複雑・ファジー小説

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さぁ 正義はどっち ? 参照13600ありがとう御座います!
日時: 2016/08/23 00:57
名前: メルマーク (ID: KzMBmi6F)

戦争と平和は正反対のものと考える人が多い世の中
それは本当なの?正義って何?悪って何?
答えが見つからないなら探せば良い。

多分異色な今までにない、正義についてのお話し。
答えはありませんが、きっと終わった後 何が正解か思い浮かぶはず。
時代は古きよき時代、中世頃にしようかと

オリキャラ募集一応締め切らせていただきます!
終章にもうじき突入予定なので‥・もしかしたらまた募集するかも・・・?


名前
性別
年齢
容姿
A国B国どちらの味方?(国名は長いので省略
性格
武器
サンボイ「」
職業は?下から選択下になければ新職業を書いてくれるとうれしいです

騎士 傭兵 盗賊 貴族 海賊 海軍 王室(王族をのぞく外交官・メイド・執事・王族のいとこ)関連
占い師 科学者(錬金術師) 芸術家 哲学者 商人 国民 旅人 魔法使い など

武器や変わった特徴などの要望も即採用です
結構な確率で”死ぬケース”もあるのでご了承ください!!

◇目次◆   


王国ルート001 >>5    帝国ルート001 >>43
王国ルート002 >>15    帝国ルート002 >>49
王国ルート003 >>20    帝国ルート003 >>50
王国ルート004 >>23    帝国ルート004 >>54
王国ルート005 >>31    帝国ルート005 >>63
王国ルート006 >>66    帝国ルート006 >>81
王国ルート007 >>67    帝国ルート007 >>83
王国ルート008 >>68    帝国ルート008 >>90
王国ルート009 >>71    帝国ルート009 >>91
王国ルート010 >>74    帝国ルート010 >>93
王国ルート011 >>101   帝国ルート011 >>114
王国ルート012 >>103   帝国ルート012 >>117
王国ルート013 >>106   帝国ルート013 >>118
王国ルート014 >>108   帝国ルート014 >>120
王国ルート015 >>110   帝国ルート015 >>122
王国ルート016 >>123   帝国ルート016 >>183
王国ルート017 >>127   帝国ルート017 >>184
王国ルート018 >>133   帝国ルート018 >>187
王国ルート019 >>142   帝国ルート019 >>191
王国ルート020 >>144   帝国ルート020 >>193
王国ルート021 >>194   帝国ルート021 >>207
王国ルート022 >>197   帝国ルート022 >>208
王国ルート023 >>200   帝国ルート023 >>209
王国ルート024 >>203   帝国ルート024 >>210
王国ルート025 >>204   帝国ルート025 >>212
王国ルート026 >>214   帝国ルート026 >>232
王国ルート027 >>217   帝国ルート027 >>238
王国ルート028 >>219   帝国ルート028 >>239
王国ルート029 >>223   帝国ルート029 >>246
王国ルート030 >>224   帝国ルート030 >>258
王国ルート031 >>286   帝国ルート031 >>298
王国ルート032 >>287   帝国ルート032 >>304
王国ルート033 >>288   帝国ルート033 >>309
王国ルート034 >>292   帝国ルート034 >>312
王国ルート035 >>295   帝国ルート035 >>314
王国ルート036 >>317   帝国ルート036 >>329
王国ルート037 >>319   帝国ルート037 >>331
王国ルート038 >>321   帝国ルート038 >>334
王国ルート039 >>325   帝国ルート039 >>335
王国ルート040 >>326   帝国ルート040 >>336
王国ルート041 >>340   帝国ルート041 >>372
王国ルート042 >>347   帝国ルート042 >>375
王国ルート043 >>352   帝国ルート043 >>378
王国ルート044 >>353   帝国ルート044 >>382
王国ルート045 >>357   帝国ルート045 >>386
王国ルート046 >>387   帝国ルート046 >>399
王国ルート047 >>390   帝国ルート047 >>402
王国ルート048 >>393   帝国ルート048 >>407
王国ルート049 >>395   帝国ルート049 >>408
王国ルート050 >>398   帝国ルート050 >>409
王国ルート051 >>425   帝国ルート051 >>431
王国ルート052 >>426   帝国ルート052 >>433
王国ルート053 >>428   帝国ルート053 >>434
王国ルート054 >>429   帝国ルート054 >>436
王国ルート055 >>430   帝国ルート055 >>437
王国ルート056 >>442   帝国ルート056 >>450
王国ルート057 >>443   帝国ルート057 >>451
王国ルート058 >>446   帝国ルート058 >>453
王国ルート059 >>447   帝国ルート059 >>454
王国ルート060 >>449   帝国ルート060 >>461
王国ルート061 >>462   帝国ルート061 >>471
王国ルート062 >>465   帝国ルート062 >>472
王国ルート063 >>466   帝国ルート063 >>476
王国ルート064 >>467   帝国ルート064 >>477
王国ルート065 >>468   帝国ルート065 >>480
王国ルート066 >>482   帝国ルート066 >>492
王国ルート067 >>483   帝国ルート067 >>493
王国ルート068 >>487   帝国ルート068 >>495
王国ルート069 >>488   帝国ルート069 >>496
王国ルート070 >>489   帝国ルート070 >>499
王国ルート071 >>504   帝国ルート071 >>516
王国ルート072 >>506   帝国ルート072 >>517
王国ルート073 >>507   帝国ルート073 >>520
王国ルート074 >>509   帝国ルート074 >>521
王国ルート075 >>510   帝国ルート075 >>525
王国ルート076 >>528   帝国ルート076 >>539
王国ルート077 >>533   帝国ルート077 >>543
王国ルート078 >>534   帝国ルート078 >>545
王国ルート079 >>537   帝国ルート079 >>547
王国ルート080 >>538   帝国ルート080 >>548
王国ルート081 >>551   帝国ルート081 >>560
王国ルート082 >>552   帝国ルート082 >>562
王国ルート083 >>553   帝国ルート083 >>563
王国ルート084 >>557   帝国ルート084 >>564
王国ルート085 >>558   帝国ルート085 >>566
王国ルート086 >>571
王国ルート087 >>574
王国ルート088 >>575
王国ルート089 >>578
王国ルート090 >>579


◇カメルリング王国味方

>>2 ルーク 主人公
>>1 ミルフィーユ 発明家・美食家・資産家
>>4 キリエ 牧師・哲学者
>>16 ノイアー 傭兵
>>25 ラグ 執事
>>28 サイト 商人
>>29 リグレット 僧侶
>>39 ツバキ 軍人
>>55 ユニート 魔導師
>>58 ラルス 騎士
>>58 リリー 暗殺者
>>75 ジョレス 傭兵
>>78 フランチェスカ 王女
>>87 ハニー 妖精
>>99 シラン 術士
>>221 カルマ 学者・錬金術師・魔術師
>>289 フランキール 王子
>>440 シュバルツ 海賊
>>457 リレーナ 竜騎士

◆ミカイロウィッチ帝国味方

>>14 エドウィン 主人公
>>6 ヴィトリアル 盗賊
>>11 アーリィ 魔女
>>12 ゼルフ 黒騎士
>>12 リン メイド
>>27 シフォン 貴族騎士
>>30 イヴ 術士
>>37 ウィンデル 大道芸人
>>59 クウヤ 剣士
>>60 ツヴァイ 科学者(薬学)
>>76 ミレア 傭兵
>>78 シェリル 皇女
>>85 ディルム 精霊
>>96 ライヤ 偵察兵
>>98 セイリーン ドッペルゲンガー
>>278 レイ 魔女
>>305 故)フィア 魔女の弟子
>>305 故)キオ 魔女の弟子

◎味方につかない者

>>163 ソーサラー(呼称) 占星術師・幻術師
>>163 スキンヘッドハゲ(呼称) 盗賊
>>227 ヨメナイヤツ アドバイザー

キャラ応募してくださった皆様心よりお礼申し上げます!素敵なキャラをありがとう!!

◇番外編◆

参照四桁祝
・イヌ派ネコ派の王国日常 >>146
・絶対に信じちゃいけない言葉で帝国日常 >>150
・執事採用試験 >>156
・団長の足取り >>157-158>>160
・ある幻術師の思い出 >>162>>164>>170>>173>>175>>176

参照二千祝
・とあるメイドの追走劇 >>248>>254>>257>>260
・傭兵の黒と従者の白 >>263>>264>>269>>272>>274>>280>>281>>282>>283

参照三千&四千祝
・魔法使いの弟子 >>360>>363>>364>>367-368
・帝国サイド盗賊団と加担者でチビキャラ全員集合イラスト >>371

参照4500祝
・王国・番外ルートで抜粋チビキャラ集合イラスト >>404

銀賞&殿堂入り祝
・メイドと騎士と仲介人 >>415>>417-418>>421>>423

参照5000祝
参照6000祝
参照7000祝
金賞祝
参照8000祝
参照9000祝
参照10000祝!
参照11000祝!!
参照12000&13000祝!!!
保留
どんどん保留祝が増えて行っている…本編終わったら一気に大感謝祭とかやりたいなぁ、なんて考えてます

・・・業務連絡・・・

2014の冬の小説大会で銀賞もらえました!ありがとうございます!
2015の夏の小説大会で金賞もらえました!!ありがとうございますっっ!
参照5000祝いと6000祝、7000祝、8000祝9000祝そして10000祝。11000祝はのちほど…ッ!


時間軸まとめ >>234

さぁ 正義はどっち ? 参照5700ありがとう御座います! ( No.466 )
日時: 2015/03/17 23:02
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)

カメルリング王国ルート 063


 税関の役人たちに聞いたところ、ここを通り抜けた人物は今夜は多いそうだ。
「今日は王城ですごい晩餐会があったそうだからねぇ」
顎をさすりながら、ぜひとも自分も見たかったとおじさんたちが笑い合う。ハルバートの柄を握るよりビールジョッキを握っていた方が嬉しいに違いない。
「ちょっとでも妙な人たちは居ませんでした?血まみれだとか、妙に挙動不審だったとか…」
それでもしつこく問いを重ねていけば、税関の手の空いた連中までも一緒に記憶を紐解いて協力してくれる。
「人って言ってもねぇ、馬車が多かったから人の顔はあまり見なかったし。地方の役人の婦人とか郊外に住む貴族たちの馬車の中は詮索できないからね」
中途半端な権力者たちはすぐ血筋とか秘密主義を引っ張り出してきて庶民を見下すからなぁ、とハルバートを抱えた兵士がぼやくように肩をすくめていう。
「以前それで名誉棄損だとかで護衛に切り殺されかけたやつもいたし、暗殺者を送り込むようなやな奴もいるんだ」
暗殺者ときいてリリーを思い浮かべたルークはひきつった笑みを浮かべる。
「今回もここから出ていったほとんどの馬車がそういった連中だな。他はロバ引きの幌馬車と、徒歩での出国だけだ」
血まみれなんてやつがいればすぐ保護する、以前地方の貴族の娘さんがぼろぼろにやつれて歩いてきたときもちゃんと保護を申し出たくらいだ、と彼らは腰に手を当ててつづけた。

「ありがとうございました」
彼らにお礼を言い、神妙な顔をしたままルークとシランはシュタイン亭へと足を向ける。
呼び鈴とおかみさんの明るい声に迎えられて、ほんの少しだけ気分が明るくなるけれど、同じように辛気臭い顔をした仲間を見て、また表情が曇る。
「いらっしゃいボウヤたち!」
ルークを見るとカウンターから身を乗り出すようにしてシュタイン婦人が朗らかに笑いかける。
そのカウンターにはジョレスと、カウンターに突っ伏すように顎を乗せるノイアーがおり、いつもの常連客がまばらに席についている。
「よぉ」
ジョレスの隣に座ると、嫌な予感の前触れを感じてかジョレスがぎこちなく笑いかけてくる。
ノイアーは目だけをくるりと動かして、ルークとシランを見上げた。
女将さんはカウンターに肘をつき、片手でフライパンを操作しながら軽く声を掛けた。
「そういえば最近ミルフィーユさん達こないけど、万能シェフロボットでも発明したのかしら?」
ニコニコした明るい冗談だったが、ルークは二人のことを思い出して、日が陰る様に暗く笑みを返すだけ返したっきり、その話題に触れる前にジョレスに話し出す。

「そうか…こっちも似たような情報だけだな。血まみれの二人組や不審者は確認できなかったし、いたとしても花火騒ぎで発狂したたちの悪い酔っ払いどもだけだったぜ」
一通りルークの話を聞いた後、ジョレスが視線を落としながら言った。
「ジョレスさん、このマスコットに似た人たちは居なかった?」
すかさず右手に握りしめていたイヴとクウヤと師匠のマスコットをジョレスに突き出しながら、期待したようにシランが目を輝かせる。
人形をみて、ノイアーとジョレス、シュタイン婦人までもが不思議そうに首を傾げた。
「見てないぞ」眠さのピークが過ぎたように少し充血した青い目でマスコットを見つめながらノイアーが首を振る。
ジョレスも知らないという様に肩肘をついた。
「なんだ、じゃもう城へ行こう?ツバキさんやラルスさんにも報告した方が良いだろうし。いい加減ユニートさんも帰ってきたかもしれないし」
しょぼくれながらマスコットをベルトに括り付け、シランがため息をつきながら号令をかけ、カウンターから離れる。
その途端、シュタイン婦人がシランを呼び止めた。
「ちょっとまってボウヤ、そのマスコットの二人組、見たかもしれないわ」



さぁ 正義はどっち ? 参照5700ありがとう御座います! ( No.467 )
日時: 2015/03/17 23:36
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)

カメルリング王国ルート 064



背中をかがめ、風の抵抗を少なくしながら、リレーナは鱗に覆われたドラゴン—正確にはワイバーンの背中を撫でる。
ワイバーンは爬虫類の足の代わりに、コウモリの前足のように皮膜が張っており、手と翼が合体したような不思議な翼を持っている。
当初この仔を見つけたときは思わず化け物と叫んだが、やけに人懐こいこのワイバーンは今やリレーナの小さな二人目の妹のようだった。
その背中に馬用の鞍を取り付けただけの簡易な装備で空を飛ぶなんてどうかしていると、たまにラルスは文句を言うけれどリレーナは戯言と一蹴している。
そもそも成人女性一人を乗せれば、小型のワイバーンには他に重装備を施す余地がない。重い荷物を載せれば飛行速度も遅くなり、矢で狙われたらおしまいだ。
さらにこのワイバーン、翼を持って生まれたように見えるが、とぶことに慣れていない様子でしょっちゅう尾を振り回すようにしばしば回転しながら飛ぶのだ。
重装備がワイバーンに絡まる危険性も考慮すれば、ほとんど命綱なしの方がかえって安全である。

そのワイバーンに乗りながら、リレーナは冷たい夜空を越えてカメルリング王国の遠い海にやっと到着した。
星にかすかに照らされる黒い海に浮かぶ海賊船へふわりと舞い降りるとすかさず海賊船の乗員がサーベル片手に走りこんでくるが、リレーナだとわかれば、彼らはすぐ船長を呼びに走りに行った。
50すぎの黒づくめ、黒い海賊船、顔の大半を覆い尽くす髭の男が出てきて、リレーナを船長室に迎えた。
「おぉ、あのバケモンも一緒だとは…うむ、肉は食うかなこコイツめは」
新し物好きなこの男、シュバルツ・ブラックローは鋭い青い目に好奇心旺盛な色を讃えて、夕食の際に残った肉類をドラゴン目掛けて投げつける。
「しかし、エルシュノートの寂れた田舎町にこんな生物が生息しているとは…私もぜひとも手に入れたいもんだ」
むしゃむしゃ肉に飛びつくワイバーンをにんまりしながら眺め、葡萄酒片手に景気よく笑うシュバルツに、リレーナは腕組みしながら詰め寄る。
「私の大切な相棒の話をしに来たわけじゃない、王国の大事な話をしに来たんだよ、シュバルツ?」
体格のいいシュバルツに、彼の腰かけた肘掛け椅子に乱暴に足を掛けながらリレーナはその鼻先をシュバルツに近づけて威勢良く言い放つ。
のけぞる様にしぶしぶ頷いたシュバルツは、テーブルに瓶を置くと腕組みして話を促した。
「それで?」
「カメルリング城に帝国の手先が侵入したらしい。不審な人物が帝国に向かっていないかどうか、調査してくれないか?その人物どもは手負いらしく、血まみれだそうで目立つらしい」
そこまで言うと、蹴り戻すように椅子から足を引いてリレーナがため息つきながらワイバーンの額を撫でてぼやく。
「だが、まだ見つかっていない。どうやらうまく監視の目をすり抜けて城を…もしかしたらすでに王都を脱出した可能性がある」
見つけ次第叩き潰したっていいよ!とリレーナが強気にいうと、シュバルツは帝国の野郎めが、と何やら悪態をつきつつ、頷いた。
「わかった。私たち海賊は海辺の周囲と、樹海近辺の捜索をする。不審人物がいたらすぐ縛り上げてやろうぞ?」
そうこなくちゃね、というように笑みを交わして、リレーナは挨拶をそこそこにワイバーンの背に飛び乗って、再び空へ舞い上がった。
星に包まれた夜空はまだほの暗く、太陽が地平線から体を起こすにはもうしばらくかかるだろう。



さぁ 正義はどっち ? 参照5700ありがとう御座います! ( No.468 )
日時: 2015/03/18 00:47
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)

カメルリング王国ルート 065



「どこで!どこでです?!」
シュタイン婦人に飛びかからんばかりの勢いで、シランはカウンターを両手でたたいた。
酒場の喧騒が静まり、皆驚いた顔でシランを見上げる。
「一昨日になるかしら、旅芸人の子達がちょうどほぼ夜明けにやってきたときだから…」
女将さんがシランの剣幕にびっくりしつつ、首をひねって続けた。
「旅芸人のボウヤ達と他の一組の旅人と同じくらいに、この店に来てたわね。マント付きのフードをかぶっていたけどずいぶん思いつめた顔をしていたからよく覚えてるわ」
「あの、それで、みんな…それから見かけました?包帯巻いた優しそうな人は居ませんでしたか?」
切羽詰まったような、何から聞けばいいのか分からないようにシランが口ごもりながら問いかけた。
必死に三つのマスコットを女将さんに見せて、せがむように話してくれと頼み込む。
はたから見れば狂気の沙汰だが、事情を知っているだけにルークもとめられない。
その上、今やイヴとクウヤという兄妹には帝国の差し金疑惑がかかっている。彼らの足取りがつかめれば、血まみれ二人組の行方も分かるかもしれない。
「そうねぇ、燃えない人間の手品の後、それぞれバラバラに出て行っちゃったし…」
困ったようなおかみさんの気配を察して、その日もいつものように常連していた客の一人が助け舟を出す。
「俺がその燃えない人間に抜擢されたわけよ。急に水か何かぶちまけられてあっけにとられていたら次の瞬間には俺は火を出してたわけさ」
笑いながら話す男は丸坊主で、その時に居合わせた他の客も大声で笑いながら頷く。
「殺人事件が起こったかと思ったぜ、あんときゃあ…他にいた客はえーっとー…」
丸坊主の燃えない男が首を巡らせて常連客を眺めまわし、そのほとんどが酒につぶれてろれつが回らないのを見て悪態をつきつつ、急にぱっと顔を明るくさせた。
「そうだ!ライヤもあんときいたよな?俺が燃えてた時によ?」
アイツはしらふだったから俺たちより正確に話してくれるだろうぜ?何なら引っ張ってくるか?と大男たちが立ち上がる。
「ぜひ!お願いします!」
シランが目を輝かせて、思わずこぼれそうになる笑顔のまま頼み込み、数人の酔っ払いの大男たちが笑い合いながら出ていく。
「良かった、もういちど手がかりがつかめそうだよルーク!」
カウンター席に飛び乗り、おかみさんの手を握りしめながら何度もお礼を言い、シランはルークの背中を叩く。
「あー、うん」シランは彼らが帝国の差し金疑惑が掛けられたことを忘れたのだろうか、と内心思いつつも、ルークも大人しくシランの隣に座る。


2、30分経っても大男たちとライヤという人物は来なかった。シュタイン亭の壁にかかる時計は朝4時ごろを差出し、一旦ツバキ団長に報告に行ってくると立ち去ったジョレスとノイアーが再び戻ってきたころには朝6時になっていた。
すっかりカウンターに伸びて眠りこけていたルークとシランは、急激なドアの開閉音ではっとして目を覚ました。
「やあっと見つけたぜ。こいつだコイツ!」
放り込まれるようにして店内に入ってきた人物は、ひどく眠そうでぐったり疲れた若い男だった。
黒髪は長時間冷たい風にさらされたようにぼさぼさしていたし、寒くてしょうがないという様にマントを体に巻き付けている。
「勘弁して、酒は今日はいらないよ…明後日にまたおごってくれる?」
大あくびしながら店から出て行こうとするライヤという青年に、大男たちは悪酔いしたためか、プロレス技を掛けるように首に腕を掛け、乱暴にカウンターの一つに座らせた。
「宿にもいなくてな、ほんの三十分前に税関を通り抜けてやがったから引っ張ってきた。大方郊外のねーちゃんでもひっかけてたんだろう?」
ライヤは耳元で騒がれるのがいやらしく、茶色の目をこすりながら片耳を面倒くさそうに塞いだ。
「もう眠いんだ。明後日にしてくれない?ここにいくら可愛い女の子がいたとしても、俺はもう今日は帰って寝る」
そりゃ困るよ、ちょっと僕の質問に答えてったら、と今まで黙っていたシランが乱暴にライヤのマントを引っつかんでカウンターに座らせた。
ライヤが不平を吐き出す前に、その眼前にマスコットを吊り下げる。
「一昨日、イヴとクウヤが旅芸人と一緒にシュタイン亭に来たんだって?その時の事詳しく聞かせて!包帯を巻いた人はいなかった?彼らはどこに行ったか知っている?」
「イヴとクウヤだって?!それと包帯?」
かなり迷惑そうに眼をこすっていたライヤが、シランの言葉に心底驚いたように声を上げた。
そして信じられないという様にしげしげとマスコットを見て、シランを上から下まで眺めた。
「知ってるの?知り合いなのか?!」
胸ぐらをつかむ勢いで問いただすシランに、ライヤはふいに黙り込んだ。
なにやら寝ぼけた頭で何かを考えている様子にも見えるし、もう疲れ切って応えるのも疲れたというようにも見える。
「あー…やっぱりあれだ、寝ぼけてたみたいだ。そんな奴ら知らない」
しばらくしてライヤがぼそりとつぶやく。
再びマスコットを眺め、目を細めながらシランの紅い目と淡い紫色の髪を見て不思議な顔をしながら目をそらした。
「ちゃんと見てよ、彼らがどこに行ったか知らない?」
しつこく聞くものの、それっきりライヤは先程のような眠そうな反応しか返さなくなり、シランはがっくり項垂れたようだ。
そのやり取りを遠巻きから見ていたジョレスが、シランが黙ったことをきっかけにライヤに声を掛けた。
「お前…前にあったよな?旅芸人の御者を…してたろ?」
ジョレスの声に、ライヤが思案気に少し黙っていたが何やら目をつぶると、頷いた。
「あぁ、その芸人の送り迎えの仕事が今やっと終わって、ほぼ徹夜で馬車走らせたから眠いんだ」
そうか、大変だな、というジョレスの言葉には少し疑うような響きが含まれていた。
「それじゃ俺は失礼するよ。眠いんでね」
ライヤはさっと立ち上がり、マントを翻してシュタイン亭を出ようとするがあきらめきれないシランが最後に再び進路をふさぐ。
「本当に、知らない?昨日城でイヴとクウヤが僕を探していたらしくって‥‥もし見たなら、この包帯を巻いた人ならすごく目立つしわかると思うんだけど?」
本当に寝不足で、しつこい掛け合いにイライラきたのだろう、ライヤがムッとしてシランを見た。
「イヴとかなんとかも知らないよ、腹に包帯を巻いた侵入者もね!」
「僕の師匠は右目に包帯を巻いてるんだ…マスコット見ればわかるでしょう?それに、僕を探してたって言っただけで、侵入したとは言ってないよ?」
シランが不思議に言い返せば、ライヤはふと口をつぐみさっと辺りに目を走らせた。
「尻尾が出たな。とりあえず捕まえろ!事情聴取は牢獄でやってやるぜ!」
ジョレスの言葉に、一瞬落胆と脱力の表情を浮かべ、困った笑いを浮かべたライヤはマントを翻して扉を蹴り開け、外に飛び出した。
そのあとをジョレスとノイアー、シランが追いかける。
唖然とする常連客とシュタイン婦人たちの間に突っ立ったルークは、別の事に頭を悩ませてうめいた。
「嘘だろ…あの人が芸人を送ったんなら、その芸人も帝国の差し金なんだ…。そうかだから、あの子は王国の話をあんなにせがんでいたんだ」
ということは、ライヤという人物が、この王都から外へと、完全に帝国の手先達と魔導書を逃がしたことになる。
ルークは震えながら、仲間の後を追いかけた。






徹夜で馬とおしゃべりする羽目になったのに、帰って来てそうそう大変な目に合う不憫なライヤさんw

Re: さぁ 正義はどっち ? 参照5700ありがとう御座います! ( No.469 )
日時: 2015/03/18 23:07
名前: コッコ (ID: X.h0sN1M)

いつの間にか更新してた。ライヤが王国側にばれて災厄の展開になってますね。

さぁ 正義はどっち ? 参照5700ありがとう御座います! ( No.470 )
日時: 2015/03/22 02:15
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)

コッコさん今晩は!!
王国でも帝国でもどいつもこいつも災厄ルート邁進中ですっ←
今一番のんびりしてるキャラクターは…宮殿で盗賊団の帰りを待っている奴らくらいですねw
もしくはサイトさんw
まぁ、結局は全員きっちりと危険ルートに直行するんですがね…

コメントありがとうございます!


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