複雑・ファジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

さぁ 正義はどっち ? 参照13600ありがとう御座います!
日時: 2016/08/23 00:57
名前: メルマーク (ID: KzMBmi6F)

戦争と平和は正反対のものと考える人が多い世の中
それは本当なの?正義って何?悪って何?
答えが見つからないなら探せば良い。

多分異色な今までにない、正義についてのお話し。
答えはありませんが、きっと終わった後 何が正解か思い浮かぶはず。
時代は古きよき時代、中世頃にしようかと

オリキャラ募集一応締め切らせていただきます!
終章にもうじき突入予定なので‥・もしかしたらまた募集するかも・・・?


名前
性別
年齢
容姿
A国B国どちらの味方?(国名は長いので省略
性格
武器
サンボイ「」
職業は?下から選択下になければ新職業を書いてくれるとうれしいです

騎士 傭兵 盗賊 貴族 海賊 海軍 王室(王族をのぞく外交官・メイド・執事・王族のいとこ)関連
占い師 科学者(錬金術師) 芸術家 哲学者 商人 国民 旅人 魔法使い など

武器や変わった特徴などの要望も即採用です
結構な確率で”死ぬケース”もあるのでご了承ください!!

◇目次◆   


王国ルート001 >>5    帝国ルート001 >>43
王国ルート002 >>15    帝国ルート002 >>49
王国ルート003 >>20    帝国ルート003 >>50
王国ルート004 >>23    帝国ルート004 >>54
王国ルート005 >>31    帝国ルート005 >>63
王国ルート006 >>66    帝国ルート006 >>81
王国ルート007 >>67    帝国ルート007 >>83
王国ルート008 >>68    帝国ルート008 >>90
王国ルート009 >>71    帝国ルート009 >>91
王国ルート010 >>74    帝国ルート010 >>93
王国ルート011 >>101   帝国ルート011 >>114
王国ルート012 >>103   帝国ルート012 >>117
王国ルート013 >>106   帝国ルート013 >>118
王国ルート014 >>108   帝国ルート014 >>120
王国ルート015 >>110   帝国ルート015 >>122
王国ルート016 >>123   帝国ルート016 >>183
王国ルート017 >>127   帝国ルート017 >>184
王国ルート018 >>133   帝国ルート018 >>187
王国ルート019 >>142   帝国ルート019 >>191
王国ルート020 >>144   帝国ルート020 >>193
王国ルート021 >>194   帝国ルート021 >>207
王国ルート022 >>197   帝国ルート022 >>208
王国ルート023 >>200   帝国ルート023 >>209
王国ルート024 >>203   帝国ルート024 >>210
王国ルート025 >>204   帝国ルート025 >>212
王国ルート026 >>214   帝国ルート026 >>232
王国ルート027 >>217   帝国ルート027 >>238
王国ルート028 >>219   帝国ルート028 >>239
王国ルート029 >>223   帝国ルート029 >>246
王国ルート030 >>224   帝国ルート030 >>258
王国ルート031 >>286   帝国ルート031 >>298
王国ルート032 >>287   帝国ルート032 >>304
王国ルート033 >>288   帝国ルート033 >>309
王国ルート034 >>292   帝国ルート034 >>312
王国ルート035 >>295   帝国ルート035 >>314
王国ルート036 >>317   帝国ルート036 >>329
王国ルート037 >>319   帝国ルート037 >>331
王国ルート038 >>321   帝国ルート038 >>334
王国ルート039 >>325   帝国ルート039 >>335
王国ルート040 >>326   帝国ルート040 >>336
王国ルート041 >>340   帝国ルート041 >>372
王国ルート042 >>347   帝国ルート042 >>375
王国ルート043 >>352   帝国ルート043 >>378
王国ルート044 >>353   帝国ルート044 >>382
王国ルート045 >>357   帝国ルート045 >>386
王国ルート046 >>387   帝国ルート046 >>399
王国ルート047 >>390   帝国ルート047 >>402
王国ルート048 >>393   帝国ルート048 >>407
王国ルート049 >>395   帝国ルート049 >>408
王国ルート050 >>398   帝国ルート050 >>409
王国ルート051 >>425   帝国ルート051 >>431
王国ルート052 >>426   帝国ルート052 >>433
王国ルート053 >>428   帝国ルート053 >>434
王国ルート054 >>429   帝国ルート054 >>436
王国ルート055 >>430   帝国ルート055 >>437
王国ルート056 >>442   帝国ルート056 >>450
王国ルート057 >>443   帝国ルート057 >>451
王国ルート058 >>446   帝国ルート058 >>453
王国ルート059 >>447   帝国ルート059 >>454
王国ルート060 >>449   帝国ルート060 >>461
王国ルート061 >>462   帝国ルート061 >>471
王国ルート062 >>465   帝国ルート062 >>472
王国ルート063 >>466   帝国ルート063 >>476
王国ルート064 >>467   帝国ルート064 >>477
王国ルート065 >>468   帝国ルート065 >>480
王国ルート066 >>482   帝国ルート066 >>492
王国ルート067 >>483   帝国ルート067 >>493
王国ルート068 >>487   帝国ルート068 >>495
王国ルート069 >>488   帝国ルート069 >>496
王国ルート070 >>489   帝国ルート070 >>499
王国ルート071 >>504   帝国ルート071 >>516
王国ルート072 >>506   帝国ルート072 >>517
王国ルート073 >>507   帝国ルート073 >>520
王国ルート074 >>509   帝国ルート074 >>521
王国ルート075 >>510   帝国ルート075 >>525
王国ルート076 >>528   帝国ルート076 >>539
王国ルート077 >>533   帝国ルート077 >>543
王国ルート078 >>534   帝国ルート078 >>545
王国ルート079 >>537   帝国ルート079 >>547
王国ルート080 >>538   帝国ルート080 >>548
王国ルート081 >>551   帝国ルート081 >>560
王国ルート082 >>552   帝国ルート082 >>562
王国ルート083 >>553   帝国ルート083 >>563
王国ルート084 >>557   帝国ルート084 >>564
王国ルート085 >>558   帝国ルート085 >>566
王国ルート086 >>571
王国ルート087 >>574
王国ルート088 >>575
王国ルート089 >>578
王国ルート090 >>579


◇カメルリング王国味方

>>2 ルーク 主人公
>>1 ミルフィーユ 発明家・美食家・資産家
>>4 キリエ 牧師・哲学者
>>16 ノイアー 傭兵
>>25 ラグ 執事
>>28 サイト 商人
>>29 リグレット 僧侶
>>39 ツバキ 軍人
>>55 ユニート 魔導師
>>58 ラルス 騎士
>>58 リリー 暗殺者
>>75 ジョレス 傭兵
>>78 フランチェスカ 王女
>>87 ハニー 妖精
>>99 シラン 術士
>>221 カルマ 学者・錬金術師・魔術師
>>289 フランキール 王子
>>440 シュバルツ 海賊
>>457 リレーナ 竜騎士

◆ミカイロウィッチ帝国味方

>>14 エドウィン 主人公
>>6 ヴィトリアル 盗賊
>>11 アーリィ 魔女
>>12 ゼルフ 黒騎士
>>12 リン メイド
>>27 シフォン 貴族騎士
>>30 イヴ 術士
>>37 ウィンデル 大道芸人
>>59 クウヤ 剣士
>>60 ツヴァイ 科学者(薬学)
>>76 ミレア 傭兵
>>78 シェリル 皇女
>>85 ディルム 精霊
>>96 ライヤ 偵察兵
>>98 セイリーン ドッペルゲンガー
>>278 レイ 魔女
>>305 故)フィア 魔女の弟子
>>305 故)キオ 魔女の弟子

◎味方につかない者

>>163 ソーサラー(呼称) 占星術師・幻術師
>>163 スキンヘッドハゲ(呼称) 盗賊
>>227 ヨメナイヤツ アドバイザー

キャラ応募してくださった皆様心よりお礼申し上げます!素敵なキャラをありがとう!!

◇番外編◆

参照四桁祝
・イヌ派ネコ派の王国日常 >>146
・絶対に信じちゃいけない言葉で帝国日常 >>150
・執事採用試験 >>156
・団長の足取り >>157-158>>160
・ある幻術師の思い出 >>162>>164>>170>>173>>175>>176

参照二千祝
・とあるメイドの追走劇 >>248>>254>>257>>260
・傭兵の黒と従者の白 >>263>>264>>269>>272>>274>>280>>281>>282>>283

参照三千&四千祝
・魔法使いの弟子 >>360>>363>>364>>367-368
・帝国サイド盗賊団と加担者でチビキャラ全員集合イラスト >>371

参照4500祝
・王国・番外ルートで抜粋チビキャラ集合イラスト >>404

銀賞&殿堂入り祝
・メイドと騎士と仲介人 >>415>>417-418>>421>>423

参照5000祝
参照6000祝
参照7000祝
金賞祝
参照8000祝
参照9000祝
参照10000祝!
参照11000祝!!
参照12000&13000祝!!!
保留
どんどん保留祝が増えて行っている…本編終わったら一気に大感謝祭とかやりたいなぁ、なんて考えてます

・・・業務連絡・・・

2014の冬の小説大会で銀賞もらえました!ありがとうございます!
2015の夏の小説大会で金賞もらえました!!ありがとうございますっっ!
参照5000祝いと6000祝、7000祝、8000祝9000祝そして10000祝。11000祝はのちほど…ッ!


時間軸まとめ >>234

さぁ 正義はどっち ? 参照5800ありがとう御座います! ( No.471 )
日時: 2015/03/23 19:42
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)

ミカイロウィッチ帝国ルート 061


—これからどうしようか?
扉を蹴り開けたとき、真っ先にそう脳裏にその言葉が響き、ライヤは眠気の去った頭を素早く回転させて今後の行動を考える。
(とにかく、まずしなくちゃいけないのは爆破だな、爆破)後ろから追いかけてくる輩を引きつけながら、ライヤは体の節々が痛むのに顔をしかめつつ貴族街へと走りこむ。
少し上り坂になる貴族街を駆け上がると、背後から様々な声が聞こえてくる。
空を切るような、うなじに嫌な感覚を張り付けたまま少し首を巡らせて振り返ると、幼女と言っていいほどの少女が鎌を振り回しながら駆けてくる。
「おまえ、アイツに幻術掛けるかなんかしろ…ノイアー!生け捕りだって言ったろ!」
そのすぐ後ろに銀髪の例の案内人、人探しをしている紅い目の少年と童顔の少年が追ってきていた。
幻術を掛けられてはたまらないと、速度を上げながらライヤはやがて見えてきた大きな屋敷の庭先に飛び込むように転がり込む。
「あいつ…ミルフィーユさんの屋敷に…!」
怒りを帯びた声をしり目に、芝生の上にわんさかとつんである小ぶりな木箱をいくつか両手に抱え込んだライヤ。
腕の中の一つを素早くつかみ上げ、箱の側面につく錠前に植木の枝を無理やり突っ込み、すぐさま走りこんでくる4人へと放り投げた。
 木箱はタイルに当たると即座に爆発を引き起こした。
飛散する破片を受けて声を詰まらせてうずくまる四人の脇を素早く駆け抜ける。
ワンピースを着て先頭を駆け抜けていた青い髪の少女が破片の突き刺さる腕を無理して振り上げ、鎌で走ってくるライヤの足首を切断しようとしてくるが、それを軽く飛び越えて、ライヤはもと来た道を戻っていく。
目指すは長年住み着いた自分のアジトであるサイオンジ宿である。

サイオンジ宿につくと、経営者が質素な宿の窓を拭いているところだった。
サイオンジ宿という名前に変わる前からの常連客を見ると、経営者が手を休めてライヤに笑いかける。
「おぉ、メルセルムさん、おかえんなさい」
「あーただいま」
手抜きの挨拶を済ませ階段を駆け上がり、自分の借りている部屋を乱暴に蹴破り、ライヤは室内を見回す。
まさに寝に帰る部屋という言葉がふさわしく、借りた当時からほぼ変わることがない家具の配置と、簡易すぎてきしむベットの上のカメルリング王国に関する歴史書の入った肩かけ鞄のほか、大した荷物はない。
ライヤはその分厚い皮の鞄を引っつかみ、ベルトに括り付けた後引き出しを開けてマッチを擦る。
それをシーツに引火させてから出口に向かい、木箱の錠前に異物をつっこみ部屋の壁へ投げつけた。

次の瞬間に待っていたのは、爆発。空気を震わせるような爆発が何度もとどろき、のどかな朝の静寂を完ぺきに破る。
振動でぐらぐらする階段を転がる様に降りたライヤは、唖然として腰を抜かしている経営者に目もくれず、煙をもくもく吐き出すサイオンジ宿から脱出した。
(次はさっさと脱出、と)
爆音に吸い寄せられた人々や、街を巡回する騎士たちを次々と追い越し、ライヤはつい先程まで一緒に徹夜した馬たちのもとへ走り寄り、馬車から一番速い馬をひいて速足で税関へと向かう。
税関の列へ並びながら、ちょっと不安そうな馬の首を撫でて安心させるように少しだけ力を込めて叩く。
「出国の理由は?」
列が切れ、ライヤの目の前に自由への道と最後の邪魔者である税関兵が映り込む。
「実家に帰る為にね」出来るだけ朗らかそうな顔をして、内心の動揺を隠しながら言う。
ほう、と兵士がライヤを眺め、馬を見たのち、少し奇妙そうな顔をした。
「王都から出るにしては荷物が少ないんじゃないか?」
「この中に詰まってるから少なく見えるだけさ」
兵士に見えるようにマントの隙間から鞄をのぞかせたライヤに、兵士はゆっくり頷き交差していたハルバートを軽く上げた。
「ところで、あの騒ぎは何だ?」
「宿が火事になったみたいだよ」
宿の方に背を向けたまま、ライヤは兵士たちの間を通り抜け、いわゆる出国ゲートを直進する。
「そうじゃなくてあれは…?」という困惑した声が兵士たちに反応し、警戒しながら彼らが口を開けている方向を見る。
今しがた出て来た税関に繋がる噴水のある広間に、何かが舞い降りるところだった。
砂が吹き上がり、人々がぎょっとしたような声を上げ、その物体を指差して何やら喚き散らして後ずさる。
ライヤは逃げるのを忘れるほど、その物体に目を奪われていた。
あれは爬虫類か?あんなでかい爬虫類が…空から降りて来たのか?などと呆然として突っ立っていると、その爬虫類へ少年が駆け寄り、何か叫んでいる。
その少年がきょろきょろと首を巡らせる様を見て、ライヤはすぐさま逃げようと馬に飛び乗った。
けれどその少年は目ざとくライヤを見つけたようで、背後を少し振り返った時、少年がこちらを指差すのと、爬虫類が空中に舞い上がるのが見えた。

こりゃ相当まずい、と手綱を握りしめ馬の腹を蹴り、王都脱出を試みるライヤだったが、原っぱに出た途端日が陰る様に何かの影がさっと横切るのを目撃した。
次の瞬間、何かが上から馬をライヤごと釣り上げるように持ち上げ、馬の脚が空中で空回った。
「?!」
馬は悲鳴じみたいななきを上げてじたばたもがき、ライヤはとっさに頭上を見上げる。
すぐ目の前に馬の鞍に似たハーネスと、赤茶色の鱗が見え、力強く羽ばたくたびに鱗の下で筋肉が動くのがわかった。
その翼の合間に女が乗っているようで、彼女はライヤの目をまん丸くする姿に楽しむように微笑んだ後、きっぱりと言った。
「私は王国白騎士団の団員だ。お前を今から城へ連行する。神妙にしろ」
飛び降りようにも高すぎて、下の景色を見たライヤは成すすべなく黙り込む。
風に翻るマントを押さえ、その下にある鞄を撫でながらライヤは途方に暮れつつ頭を巡らせる。
この歴史書—今までの眺望の成果が暗号化され記された記録書—をどうにかして帝国側へ渡さなければ、死刑になった場合、最終調査結果を報告することが出来なくなる。
死ぬ前にこれが帝国へ届かせられれば、運が良ければ助けが来る可能性もある。
(あの皇女サマじゃ、それもないかな?自力で逃げるしか…)
徐々に王都のカメルリング城が迫ってきて、ライヤは小さく喉を鳴らす。
 城にだいぶ接近し、下降を開始したドラゴン。ライヤはじっと地面までの距離を黙想ではかり、安全だと思ったとたん直ぐ飛び降りた。
硬いタイルの上、やわらかく着地してサーベルを抜き、駆け寄る騎士や使用人に向かって威嚇するようにそれを向ける。
「捕まえろっ。ソイツは容疑者だ!殺すなよ!」
上空から赤毛の女が声を上げ、ほこりを舞い上げながら着陸する。
それを横目にライヤはじりじり後退し、どこか逃げ道がないかと目を走らせるが多勢に無勢。飴に群がるアリのように次から次へとわんさか騎士や使用人が飛び出してくるのだ。
サーベルで騎士の剣を跳ね返し、近寄ればぐに切りかかることを繰り返すが、いずれくる結果はわかりきっている。
壁際に追い詰められ、体中に刃を突き付けられたライヤは、目を細めくびをふりふりその手からサーベルを手放した。
「わかったよ、降参だ」
まだ脅すように刃を突き付けたまま、騎士たちはライヤをにらみつけており、ドラゴンに乗った赤毛の女がてきぱきと彼らに指示を出した。
「コイツを地下牢へ連れて行け!直ちに尋問を開始する!そして誰かラルスやツバキに尋問開始を伝えろ!」



今回、長っ
でもやっと、最終章に食い込んできました。いま噛み付いてるくらい…?飲み込みかけてるところ…?
参照5800ありがとうございますっっ
うわわわ、5000祝の番外フラグをへし折ったのに、6000祝のフラグもへし折ることになりそうです…
ちょっと誤字を訂正

さぁ 正義はどっち ? 参照5800ありがとう御座います! ( No.472 )
日時: 2015/03/25 00:26
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)

ミカイロウィッチ帝国ルート 062



 指についた血を舐めながら、足に絡み付くとぐろを巻いた鎖を見つめる。薄暗い独房の一つに放り込まれ、尋問という名の拷問にかけられたにしては、まだ対してダメージは受けてないな、と一人考える。
まぁまだほんの挨拶程度なのだろうが…。
反対側の牢獄に囚われている小さな少年の方がよっぽどダメージを受けてる、と苦笑いをこぼしてそちらを見ると、柔らかな印象のある少年は暗闇の奥に引っ込み、顔を隠してすすり泣いている。
先程の拷問を目撃して、精神的にかなりショックを受けたらしい。
爪のはがされた薬指をかばいながら、ライヤはまだマントの下にある歴史書—眺望告書—をそっとなでる。
牢獄につくなり拷問を開始し、大人しくしていろと言い捨てがてら、人の爪を一枚剥いで行った赤毛の女だ。戻ってきたら次生きているかもわからない。
どうにかしてこの書物を託さなければならない。

そうこう考えていると。地下牢獄の入り口ががやがやと騒がしくなりライヤは神妙な顔をする。
反対側の少年も身を震わせ、そっと怯えた顔を上げる。
やってきたのは先程のドラゴンに乗っていた赤毛の女であり、鎖を両手にたらしているところを見ると、どこかへ連れて行かれるらしい。
その後ろに同じような赤毛の少女がおり、黒いマントを揺らしながらこちらを覗き込んでいる。
「国王の前で暴れられても困るから…もうちょいと痛めつけておくか?」
「姉さん、普通は手じゃなくて足の爪をはがなきゃ。足をやれば逃走が難しくなるから」
射抜くようにこちらを見る少女はこともなげにそういい、手に鋭利なナイフを持ちながら牢獄の錠を開ける。
そしてライヤの足につく足枷へ鎖を取り付け、無表情のままライヤに話しかける。
「両腕を出して」
—でないと足の爪もとるよ?
そう聞こえた気がして、ライヤはしぶしぶ腕を少女の方へつき出す。手首に巻かれた鎖に南京錠が掛けられるのを眺めながら、どうやって逃走しようかとぐるぐると考える。
どうやらこの赤毛の姉妹には泣き落としも聞かないようだし、折を見て不意を突く逃走を図るほか脱走は無理だろう。
「死ぬ前には—」
「何?」
舌を噛み切って自害をしないようにと、少女がごわごわした布をライヤの口に突っ込もうとする。
ライヤの言葉にその手を止めて、ちょっと首をかしげる少女。
「死ぬ前には遺言くらい聞いてくれるんだろ?」
「あなたの吐く情報がすべて真実なら、遺言のことは考えとく」
それ以上会話する気はないという態度で口にぱさぱさした布を突っ込まれ、ライヤは布をかみしめながら出来るだけすました顔を取り繕った。
牢獄から引きずり出されるとき、遠くで八つの壮麗な鐘の音が響いた。
(やれやれ、ながい一日になりそうだ)



「 アリエス 」
シャボン玉のように淡いシールドに鋭い爪が食い込もうとしたまさにその時、クウヤがアーリィのピンクの杖をひったくって叫んだ。
その途端、勝利の笑みを浮かべていた化け物は、はっと人間じみた表情をする。
血に濡れた口元から荒く息を漏らし、化け物の金色の目がみるみるうちに戸惑いと恐怖に見開かれ、信じられないという様に自身のかぎ爪をじっと見つめている。
「後は、何とか自力で倒して…」目前まで迫っていたかぎ爪がいつまでたっても体に食い込んでこないのを不思議そうに眺めるアーリィに、クウヤが呼吸を荒くして唸るように言った。
「幻術の二股掛けはこれ以上は…ちょっとキツイ」
化け物に二つ、王国の三人の側近たちにそれぞれ1つずつの幻術を掛け、それを維持するにはこれ以上は無理だ。
その言葉に頷き、アーリィはシールドを解除し、クウヤに抱え込まれながらありったけの魔力を注いで息の続く限り呪詛を叫び続ける。
あの化け物の正体を知りたいという欲求よりも、生き残りたいという欲求の方が勝ったようだった。
タガが外れたように繰り出される魔術が、ほの暗い樹海を赤く照らし上げる。

しかし化け物も精一杯の反撃をし、二つの幻術がかかった異常状態にもかかわらず執拗に二人を追い回した。
化け物の通る道が痛々しい血で染められるものの、化け物は足を止めない。
そしてついに、思いっきり体を振り回すようにしなりをつけ二人に尻尾の鞭をお見舞いしたっきり樹海に深く身を沈み込ませて止まった。
尻尾の鞭からアーリィをかばう様に盾になったクウヤだったが、化け物の体力が消耗していたおかげで即死は免れたようだった。
「あー…これは…絶対また骨折れた…」
「ちょっと邪魔よ!放して!あの化け物が反撃してきたら…」
背中の痛みに顔をしかめてうずくまるクウヤの腕からアーリィが焦ったように飛び出し、化け物の方へ鋭い目を向ける。
けれど化け物の様子を見て、アーリィはそっと杖をおろした。
魔力の急速な消耗でふらふらする千鳥足で、化け物の側に近寄ると、化け物は血の泡を口の端に付着しながら低く唸った。
しかし、それだけだった。
憎々しげにアーリィを見つめる金色の目は、今や荒い呼吸に合わせて徐々に閉じかけている。
喉元から首筋にかけての鱗がささくれており、そこから覗く痛々しい惨状が、この化け物と魔女との戦いの結果を物語っている。
「…まだ喋ることは出来る?出来るならアンタがなぜアタシ達を襲ったか教えなさい」
化け物の側に座り、アーリィが少しだけ敬意を払った口調で尋ねれば、化け物はしょぼしょぼする眼を無理やり開けてかすれた声を牙の間から吐き出した。
「それは—オレが—平和が好きだからだ—」
アーリィが眉を寄せて訳が分からないという顔をしたのが満足なのか、化け物はにぃっと爬虫類的な笑みを浮かべた。





拷問だと爪はぎが最強らしいです…拷問で検索したらトラウマレベルでした…
尋問だと水責めと音攻めが精神崩壊レベル…地味だけど怖すぎました…ライヤさん頑張れ←

Re: さぁ 正義はどっち ? 参照5800ありがとう御座います! ( No.473 )
日時: 2015/03/25 14:31
名前: コッコ (ID: X.h0sN1M)

拷問怖いですね(汗)。怖いですが頑張ってください

さぁ 正義はどっち ? 参照5800ありがとう御座います! ( No.474 )
日時: 2015/03/27 19:10
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)

今晩はコッコさん!
拷問はトラウマレベルでしたがwしかし眺望活動するスパイのかっこよさを改めて知ることが出来ました!((ここにきてやっとk
スパイいいですねスパイ!

 し、四月に終わるかどうかは‥‥



さぁ 正義はどっち ? 参照5800ありがとう御座います! ( No.476 )
日時: 2015/03/30 19:24
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)

ミカイロウィッチ帝国ルート 063


「アンタ何言って——?」
俺がお前たちを襲う理由は平和が好きだから…という化け物の言葉に、アーリィはますます眉間にしわを寄せた。
平和が好きなら尚更、誰かを襲う事などしないはずである。
縦に瞳孔の入った金色の瞳から感情を読み取ろうとするが、化け物は視線をアーリィの背後へと移した。
ちょうどクウヤがはたき飛ばされた自身の剣を探しに木々の間にかがんだところだった。
ひとしきりクウヤを見た後、化け物は再び魔女へと目を戻し、少しだけ首をもたげた。
「オレは平和が好きだ—だから戦争を—止める為に火種を潰している」一言一言痛みに目を細めながら化け物は話だし、アーリィは化け物の顔を見上げた。
化け物の口から滴る血が、足元の草原を染め上げている。
「火種…?アタシ達が…?」
独特の血の匂いに一歩後ずさりながら、睨むように呟けば、化け物はこともなげにうなづく。
そのすがすがしさにイラつきさえ覚える。
「アンタは予言でもできるわけ?そもそもどういった生き物なのよ、アンタ。アタシが生まれてから云年たってるけど、アンタみたいなの初めて見るわ」
「予言…そうだな—予言のようなものだ—旅の途中の老人と占星術師に出会って—お前等が一番大きな戦争の火種だとそう聞いた」
化け物はかぎ爪を地面に食い込ませて唸るような声を出したが、アーリィはそれに気づかずに首をかしげていた。
「それで、アンタはその占星術師からどんな予言をもらったわけ?」
化け物は再び視線をクウヤに投げた後、「''この樹海へ—戦争の火付け役が8人歩いてくる。それをあなたは猛撃するだろう'’—と」
一息に言い切ったためか、化け物が苦しげに血を吐き出した。そのままうつむいて少し縮こまる。
 「それで、アンタの正体は…—ッ!」
しかし突然化け物は黒いかぎ爪で地面を蹴り上げ、最後の力を振り絞ってがばりと大口を開けてアーリィに躍りかかった。


 ばちんっという何かを噛み合わせるような衝撃音を聞いて、クウヤは音のする方へ無意識に首を巡らせた。
その反動で背中に痛みが走り、顔をしかめる。
(背骨折れてたらどうしよ…手首は折れるし、背中は痛いし、気を抜くと術が破れるし、さんざんだな—)
おまけに剣もどっかに吹っ飛んでいったし、と悪態をつくが、視線の先の妙な光景に口を閉ざした。
先程までアーリィが化け物と会話していたのだが、どこにもいなくなっている。
化け物は奇妙なうずくまり方をしており、すでに血まみれの口元がますます赤く染まっている。
ついに力尽きで死んだのか、まぁあれだけ攻撃されたらさすがになぁ、と一人納得しながら化け物の周囲へ目を向けるのだが、やはりアーリィは居ない。

「まったく…まさか食われたんじゃないだろうな?」
このままアーリィを置いて帝国へ出発する訳にもいかず、仕方なしに痛む体を引きずり探索を開始したクウヤ。
その散策中に図らずも自身の吹っ飛んだ剣を発見し、それを片手にうろうろと化け物中心に捜索を続ける。
「そんな奴にアタシが食われるわけないでしょ!」という声が掛かるのを期待しつつ用心しながら化け物を観察すると、がっちりとかみ合わされた牙の間に、何か見たくない物が挟まっているのを見つけた。
なんだか、黒の、フリルが多くついたスカートの切れ端のようなもの。
 地面に剣を突き刺して、無事な方の手でその布きれに触れると、牙の間からつられるように血が流れ出し、化け物の顎を伝ってさらに草が赤く染まる。
「はぁ…?嘘だろ…?」
慌てて牙と牙をこじ開けて安否を確認しようとするが、重くしっかりと閉じられているため口を開けることが出来ない。
それどころか化け物が不平の声を漏らすように小さくうめくような音を出す。心なしか開きっぱなしの黄金色の目玉が、クウヤを睨むように見えた。


「ッ! まだコイツ生きてるのかよ!」
その目に目掛けて思い切り剣を突き刺し、更にもう一度刺そうと振り上げた途端、再び喚き散らすうめくような声が聞こえた。
だが、目に痛々しい穴が開いたことにより、その声が今度ははっきりと聞こえた。
「アタシを刺し殺す気なの?!」
その声に剣を取り落しながら、穴の開いた目の傷口へ飛びつき覗き込めば、化け物の長い舌の上でうつぶせで縮こまるアーリィがいた。
小さな体がすっぽりと化け物の口の中に納まっており、牙でできた檻の中にうずくまっているように見えた。
「何でそんな所に居るんだ?」
「コイツが急に大口開けて襲い掛かってきたのよ!」好きでいるわけじゃないと憤慨したように食って掛かる魔女のために、目玉の傷を広げながら奇妙そうな顔をするクウヤに、アーリィは事の次第を怒ったように話し出す。
「急な攻撃だったから避けるのも間に合わなかったし、魔術攻撃しようとしたって爆風で自分も吹っ飛ぶし—」
なんとか目玉の傷口から引き揚げられ、ますます血まみれになったアーリィが悲惨な有様になったロリータ服を摘み上げ、ため息をこぼしながら言う。
「だから口の中に飛び込むしかなかったのよ。それで化け物の口の中で縮こまりながら、喉の内側から体内を攻撃したの。でもこの化け物はアタシに食いついた時にはもう最後の力も出し切って、死んでたんじゃない?」
 ため息とともに一息で言い切り、ぐったりと沈み込む化け物に目をやる。
「結局、コイツの正体はわからないままだな…」クウヤが化け物を隅々まで目に焼き付けるように眺めまわす側で、アーリィが身震いしながら口を開く。
「まぁ仕方ないわね。聞いたところによれば王国との繋がりによってアタシ達を襲ったわけじゃないらしいけど…」
思慮深げに考え込もうとするが、まとわりつく化け物の血に再び身震いしてアーリィは杖を掲げ、呪詛を叫んだ。
「『セティファウンテン』『ケーレウス』」
杖が地面を指すと、そこから泉のように氷のつぶてがわらわらと吹き出し、それが徐々に温湯の噴水のように周囲に暖かなお湯をまき散らし始めた。
その中へ入り込み、服と体中から化け物の血をこそげ落とし、再び杖を一振りする。
するとたちまち間欠泉のような暖かな噴水が消え去り、濡れた子犬のように体中についた水けを振り飛ばしながら、「さぁ、じゃあ、帰りましょ!」アーリィが樹海の奥を指差した。
「そうだな」剣を杖代わりにしながら、うんざりするほどに延々と続く木々の間を見つめて、クウヤはちょっと懐かしそうにそれを眺めた。
 昼間の垂直な日差しがわずかにこぼれ、誰もいなくなった化け物のうずくまる周囲を、ぼんやりと照らし出した。





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