複雑・ファジー小説

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シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【氷国の民編】
日時: 2019/09/08 08:53
名前: 姫凛 (ID: 9nuUP99I)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=19467

これから綴る物語は忌まわし呪われた血によって翻弄され
哀しき封印から少女達を救い
少女達と共に謎の不治の病に侵された小さき妹を
助けるため小さな箱庭を行き来し愛と絆の力で闘い続けた
妹思いな少年と個性豊かな少女達の絆の物語である

-目次-[シークレットガーデン〜小さな箱庭〜]

登場人物紹介 >>166-168
-用語紹介- >>169
-魔物図鑑- >>23
-頂きもの-
高坂 桜様(元Orfevre様)より シル(オリキャラ)>>10
はる様より リア・バドソン(オリキャラ)>>11
ブルー 様より ヒスイ(オリキャラ)>>12 ヒスイ(キャラ絵)>>205
レム様より エリス(オリキャラ)>>66
華那月様より ヨナ(キャラ絵)>>08 ランファ(キャラ絵)>>09 シレーナ(キャラ絵)>>38
むらくも(キャラ絵)>>39
むお様より リオン(キャラ絵)>>37
自作:エフォール(キャラ絵) >>217

-あらすじ(第九章)

山の国の何処かにあると言い伝えられている女神が誕生した遺跡 アンコールワットで見事試練を乗り越え真実の歴史を知ったルシア達は遺跡を出てリオン、リティと別れ時渡の樹が生えた広場でヒスイと合流を果たした。

新たに出来た旅の目的。四つの国にある四つの遺跡を巡りかつて女神と共に邪神と戦った王達の力を受け継ぐ旅の始まり。

——さてどこの国の遺跡から行こうか?


-章の目次-
*1分〜10分(読むスピードで個人差があります)で物語の概要が分かるスキップ物語☆
*本編を読むだけでも物語を楽しめますが個別の短編も読むことでより深く楽しむことが出来る作りとなっています。

序章 出会いと別れ >>05-07 -スキップ物語- >>22

第一章 物静かな看護師の闇
荒くれ者 ザンク編 >>13-20 -スキップ物語- >>40
シレーナの封じた過去編 >>24 >>26-36 -スキップ物語- >>50-51
(より抜き「 魔女と呼ばれた少女の物語」完結済み)>>152

第二章 汚された草競馬大会 >>43-47 -スキップ物語- >>52

第三章 大都市で起きた不可解な事件
宿屋での選択肢 >>48-49 -スキップ物語- >>53
[ムラクモを探す- >>55] [後をついて行く- >>54 …正体END]
遺体のない葬儀編 >>56-61 -スキップ物語- >>68
立食パーティー編 >>62-63 >>67 -スキップ物語- >>79

第四章 監禁・脱走 >>69 >>73 >>76-78 -スキップ物語- >>124
(叢side「椿の牢獄」>>158完結済み)
(別side「菊の牢獄」>>)

第五章 美しき雌豚と呼ばれた少女
コロシアム編 >>82 >>85-90 >>93 >>97 >>100-101 >>104 >>107-108
-スキップ物語-上中下>>125-127
シルの封じた過去編 >>111-113 >>119-123 -スキップ物語- >>128
(続編「美しき雌豚と呼ばれた少女とおくびょう兎と呼ばれた少年」完結済み)>>153

第六章 闇と欲望の国
アルトの封じた過去編 >>129-133 >>136-138 >>143-145 -スキップ物語- >>146
裏カジノ編 >>147-150 -スキップ物語->>151
(幕間「感情のない少女の物語」>>224
敵の本拠地へ編 >>154-156 -スキップ物語->>157

第七章 賢者たちの隠れ里 >>159-163 -スキップ物語上下- >>164-165

第八章 からくり遺跡
女神の試練編 >>170
[勇気の試練>>183-186 ] [知恵の試練>>177-182] [力の試練>>171-176]スキップ物語->>187-189
[仲間->>185…生贄end] [友人->>186…見損ないend][本当->>181] [嘘->>180…神のお遊戯end]
[棺を開けない- >>173-176][棺を開ける- >>172…死神end]
隠された真実編 >>194-197 -スキップ物語->>193
      (修正前>>190-192
第九章 荒くれ者の最期 >>198-202 -スキップ物語->>207
(幕間「殺戮人形と呼ばれた少女の物語」>>224

第十章 殺戮人形ト色欲妖怪
王家の墓編 >>208-216 -スキップ物語->>
リアの封じた過去編 >>218-2231
[受け入れる>>220-221]…喪失END [受け入れない>>222-223]…永眠end
(→狐の銅像「親殺しの青年の物語」>>)

第十一章 嘘ツキな臆病者
氷国の民編>>225-229 …達筆中
ひと時の休息編

第十二章 賽は殺りと投げられて
偽りの仮面編>>
真実の泉編 >>
???の封じた過去編>>

最終章 最終決戦
Aルート >>
Bルート >>
cルート >>
Dルート >>


 
-掲示板-
達筆開始日 2014/3/4
2017/11/25:URL先を新しくしました。雑談板にあります、設定資料集スレにしました。
2019/9/8:URL先を新しく書き始めたリメイク版の方に変えました。

-おしらせ-
2017夏☆小説カキコ小説大会【複雑・ファジー小説部門】で【銅賞】を頂きました。
投票してくださった皆様、本当にありがとうございました<(_ _)>
完走(完結)目指して頑張りたいと思います!
20119/9/03→『氷国の民編』『新章』追加

参照100突破!3/6 200突破!3/11 300突破!3/15 400突破!3/21 500突破!3/28 600突破!4/4 700突破!4/9 800突破!4/15 900突破!4/22 1000突破!4/28 1100突破!6/2 感謝♪
2017年 2600突破!/1/30 2700突破!1/31 2800突破!2/7 3200突破!8/31 3300突破!9/1 3400突破!9/7
3500突破!9/12 3600突破!9/19 3700突破!9/26 3900突破!10/10 4000突破!10/17 4100突破!10/31
4200突破!11/6 4300突破!11/14 4400突破!11/23 4500突破!11/28 4600突破!11/3 感謝♪
2018年 5000突破!1/7
返信100突破!2014/4/28 200突破!2017/11/14 感激♪

-神様な読者の方々-
蒼欒様:初コメを下さいました!もう嬉しさMaxです♪
レム様:エリスちゃんの生みの親様です♪いつも温かい励ましコメありがとうござます!
ブルー様:オリキャラ ヒスイちゃんを投稿してくださいました!
出せるまでに一ヶ月以上もかかってしまったのに、見捨てずに見て下さっているお優しい方です(T_T)

Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【知恵の試練編】 ( No.181 )
日時: 2017/10/10 13:47
名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: KACJfN4D)

『殺された。あなたにはもう愛するは家族はいない』

——そんなこと急に言われても分からないわよ。


リティの頭の中は真っ白だった。何も考えられない。頭に押し付けていた銃口を頭から離しリボルバーを持っていた右腕を下してしまった。

「それはコタエル意思がナイトとってイイノかな〜?」

声からでも分かる謎の幼女はたぶん今悪い笑みを浮かべているのだろう。それは悪戯好きな幼子のように。少しずつ弱って行く獲物を見つめ楽しんでから丸のみにして食べる蛇のように。

「リティ」

絶望に打ち震え何もできないでいるリティに近づきリアは後ろから首に腕を回し優しく抱きしめた。リティの不安そうな声。震え小さな声しか出せない。よく見ると体も小刻みに震えているようだ。
リアは抱きしめたまま優しい口調で静かに

「もうわかっているんだろ?」

とリティの耳元で囁くように言った。

——嗚呼そうか。そうだよね。私達ずっと一緒に居たものね。
  リオンとリアと私の三人。年齢もバラバラで性格もバラバラで顔を合わせればいっつも喧嘩になっちゃう。そんな私達だったのに何故かいつも息ピッタリで一緒に行動していたわよね。話すことは喧嘩ばかりだったけど。
  楽しかった…。すっごく。嫌な事全部忘れられる暮らしにずっこく楽しかった。楽しいからこそこの時間が終わるのが怖かった。
  大きくなるにつれて少しずつ思い出されていく記憶。亡くしたはずの恐怖。封印したはずの忌まわしい過去。
   それを大好きな人たちに知られるのがすごく怖かった。だから私は逃げたの。リリアン達の隠れ里へ。あそこならもう怖い思いをしなくていいから、みんな同類だから。
  でも、もうそれもお終いね。前を向いて歩き始めなければいけない時が来たんだね。
  ありがとう——リア。


振り返ったリティはニコリと失ったパズルのピースが揃いパズルが完成した時のそうな満足そうな顔をすると右腕をあげもう一度、リボルバーの銃口を自身の頭に押し当て引き金に指をかける。

——[本当]引き金を引かない


「………」

重たい沈黙が流れる。
ルシア達後方でリティを選択を見守っていた者達は何がどうなって、今はどうなっているのか全く分からずお互いの顔を何度も何度も見合わせる。
そのおまぬけな姿を背にしてる為見えないリアは小声で「よく頑張ったな」と耳元で囁き頭をポンポンと軽く叩き抱きしめていた腕を放しリティから離れた。その行動にリティは振り返らず恥ずかしがりながらも「こんな時ばっかり年上ぶんなアホッ」と頬を赤く染め呟いた。

「………」

あははと笑う幼馴染二人の光景を見て胸を痛める少女が一人居たことは誰も知らない事実。


"よくぞ受け入れましたね"

「ッ!?」

突然頭の中に直接謎の声が語り掛けてきた。この優しい母親のような温かい声は、知恵の試練と呼ばれていた此処へ入る前に聞いたあの女性の声だ。
仲間達の顔を見てみるとどうやらみんなにもこの声が聞こえているようだ。みんな驚いた顔をしているから。

"リティごめんなさい。辛い過去を思い出させてしまって”

「いえ。むしろお礼を言わせてください。
 きっとこんな機会を持たせてもらわなかったら私はずっと逃げていたままでした。
 辛く忌まわしい過去から逃げて、現実も見ようとはしない。過去も未来もない地獄から救っていただいてありがとうございました」

リティは深々と頭を下げた。

"私は試練を与えただけ。それを乗り越えたのは紛れもないあなたの心の力。そして仲間の協力合ってのもの”

リティは振り返りルシア達の顔を一人一人見つめ、安心したように微笑む。その笑みにつられてこちらまで自然と笑みをこぼす。

"あなた方は試練を乗り越えました。
 目を背きたくなるような真実を受け入れることが出来たあなた方こそが世界の命運を託すに値する者”

ギギギと何か重い物が引きずられ動かされている音が祠堂内に響き渡る。
目の前にある第六の扉がゆっくりと開かれようとしているのだ。

"さあ_道は開かれました。あなた方が欲した真実はすぐ目の前に"

「新しい明日の始まりか」
「これが終わったらどうするんですかリティさん?」

前を歩くリティにルシアが聞いてみた。リティはニカッととびっきりの笑顔で

「罪を償ってくるよっ」

——と言った。

扉が少しずつ開かれていき薄暗い祠堂外の光が差し込みます。

「眩しいっ」

その眩しさに思わずルシアは瞼を閉じ、目を隠す様に腕をクロスさせ光を遮る。

"目を開けてみなさい_ルシア"

優しくまるで母親のように頭の中に語り掛けてくる謎の声。母親の声に従う子供の様にルシアは声に従い、閉じた瞼を少しだけ開いた視界に入ってきたものは——















「ア〜ア。せっかく考えたゲームが終わっちゃったぁ〜」

道端に落ちている小石でも蹴るかのように謎の幼女は言う。不機嫌そうに。つまらなそうに。

「シュヴァルツァーならなんとかイイ感じ殺ってくれるかな?? きゃははっ♪」

ソウダヨ。あいつならキットもっと面白い殺し方をしてくれるはずダヨ! と声は独り言のように喜びのダンスでも踊っているように言っている。

「そうと決まればこんな世界軸とはオサラバダネ♪」

そう言った後。プツリと謎の幼女の声は聞こえなくなった。まるで最初からそんな者なんて存在していなかったかったかのように、静かに綺麗さっぱりと消えて無くなった。





ある女性の物語。

彼女の愛する家族はもうこの世界の何処にも存在しない。そして血で汚れてしまった彼女の手はもう綺麗にはならない。

幼い頃、父親と自分と妹を捨てて家を出て行った母親。

幼い頃、突然現れた人攫いの屈強の男達。幼子にはどうする事も出来ず攫われてしまった。

幼い頃、自分を攫って行った犯人のボスはまさかの母親だった。マフィアのボスと再婚し地に落ちた母。

幼い頃、再開した母親は別人になっていた。護るため。自分の身を護り此処から逃げる為

幼い頃、初めて握ったナイフで料理をしました。肉料理です。

幼い頃、お肉は何度も刺すことで柔らかくなると誰かから聞いた事がありました。

幼い頃、初めてやった料理は失敗してしまいました。出来たのは肉塊。お肉の塊でした。

幼い頃、雪白の騎士だったリオンの父親に拾われました。

—そして今日まで至るそうです。オワリ。















知恵の試練-終


Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【知恵の試練編】 ( No.182 )
日時: 2017/10/10 14:08
名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: KACJfN4D)

おまけ。>>178で出て来た問題の答え合わせ。
◇◇◇◇◇

第一問「「アナログ時計が今、12時ピッタリを指している。
     この時計が今から24時間(2周)回り続ける。
     24時間経つ(2周回る)間に、長針と短針は何回重なるだろう?」

◇◇◇◇◇

「さぁコタエは何かな〜??」
シル「22回だね」
「セイッカ〜〜〜イ! まあヒントをアゲタんだからセイカイしてくれないとコマルンダケドね〜きゃははっ♪」

『解説
12時間の内、1〜10時の間と12時ピッタリは各1回ずつ重なる。
11時は絶対に重ならないため、12時間の内に11回重なることとなる。
24時間のため、2倍して22回重なるという訳だ』


◇◇◇◇◇

第二問「川に立派でかなり大きなボートがあり、川の前に3組の夫婦がいる。
    この夫婦達は川の向こう側へ渡りたいらしい。
    仮にこの夫婦をA&a・B&b・C&cとしよう。
    この夫婦達の婦人、夫がいない時に他の男と一緒にいることは許されない。

   (例として、aはAがいない場合、BやCと一緒にいてはいけない)

    さらにこのボート、男が漕ぐと片道1分×人数、女が漕ぐと2分×人数、時間がかかる。
    さあ、この夫婦が無事に全員渡りきるのに、最低でも何分かかるでしょう?」

◇◇◇◇◇

「さぁコタエは何かな〜??」
シレーナ「6分」
「マタマタ大セイカ〜〜イ!」

『解説
かなり大きなボートということは、6人全員が乗れるだろう。
そして、男がボートを漕げは片道1分×6人で、6分かかるという訳だ。
今思うと、問題文のほとんどが要らない文だったことに気が着いたかい?


◇◇◇◇◇

第三問「ある殺人を犯した犯罪者がいた。
   その犯罪者は自分の犯した罪の自首をしただけで、まだ肝心の死体や凶器は発見されていなかった。
   犯罪者の唯一の身寄りは、自分の母だった。母は農家をやっていて、自分の作物で生計を立てていた。
   そんな母から時々手紙が来るが、その中に、『もう自分の畑を耕せなくなった』とあった。
   この犯罪者はどうにかして親孝行をしたいと考えた。
   そして、あるアイデアを思い付いた。
   どうも『ある人間達に自分の犯した罪の事を詳しく言うと、母の畑を耕しに行ってくれる』らしいのだが
   さてその人間達とは誰のことだろう?

   『ひらがな4文字』で答えてほしい」

◇◇◇◇◇

「さぁコタエは何かな〜??」
リア「ヒントなんていらないだろ。答えはけ・い・さ・つだ」
「おお〜セイカイだよ♪ ヒントはオオキナオセワダッタかな?」

『解説
犯罪者は警察にきっとこう言ったんだろう。
「俺の実家に俺が殺した被害者やその凶器が埋めてある」と。
本当にしろ嘘にしろ、畑は警察の捜索によって『耕された』訳だ。
その後、犯罪者は母に手紙を送った。
「これでまた野菜が作れるな」

◇◇◇◇◇

第四問「次の『??』に当てはまる言葉は何だろう?
    どうもその前の言葉に何か秘密があるらしいのだが…

皿+サイコロ=舞妓
家+ボール=研究
豆腐+寿司=朝刊
車+鉛筆=??

◇◇◇◇◇

「さぁコタエは何かな〜??」
ルシア「少しひねりをいれないといけない難しい問題だったけど……答えは『台本』だっ」
「フフッ、セイカイだよっお兄ちゃん♪」
ルシア「え?」

『解説
答えの言葉は前の言葉の「数え方」を足したものだったんだ。

皿(枚)+サイコロ(個)=舞妓
家(軒)+ボール(球)=研究
豆腐(丁)+寿司(貫)=朝刊
車(台)+鉛筆(本)=台本

というわけさ』

◇◇◇◇◇

第五問「・甘い
    ・酸っぱい
    ・辛い
    ・苦い
    ・旨い
    ・しょっぱい

これらは全て味の種類(味覚)を表す形容詞たちだ。
この中に一つだけ仲間外れの形容詞があるという。それはどれだろうか?」

◇◇◇◇◇

「辛いは厳密に言うと味の種類じゃないよ〜。だから仲間外れって言った人はフセイカイ!」
ランファ「そりゃそうでしょーよ。だってこれ言葉遊びだもん。
     辛い(からい)って読むんじゃなくて辛い(つらい)って読むんでしょっ」
「セイカイっきゃははっ♪」

『解説
辛い=つらい だったからだ。
漢字の読みは時に恐ろしいものだ』

◇◇◇◇◇

アナタは何問セイカイ出来たぁ? まさか一問も分からなかったってコトハナイよね〜? きゃははっ♪


Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【勇気の試練編】 ( No.183 )
日時: 2017/10/16 08:19
名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: O62Gt2t7)

第八章 からくり遺跡-女神の試練編-


-勇気の試練






仲間達とも話し合い、ルシアが選んだ試練は[勇気の試練]


"あなた方はその試練を選びましたか”


謎の声は言う


"では向かいなさい中央へある祠堂へ 進みなさい”


謎の声の指示に従い五つある祠堂の中でも一番大きな祠堂に向かって歩き出した。目の前には大きな扉が一つ。扉の中央には大きな雫のような水色の模様が描かれている。この模様には何の意味があるのだろうと何気なく見つめていると、ギィィと誰も手を振れていないにも拘わらず、ひとりでに扉が内側へ開き始め「す、吸い込まれるっ」ブラックホールのような吸引力をもった黒と白と藍と色々な色が混ざったような、漆黒の宇宙のような渦がルシア達を飲み込もうと、祠堂の中へと吸い込もうするのだ。吸い込まれまいと踏ん張り手近いにあった岩を掴み耐えていたが「うわああ」それも虚しく渦の中へと吸い込まれてしまった。

「——ここは?」目を覚ましたルシアがいたのは暗闇。闇が支配する世界。光も音もない静寂な世界。何処かシレーナのプリンセシナへ初めて入った時に似ているような気がする。あの時もこんな風な真っ暗闇の世界で自分以外何も見えなかった。ではここは誰かのプリンセシナ?——いや違う。なんとなくだったがそう納得した時だった「——ようこそ終焉の世界へ」男の声が聞こえたのは。物腰柔らかそうな男の声、ルシアは声が何処から聞こえるのか辺りを見回してみたが声の主を発見することは出来なかった。「——ここですよ」また声が聞こえた。今度ははっきりと。聞こえた。ルシアの頭上から。見上げればそこに男がいた。姿勢正しく真っ直ぐにたった、火山灰を頭から被ったような黒に近い灰色の髪を肩まで伸ばし銀色の四角い眼鏡をかけた執事風のスーツを着込んだ男。見た目から歳は二十代後半から三十代前半といったところだろうか。男は微笑みを崩さないまま、ゆっくりと直立した姿勢のまま降りてきた、ルシアの目の前に。

「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。ルシア様」
「どうして僕の名前を?」

いつでも抜けるように手をかけていた剣柄から手を放し男に聞いてみる。男は苦笑すると「私は神の使いをしております、シュヴァルツァーと申します。神からは貴方様のこと、色々聞いて存じ上げていますよ」ゾクリと背筋が凍った。何故か。シュバルツァーと名乗った男が見せた不敵な笑みの所為だ。口調は朗らか表情も微笑んだまま、優男といった見た目。でもその瞳の奥底にある禍々しい殺意だけは隠しきれていなかった。鋭くルシアを貫く眼光。初対面でこんなに強い殺意を向けられたのは、南の森で狂犬ザンクと相対した時以来だ。ルシアは油断し放していた剣柄を握り直し、剣を抜き取り剣先をシュヴァルツァーへと向ける。

「おやルシア様が私に剣を向けるなど他のどの世界軸でもなかったこと。それが起こるとはやはりこの世界軸は特別なのですね」

言葉は驚いたように言っているがシュヴァルツァーの表情は勝利することが解っている者の余裕の笑み。少々、思っていたのとは違うイレギュラーなことが起きて楽しんでいるといった顔。無言でシュヴァルツァーと真っ直ぐ見つめ合い睨みあう。一秒、二秒………重苦しい静寂が辺りを支配する。

Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【勇気の試練編】 ( No.184 )
日時: 2017/10/16 08:25
名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: O62Gt2t7)

重たい沈黙、静寂が支配した空気、睨み合い続ける蛇と蛙。蛙の首筋にすぅと冷や汗が流れ落ちる、「フッ」以外にも睨み合いに終止符をうったのは蛇の方だった。蛇は失笑しこう言う「私に貴方様と戦う意思はありません」腕を高く上げて意思がないことをアピールしているのか。だがしかしシュヴァルツァーから殺意の猛火は消えていない。熱く燃えたぎり蛙一匹など簡単に丸焦げにしてしまいそうだ。ルシアは剣を構えた体制を止めない姿を見た後シュヴァルツァーは「はぁ」と大きくため息をつくと。

「分かりました。ではここはひとつゲームをしましょう」

なにが分かったのかわからない。きょとんとした表情で首を傾げるルシアを見てシュヴァルツァーは微笑み、パチンッと左指を擦り音を鳴らしたのを合図にそれまで深淵の宇宙のような暗闇の空間だった場所に眩い程の光が何処から差し込み照らす。あまりの眩しさにルシアは思わず瞼を閉じた。「目を開けてください。ルシア様」耳元で囁かれるシュヴァルツァーの声。恐る恐る瞼を開けてみる……見えた光景は。

「みんなぁぁぁああああ!!?」
「ルシアか!?」
「ルーシーアー、あたし達はここだよーー!!」

ルシアが立っていた場所は高い位置にある見張り台。眼前に広がるのは大きな溝の中に置かれた巨大な天秤。左右にある天秤の受け皿の上にはそれぞれ一つずつ巨大な鳥籠がありその中には、囚われの身となっている仲間たちの姿が、もうひとつの鳥籠には鎖で頑丈に縛られ、その身体はボロボロで血まみれの

「リオンさんっ!!」の姿があった。気を失っているのか声をかけても反応がない。早くみんなをたすけないとっと見張り台から身を乗り出し天秤へ飛び移ろうとするルシアを「まあそう急がずに」シュヴァルツァーが止めた。不敵な笑みを浮かべたまま。

「……なにが目的なんですか」

恐る恐る。絞りだすような声で聞いてみる。分かっている。この男が望むことなんて容易に想像できた、でも聞かずにはいられなかった、仲間たちをリオンをみんなを救いたかったから——もう二度と誰も失いたくなかったから。

「簡単なことですよ」とシュヴァルツァーは壁を指さす「一分後。あの場所から大量の水が流れ出ます。そうですね……一時間もすればこの天秤は水の中に沈むでしょう」笑みを崩さないまま淡々と語るシュヴァルツァーとは正反対に焦りの色を隠せないルシアは「それじゃあみんな死んじゃうじゃないかっ!!」相手の意のままに言動してしまう。予測通りの言葉に勝ち誇った笑みを浮かべるシュヴァルツァーは「選べばいいのですよ。救う命を。見捨てる命を……ね」その場の空気が一気に下がり冷たくなったのは言うまでもない。冷気のように冷たいまなざし。そうこうしている間にどこからともなく流れ溢れ出る大量の水。

「うわっ水がーーー!!」
「く、流れるペースが速いな……これじゃあ本当に一時間でおじゃんだな」
「はぁ!? なに呑気に観察なんてしてるのよっ!?」
「私達は水嵩が増えても上へ逃げられるけど……リオンさんは?」
「……気を失っているみたいだから……難しいかも……」

物凄い勢いで流れ出る水はものの数分で足首まで到達している。このままのペースで増えて行けば一時間もかからずに浸水する可能性だってある。「こんなこと……やめてくださいっ」とシュヴァルツァーを睨み付けてみたが無意味だった。シュヴァルツァーは余裕の笑みを変えないまま

「世界を"救った"英雄の貴方様に聞きましょう。救うべき命はどちらなのか。犠牲にすべき命はどちらなのか。
 世界に住まう全ての人々を助ける為に一人を犠牲にするのか。
 たった一人を救うために全人類を犠牲とするのか、さあ——答えてください」


どんどん溢れ出る水はもうすでに腰の辺りまでに到達している。鳥籠の床に横たわっていたリオンの頭は完全に水の中へ沈んでしまっている。早く助け出さねば手遅れになってしまう。だがリオンを助ければ、ここまで苦楽を共にしてきた仲間たちの命が「そう難しく悩まなくていいのですよ」蛇はのそ胴体を巻き付けゆっくりと縛り上げる蛙の耳元で甘く囁く「——無理に選ばなくたっていいんです。だって——選ばなければ両方が死ぬだけですから」不敵な笑みを崩さないままに。




どちらの命を助け どちらの命を見捨て 犠牲としますか?







[仲間]の命を救い [リオン]の命を犠牲とする






[リオン]の命を救い [仲間]の命を救い犠牲とする







どちらを救うも殺すも貴方様しだい。

Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【勇気の試練編】 ( No.185 )
日時: 2017/10/17 09:21
名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: Xhss9HRk)

「そんな……みんなとリオンさんのどちらか片方を選ばないといけなんなて……」落胆する。
ルシアはその場に膝から崩れ落ちた。選べるわけがないのだ。ここまで苦楽を共にしてきた仲間たちか海の国では大変にお世話になったリオンのどちらの命を救うかなんて……選べるわけがないのだ。
こうしてルシアが悩んでいる間にも水嵩はどんどん増えてゆきもう喉仏にまで迫っているようだ。背が低いランファ達は必死に浮上して空気を確保している状況だ。……もう片方の鳥籠を見ればリオンの体は完全に浸水している。……あれではもう、おそらく無理だろう。
ルシアは立ち上がりすぅーはーと大きく深呼吸をして、シュヴァルツァーを真っ直ぐキッと睨み付けたがシュヴァルツァーの余裕の笑みは変わらない。

「——お決まりになりましたか?」

その言葉にルシアはこんくんと大きく頷く。

「おい、ルシア……」
「た、助けてくれるのよねっねっ!?」

蒼白した表情で必死に口をぱくぱくさせているリアとリティ。彼らにとっては大事な、家族も同然の幼馴染の命が無意識に残酷なゲーム如きで奪い去られようとしているのだ。許容できるわけがない。リアにとってはこれが二度目。目の前にいながら何もできなくて、ただ見ていることしか出来なくて、友が消えゆく瞬間を見届けるのは、歯がゆい思いをするのはこれで二度目。
二人の想いは痛い程分かる。痛い程感じられる。ルシアもまた大切な家族を奪われた者だから——それでもルシアは選択する。たとえ救いたかった仲間たちから憎まれ疎まれようとも、ルシアは選択する。


-[仲間]の命を救い [リオン]の命を犠牲とする。


「ルシアアアアアアアアアアアアアアァッァァァァァッァァァッァァァァァァッァ!!!!」

最期に聞いた声はリアの悲痛の叫び声だったか……もはそんなことは……どうでもいい。
「世界を救うために個を犠牲としますか。仲間を救うために友人を見捨てましたか」ニヤリとシュヴァルツァーはルシアの選択に拍手。

「とても美しい! 正しい選択をしましたルシア様」
「……どうゆう意味ですか」
「全を救うために一を捧げる行為が正しいことは古の時代から行われている"生贄”文化が物語っています。
 それを抜きにしても貴方様は素晴らしい洞察力をおもちのようで……」

何が言いたいのか分からないと首を傾げているとシュヴァルツァーはスゥっとルシアの元へ歩み寄りそっと耳元で囁くように「——もうあの青年は死んでいましたから」甘く甘い果実のように誘惑する蛇のように。
——パチンッとシュヴァルツァーがもう一度、指を擦り音を鳴らすと仲間たちが閉じ込められていた鳥籠を繋ぐ鎖がからくりによって引き上げられ、ほぼ沈みかけていた水面から引きずり上げられたかわりに鳥籠がのっていたものはなんだ、そう天秤の受け皿だ。ちょんちょんの丁度いいバランスを保っていた天秤は片方の重りを無くなったせいで、残った重りの方へと大きく——沈んだ水の中に。

終わったなにもかもが終わった。ルシアのたった一言で。ルシアのひとつの選択で。
全てが終わり、仲間たちの元へ駆け寄るルシアを出迎えたのは、感謝の言葉でも、熱い抱擁でもなく、罵倒でも、罵詈雑言は浴びせられるわけでもなくただ——パァンッ!!! 一発の銃声だった。
「うっ」胸が熱い。さすがリティ狙いは正確で百発百中のガンナーだ。「あんたが悪いんだから」吐き捨てるように蔑んだ瞳で言うリティ。そうだ、大切な家族を殺した僕が悪いんだ、だから、だからそんな悲しそうな顔をしないでください……どうかそんな……後悔の念に囚われた顔をしないで……。
「そんな……ルシアァァァァ」遠くから仲間たちの悲痛の叫び声が聞こえるような気がする。でも……もう……そんなこと……どうでもいい……。






































勇気の試練-終 生贄end


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