複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- さぁ 正義はどっち ? 参照13600ありがとう御座います!
- 日時: 2016/08/23 00:57
- 名前: メルマーク (ID: KzMBmi6F)
戦争と平和は正反対のものと考える人が多い世の中
それは本当なの?正義って何?悪って何?
答えが見つからないなら探せば良い。
多分異色な今までにない、正義についてのお話し。
答えはありませんが、きっと終わった後 何が正解か思い浮かぶはず。
時代は古きよき時代、中世頃にしようかと
オリキャラ募集一応締め切らせていただきます!
終章にもうじき突入予定なので‥・もしかしたらまた募集するかも・・・?
名前
性別
年齢
容姿
A国B国どちらの味方?(国名は長いので省略
性格
武器
サンボイ「」
職業は?下から選択下になければ新職業を書いてくれるとうれしいです
騎士 傭兵 盗賊 貴族 海賊 海軍 王室(王族をのぞく外交官・メイド・執事・王族のいとこ)関連
占い師 科学者(錬金術師) 芸術家 哲学者 商人 国民 旅人 魔法使い など
武器や変わった特徴などの要望も即採用です
結構な確率で”死ぬケース”もあるのでご了承ください!!
◇目次◆
王国ルート001 >>5 帝国ルート001 >>43
王国ルート002 >>15 帝国ルート002 >>49
王国ルート003 >>20 帝国ルート003 >>50
王国ルート004 >>23 帝国ルート004 >>54
王国ルート005 >>31 帝国ルート005 >>63
王国ルート006 >>66 帝国ルート006 >>81
王国ルート007 >>67 帝国ルート007 >>83
王国ルート008 >>68 帝国ルート008 >>90
王国ルート009 >>71 帝国ルート009 >>91
王国ルート010 >>74 帝国ルート010 >>93
王国ルート011 >>101 帝国ルート011 >>114
王国ルート012 >>103 帝国ルート012 >>117
王国ルート013 >>106 帝国ルート013 >>118
王国ルート014 >>108 帝国ルート014 >>120
王国ルート015 >>110 帝国ルート015 >>122
王国ルート016 >>123 帝国ルート016 >>183
王国ルート017 >>127 帝国ルート017 >>184
王国ルート018 >>133 帝国ルート018 >>187
王国ルート019 >>142 帝国ルート019 >>191
王国ルート020 >>144 帝国ルート020 >>193
王国ルート021 >>194 帝国ルート021 >>207
王国ルート022 >>197 帝国ルート022 >>208
王国ルート023 >>200 帝国ルート023 >>209
王国ルート024 >>203 帝国ルート024 >>210
王国ルート025 >>204 帝国ルート025 >>212
王国ルート026 >>214 帝国ルート026 >>232
王国ルート027 >>217 帝国ルート027 >>238
王国ルート028 >>219 帝国ルート028 >>239
王国ルート029 >>223 帝国ルート029 >>246
王国ルート030 >>224 帝国ルート030 >>258
王国ルート031 >>286 帝国ルート031 >>298
王国ルート032 >>287 帝国ルート032 >>304
王国ルート033 >>288 帝国ルート033 >>309
王国ルート034 >>292 帝国ルート034 >>312
王国ルート035 >>295 帝国ルート035 >>314
王国ルート036 >>317 帝国ルート036 >>329
王国ルート037 >>319 帝国ルート037 >>331
王国ルート038 >>321 帝国ルート038 >>334
王国ルート039 >>325 帝国ルート039 >>335
王国ルート040 >>326 帝国ルート040 >>336
王国ルート041 >>340 帝国ルート041 >>372
王国ルート042 >>347 帝国ルート042 >>375
王国ルート043 >>352 帝国ルート043 >>378
王国ルート044 >>353 帝国ルート044 >>382
王国ルート045 >>357 帝国ルート045 >>386
王国ルート046 >>387 帝国ルート046 >>399
王国ルート047 >>390 帝国ルート047 >>402
王国ルート048 >>393 帝国ルート048 >>407
王国ルート049 >>395 帝国ルート049 >>408
王国ルート050 >>398 帝国ルート050 >>409
王国ルート051 >>425 帝国ルート051 >>431
王国ルート052 >>426 帝国ルート052 >>433
王国ルート053 >>428 帝国ルート053 >>434
王国ルート054 >>429 帝国ルート054 >>436
王国ルート055 >>430 帝国ルート055 >>437
王国ルート056 >>442 帝国ルート056 >>450
王国ルート057 >>443 帝国ルート057 >>451
王国ルート058 >>446 帝国ルート058 >>453
王国ルート059 >>447 帝国ルート059 >>454
王国ルート060 >>449 帝国ルート060 >>461
王国ルート061 >>462 帝国ルート061 >>471
王国ルート062 >>465 帝国ルート062 >>472
王国ルート063 >>466 帝国ルート063 >>476
王国ルート064 >>467 帝国ルート064 >>477
王国ルート065 >>468 帝国ルート065 >>480
王国ルート066 >>482 帝国ルート066 >>492
王国ルート067 >>483 帝国ルート067 >>493
王国ルート068 >>487 帝国ルート068 >>495
王国ルート069 >>488 帝国ルート069 >>496
王国ルート070 >>489 帝国ルート070 >>499
王国ルート071 >>504 帝国ルート071 >>516
王国ルート072 >>506 帝国ルート072 >>517
王国ルート073 >>507 帝国ルート073 >>520
王国ルート074 >>509 帝国ルート074 >>521
王国ルート075 >>510 帝国ルート075 >>525
王国ルート076 >>528 帝国ルート076 >>539
王国ルート077 >>533 帝国ルート077 >>543
王国ルート078 >>534 帝国ルート078 >>545
王国ルート079 >>537 帝国ルート079 >>547
王国ルート080 >>538 帝国ルート080 >>548
王国ルート081 >>551 帝国ルート081 >>560
王国ルート082 >>552 帝国ルート082 >>562
王国ルート083 >>553 帝国ルート083 >>563
王国ルート084 >>557 帝国ルート084 >>564
王国ルート085 >>558 帝国ルート085 >>566
王国ルート086 >>571
王国ルート087 >>574
王国ルート088 >>575
王国ルート089 >>578
王国ルート090 >>579
◇カメルリング王国味方
>>2 ルーク 主人公
>>1 ミルフィーユ 発明家・美食家・資産家
>>4 キリエ 牧師・哲学者
>>16 ノイアー 傭兵
>>25 ラグ 執事
>>28 サイト 商人
>>29 リグレット 僧侶
>>39 ツバキ 軍人
>>55 ユニート 魔導師
>>58 ラルス 騎士
>>58 リリー 暗殺者
>>75 ジョレス 傭兵
>>78 フランチェスカ 王女
>>87 ハニー 妖精
>>99 シラン 術士
>>221 カルマ 学者・錬金術師・魔術師
>>289 フランキール 王子
>>440 シュバルツ 海賊
>>457 リレーナ 竜騎士
◆ミカイロウィッチ帝国味方
>>14 エドウィン 主人公
>>6 ヴィトリアル 盗賊
>>11 アーリィ 魔女
>>12 ゼルフ 黒騎士
>>12 リン メイド
>>27 シフォン 貴族騎士
>>30 イヴ 術士
>>37 ウィンデル 大道芸人
>>59 クウヤ 剣士
>>60 ツヴァイ 科学者(薬学)
>>76 ミレア 傭兵
>>78 シェリル 皇女
>>85 ディルム 精霊
>>96 ライヤ 偵察兵
>>98 セイリーン ドッペルゲンガー
>>278 レイ 魔女
>>305 故)フィア 魔女の弟子
>>305 故)キオ 魔女の弟子
◎味方につかない者
>>163 ソーサラー(呼称) 占星術師・幻術師
>>163 スキンヘッドハゲ(呼称) 盗賊
>>227 ヨメナイヤツ アドバイザー
キャラ応募してくださった皆様心よりお礼申し上げます!素敵なキャラをありがとう!!
◇番外編◆
参照四桁祝
・イヌ派ネコ派の王国日常 >>146
・絶対に信じちゃいけない言葉で帝国日常 >>150
・執事採用試験 >>156
・団長の足取り >>157-158>>160
・ある幻術師の思い出 >>162>>164>>170>>173>>175>>176
参照二千祝
・とあるメイドの追走劇 >>248>>254>>257>>260
・傭兵の黒と従者の白 >>263>>264>>269>>272>>274>>280>>281>>282>>283
参照三千&四千祝
・魔法使いの弟子 >>360>>363>>364>>367-368
・帝国サイド盗賊団と加担者でチビキャラ全員集合イラスト >>371
参照4500祝
・王国・番外ルートで抜粋チビキャラ集合イラスト >>404
銀賞&殿堂入り祝
・メイドと騎士と仲介人 >>415>>417-418>>421>>423
参照5000祝
参照6000祝
参照7000祝
金賞祝
参照8000祝
参照9000祝
参照10000祝!
参照11000祝!!
参照12000&13000祝!!!
保留
どんどん保留祝が増えて行っている…本編終わったら一気に大感謝祭とかやりたいなぁ、なんて考えてます
・・・業務連絡・・・
2014の冬の小説大会で銀賞もらえました!ありがとうございます!
2015の夏の小説大会で金賞もらえました!!ありがとうございますっっ!
参照5000祝いと6000祝、7000祝、8000祝9000祝そして10000祝。11000祝はのちほど…ッ!
時間軸まとめ >>234
- さぁ 正義はどっち ? 参照5600ありがとう御座います! ( No.461 )
- 日時: 2015/03/12 01:08
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
ミカイロウィッチ帝国ルート 060
船が波間に揺られてから約1時間ほど経過した頃、手術室もとい船舶室からツヴァイとイヴがようやく出て来た。間の悪いことに早い昼食をとっていた船長とヴィトリアル、ウィンデルの前に現れた二人は、食事中には絶対に見たくない格好をしていた。
仲良く三人甲板に座り込んで世間話でもしていた和やかな雰囲気は消し飛び、真っ先に最年少のウィンデルが口元を押さえて立ち上がり、手すりにつかまって苦しそうにうめいた。
「さすがに俺も魚に餌やっちまうかもな」
食べていた物を静かに皿に置き、ため息をつきながらヴィトリアルがウィンデルの背中をさすってやりながらぼやく。
船長だけは険しい顔をしつつまだ食い続けている。
そんな彼らの反応をよそに血まみれの白衣を引きずりながらツヴァイが報告する。
「手術は成功したよ。このままの容体なら、感染症にもかからないだろうし一命もとりとめるだろうね」
初めてオペを試みて好き勝手手術できたことに満足気にしているツヴァイに、同じく民族衣装を血まみれにしたイヴが口をはさむ。
「最初膿んだ部分を切り取る時失敗したくせに…そのせいで二人とも返り血が—」
「でもちゃんと縫ったじゃないか。君だって慌てて縫おうとしたとき間違って内臓の方を傷つけかけ—」
もう俺たち昼飯食えねぇ、着替えるまで側に来ないでください、という二人を遠目に、着替えの服の無い血まみれ二人組は昼食をとるわけにもいかずかといって甲板には出てくるなとくぎを刺されたため、船舶室で到着するまでぼうっとしているほかない。
船舶室には他にも魔導書を持たせたフランチェスカ王女もいたが、惨劇を実際に見ることが出来ない彼女はただニコニコしながら部屋の隅に座り込んでいる。
「リンももう大丈夫そうだし、魔導書と皇女を拉致できた…」血なまぐさい部屋で微笑みを浮かべる、すこし不気味とも取れる王女の笑顔を眺めながら、イヴは兄の安否を気遣う。
「あとは兄さんとアーリィが…無事なら…」
帰還組がまだ樹海を駆け抜け、船にもたどり着いていない頃、化け物と戦う二人組は化け物に背を向けて逃げるように走っていた。
「イヴ俺の心配してくれてるかな?」
「するんじゃないの、こんな化け物と戦うんならね!」
クウヤのため息交じりのぼやきに、背中につかまるアーリィがイライラしたように後ろを指差して応じる。
彼らの後ろでは化け物が世にもすさまじい悲鳴を上げて手あたり次第を巨大な前足で叩き潰してのたうち回っている。
「アンタさっきなにやったの?!アイツのたうちまくってるわよ!」
「いや、それが…」
その被害に飲み込まれまいと決死の思いで距離をとる二人だったが、ほんの数分前までは事は順調に行きかけていた。
数分前、クウヤの幻術、土の部屋第六室である「 ウィルゴ 」の強制労働により、全身を覆う鱗そのものを重くされた化け物は驚きに甲高い声で一鳴きすると地面にうずくまった。
何が起きたかわからないというような化け物を見据えて、アーリィを抱えたままクウヤがその眼前に立つ。
化け物の動きを止めてしまえば、剣を振る方の利き手が負傷していても楽にとどめを刺すことが出来るだろうとクウヤもアーリィも考えていた。
致命傷を負わせる前に少し問答をしたいということで、顔のそばにしゃがみ込んだ時だった。
「無様ね、化け物。聞くけど、アンタはいったいどういった生物なの?最後に聞いてあげるから言いなさい!」
毅然とした態度で言うアーリィの横で、ツヴァイからもらい受けた小瓶を右手に持ち替えたクウヤが短く悲鳴を上げて瓶を勢いよく放り投げてしまった。
「あぁっと…!マジかよ…」
どうやら化け物の尾が当たった右手の骨が折れたようで、少しでも曲げると激痛が走る。慌てて左手を伸ばして瓶を掴もうとするが、空中で叩き落とすような形になり、化け物の鼻孔、つまり鼻の穴へ転がり込んでしまった。
普通爬虫類の鼻孔は鱗の合間にぽっかりと空いており、他の生物と同じように舌の上に続いている。化け物が目を細め、鼻の奥へと転がり込んだ異物に反応していやそうに首をねじろうともがく。
そのうち呼吸により舌の上に到達した異物を、化け物は吐き出そうとするうちに硬い牙でかみ砕いたらしかった。
秘密兵器になるかもと言われていた瓶をかみ砕かれたことにあちゃーっと頭を抱えたクウヤだったが、化け物が突然悲鳴を上げたことでぎょっと目をむく。
そして重くて上がらないはずの尾と手足をめちゃめちゃに振り回しながら暴れる化け物からアーリィを引き離し、転がる様に背を向けて距離をとる。
そして、今に至るのだ。
「つまり何よ、薬品の入った小瓶をかみ砕いてあんなことになったわけ?」
クウヤの弁解めいた説明にアーリィがムッとした顔で怒鳴り返す。化け物の暴れ狂う声のせいで大声を上げないと会話が成立しないのだ。
「そーだよ。口の中が—なんかよくわかんないけど—溶けたんだろ、薬品のせいで」
肩までよじ登り頭を鷲掴みしてくるアーリィに、クウヤも負けじと声を張り上げて応える。
痛そうだぜ、と顔をしかめる割に化け物の心配はしていない。それもそのはず幻術にあらがってのたうち回り、後ろに目をやってみれば口から血を吐きながら怒り狂った形相で追いかけてきているからだ。
「どこが最終兵器だよ。とんだ挑発剤を贈呈されちゃったな」
やれやれだぜ、という風に悪態をつくクウヤの髪の毛をロボットの操作レバーのように引っ張りながら「いーからアンタは走って!」とアーリィが叫ぶ。
「このアタシの魔術よりちっぽけな薬品のほうが効果抜群って癪に障るわねッ」身をよじりながら化け物の方を振り返ったアーリィはさっと杖を振り上げる。
化け物の咆哮がとどろく血だらけの口へ、『インフェスティオ』!と炎竜巻を食らわせる。
唯でさえ柔らかな口内が、薬品で焼けただれ血があふれ出している惨状なのにそこへ焚き付けるような炎の渦が突っ込んできたのだ。化け物は迎え撃つように構えていたが、たちまちはじかれるように顔をそむけた。
けれどさらに容赦なくアーリィはピンクの杖を振り回す。
「『ヴァンフレア』『ベルミリオ』!」
大爆発の嵐に化け物は血を辺りにまきちらしながら、それでもなぜか瞳に強い光を讃えて反撃する。
「伏せて!破壊光線よ!」
化け物が光の柱を口から何発も連弾で放ち、たまらず風圧で二人が転がる様にでこぼこの地面に倒れこむ。すぐにシールドを貼ったおかげで蒸発死は免れたが、化け物も集中砲火を食らわせる。
しかも重い体を引きずりながら、破壊光線を打ちながら近づいてくる。
「ふざけんじゃないわよっ。このまま踏みつぶされたらおしまいじゃない!」
シールドを何層にも重ね破壊光線を防いでいるアーリィが喰いしばった歯の間から憎らしげに悪態をつく。
化け物は大木を踏み砕き、血の跡を作りながら復讐に目を光らせている。そしてシールドの中に寝転がる二人に血にまみれた牙をむき出しにしてにっと笑った。
- さぁ 正義はどっち ? 参照5700ありがとう御座います! ( No.462 )
- 日時: 2015/03/17 03:29
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
カメルリング王国ルート 061
城内をとぼとぼ歩くけれど結局錯乱状態に陥った人物や、ゾンビのように歩き回る人物は一人もいなかった。
そして、まだ城の中に潜んでいるはずの帝国の差し金もまた、見つからなかった。
すっきりしないままルークはシランに向きなおる。
「いないね。ラルスさんのとこに戻ろうか…侵入者の事も新しくわかったこともあるかもしれないし」
シランは足元に投げていた視線を上げてルークを見た。弟子仲間の正体が暴かれてからというもの、ずっとこんな調子だった。無理もないが、普段の能天気なほど客観的に問題を眺めるシランに戻ってほしかった。
うん、と頷いたシランだったが、踵を返すルークにちょっと待ってと小さく声を掛けた。
「まだ全部の部屋を見て回ったわけじゃないよ」
シランの指さす方向は王族たちの住まう部屋へと続く階段。確かに王家に関する部屋は省略しており他にも入らず素通りりした部屋がいくつかあったが、さすがに断りもなしに入るのはためらわれる。
「断りもなしに入っちゃまずいかな。でも僕ならそういった部屋に逃げ込むかな。それかさ—」
ルークの隣に歩み寄りながら、久々にシランがおもしろそうに推測を口にする。
ルークとしては友人であるシランが仮初めであったとしても復活したことが嬉しかったのだが、最後の推測には冗談はよしてくれと笑い飛ばしたくなった。
「それか、貴族の馬車に入り込んで脱出するとかさ!すごくスリルがあるだろうねぇ」
「よしてよ、いくら貴族が酔ってたからと言って御者さんはしらふなんだから叫び声くらいあげられるし、門番が気付くと思うよ?」
だよね、でもこういうの考えるのおもしろいや、とシランはぎこちなく笑う。
それから二人は一端ラルスのもとへ行くことにした。報告と、一応王族の部屋の確認についてだ。
「国王様達の部屋を…?」ルークたちの報告に、ラルスは目を丸くする。
王国の名誉ある白騎士団長は数々の権限を持っているが、こればかりは一人では判断できないと困ったように顎を撫でて王族たちを振り返る。
聞き耳を立てていた王族連中が、ここの反応を返す。国王夫妻はじっとラルスを直視し、キール王子は目を光らせ、フランチェスカ王女は少し怯えたように首をすくめた。
その各々の反応を見てため息をついたラルスは、「王族の部屋の調査は俺に任せろ」とルークとシランの背中に手を添えて、扉の方へと歩き出す。
「二人とも、ここは俺に任せてツバキの手伝いをしてきてくれ。ツバキは王城の外にいる。さぁ行って…」
扉の外へ軽く押し出されると、振り返る間もなく扉は閉ざされた。分厚い扉ごしに、くぐもったやり取りが聞こえてくる。再びキール王子が捜索に参加したいとか言い出したのを、なだめるようにラルスが止めているのだろう。
そのやりとりに他人事笑いを浮かべながら、シランとルークは城の外へを歩き出す。もう眠すぎて、ちょっとしたことでも気が抜けたように笑えてしまうのが余計おかしかった。更にこの睡魔は厄介なことに、帝国の賊の侵入が大したことがないことのように思えてくる。
盗まれたのは魔導書一冊だけじゃないか、とカルマには申し訳ないがそう思い始めている輩はおそらく沢山いたに違いない。
「あぁ、二人とも」城の外に出ると、ツバキはすぐ見つかった。深刻そうな顔で数人と顔を突き合わせて話していたようで、二人を見ると手招きした。
ツバキと話をしていたのは王家の暗殺者リリーと、同じような赤毛の女性と鎧に身を包む騎士だった。ルークとシランがその輪にちかよっていくと、赤毛の女性はリリーに何やら頷いて、少し駆け足で輪から離れていく。
「私はシュバルツにも知らせてくる。アノ仔を使えば馬より早いから…」
「えぇ、頼みますよリレーナ。それからどうかお気をつけて…」
赤い鎧をがしゃがしゃいわせながらリレーナと呼ばれた女性は心配そうなツバキに軽く微笑んで、王城の裏手へと掛けて見えなくなった。
なんとなくリリーに雰囲気が似ているなぁと見送っていたルークだったが、ツバキが話しかけてきたので意識をツバキに集中する。
「わっち達はこれより城下町へ走査線を広げるのでありんす。シュタイン亭の方面は既にジョレスとノイアーが捜査しているからして、二人には不審な人物が税関を越えなかったかどうか調査してくるように願いたい」
でも誰も王城から出るところを目撃していないんですよ、という言葉を飲み込んでシランとルークが目を合わせていると、ツバキが苦虫をかみつぶしたような渋い顔をした。
代わりにリリーがこともなげに言ってのける。
「これだけ探していないとなると、既に城からは逃亡していると考えた方がしっくりくる。そうでしょう」
赤毛を揺らして重々しいフードを取り去ると、リリーは税関まで一緒にいこうと二人に言う。
ツバキも頷いて二人に早く出発するように促したので、ルークはシランの推測が正しかったのだろうか、でも論理的に考えればその答え似たdりつくのは当たり前だ…と身も凍るような思いをしながら、夜色のマントに身を包むリリーの後について歩き出した。
ルートカウントどうしよう…
参照5700ありがとうございます!!帝国のルートがすごいことになっている間の王国ルートは、書くのがややムズカシイ…
- さぁ 正義はどっち ? 参照5700ありがとう御座います! ( No.463 )
- 日時: 2015/03/17 09:14
- 名前: コッコ (ID: er9VAvvW)
リリーとリレーナの姉妹が登場しましたね。諦めずに頑張ってください。
- さぁ 正義はどっち ? 参照5700ありがとう御座います! ( No.464 )
- 日時: 2015/03/17 12:34
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
コッコさんこんにちは!!
な、なんとかやってみます…!でないと2周年に持ち越しになる羽目に…!
リレーナさんとシュバルツさんはさらに後々出番が出てきますよー
一日に3、4話更新すればまだ間に合ry
- さぁ 正義はどっち ? 参照5700ありがとう御座います! ( No.465 )
- 日時: 2015/03/17 19:35
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
カメルリング王国ルート 062
リリーやシランと共に城下町を見て回るにはあまり楽しいとは言えない時刻だった。開いている店は酒屋がほとんどで、その多くがシュタイン亭のような気軽に誰もが戸を叩ける雰囲気ではない。
喧嘩の怒号が聞こえたかと思えば、野次に似た歓声と何かをぶんなぐる鈍い音が響いてくる。
リリーは素知らぬ顔で通り過ぎ、ルークもシランと顔を見合わせいくら帝国の手先だとしても怪我を押してこんなところへは絶対に入り込まないだろうと頷き合う。
けれどリリーはルークとシランを税関まで送り届けたのち、この酒場も調査しなくてはと脳内で小さくつぶやく。
そんなことは露知らず、貴族街とは反対方向の小ざっぱりした通称庶民街の家々が肩を寄せ合う通りまで来ると、ふいに頭上の暗闇で何か巨大なものがはばたいた。
鳥の柔らかな羽ばたきとは違い、まるでコウモリがパタパタ飛ぶような音だ。
「何…?」
わずかな街灯の明かりをたよりに音の正体を突き止めようと頭上を見上げるが、その物体は何か長くとぐろを巻くように状態を持ち直し、夜空に消えていく。
一瞬蛇みたいなうろこがびっしり見えた気がするが、思い違いだとルークは目をこする。
「姉さんがブラックローに伝令を伝えに行ったみたい」
暗闇に目をすかすように細めながらリリーが言う。もう見えなくなった軌跡を追いながら、ルークが目を丸くした。
「リリーさんにお姉さんがいるんですか?もしかして、さっき話してた赤毛の女の人?」
うん、と姉リレーナとうり二つの赤毛を揺らしてリリーが頷き、マントを翻してきびきびと先を歩き出した。
「リレーナ姉さんは白騎士の団員で、ルーク君が城に来るちょっと前からある問題ごとを抱えていて、あまり部屋の外に出てくる機会がなかったんだよ」
ふうん、とシランも興味深そうに頷くところからすると、シランもその問題ごととやらは知らないらしい。深く聞かない方が良いのかと遠慮していると、リリーは歩きながらマントの端をいじくるようなしぐさをした。
「ラルス白騎士団長と結婚した後、二人で旅行だとかでほんの少しの間ハートレイ公国のエルシュノートという辺境の地へ行っていたんだよ—」
困惑したような、ただちょっと面白がるような半々の笑いを浮かべてリリーが呟くが、驚愕の事実にルークが大声を上げ話の腰を負った。
「えぇっ、ってことはリリーさんはあのラルスさんの義理の妹ってことに?むしろ、結婚してたんですかラルスさんは!」
これから飲み明かすために店から店へとはしごをかけていた酔っ払いたちが振り返るほど、ルークの声は出かかった。
それをややびっくりしたようにリリーが頷き、続きを言うのだがそれには今度はシランが絶叫する。
「エルシュノートから帰ってきた姉さんは、ドラゴンと一緒に帰ってきたんだ—」
「ドラゴン!そんなのが存在するんですか?!」
まぁ秘密兵器として温存していたから知らない人がいてもしょうがないとリリーはドラゴンの存在をすんなり認める。
「ウソ、あれって絶対作り話ですよ?もしかしてユニートさんが使うような使い魔みたいなやつですか?」
私も姉さんも魔術には精通してないから詳しくは知らない、とリリーは面倒くさそうに言って先を歩き続ける。
「ただ国王様は帝国との戦いで訓練したそのドラゴンを使用するらしいね…どうやったかは知らないけどリレーナ姉さんになついてるらしい」
「カルマに聞けば詳しく話してくれるかな?」
ドラゴンなんて僕は見たことないよ!とシランが目を輝かせて言うが、リリーは首を振る。
「夢中になっているうちにドラゴンに食われるかもしれないからと、カルマという魔法使いにはドラゴンの存在は教えていないと姉さんが言ってた。もし魔法使いの使い魔ならそのドラゴンを召喚した奴はエルシュノートにいると思うけど…」
ここから海を隔てたところにある島国だとリリーは言うが、ルークは聞いたことがなく首をひねる。
そうこうしているうちに、ドラゴン話譚は終了した。税関が遠目に見えてきたため、リリーはそれじゃと足を止めた。
「二人は税関での不審人物の調査が終わったら、シュタイン亭でジョレスたちと情報交換をして、異常がなければ城へ帰ってくるといい」
たまにちょこちょこ出てくる、ハートレイ公国のエルシュノートはちなみに次回作の舞台だったり
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114