師
>>58 ラルス 騎士
>>58 リリー 暗殺者
>>75 ジョレス 傭兵
>>78 フランチェスカ 王女
>>87 ハニー 妖精
>>99 シラン 術士
>>221 カルマ 学者・錬金術師・魔術師
>>289 フランキール 王子
>>440 シュバルツ 海賊
>>457 リレーナ 竜騎士
◆ミカイロウィッチ帝国味方
>>14 エドウィン 主人公
>>6 ヴィトリアル 盗賊
>>11 アーリィ 魔女
>>12 ゼルフ 黒騎士
>>12 リン メイド
>>27 シフォン 貴族騎士
>>30 イヴ 術士
>>37 ウィンデル 大道芸人
>>59 クウヤ 剣士
>>60 ツヴァイ 科学者(薬学)
>>76 ミレア 傭兵
>>78 シェリル 皇女
>>85 ディルム 精霊
>>96 ライヤ 偵察兵
>>98 セイリーン ドッペルゲンガー
>>278 レイ 魔女
>>305 故)フィア 魔女の弟子
>>305 故)キオ 魔女の弟子
◎味方につかない者
>>163 ソーサラー(呼称) 占星術師・幻術師
>>163 スキンヘッドハゲ(呼称) 盗賊
>>227 ヨメナイヤツ アドバイザー
キャラ応募してくださった皆様心よりお礼申し上げます!素敵なキャラをありがとう!!
◇番外編◆
参照四桁祝
・イヌ派ネコ派の王国日常 >>146
・絶対に信じちゃいけない言葉で帝国日常 >>150
・執事採用試験 >>156
・団長の足取り >>157-158>>160
・ある幻術師の思い出 >>162>>164>>170>>173>>175>>176
参照二千祝
・とあるメイドの追走劇 >>248>>254>>257>>260
・傭兵の黒と従者の白 >>263>>264>>269>>272>>274>>280>>281>>282>>283
参照三千&四千祝
・魔法使いの弟子 >>360>>363>>364>>367-368
・帝国サイド盗賊団と加担者でチビキャラ全員集合イラスト >>371
参照4500祝
・王国・番外ルートで抜粋チビキャラ集合イラスト >>404
銀賞&殿堂入り祝
・メイドと騎士と仲介人 >>415>>417-418>>421>>423
参照5000祝
参照6000祝
参照7000祝
金賞祝
参照8000祝
参照9000祝
参照10000祝!
参照11000祝!!
参照12000&13000祝!!!
保留
どんどん保留祝が増えて行っている…本編終わったら一気に大感謝祭とかやりたいなぁ、なんて考えてます
・・・業務連絡・・・
2014の冬の小説大会で銀賞もらえました!ありがとうございます!
2015の夏の小説大会で金賞もらえました!!ありがとうございますっっ!
参照5000祝いと6000祝、7000祝、8000祝9000祝そして10000祝。11000祝はのちほど…ッ!
時間軸まとめ >>234
- さぁ 正義はどっち ? 参照5000ありがとう御座います! ( No.426 )
- 日時: 2015/02/03 19:10
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
カメルリング王国ルート 052
目の前に転がっているのはあの二人組ではなく、正真正銘の王国の使用人らしく、びりびりと痺れながら床にうずくまっていた。
その恐怖で見開かれた眼は、なんでこんな目に?といまだに状況が理解できてい無いようで、ルークも同じ気持ちだった。
大きく切り裂かれたように開け放たれたぎざぎざの出口から廊下の先を首を巡らせて見回すも、あの二人組はどこにもいない。赤い絨毯に木くずが散らばり、あの電撃を喰らって痛めつけられた魔導書の焼け焦げた切れ端とまじりあって散っている。
それを踏みつけながら、ルークはため息をつく。
ほっとしたのもあるが、帝国の差し金に逃げられてしまった。魔導書を犠牲にしてとった行動がこれでは無駄になったかもしれない。
「…っと、ごめんなさい!だいじょうぶですか?」
そこではっと我に返ったルークは、あわてて不慮の事故とは言え自分が感電させた人物へと顔を向ける。
その使用人は声を上げられ無いようだったが、それでも少し痙攣しながらゆっくりと頷いてルークの手を取り絨毯に腰を下ろす。
「本当にごめんなさい。敵かと思ったので…」
「お—とが…聞こえ…て」使用人は時おりしゃくりあげるように体を震わせて体内に走る電撃の残滓をやり過ごしていたが、そのせいでうまく舌が回らないらしい。
けれど、ルークの起こした放電による爆発音を聞いて何事かと様子を見に来たらしいということはわかった。まだ感電でふるえる使用人をすまなさそうに見つめながら、ルークは思い立って研究室の中へ走る。
「僕はまだ癒しの呪詛は勉強したてで…上手く使えるかわからないけど」
言いながら、研究室の床に散らばる魔導書を一冊一冊かき集めて地属性についての魔導書を探す。
その中で一番早く見つかった地属性の魔導書を開き目的の章を高速で斜めに読み解きながらふと、背筋の凍る思いがして背後を振り返る。
地属性の魔導書…なんかいつもより少なかくなかったか…?
慌てて机の上に積み上げられるだけ魔導書を積み上げ、数を数えて息をのむ。
数冊が破れたり焦げ付いたり、ページに切れ込みが入っていたりしており、綴られた文字たちの動きが弱弱しく渦巻いていたが半分以上の魔導書はかろうじて原形をとどめていた。
しかし、数が足りないのだ。
どんなに数えても29冊。慌てて使用人に駆け寄り、問い詰めるが感電のせいで頷いているんだが否定しているんだかよくわからず、ルークは焦りながら手元にある魔導書を開き目当ての呪詛を探す。
それはささやかな癒しの呪詛だが、焦っていたこともあり読み解くの手間取ったが、ようやく数分後その呪詛で麻痺を癒す。
「『チェロット』」
「‥‥」
ささやかな癒しにより、麻痺が体からほぐれるように取れていき、使用人はぶるっと体を震わせて脱力した。
そして口もきけるようになり「どうも」と頭を下げる。いえいえ悪いのは僕ですから、と受け答えしながらもルークはすぐに本題に入る。
まずいことになったかもしれない、と心臓が急き立てるように激しく動き回っている。
「逃げていく二人組を目撃しましたか?彼らは分厚い本とか持ってました?むしろどっちへ逃げたんですか?」
やつら、帝国の差し金みたいなんです。だから早く何とかしないとまずいことに…とせかせば、使用人は廊下の先を指差してあっちへ行った、と声を詰まらせながら言う。
「本は持ってたか…思い出せないんです。飛び出してきた人があんなに血まみれだったんで…」
よしあっちだな、追いかけようと意気込んでいたルークはその言葉にえっと声を上げて思わず使用人を凝視してしまった。そしてすっとんきょうな声で聞き返す。
「血まみれ?」
「はい。その絨毯にも痕が…」
使用人は座っている絨毯の一部を指差してみせる。確かによくよく見れば、不可思議な色の斑が絨毯に転々と付着している。
それは一部分を見れば大したことないのかも、と思える量なのだが、それが延々と雪に記す足跡のように続いているのだ。
「…ありがとうございます。僕は彼らを追うので、すぐ敵の侵入を誰かに伝えてください…」
言い捨てて、その血の跡を猟犬のようにたどりながらルークは走り出した。
- さぁ 正義はどっち ? 参照5000ありがとう御座います! ( No.427 )
- 日時: 2015/02/03 20:13
- 名前: コッコ (ID: A7lopQ1n)
かなり修羅場になってしまいましたね。修羅場の後の逃走劇の行方も気になっています頑張ってください。
- Re: さぁ 正義はどっち ? 参照5000ありがとう御座います! ( No.428 )
- 日時: 2015/02/04 18:26
- 名前: メルマーク ◆gsQ8vPKfcQ (ID: kphB4geJ)
カメルリング王国ルート 053
赤い足跡のように続く血痕は途切れることなく続いていた。そのおかげでルークは彼らを見失わずに済みそうだった。
血の痕を見る限り、怪我をした人物は結構な重症なのかもしれない。怪我をした場所を走りながらといえど押さえつけているはずなのに血の痕が途切れなさすぎる。
やがてその赤い目印が、長い廊下にあるひとつの部屋の奥へと扉を挟んで続いていくのがわかると、ルークは深呼吸して扉を思い切り開けた。
「っ!」
そこはよくある物置のひとつで、絨毯のないむき出しの床に使われなくなった長椅子や、飽きたのだろうか床に放り出される大量の絵画や彫刻品がさびしそうに立ち並んでいる。
その物置の床に、一面赤黒い血の海が広がっており、ルークはへなへなと床に座り込む。
今敵が襲い掛かってきたら確実にしとめられてしまっただろうが、幸いここには誰もいないらしかった。
足の力が抜けてけてへたり込んだルークは、そんな自分にも驚いていた。あれだけ誰かを守るためとはいえ、敵には容赦なくこのナイフでさせるといっておき実際に一人の少女を刺しさえしたのに、この血の海をみてこんなに腰が抜けるものなのか。
血の海に気をとられていたが、良く部屋を見渡せば血を踏んづけてあわただしく走り回った靴のあとがかすれるように部屋を横切っていた。
その靴の後を追うと、破り取られた古いカーテンが風に揺れている。血にぬれた指で布を思い切り引き裂いたのだろう、その布で傷口を縛って応急処置したのかもしれない。
もう一度血の海へ目を戻せば、彫刻品の奥へと何かが転がっているのが見えた。
手を伸ばすのは気がひけるが、廊下の明かりだけが頼りなため、光の下まで引っ張らなければそれが何か良くわからない。
力の入らない腕を伸ばして、それに触れると木材のようなものだった。
引っ張り出すと、血をすって赤黒く染まっている尖った木片だった。
この部屋に割れるような木製のものがないため、おそらくあの二人組みが電気を通しやすい剣の類の代わりに使用していた木材だろう。
放電の爆発に巻き込まれたときに、その衝撃の中であやまって体に突き刺さったのかもしれない。
それを引き抜いてコレだけの血の海ができたとなると、相当な重症なのかもしれない・・・。
しかし廊下にはそれ以上血の痕は残っておらず、この部屋から出て行ったという痕跡は残されていない。
「もしかして、まだいるのか・・・?」
木材の破片を床に転がし、ルークは息を呑んで薄暗い部屋の中を見回す。
しかし、額に浮く冷や汗を覚ますように吹き込まれる穏やかな風により、ルークは肩を落として緊張を解いた。
風に揺れるカーテンをめくれば、窓は開いていて、窓枠にはこすれるように血が付着していた。
魔道書が一冊行方異不明な上、重症なもののあの二人組みはカメルリング城の外へと逃げたらしい。
けれど、今夜は晩餐会で城の周りには押し寄せる人々とそれを押しとどめる騎士達がいる。
血まみれで目立つのならうまく逃げ切れるわけがないし、今頃あの使用人が帝国の手先の侵入を知らせて回ってくれているだろう。
とにかく追わなければ、とルークもまだ震える足に力を入れて、窓枠から身を乗り出した。
こんばんはコッコさん!
修羅場になってますがまだこんなもんじゃあありませんっ←
コメントありがとう御座います!
- Re: さぁ 正義はどっち ? 参照5000ありがとう御座います! ( No.429 )
- 日時: 2015/02/04 18:33
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
カメルリング王国ルート 054
「花火の音ですね」
何の音だろ?というシランの声に、牢屋の鉄格子を両手で握り締めながらラグが耳を澄ませながら言う。
「へぇ花火かぁ。そういえば晩餐会の余興に芸人が来てるんだっけ・・・」
思わず反射的に頭上を仰いでシランが牢獄の床に胡坐をかく。
唯一の光源といっていいほどのつたないカンテラの灯りが、かろうじて天井の存在を教えてくれる。その分厚い壁を通り越して、重たい音の炸裂音と人々の歓声が聞こえてくる。
城の地下にある牢獄にまで聞こえてくるなんて、結構大きな花火だなぁ。
「ご主人様は以前、火薬を発明なさいまして。その時に花火のことも一緒に研究されていたので、よく目にしました」
ラグが主人との思い出を、まるで温もりを求めるように、喋ればしゃべるだけ自分自身が温まるかのように一生懸命思い出して話す。
大切な人々、師匠や弟子仲間との予期しない別れを経験したシランは、ラグの心境を容易に想像できるため、穏やかな笑みを浮かべて頷いて話を聞いてあげている。
誰しも大切な人と離れ離れになれば、その思い出にしがみつきたくなる。ひと時も忘れることなどできはしないのだ。
考えるのをやめれば、胸を焼き焦がす激しい痛みに襲われる。その痛みは物理的ではないものの、命さえ奪いかねない重苦しい痛みだ。
それを四年もの間抱えてきたシランにとって、ラグの気持ちは痛いほど分かる。
鉄格子の隙間に手を滑り込ませ、すっかり冷え切って小さく震えるラグの肩に手を置きながら、シランも願うようにつぶやく。
「だいじょうぶ。またきっと再会できるよ」
赤いカーテンが開かれ、夜空が縦長に切り取られた大窓がいくつも並び、それぞれの空に黄色の鮮やかな花火が踊る。
「ほぉー、見事ですなぁ」「綺麗ねぇ!」「あれだけの量となると相当な手の込みようですね」
晩餐会の会場にいる者達が口々に歓声を上げてその花火たちを見つめて色めき立つ。その会場内で警護に当たる—といってもほぼ観客の一人になりつつあるが—ツバキは懐かしそうにその花火を眺める。
花火といえばツバキの出身国である和の国でも名産品で、夏になれば祭りに欠かせないものだ。その中でも特に線香花火がすきなのだが、西洋にはどうやら無い様で、そのたびに文化の差異を感じていた。
「ここは眺めがいいですね」
と、隣に立つ白い鎧を身にまとうラルスが声をかけてくる。白騎士団長のラルスと傭兵団長のツバキは部下達の合同試合などでも面識があり、ツバキにとって異教徒仲間リグ僧侶と部下であるが慕ってくれているノイアーやジョレスに順ずるほどの親しい人物だった。
「ここなら花火と同じ目線だから首が痛くならない」
ラルスが満足げに言うが、ツバキは首を傾げて言う。
「わっちは見上げる花火の方がすきでありんす」言いながら、真正面できらきらと散る花火を凝視し、何か物足りなさを感じる。
「それに、花火は建物の中からではなく外で見るもので、外の暗闇に咲くからこそより花火が美しく感じ取れるのです」
そんなツバキを不思議そうに眺め、ラルスはでもと声を上げる。
「外に長時間突っ立っていたら虫か何かに刺されるし、第一あの爆発音がうるさいじゃないか」
ラルスの言葉にこれが西洋と東洋の違いか、と笑みを浮かべながら椿はやれやれと頭を振る。
もしいつもネガティブなことをつぶやくリグ僧侶がいれば、「長時間外に突っ立っていたら風邪を引くかもしれない。風邪は万病の元で死ぬこともあるんですよ」と付け加えるに違いない。
「あの胸をたたくような音と、火薬と煙のこげた香り、時には虫に刺される・・・それすべてが花火を楽しむということでありんす」
和の国の楽しみ方を伝えれば、ラルスは和の国って不思議な国だなぁと渋い顔をした。
その頃和の国的な花火の見方をしている人物がいたが、まったく持って楽しめていないように見える。
それもそのはず、歓声を上げて興奮する暴徒と化した平民達を怒鳴りつけながらの花火見物ほど楽しめないものは無い。
むしろ、うるさいし火薬くさいしあがればあがるほど平民達が熱狂するからさっさと消えろ!と心の中で思うほどだった。
「もう我慢できないぞ!お前ら鎌でずたずたにされたいのか!」
人々の暴走は門番と配属された騎士の数人では抑えきれず、たまたま休暇中付近を通りかかったノイアーとジョレスなどの数人の傭兵や兵士までが犠牲となる羽目になった。門が閉ざされているというのに、熱狂する市民はその鉄格子にしがみついて動物のようにがんがんと揺らす始末だ。その熱狂振りは恐ろしい。
「今日は休日だったのに何でこんな目に・・・」ジョレスも青筋を浮かばせつつ、ぐったりしながらぼやく。
と、人々の波の向こうに馬四頭引きの馬車がこちらにやってくるのが見えた。
馬に耳栓でもしているのだろう、普通なら花火の爆発音で馬が暴れ狂うはずである。
「おいなんだぁ?まだ晩餐会は終わってないぞ?誰か貴族でも帰るのか?」
ぼやきつつもここで馬が暴走されてはひとたまりも無いので、大門から隠れるように存在する守衛用の隠し扉からこっそり抜け出て、興奮しまくる人々の波を窮屈そうに通り抜けながら、御者に声をかける。
「晩餐会はまだ続いてる—」
「コレは失礼いたしました」
若干イラツキ気味のジョレスに、御者はフードで隠れた顔半分で微笑む。
じゃあ引き返せといわれる前に、御者の男は御者台から降りずに続ける。
「私は晩餐会の芸人の迎えでして。この熱狂振りでは芸人が無事に帰れそうもないため迎えにあがったのです。馬車に乗りさえすれば熱心な観客からも無事逃げ切れそうですし・・・貴族の連中だと思って彼らも気付かないでしょうし」
どうです?と微笑む御者に何か薄ら寒いような気持ちになるが、ジョレスは辺りを見回して納得する。
この熱心すぎる観客を前に芸人達が出てきたら、もみくちゃにされて騒ぎは更に大きくなり収拾がつかない。
貴族連中の馬車にまぎれて出て行ったあとで、芸人が帰ったことを知らせればまだ収拾がつく。少なくとも国王の招いた芸人は怪我をしないで済むだろう。
しっかし、馬車のために門を開けるとなると、城へ暴れまくる群衆が押し寄せるが・・・。
腕組みしてしばし考えた後、ジョレスは頷いて王族の身内でしか乗り入れられない特別な門へと城の内部へと馬車の入城を受け入れた。
「悪いな、ちょっと迂回してくれ。今から王族用の門へ案内する」
言いながら、御者の隣に乗り込んだ。
053の、名前のうしろの数字がおかしい・・・?
- Re: さぁ 正義はどっち ? 参照5100ありがとう御座います! ( No.430 )
- 日時: 2015/02/04 18:57
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
カメルリング王国ルート 055
城の外へと通じる窓は、一階とはいえかなりの高さにあり、ルークは危うく墜落しかけた。あわてて窓枠にしがみつき、息を弾ませながら身体を伸ばして飛び降りる。
しりもちをついて着地したが、足の骨を折らずにすんだだけましだ。
呼吸を整える間、辺りを見回してここがどこだかを探る。カメルリング城は城を包み込むように外壁を築いているため目印となるものは見つけにくい。
しかし塀を乗り越える以外にある正統な出口、観客が押し寄せる長いスロープの入城口からはそう遠くないことがわかると、急いで駆けつける。
傷の手当が上手らしく、もう一切血の痕が残っていないため、急がなければ見失ってしまう。
しかし血まみれなのだから、見つかれば誰かが悲鳴を上げるはずだ。
そうこうする内に、その足は入城門へとたどりつく。観客の歓声は激しく、騎士達も苦労しているようだ。
激しい熱気の一番外側にいる騎士に声をかけると、驚いたことにつまみ出されそうになった。
「どうやって入ったんだ?!ここは王城だぞ!一般人は侵入するな!」
開口一番に怒鳴りつけられ、守衛用の隠し扉から外へ放り出されかけたとき、「ルークしゃないか」と声をかけられて助かった。
「ノイアー!」
「おい、そいつは魔導剣士だぞ!一般人じゃないっ」
ノイアーが騎士に食って掛かってくれたおかげで、ルークは放り出されずに済んだ。
「今日はこんなんだから、お前も狩り出されたのか。わたしも折角の休日を潰された!お前らのせいだぞっ」彼女は腰に手を当てて門の外にいる暴徒に怒鳴りつける。
つかまれた腕を痛そうにさすりながら礼を言ったルークは、首を振る。
「ノイアー、血まみれの人、見てない?」
「血まみれの?」憤慨していたノイアーだったが目を丸くしてルークの方へ目を向ける。ルークから目を離さずに髪を揺らすように首を振ったノイアーは興味深そうにルークに詰め寄る。
「みてない。喧嘩か?」
「おかしいな・・・そんなはずは無いのに・・・」
詳しく聞かせろ!と袖を引っつかみノイアーにせがまれ、それが、と口を開いた瞬間、耳を劈くような爆発音がとどろき、ルークは飛び上がった。
「なんだ?!」
続けざまに爆発音が響き、空が赤くきらめく。一瞬ざわめきが小さくなったが、すぐに人々が歓声を上げ始めた。
「何?」
ビックリして唖然と花火を見上げるルークに、ノイアーがうんざりしたように腕を組んで言う。
「芸人が、晩餐会に出れない一般人にも楽しんでもらおうとして打ち上げたらしい。さっきもあった。黄色だったけどな」
唸るように言うノイアーの言葉に、先ほどの爆発音の正体は花火だったのか、と一人納得するルーク。あれのおかげで攻撃のチャンスが産まれたのか。
「そのせいで見物客がこんな騒いで、私の休暇が消えた!」
再び憤慨するようにわめくノイアーの声を遠くに、空を赤く染め上げる花火の色にどこと無く先ほどの血の海を連想させて、ルークはのどを鳴らした。
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