複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- さぁ 正義はどっち ? 参照13600ありがとう御座います!
- 日時: 2016/08/23 00:57
- 名前: メルマーク (ID: KzMBmi6F)
戦争と平和は正反対のものと考える人が多い世の中
それは本当なの?正義って何?悪って何?
答えが見つからないなら探せば良い。
多分異色な今までにない、正義についてのお話し。
答えはありませんが、きっと終わった後 何が正解か思い浮かぶはず。
時代は古きよき時代、中世頃にしようかと
オリキャラ募集一応締め切らせていただきます!
終章にもうじき突入予定なので‥・もしかしたらまた募集するかも・・・?
名前
性別
年齢
容姿
A国B国どちらの味方?(国名は長いので省略
性格
武器
サンボイ「」
職業は?下から選択下になければ新職業を書いてくれるとうれしいです
騎士 傭兵 盗賊 貴族 海賊 海軍 王室(王族をのぞく外交官・メイド・執事・王族のいとこ)関連
占い師 科学者(錬金術師) 芸術家 哲学者 商人 国民 旅人 魔法使い など
武器や変わった特徴などの要望も即採用です
結構な確率で”死ぬケース”もあるのでご了承ください!!
◇目次◆
王国ルート001 >>5 帝国ルート001 >>43
王国ルート002 >>15 帝国ルート002 >>49
王国ルート003 >>20 帝国ルート003 >>50
王国ルート004 >>23 帝国ルート004 >>54
王国ルート005 >>31 帝国ルート005 >>63
王国ルート006 >>66 帝国ルート006 >>81
王国ルート007 >>67 帝国ルート007 >>83
王国ルート008 >>68 帝国ルート008 >>90
王国ルート009 >>71 帝国ルート009 >>91
王国ルート010 >>74 帝国ルート010 >>93
王国ルート011 >>101 帝国ルート011 >>114
王国ルート012 >>103 帝国ルート012 >>117
王国ルート013 >>106 帝国ルート013 >>118
王国ルート014 >>108 帝国ルート014 >>120
王国ルート015 >>110 帝国ルート015 >>122
王国ルート016 >>123 帝国ルート016 >>183
王国ルート017 >>127 帝国ルート017 >>184
王国ルート018 >>133 帝国ルート018 >>187
王国ルート019 >>142 帝国ルート019 >>191
王国ルート020 >>144 帝国ルート020 >>193
王国ルート021 >>194 帝国ルート021 >>207
王国ルート022 >>197 帝国ルート022 >>208
王国ルート023 >>200 帝国ルート023 >>209
王国ルート024 >>203 帝国ルート024 >>210
王国ルート025 >>204 帝国ルート025 >>212
王国ルート026 >>214 帝国ルート026 >>232
王国ルート027 >>217 帝国ルート027 >>238
王国ルート028 >>219 帝国ルート028 >>239
王国ルート029 >>223 帝国ルート029 >>246
王国ルート030 >>224 帝国ルート030 >>258
王国ルート031 >>286 帝国ルート031 >>298
王国ルート032 >>287 帝国ルート032 >>304
王国ルート033 >>288 帝国ルート033 >>309
王国ルート034 >>292 帝国ルート034 >>312
王国ルート035 >>295 帝国ルート035 >>314
王国ルート036 >>317 帝国ルート036 >>329
王国ルート037 >>319 帝国ルート037 >>331
王国ルート038 >>321 帝国ルート038 >>334
王国ルート039 >>325 帝国ルート039 >>335
王国ルート040 >>326 帝国ルート040 >>336
王国ルート041 >>340 帝国ルート041 >>372
王国ルート042 >>347 帝国ルート042 >>375
王国ルート043 >>352 帝国ルート043 >>378
王国ルート044 >>353 帝国ルート044 >>382
王国ルート045 >>357 帝国ルート045 >>386
王国ルート046 >>387 帝国ルート046 >>399
王国ルート047 >>390 帝国ルート047 >>402
王国ルート048 >>393 帝国ルート048 >>407
王国ルート049 >>395 帝国ルート049 >>408
王国ルート050 >>398 帝国ルート050 >>409
王国ルート051 >>425 帝国ルート051 >>431
王国ルート052 >>426 帝国ルート052 >>433
王国ルート053 >>428 帝国ルート053 >>434
王国ルート054 >>429 帝国ルート054 >>436
王国ルート055 >>430 帝国ルート055 >>437
王国ルート056 >>442 帝国ルート056 >>450
王国ルート057 >>443 帝国ルート057 >>451
王国ルート058 >>446 帝国ルート058 >>453
王国ルート059 >>447 帝国ルート059 >>454
王国ルート060 >>449 帝国ルート060 >>461
王国ルート061 >>462 帝国ルート061 >>471
王国ルート062 >>465 帝国ルート062 >>472
王国ルート063 >>466 帝国ルート063 >>476
王国ルート064 >>467 帝国ルート064 >>477
王国ルート065 >>468 帝国ルート065 >>480
王国ルート066 >>482 帝国ルート066 >>492
王国ルート067 >>483 帝国ルート067 >>493
王国ルート068 >>487 帝国ルート068 >>495
王国ルート069 >>488 帝国ルート069 >>496
王国ルート070 >>489 帝国ルート070 >>499
王国ルート071 >>504 帝国ルート071 >>516
王国ルート072 >>506 帝国ルート072 >>517
王国ルート073 >>507 帝国ルート073 >>520
王国ルート074 >>509 帝国ルート074 >>521
王国ルート075 >>510 帝国ルート075 >>525
王国ルート076 >>528 帝国ルート076 >>539
王国ルート077 >>533 帝国ルート077 >>543
王国ルート078 >>534 帝国ルート078 >>545
王国ルート079 >>537 帝国ルート079 >>547
王国ルート080 >>538 帝国ルート080 >>548
王国ルート081 >>551 帝国ルート081 >>560
王国ルート082 >>552 帝国ルート082 >>562
王国ルート083 >>553 帝国ルート083 >>563
王国ルート084 >>557 帝国ルート084 >>564
王国ルート085 >>558 帝国ルート085 >>566
王国ルート086 >>571
王国ルート087 >>574
王国ルート088 >>575
王国ルート089 >>578
王国ルート090 >>579
◇カメルリング王国味方
>>2 ルーク 主人公
>>1 ミルフィーユ 発明家・美食家・資産家
>>4 キリエ 牧師・哲学者
>>16 ノイアー 傭兵
>>25 ラグ 執事
>>28 サイト 商人
>>29 リグレット 僧侶
>>39 ツバキ 軍人
>>55 ユニート 魔導師
>>58 ラルス 騎士
>>58 リリー 暗殺者
>>75 ジョレス 傭兵
>>78 フランチェスカ 王女
>>87 ハニー 妖精
>>99 シラン 術士
>>221 カルマ 学者・錬金術師・魔術師
>>289 フランキール 王子
>>440 シュバルツ 海賊
>>457 リレーナ 竜騎士
◆ミカイロウィッチ帝国味方
>>14 エドウィン 主人公
>>6 ヴィトリアル 盗賊
>>11 アーリィ 魔女
>>12 ゼルフ 黒騎士
>>12 リン メイド
>>27 シフォン 貴族騎士
>>30 イヴ 術士
>>37 ウィンデル 大道芸人
>>59 クウヤ 剣士
>>60 ツヴァイ 科学者(薬学)
>>76 ミレア 傭兵
>>78 シェリル 皇女
>>85 ディルム 精霊
>>96 ライヤ 偵察兵
>>98 セイリーン ドッペルゲンガー
>>278 レイ 魔女
>>305 故)フィア 魔女の弟子
>>305 故)キオ 魔女の弟子
◎味方につかない者
>>163 ソーサラー(呼称) 占星術師・幻術師
>>163 スキンヘッドハゲ(呼称) 盗賊
>>227 ヨメナイヤツ アドバイザー
キャラ応募してくださった皆様心よりお礼申し上げます!素敵なキャラをありがとう!!
◇番外編◆
参照四桁祝
・イヌ派ネコ派の王国日常 >>146
・絶対に信じちゃいけない言葉で帝国日常 >>150
・執事採用試験 >>156
・団長の足取り >>157-158>>160
・ある幻術師の思い出 >>162>>164>>170>>173>>175>>176
参照二千祝
・とあるメイドの追走劇 >>248>>254>>257>>260
・傭兵の黒と従者の白 >>263>>264>>269>>272>>274>>280>>281>>282>>283
参照三千&四千祝
・魔法使いの弟子 >>360>>363>>364>>367-368
・帝国サイド盗賊団と加担者でチビキャラ全員集合イラスト >>371
参照4500祝
・王国・番外ルートで抜粋チビキャラ集合イラスト >>404
銀賞&殿堂入り祝
・メイドと騎士と仲介人 >>415>>417-418>>421>>423
参照5000祝
参照6000祝
参照7000祝
金賞祝
参照8000祝
参照9000祝
参照10000祝!
参照11000祝!!
参照12000&13000祝!!!
保留
どんどん保留祝が増えて行っている…本編終わったら一気に大感謝祭とかやりたいなぁ、なんて考えてます
・・・業務連絡・・・
2014の冬の小説大会で銀賞もらえました!ありがとうございます!
2015の夏の小説大会で金賞もらえました!!ありがとうございますっっ!
参照5000祝いと6000祝、7000祝、8000祝9000祝そして10000祝。11000祝はのちほど…ッ!
時間軸まとめ >>234
- さぁ 正義はどっち ? 参照6300ありがとう御座います! ( No.492 )
- 日時: 2015/04/19 00:38
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
ミカイロウィッチ帝国ルート 066
報告書をセイリーンに託した今、俺の仕事は拷問にできるだけ長い間に耐えて、セイリーンが帝国へ報告書を届ける時間を稼ぐことだ。
黒髪から水をしたたらせて、寒さに震えながら、気管に入り込んだ大量の水を激しく咳き込んで吐き出す。
一時間ほど前から後ろ手に縛られ、大きな布を頭からかぶせられて大きな水樽の中に頭を沈み込まされているせいで寒くてしょうがない。
リリーと呼ばれる赤毛の少女がライヤの頭を水の中へ押し込む作業をし、姉のリレーナが同じ質問をライヤが答えるまで繰り返す。
「他にスパイは居るのか?」
「さ—さぁね」
寒さに震え血の気を失った唇を無理に動かして笑うと、リリーが布をかぶせてまたライヤを水の中へと沈ませる。
呼吸を止めさえすれば大丈夫というような時間をはるかに超え、二分以上水中に沈み込まされれば、さすがに苦しくなって思わず息を吸い込んでしまう。
そのたびに喉を焼くように気管へ水が逆流し、水中の中でむせ返る。
まだ聞くことがあるので死なれたら困るというように、ライヤが激しくむせるとすぐに引き上げられるが、まともに呼吸が出来ない。
水を吐き出す合間に何とか呼吸できなければ、すぐにまた水の中へ押し込められる。
徹夜明けに爆弾ジョギングをした後、爪を一枚剥されて水責めにあうなんてとんでもない日だな、と脳内で笑い飛ばし自分を元気づけようとするが、全く笑えない状況だった。
もう一時間もすれば低体温症になり、水責めのせいで水分の過剰摂取を起こして水中毒を引き起こすに違いない。
最悪その結果で俺は死ぬことになっちまうなぁ、とぜいぜい呼吸しながらライヤは周囲に目を向ける。
18年の生涯最後の光景が寒い独房とはなんともスパイ冥利に尽きるではないか。おまけに赤毛姉妹が俺の死をみとってくれそうだし、スパイの死にざまとしちゃ悪くない方だ。
リレーナが口を開いて何か言ったが聞き取れず、無視したとみなされてリリーに沈められまたひどく水を飲み込んだ。
呼吸を止めることもできなくなってきて、水の方が体温より温かく感じられてきたころ、完全にリレーナの言っている言葉が理解できなくなり、体を動かすことも苦痛になってきた。
ありがたいことに引き剥がされた爪の痛みは、感覚がマヒしてか痛く感じない。
もうこうなったらさっさと終わらせてくれと自暴自棄になりかけたころ、独房の隅に座り込んでいた銀髪の案内人がはっとして立ち上がったのがかろうじて理解できた。
鎖に縛られ角度的には見えないが、誰かがやってきたらしい。銀髪の案内人がお辞儀をすることから位が高い人物だろう。
ぼんやりする頭が、もちまえの回転の速さを無理やり引っ張り出し、一時的にライヤは再び人の言葉を理解できた。
「直ちにその者を介抱せよ。そして玉座の間へ連れてくるのだ。父上から直々に話がある」
(そのものをかいほう…?どういう意味だ…?)
リレーナとリリーが驚いたように目を合わせるのをじっと見ていると、リリーが自身が羽織っていた分厚いビロード地のマントを脱いで、ライヤを包み込むように覆った。
(どういうことだ…?)
のろのろした頭が真っ先に感じたのは、ひと肌程度に温まったマントが温かくて心地いい、ということであり、なぜ水責めを急に辞めたのかは理解できなかった。
「いったいどういうお考えなのか…」リレーナがライヤの足首に巻かれた鎖の端を持ち、リリーにぼやくように囁く。
マントを脱いで、分厚い皮でできた防護服一枚になったリリーが「さぁ」と小首を傾げライヤを姉よりも黄色味の強い瞳でじろりと見た。
「何か状況が変わったのかもしれない」
リリーの防護服からのぞく足をぼんやり見ていたライヤは、さっと脳裏にセイリーンを浮かび上がらせ少し緊張した。
もしも彼らにフランチェスカに化けたドッペルゲンガーであるセイリーンの存在が知られたのなら、彼女は捕まったのだろうか?
なんにせよ重大な話があるらしい、というのは理解できた。相変わらず後ろ手で手を縛られているが、暖かなマントが体を包み込んでいる。
もしかしたら、飴と鞭作戦で弱っているところに暖かく手を差し込んで漬け込み、情報を喋らせようとする手のなのかもしれない。
(まぁ、なんにせよ死ぬ前に少しいい思いが出来るに越したことはないな。これで熱い風呂とあったかい飲み物が出てくれば最高だけどなぁ)
まぁそんなことはあり得ないと心の中で笑うが、もしかしてと少し期待しながら独房を後にした。
玉座の間へ再び戻ってくると、ライヤはがっかりした。
稼動しだした脳みそは、座り心地の良いクッション付きの肘掛椅子と湯気が出るほどあたたかな食事を想像していたのだが、そんなものはどこにもなかった。
落胆して四つの玉座が並ぶ方へ目を向けて、電気ショックを受けた様に一瞬目を見開いた。偽フランチェスカの玉座だけがぽっかり空席になっている。
(こりゃバレたな。もしかして殺されたか?報告書は…)
素早く視線を走らせ王族の膝の上に歴史書が乗っていないか警戒するが、騎士も再度集まった告白証人も誰も手にしていない。
「来たか」
国王が真っ先に声を掛け、もっと近くによるように指示をした。
近づけば、2〜3時間前までライヤの真正面の独房に入ってすすり泣いていた少年が、青い貴族服に身を包んだ人物の隣に立っているのが見えた。
「よぅ、お前も出られたんだなぁ」
なんだか仲間意識を感じて声を掛けると、こわごわと頷かれて何故かほっとした。どう見ても冤罪で放り込まれた齢馬もいかない子供が自分と同じように拷問に合っていなくてよかった。
動揺しかけた精神を紛らわせた直後、国王がライヤを見下ろして口を開いた。
「ライヤ・メルセルム。先程わが娘であるフランチェスカが偽物であったことが判明した」
ズバリ来たか、とライヤは心の中で苦笑した。
もしかしたら腹いせに公開処刑でもされるのかもしれない。その前に情報を引き出そうと図っているのだろう。
(もしやるなら街ン中でやってほしいな。それならまだ逃げ出すチャンスがある)
長年王国に潜り込んで立地を一人で地図をかき上げられるほど頭に叩き込んだライヤには、母国ミカイロウィッチ帝国の地理よりも王国の方が確実に詳しいと自負できた。
さっそくいくつかのルートを頭の中で描きつつ、ぼんやりと国王の話に耳を傾けた。
「そこでお前に言わねばならない」
厳しい顔をしてライヤを見る国王の顔はますますしわを刻んでおり、よくもまぁそんなにも思いつめられるもんだと関心してしまう。
「二重スパイになる気はあるか?」
そのしわだらけの国王が、ため息とともに言葉を吐き出した。
- さぁ 正義はどっち ? 参照6300ありがとう御座います! ( No.493 )
- 日時: 2015/04/20 21:18
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
ミカイロウィッチ帝国ルート 067
二重スパイにならないか、という言葉にびっくり仰天したのは自分だけではなかったらしい。
玉座の間のあちこちから「なんですって?」と驚きの声が飛び上がる。ライヤの側の赤毛姉妹も国王の言葉の意味が解らないという様に目を見開いている。
「これは命の取引だ、メルセルムよ」
ざわざわする人々を完璧に無視した国王は、ハンカチを握りしめた涙目の王妃ときつく口を一文字に結んだ王子に目を向けると、ライヤを値踏みするように眺めた。
「帝国の情報を洗いざらい喋り、わが娘の行方を吐け。そして我々王国の味方に付け。聞いたところによれば、たまに帝国の情報を売って小遣い稼ぎしていたそうじゃないか?」
(売ってたのはまぁ大した情報じゃないんだけどさ)とライヤは国王の言葉に脳内で捕捉をつけるが、国王の申し出は結構おいしい話であるため聞き漏らすまいと耳を傾ける。
「今度の情報にはわずかな金ではなく、お前自身の命がかかっている。こちらとしては拷問により吐き出させることもできるが、今は時間が惜しい。わが娘の安否がわからぬ今はとくにな…」
国王の権力を振りかざした独断的なライヤへの提示に意を唱えようとする輩は、この言葉に沈黙した。
帝国のお転婆皇女と同様に、王国の正統派王女もやはり民に愛されているらしい。
女性陣も黙り込む様子を見て、単なる美しさの作り出す同情で人気を勝ち取るような偽善的な小娘ではなかったようだ。
「さぁどうするメルセルム。迷う時間さえこちらとしては惜しいのだ。今ここで決めぬなら、断ったとみなすぞ!」
玉座の肘掛を思い切りたたいて国王が吼えると、耳元でライオンが吼えたかと思うほどの迫力があった。
気の弱いものがこの場に居たら気絶しかねないほどの威圧感にさらされ、ライヤは挑発して笑う事も忘れ、真剣な表情で剥された爪を見つめて眉を寄せた。
おそらくこれが自分の人生を決める決定的な選択になるだろう。18にしてとんでもない人生の岐路に立たされたものだ。
ライヤが神妙な顔をして迷うそぶりを見せると、手首に繋がる鎖を握ったリリーが沈黙を破って声を響かせた。
「国王様、無礼申し上げることをお許しください。彼は信頼できません。拷問でさえ口を割らなかった者です。命惜しさに偽りの情報を吐くことがあると思えます」
姉の良く言った!という視線にさらされるリリーをちょっと恨めしげに見つめると、リリーは猛禽類のような鋭い目で、ライヤの心の内を透かすような視線を投げ返す。
男勝りで凛々しい姉と打って変わり、冷静で無口な雰囲気のリリーは見つめられると身ぐるみはがされて隠し事が出来ないような気分にさせる。
居心地が悪くなり思わず目をそらしかけたとき、国王がそれも一理あると深く唸る。
「シェルレイド、そなたには深い信用を捧げている。国内反乱者の芽を摘み、国外から不法侵入した凶悪犯の刈り取りまでよくぞ国に尽くしてくれた。改めて礼を言う」
国王が久しぶりに親しみのこもった声をだし、リリーはぺこりと頭を下げた。
「しかしこれだけは譲れぬ。しかし、その情報が偽りと分かった暁には、そなたにこの者の処刑をまかせよう」
「お任せ下さい」
再び頭を下げたリリーの横で、ライヤは目をぐるりと回した。まだ何も言っていないのに、既に処刑人が決定されてしまった。おそらく断った際の拷問者もまた彼女なのだろう。
(断ったところで、苦しいのが延々と続くのはごめんだな)
帝国で受けたスパイになるための尋問訓練は合格するのがきつかったが、大切な役人を殺さないように手加減されていたんだなぁとつくづく思い知ったライヤはひりひりする指を見た。
水責めの前に二枚目の爪を引っぺがされていた為、左手に残る無事な指はあと三本しかない。このままいけば両手どころか足の爪まで引っぺがされるだろう。
爪が20枚すべてなくなった後の事を考えると、恐ろしかった。爪はぎの後に待ち受ける拷問は何なのか考えたくはない。
「わかりました国王サマ。俺の命と帝国の情報を交換しましょう」
国王の顔に疑い深い表情と、それを越えるほどの満足感が広がるのが見て取れた。
「ではフランチェスカの所存と、帝国の狙いを話せ。他にスパイは居るか、そして帝国の勢力も言うのだ」
「仰せのままに」
面倒くさそうにお辞儀をしたライヤは、何対もの目が自分を刺し貫くのを感じながら口を開いた。
「フランチェスカ王女は帝国に向かっています。あなた方が考えた通り、昨晩の侵入は魔法剣フランベルジュと使えそうな魔導書を盗むことが目的でした」
ライヤの声が高い天井の玉座の間に反響し、その声をひっそりと大勢の観客が聞き漏らすまいと耳を澄ませている様子に、一人で聖歌を歌っているような気分になる。
ライヤはもともと人の心をつかむ性質に長けており、簡単に信頼を勝ち取りカメレオンのように周囲に溶け込むことが得意だった。
嘘は息をするようにさらりと吐き、本当のことは相手が知っている情報を少しからめてやれば信頼度がぐんと増して信頼を勝ちとりやすくなることを、何となく本能で知っていた。
「しかしそれは二次的な目標で、本命は王女の誘拐です。魔法剣も魔導書も王女誘拐の目くらましにすぎません。偽物の王女を置いていく事で注意を二次的目標へそらしたんですよ」
「何たることだ!忌々しい…ワシの膝元で化かされるとは…っ!」
国王が歯噛みし、先を続けろと片手をはらってライヤに指図する。納得したようなぼそぼそとした細い会話があたりに漂う。
「つまり芸人から昨晩侵入した不審人物まで全てが帝国の手先です。もちろん、幻術師の兄妹も」
シランが歓声を上げて慌てて口を閉じた。シランの方を見ていた国王がライヤへ視線を戻すと、先を続けるように顔を上げた。
「その彼らを皆俺が馬車を使って樹海まで運びました。彼らは今頃樹海を一週間かけて安心しきって歩いている頃でしょうね」
ちらりと国王を見れば、国王は深海色の瞳に希望の光を点らせて立ち上がった。
「ならばまだフランチェスカは帝国内には囚われていないのだな?少なくともあと5日は猶予があるのだな?」
これには誰もが息をのむように続きを期待して沈黙し、ライヤは即座に頷き、両手首から下がる鎖が床をこすってとぐろを巻いた。
「えぇ。しかし仲間の内一人は腹に大けがを負っていました。担架で樹海を超える為、もしかしたらもっと時間がかかるでしょう。獣を避けるために見通しの良い鉱山の付近を進むとしたら、2週間はかかるのでは?」
ライヤが小首を傾げながら指を折って日数を数えると、更に彼らは希望を取り戻したようだった。
確かに怪我をした人物は腹部を血だらけにしていたのを使用人が目撃した、と童顔少年が小声で言うと皆感心したようにライヤを眺めた。
ライヤが次に口を開く前に、我慢できないという様に立ち上がったキールが、リレーナに上ずった声を掛けた。
「リレーナ!すぐにシュバルツに連絡を取ってくれ!海ではなくすぐに樹海の内部、鉱山の付近を捜索するように言ってきてくれ!——よろしいですね父上?」
付け加えられた言葉に頷きながら、国王が戸惑うリレーナに頷いて見せた。
「よろしい、リレーナよ、頼む。そしてそなたもまたあのワイバーンを用いて鉱山の付近を捜索してくれ。期待しておるぞ」
リレーナが小走りに出ていくのを見て、ライヤは微笑んだ。その脇でリリーがすぐに足首と手首の鎖を手に取り、警戒するようにライヤの側に立ち尽くした。
「そして王女をさらう理由ですが、彼女を人質とすれば王国は降参するしか手がないからです。幻術で意識のない王女は自身が攫われたことも分かっていないンで、王国の魔術戦闘員を減らす意味も含めています。何せ王女の魔力は帝国一の魔女よりも高いらしいので」
国王がゆっくりと頷き、玉座に深く沈み込んで腕組みをした。王妃はハンカチを握りしめたままライヤをすがるように視線を投げ、王子は顎に手を当てて前かがみになっている。
「スパイは俺だけです。そして帝国の勢力は古い情報でしょうが—…」
ライヤは自分がまだ帝国にいたころの帝国の勢力を話しながら、遠くに聞こえる鐘の音を数えた。全部で13回、もう真昼である。
ちょっと訂正
- さぁ 正義はどっち ? 参照6300ありがとう御座います! ( No.494 )
- 日時: 2015/04/20 21:56
- 名前: コッコ (ID: Es192lT0)
ライヤが逃走ルートに嘘をつきましたね。嘘がばれライヤは殺されてしまうのかハラハラしています
- さぁ 正義はどっち ? 参照6300ありがとう御座います! ( No.495 )
- 日時: 2015/04/21 00:39
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
ミカイロウィッチ帝国ルート 068
根が張り巡らされてデコボコした樹海を、満身創痍で一週間歩き続けるとなると、結構な重労働である。クウヤは剣を杖代わりにして痛む脇腹を撫でようとして腕を上げ、さらに呻いた。
どこもかしこも痛い。
それなのに歩かなければならない。
「もう昼過ぎになっちゃうでしょ!痛いのはわかるけど急ぎなさい!」
前方で治れた巨木を乗り越えながら、アーリィが振り返ってクウヤに励ますともつかない怒鳴り声を上げた。
こっちは手首骨折で肋骨を打撲してるんだぞ?と大声を張ろうとするが、すぐに殴られたようにわき腹が痛み、堪えるように長くため息をつく。
「ぁあー…魔術で何か乗り物作り出してくれ…」
「何言ってんのよ、そんなの出来るわけないでしょうが」
大木の向こう側へぴょんと飛び降りたアーリィの言葉に、クウヤは立ち止まって息を整える。ここにイヴがいたなら泣き言文句ひとつ言わずずんずん進んでいただろうが、今は妹はいない。よって見栄を張る意味がない。
(樹海か…いい思い出はあんまりないな)
痛みをこらえて樹海を見回すと、約4年前の思い出が目の前に再現されるように、ぼんやりとした姿が森の中を駆け巡る。
小さな自分と、小さなイヴ、そして小さなシランがそれぞれの武器を片手に森を走り回って小動物に幻術を掛けて修行をしている。
そして樹海の中心にしずしずと立っている寂しい鉱山のてっぺんで、包帯を巻いた師匠が弟子たちの帰りを待っている…。
師匠との逃避行の間は、それが一種の旅行のようで楽しかった。しかし、容体が悪化する師匠と、その旅の結末に待っていた別れが、楽しかった三カ月ほどの思い出を黒く染めた。
(またきっと一緒になれるはずだ…)
イヴの作ってくれたマスコットに触れようとして、クウヤは痛みで飛び上がりそうになった。骨折した方の手首を動かしたため、声が出ないほど痛い。
それで現実に戻ったクウヤは、ふと、頭上を見上げた。何か巨大な影がわずかな木漏れ日を一瞬遮った気がしたのだ。
「鳥か—?」
頭上を見上げたクウヤは目を疑った。なにかよくわからない大きなものが、密集した樹木を突き破り、空からこちら目掛けて飛び降りてくる。
「見つけたァー!」
少女の甲高い声のような喚き声とともに、今しがたアーリィが乗り越えた倒木の上にどすんと着地したのは、後ろを向いた巨大なコウモリのような物体だった。
顔が見えないが、異様に長い尾がくるりととぐろを巻いて、今しがた倒してきたばかりのバケモノを思い出させ、思わず蒼白になる。
精神的にも肉体的にもいっぱいいっぱいの今、再びあの血肉戦をやれというなら死ぬ自信がある。
「アンタ…セイリーン?!」
呆然と立ち尽くしていると、倒木の向こう側から同じように困惑したアーリィの声が聞こえてきた。
「アンタ王女に化けてたんじゃなかったの?!命令無視してここまで来たわけ?!」
すぐ戻んなさい!と喚く声に、倒木の上の生命体はしゅんと縮こまる。その人間らしい表現の仕方に、クウヤはようやく事情が呑み込めてきた。
王国にフランチェスカ王女として置いてきたドッペルゲンガーのセイリーンが、なぜか奇妙なコウモリのような生命体になって後を追いかけて来たらしい。
セイリーンの縮こまる大木を遠回りしてアーリィの隣に立ったクウヤは、セイリーンを見上げる。
まるっきり王女の姿を捨てて、新たに奇妙な爬虫類コウモリに姿を変えたらしい。
その爬虫類じみた口が開き、おどおどした少女の声が答える。
「セイリーンがフランチェスカに化けてたことばれちゃった。ライヤのこともばれちゃった。ライヤが本をくれて、どうすればいいか教えてくれたの」
爬虫類セイリーンがアーリィに後ろ足でつかんでいた書物を差し出し、これでアーリィの機嫌が直るようにと願っているように見えた。
アーリィが書物を開けると、一見して普通の歴史書にしか見えなかったが、ある一ページだけ赤茶けてかすれた文字で中庭と書かれ、指で乱暴にこすったような、うねった羽の生えた蛇のように見える汚れが書いてあった。
「それ血なの。だからすぐわかった」
飢えるほど人好きなセイリーンが目を輝かせ、ライヤの血文字を首を伸ばして覗き込む。その長い首を見上げながら、訳が分からないとアーリィが本を閉じて質問する。
「ライヤがばれたって…スパイしてることがばれたわけ?」
「スパイってことがばれて、国王たちの前で尋問をされてたよ。ライヤは自分はもうだめだからワタシにこの本を預けて皇女サマに返しといてって頼んだの。でもワタシも奇妙だって疑われてバレて、逃げてきた」
「それでどうしてこんな恰好なの?」
アーリィが指を伸ばし、セイリーンの赤茶色の鱗一つ一つをゆっくりと撫でた。意外と滑らかなうろこは、人間の肌を鱗にしたような触り心地だった。
「ライヤが王国にドラゴンがいることを知らせたがったし、この姿ならすぐご主人を見つけられると思ったから」
なんですって?という大声に、セイリーンは1つずつ自分の知っていることを二人に話して聞かせた。
「例のバケモノはこの仲間かもしれないな…そうなるとまずいんじゃないか?」
「とにかく早く盗賊団の奴らと合流して帝国に帰って手を打たないと………それで、ライヤは生きているの?」
セイリーンは爬虫類の首を傾げて、悲しげに首を振った。
「今はもうわかんない…」
「そうか…」アーリィと顔を見合わせて、クウヤは苦り切った顔で首を振る。
「…それじゃ、海の方へ飛んでくれ。盗賊団の乗った船があるはずだから、とにかく合流しよう」
セイリーンの背中に乗り込んだ二人は、置き去りにしてきた仲間の末路を想像して、しばらくの間黙り込んだ。
今晩はコッコさん!
スパイの醍醐味と言ったら、仲間のために自分の命を賭けてウソをつくこと…裏切ると見せかけて裏切らないとこがスパイのかっこいいとこなんですよね!
そんな雰囲気が出てればいいんですけど…
コメントありがとうございます!
- さぁ 正義はどっち ? 参照6300ありがとう御座います! ( No.496 )
- 日時: 2015/04/25 15:59
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
ミカイロウィッチ帝国ルート 069
潮風が船室の窓から入り込み、イヴの血にまみれた民族衣装を徐々に乾燥させていく。リンの枕側に座りながら、イヴはぱらぱらと魔導書をめくっていた。
何が書いてあるのか全く分からないが、植物が唐草模様を描きながらうごめくような文字は見ているだけで楽しい。
触っても文字は反応しないが、本を閉じてまた同じページを開くとまったく違った模様を魅せてくれる。
今開いているページは文字に花が咲き始めたように見えた。
「きれい…どうやって作ったんだろ…」
内容はわからないが、窓辺に立てかけて延々と眺めていたくなる本だ。単なる本ならばシランを連れもどせなかった為こんなもの!と投げ捨てたくなるが、魔力のある本はイヴの心を慰めてくれた。
「ねぇあれ見て。何かとんでくる」
窓から外を覗いていたツヴァイが、イヴを振り返って声を掛けた。本を置いて窓から外をのぞくと、晴天の空のもと、何か黒い塊が雲の合間を漂っている。甲板で雑談をしていた団長たちも望遠鏡片手に空を指差していた。
「鳥にしては大きいね…しっぽが蛇みたい」
空を見ながらイヴがうーんと唸り感想を口にすると、ツヴァイが眉を寄せながらイヴを見上げた。
「さっきのバケモノの仲間だと思う?」
「どうだろう。そうじゃなきゃいいけど…」
またあの化け物が襲ってきたら、今度はイヴが最前線で戦わなければならない。化け物の精神をいち早く崩壊させて溺死でもさせなければ、この船はすぐに沈んでしまう。
空を旋回する物体は、日差しを遮って狭い甲板に黒い影を落とした。見えてくる物体は太陽を背にしており、眩しすぎてどんな姿か見当がつかないが、どうやらこちらに急接近しているという事だけはわかった。
その物体が巻き起こす旋風で波が波紋を引き起こし、船員たちはどたばたと走り回り、乱気流で船が大揺れしないように帆を急いで引き下ろす。
輸送用の小ぶりなこの船には大砲など積まれておらず、頼りになるのは各々の持つ武器のみだ。
イヴが槍片手に窓から飛び出していくと、甲板で背中を押されながらよろめくウィンデルとすれ違った。
戦闘員で無い彼を振り返ると、
「ウィンデル、お前は船室入ってろ!」
ヴィトリアルが船室の窓へと急いでウィンデルを放り込み、ツヴァイがあわててウィンデルの腕を引っ張って船室に引きずり込んだのが見えた。
すぐに閉められた窓のそばをナポレオン帽をかぶった船長がサーベルを抜いて走り過ぎ、船員たちを蹴飛ばす勢いでヴィトリアルの横に並んぶ。
「なんだありゃ、説明しろ」
「もしかしたら空飛ぶバケモンだ。とにかく海に突き落とせば何とかなるだろ…たぶん」
彼らの会話を聞きながら、イヴもそれしか方法はないとつばを飲み込む。
(ここで失敗したら、兄さんにもシランにも、そして師匠にも二度と会えなくなる。それは嫌…)
近づく化け物を見上げながら、イヴはすぐに適切な幻術が掛けられるようにと槍を構えた。
ある程度知能が無ければかけたところで無駄な幻術がいくつもある。たいていの野生動物なら五感を彷徨わせるか、体重を重くしてやれば無抵抗になる。逆を言えばある程度の知能が無ければ12の内、更にイヴが使用できる8つの幻術の内この二つしか効かないことになる。
そしてどちらも空中にいる場合落下してくる可能性が極めて高い。
「オールで船を移動させて…!」
イヴの滅多にあげない叫び声に、ナポレオン帽の船長は空にサーベルを振り回しながら怒鳴った。
「腕っ節自慢の筋肉野郎どもはオールで船を漕げ!」
船が人力で動くスピードよりも謎の生物が舞い降りる方がはるかに早く、イヴは最悪を覚悟しながら槍を振り上げて口を開いた。
「 サギッタリアス 」「 火の第九室 解除解除解除——! 」
ぐらりと傾いだ物体から、イヴの声をさえぎるように誰かがわめいた。その声に、イヴは誰よりも早く反応し、反射的に声を掛けたつもりがその張本人に先を越されてしまった。
「俺たちは敵じゃない、お前のお兄ちゃんだぞ、イヴ!」
盛大に叫びながら船の甲板目掛けて飛び降りてきた人物が、着地するや否や体を丸めてうずくまる。
「お兄ちゃんが帰って来たぞ…」
「いったいどういう事…?」
訳が分からず武器を構えた人物たちが兄を囲う中、イヴはそれをかき分けてうずくまる兄が本物であることに仰天していた。
まだ自分が幻術に掛けられていると思った方が納得できる。
戸惑うイヴの上に、化け物との未曾有の対峙を引き受けて樹海へ留まった魔女の声が下りてくる。
「アンタ満身創痍な癖に飛び降りるってどういう事よ?」
完全に船と同じ高さまで舞い降りてきた謎の生物は、赤茶色の背中にアーリィを乗せていた。武器を構えた船員たちは戸惑う様に顔を見合わせ、船長の指示を仰ぐ。
「こいつらは敵じゃない」同じように戸惑う船長に、ヴィトリアルが首を振って武器を下すようにと手で合図したが、まだ自分は剣を手放そうとはしなかった。
「大丈夫よ、アタシ達本物だから」それを見て、アーリィは甲板に飛び降りるなり振り返って小さなバケモノにそのまま飛び続けるように命令する。
赤茶色の鱗に覆われた小型のドラゴンめいた化け物は再び船の上空に舞い上がり、雲の中へとまぎれて見えなくなった。
唖然としてそれを見送っていると、アーリィが杖と共につかんでいた分厚い書物をヴィトリアルに差し出して言った。
「アレはセイリーンよ。アタシのドッペルゲンガーで、王女に化けていたやつ。ライヤに代わって帝国にこれを届ける役目を負ってるの」
「これってライヤの報告書だろ…?これを帝国へ送りつけてあいつは眺望活動をストライキってわけか?」
ライヤの眺望報告が暗号化されて記された本を受け取ったヴィトリアルが本の中身を見て無理に茶化そうとしたが、ページに付着した血文字がそれを全否定する。
「状況が急変したのよ。クウヤの手当てをしながら、知ってること話すわ」
なんでイヴ血まみれなんだ?と仰天しながら反動で痛がるクウヤの方へ足を向けながら、アーリィは首を振って呟いた。
参照6400感謝!
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