複雑・ファジー小説
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- シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【氷国の民編】
- 日時: 2019/09/08 08:53
- 名前: 姫凛 (ID: 9nuUP99I)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=19467
これから綴る物語は忌まわし呪われた血によって翻弄され
哀しき封印から少女達を救い
少女達と共に謎の不治の病に侵された小さき妹を
助けるため小さな箱庭を行き来し愛と絆の力で闘い続けた
妹思いな少年と個性豊かな少女達の絆の物語である
-目次-[シークレットガーデン〜小さな箱庭〜]
登場人物紹介 >>166-168
-用語紹介- >>169
-魔物図鑑- >>23
-頂きもの-
高坂 桜様(元Orfevre様)より シル(オリキャラ)>>10
はる様より リア・バドソン(オリキャラ)>>11
ブルー 様より ヒスイ(オリキャラ)>>12 ヒスイ(キャラ絵)>>205
レム様より エリス(オリキャラ)>>66
華那月様より ヨナ(キャラ絵)>>08 ランファ(キャラ絵)>>09 シレーナ(キャラ絵)>>38
むらくも(キャラ絵)>>39
むお様より リオン(キャラ絵)>>37
自作:エフォール(キャラ絵) >>217
-あらすじ(第九章)
山の国の何処かにあると言い伝えられている女神が誕生した遺跡 アンコールワットで見事試練を乗り越え真実の歴史を知ったルシア達は遺跡を出てリオン、リティと別れ時渡の樹が生えた広場でヒスイと合流を果たした。
新たに出来た旅の目的。四つの国にある四つの遺跡を巡りかつて女神と共に邪神と戦った王達の力を受け継ぐ旅の始まり。
——さてどこの国の遺跡から行こうか?
-章の目次-
*1分〜10分(読むスピードで個人差があります)で物語の概要が分かるスキップ物語☆
*本編を読むだけでも物語を楽しめますが個別の短編も読むことでより深く楽しむことが出来る作りとなっています。
序章 出会いと別れ >>05-07 -スキップ物語- >>22
第一章 物静かな看護師の闇
荒くれ者 ザンク編 >>13-20 -スキップ物語- >>40
シレーナの封じた過去編 >>24 >>26-36 -スキップ物語- >>50-51
(より抜き「 魔女と呼ばれた少女の物語」完結済み)>>152)
第二章 汚された草競馬大会 >>43-47 -スキップ物語- >>52
第三章 大都市で起きた不可解な事件
宿屋での選択肢 >>48-49 -スキップ物語- >>53
[ムラクモを探す- >>55] [後をついて行く- >>54 …正体END]
遺体のない葬儀編 >>56-61 -スキップ物語- >>68
立食パーティー編 >>62-63 >>67 -スキップ物語- >>79
第四章 監禁・脱走 >>69 >>73 >>76-78 -スキップ物語- >>124
(叢side「椿の牢獄」>>158完結済み)
(別side「菊の牢獄」>>)
第五章 美しき雌豚と呼ばれた少女
コロシアム編 >>82 >>85-90 >>93 >>97 >>100-101 >>104 >>107-108
-スキップ物語-上中下>>125-127
シルの封じた過去編 >>111-113 >>119-123 -スキップ物語- >>128
(続編「美しき雌豚と呼ばれた少女とおくびょう兎と呼ばれた少年」完結済み)>>153)
第六章 闇と欲望の国
アルトの封じた過去編 >>129-133 >>136-138 >>143-145 -スキップ物語- >>146
裏カジノ編 >>147-150 -スキップ物語->>151
(幕間「感情のない少女の物語」>>224)
敵の本拠地へ編 >>154-156 -スキップ物語->>157
第七章 賢者たちの隠れ里 >>159-163 -スキップ物語上下- >>164-165
第八章 からくり遺跡
女神の試練編 >>170
[勇気の試練>>183-186 ] [知恵の試練>>177-182] [力の試練>>171-176]スキップ物語->>187-189
[仲間->>185…生贄end] [友人->>186…見損ないend][本当->>181] [嘘->>180…神のお遊戯end]
[棺を開けない- >>173-176][棺を開ける- >>172…死神end]
隠された真実編 >>194-197 -スキップ物語->>193
(修正前>>190-192)
第九章 荒くれ者の最期 >>198-202 -スキップ物語->>207
(幕間「殺戮人形と呼ばれた少女の物語」>>224)
第十章 殺戮人形ト色欲妖怪
王家の墓編 >>208-216 -スキップ物語->>
リアの封じた過去編 >>218-2231
[受け入れる>>220-221]…喪失END [受け入れない>>222-223]…永眠end
(→狐の銅像「親殺しの青年の物語」>>)
第十一章 嘘ツキな臆病者
氷国の民編>>225-229 …達筆中
ひと時の休息編
第十二章 賽は殺りと投げられて
偽りの仮面編>>
真実の泉編 >>
???の封じた過去編>>
最終章 最終決戦
Aルート >>
Bルート >>
cルート >>
Dルート >>
-掲示板-
達筆開始日 2014/3/4
2017/11/25:URL先を新しくしました。雑談板にあります、設定資料集スレにしました。
2019/9/8:URL先を新しく書き始めたリメイク版の方に変えました。
-おしらせ-
2017夏☆小説カキコ小説大会【複雑・ファジー小説部門】で【銅賞】を頂きました。
投票してくださった皆様、本当にありがとうございました<(_ _)>
完走(完結)目指して頑張りたいと思います!
20119/9/03→『氷国の民編』『新章』追加
参照100突破!3/6 200突破!3/11 300突破!3/15 400突破!3/21 500突破!3/28 600突破!4/4 700突破!4/9 800突破!4/15 900突破!4/22 1000突破!4/28 1100突破!6/2 感謝♪
2017年 2600突破!/1/30 2700突破!1/31 2800突破!2/7 3200突破!8/31 3300突破!9/1 3400突破!9/7
3500突破!9/12 3600突破!9/19 3700突破!9/26 3900突破!10/10 4000突破!10/17 4100突破!10/31
4200突破!11/6 4300突破!11/14 4400突破!11/23 4500突破!11/28 4600突破!11/3 感謝♪
2018年 5000突破!1/7
返信100突破!2014/4/28 200突破!2017/11/14 感激♪
-神様な読者の方々-
蒼欒様:初コメを下さいました!もう嬉しさMaxです♪
レム様:エリスちゃんの生みの親様です♪いつも温かい励ましコメありがとうござます!
ブルー様:オリキャラ ヒスイちゃんを投稿してくださいました!
出せるまでに一ヶ月以上もかかってしまったのに、見捨てずに見て下さっているお優しい方です(T_T)
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.51 )
- 日時: 2014/03/25 09:11
- 名前: 姫凛 (ID: lCrRYYeA)
第六階層では森の国でよく見覚えのあるあの町であの家であの独特の話し方をするお爺さんが出迎えた。
すべては簡単に察しがつくことだった。シレーナは捨てられたのだ。父からも母からも。
ここで完全にシレーナの心は崩壊してしまった。
第七階層では狂った少女が禁忌の術に手を出した。
人体錬成。
自分の体の一部を代償に人を生き返らせる術。だが成功例はない。
気が付くと父の死体をバケモノが食らっていた。
やめてと叫びとめようとしたのだが、動けない。激痛がする。
痛みの場所を見てみると……ないのだ。シレーナの足がないのだ。
完全に崩壊した少女の心をまだ闇は侵し続ける。
シークレットガーデン。父親を食らっていたバケモノが、クリスタルで出来た花に食らいついている。
倒すには油断している今しかない。だがそれを阻む者が…。
シレーナだ。シレーナは今まさに自分を殺そうとしているバケモノは、かつて母親だった女のなれの果ての姿だと言うのだ。
自分は悪い子だから殺されて当然だと彼女は言う。だがそれは違う。
全く信用するきゼロだったがルシアが、彼女が魔女でも悪い子でもないという証拠をみせた。
それは、時を超えた父から娘への手紙だった——
【シレーナへ
この手紙を君が見ている頃にはもう私はこの世にはいないだろう。
君を捨てた私を恨んでいるかい?いや優しい君はむしろ、自分が悪い子だからだと自分を責めて罪に苦しんでいるんだろうね。
ごめんな、本当の事を言えなくて…。
君のお母さん…私の妻、ユリアは闇病と呼ばれる心の病にかかっていたんだ。
急に言動がおかしくなったり人間不信に陥ったりするらし…。治し方は現医療技術すべてを用いても不明。
誰にも治せない不治の病。
ユリアが闇病で入院していると知ると、元医者の私はどうしても治してあげたかったんだ…。
でも闇病は感染症。まだこれからの未来ある君にまで感染してしまってはいけない。君の未来を奪う権利なんて誰にもない!
…と思った私はああする事しか出来なかった。
君を捨てた。君を助ける為であってもその事実は変わらない。
本当にすまなかった。許してほしいとは思わないよ。
ただ…どうか自分をもう責めないであげてほしい。自分を許してあげてほしい。
君は悪い子なんかじゃない。とても心優しい良い子なんだ。
シレーナ。君は私とユリアの大切な…大切な宝物だよ。
お父さんとお母さんは天から見守っています。どうか幸せになってください。
お元気で。父より】
父親の本当の気持ちを知ったシレーナの心は浄化され、バケモノも煙となって消え去った。
シレーナがバケモノになる脅威は完全に消え去ったのだ。
現実世界に帰るとお爺さんが泣きながら何度も何度もルシアにお礼を言った。
こうしてシレーナの闇は晴れ、解決したのであった——
めでたし めでたし
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.52 )
- 日時: 2014/03/26 10:37
- 名前: 姫凛 (ID: nGb.G1Wf)
-スキップ物語-(第二章)
デスピル病の脅威からシレーナを救ったルシア。
ルシアはすぐにでもまたヨナを取り戻す旅に出ようとするが、シレーナもまた強引に仲間になりついて来る。
危険だからと色々理由つけて、拒んだが中々の頑固者で行くと決めたら絶対に行くと言い出しもう手の付けようがないため仕方なくシレーナも仲間に加わった。
次の日の早朝。
お爺さんに見送られ次の町目指して隣町を出たルシア達。だがすぐに過ちに気づく。
実はまだ次に行く町を決めていなかったのだ。どんな状況でもポジティブなランファは、適当に歩いてれば何処かに着くだろうと言い出しその案に乗って獣道を歩くこと数時間…。
迷いに迷った挙句の果てやっと人の道にたどり着き、泥にはまって動けなくなっている馬車を発見し、抜け出すのを手伝ってあげると御礼に近くの町まで送ってもらえることになったのだ。
着いたのは、馬の町と呼ばれる牧場主たちが主に暮らしている町だった。
町中に馬がいて、馬製品の店や、馬の石像など、なんでもかんでも馬 馬 馬 な町だった。
そんな中今馬の町では、天下のドルファ主催の草競馬大会が開かれていて沢山の著名人が来ているらしい。
ルシアは実家の牧場が借金をかかえ困っている宿屋のおばさんの代わりに草競馬大会に出ることになった。
だが馬に一度も乗った事がないため、おばさんの知り合いの少女 シルに乗馬のやり方を教わることになった。
シルは教えるのが上手く、ルシアの乗馬術はみるみる上達していった。
そして競馬大会。観客の声援と共に始まり、選手たちは一気に駆けだす。
シルはスタートと同時に一位になりそれを負けじとルシアが追う。
だがしかし、その勝負を汚すものが現れた。
それはパルスと言う悪行たかい男で、今日も嫌がらせばかりし他の選手たちの邪魔をする。
一位だったシルも邪魔をされ転倒してしまった。
それを見たルシアは真剣勝負にずるをするなんて許せないとパルスの罠をかいくぐり接近する。
当然パルスも邪魔をしてくるが、そんな事にルシアは負けたりしない。
気合と根性でなんとか、逃げ切り優勝を果たしたのだった。
その後、宿のお客さんたちに盛大に祝われ次の日。
ランファが変な奇声を上げながら部屋に入って来ると手にはクシャクシャに握りしめられた手紙が。
詳しく聞くとどうやらあの天下のドルファからの立食パーティーへの招待状のようだった。
シレーナとランファは素直に喜んでいたが、ルシアは何故かこの時素直に喜ぶことが出来なかった。
なにか裏があるのではないかと…思い。
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.53 )
- 日時: 2014/03/26 11:22
- 名前: 姫凛 (ID: DXOeJDi3)
-スキップ物語-(宿屋での選択肢)
ドルファから招待状を貰ったルシアは最高級列車で、ドルファの支社がある海の国に行くことになった。
駅に着くとドルファの使い、紫龍とムラクモが出迎えた。
どうやら川辺で焼死体が発見されたためパーティーが延期したことを伝えにそして、ルシアにも被害が及んではいけないとボディーガードにムラクモを付ける事になった事を伝えに来たらしい。
お詫びとしてパーティーが始まるまでドルファが運営している最高級の宿をよういしてくれたらしく今日から二週間、その宿を拠点として大都市ゼルウィンズを探索する事にした。
ムラクモを探す-
何故か中々寝付けず、夜風でもあたろうかと部屋の外に出ると、外で警備しているはずのムラクモの姿がなかった。
不思議に思い、辺りを探しているとエントランスで月を見ているムラクモの姿を発見。
その姿はまるでかぐや姫が月を恋しく見ているような。幻想的だった。
話しかけしばし一緒に月を眺めていると、ムラクモは悲しそうにある昔ばなしをし始めた。
今から少しばかり昔の話。
戦闘種族として存在していた、ドラゴンネレイドと壊楽族。
彼らはどちらの種族こそが世界最強なのかを何百年も争い続けていた。
その戦いは他の種族をも巻き込み、多くの血が流れた。
そして今から丁度百年前。ドラゴンネレイドが和解しようとした壊楽族の王の首をとったのだ。
王が死んだことによって戦争には終止符がうたれたが、王を失った壊楽族の民は国を追われ辺境地まで旅をし海の国を立ち上げた。
一方のドラゴンネレイドは壊楽族を追い出した後、自らの国 仮面の国を立ち上げた。
ドラゴンネレイドと壊楽族の仲は今もなお悪く。
望どうりに世界最強の名を手に入れたドラゴンネレイドだったが、彼らは孤独でほかの種族から忌み嫌らわれる事となった。
後をついて行く-
何故か中々寝付けず、夜風でもあたろうかと部屋の外に出ると何処かへ向かって歩いて行くランファの後ろ姿が見えた。
不思議に思い後をついていくと、ランファは階段を上り屋上へ。
屋上へ着くと、ムラクモがいた。どうやらランファに呼び出されたようだ。
ムラクモは何故こんな時間に呼び出したと聞くとランファはなんとムラクモの正体は、あのヨナをさらった般若の仮面の騎士 叢だと言い出したのだ。
最初はとぼけていたムラクモだったが、証拠を出され目の色が変わる。
ランファの事を特異点と呼び、ポンチョを脱ぎ捨てあの紅い鎧に般若の面ををつけた叢になりランファに襲い掛かろうとりた。
それを見たルシアはランファを庇い…
瞬殺だった。重たい一撃でルシアは死んでしまった。
哀しむランファに叢は容赦なく包丁を振り上げ…。
次の日の朝、宿の従業員が屋上で仲良く寄り添い亡くなっている少年少女の死体と部屋で眠るように一突きで死んでいる少女の死体を発見した。
こうしてルシアの旅は終わった——
ヨナを救えないまま。無残にも散っていった。
君はどこで選択を間違えたのだろうか——?
-正体END-
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.54 )
- 日時: 2014/03/27 15:57
- 名前: 姫凛 (ID: k67I83SS)
夜中。
「……眠れない」
昼間に死体の話を聞いたからだろうか?目がさえて全く眠れない。隣を見るとシレーナがスヤスヤと気持ちよさそうに寝ている。
「少し夜風でもあたってこようかな…」
シレーナを起こさぬようゆっくりベットから起き上がり部屋を出る。すると
「…あれ?あのこにいるのは…ランファ?こんな時間に何処へ行くんだろう」
真夜中の廊下、明かりは点いているが従業員の姿も他の客の姿もない。ランファとルシア 以外誰もいない…おや?
「あれ、外で待機してるって言ってたムラクモさんもいないや…どうしたんだろう」
この時ルシアの頭の中には二つの選択肢があった。
-後をついて行く-
「よし。後をついてってみよう。こんな時間に女の子が一人で出歩くのは危険だしね」
ルシアは色々考えた結果、破天荒で頑丈なランファでも一応はか弱い?女の子なため後をつけてみる事にした。
誰かを尾行するのは初めての経験だが慎重にばれないように、抜き足差し足忍び足で後をついていく。
ランファは階段を上って行く。上の階になにかあったけ?と思いながら後をつけて行く。すると
「えっ、屋上!?」
宿の最上階まで上がりランファは屋上へ出るドアを出て行った。
「ランファに限って…いやもしもって…事も…」
ルシアの中では女の子が夜中一人で屋上に上がるのは、自殺するためだと偏った思考あるため、もしかしたらランファもと心配している。
「ドアの隙間から見ればばれないよ…ね?」
自分で自分に言い聞かせながら、ドアを少しだけ開けて屋上を覗いてみる。そこには
「………」
「あれはムラクモさんっ!?」
屋上で一人、満月を眺めているムラクモの姿があった。
その表情は何処か物悲しそうだった。
「なんでこんな時間にこんな場所に、ムラクモさんまで……」
不思議に思いながらも様子を見続けていると、ランファが来たことに気が付いたムラクモが話しかける。
「あっ、ランファさん。どうしたんですか?こんな真夜中に屋上に来てだなんて……」
「………」
話の流れ的にランファが屋上にムラクモを呼びだしたみたいだ。
ムラクモの問いにランファは目をそらして何かを考えている。手には何かが握りしめられている。
「ランファがムラクモさんを呼びだした…?なんのために?」
ルシアも不思議に思い二人をじっと観察する。
ランファは大きく深呼吸した後、今まで見たことないような真剣な表情をしハッキリとした口調で
「すみません、叢さん。こんな場所に呼び出しちゃって」
「……ッ!?」
「……えっ!?」
ムラクモの事をあの、ヨナをさらった犯人 叢と呼んだのだ。
ルシアは淡い恋心を抱きかけている相手、ムラクモがまさかあの宿敵なわけないと自分に言い聞かせながら二人の様子をみる。
ムラクモはハッとした表情をした後、キリリとした目つきでランファを睨みつけ
「…叢?誰の事ですか。私はムラクモですよ」
「……やっぱりとぼけるんですね」
「…あのですからどうゆう」
ムラクモは本当に困っているような表情で答えている。
ルシアもまさかまさかと思いながら、目をそらさず二人の様子を見続けている。
「これを見てもとぼけていられますか?」
そう言うとランファは屋上に来るずっと前から大事に握りしめていた、ピンク色のリボンを取り出しムラクモに見せつけた。
そのリボンは南の森で迷子になったさいに使ったリボンと同じ物だ。
「そっ、それは……」
リボンを見たムラクモは驚愕し思わず後ずさる。
そしてすべてが分かったと言いたげな表情をし笑い出した。
「ふっははは…そうか、貴様か」
「ムラクモさん…まさか彼女がヨナをさらった。…そんなまさかっ」
ルシアの思いとは裏腹にムラクモは羽織っていたポンチョを脱ぎ去ると、そこにはあの般若の面をつけた紅き鎧の騎士が立っていた。
まさにヨナをさらった奴だ。
「バーナード様の言っていた特異点と言うのは」
「…とくいてん?」
正体を現した叢は低い声でランファの事を特異点と呼び睨みつける。
ランファは強気の表情で言い返す。
「そうだとしたらどうだって言うんですか」
「決まっているだろう……」
叢は背に隠していた槍と包丁を取り出し装備する。
「我らの王の野望を邪魔するものは皆殺しだ!」
ランファに包丁の先を向け、恐ろしい声で言い戦闘準備に入る。
「あたしだって…お父さんを助ける為だったらたとえ…貴女相手でも…刺し違えてでも倒すっ!」
突発的にこのまま戦いが始まれはランファは一撃で叢に殺されてしまうと思った瞬間、ルシアはドアを飛び開けランファの元へ駆け寄る。
それはあの日。石の神殿で叢に挑み負けそうになったルシアを助けに来たランファと全く同じ流れだった。
「「……っ!!」」
「…うっ!」
「お父さんっ!?」
叢の攻撃は、ルシアに直撃しルシアはランファの目の前で倒れこんだ。
ルシアが命懸けで守った為ランファは無傷。
泣きながらルシアに駆け寄り体を何度も揺すり「お父さんお父さん」と声をかける。だがもうルシアの目が開くことはなかった。
「ふっ、バカな男だ」
叢は泣きながらルシアとの別れを惜しむランファを鼻で笑い、高く包丁を振り上げ
「安心しろ。貴様もすぐに父の元へ行かしてやる」
と言った後
「キャアァァァァ」
叢にランファは一振りで斬り殺された。一切の痛みも苦しみもなく瞬殺だった。
ルシアとランファを殺した後、叢は階段をゆっくり下りながら通信端末を取り出し誰かと連絡をとる。
「…我だ。特異点及ぼびメシアの男を消した。これからヒュムノスの娘を消す。…すべては我らの王の命ずるままに——」
次の日の朝、宿の従業員が屋上で仲良く寄り添い亡くなっている少年少女の死体と部屋で眠るように一突きで死んでいる少女の死体を発見した。
こうしてルシアの旅は終わった——
ヨナを救えないまま。無残にも散っていった。
君はどこで選択を間違えたのだろうか——?
-正体END-
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.55 )
- 日時: 2014/04/10 14:13
- 名前: 姫凛 (ID: wNoYLNMT)
夜中。
「……眠れない」
昼間に死体の話を聞いたからだろうか?目がさえて全く眠れない。隣を見るとシレーナがスヤスヤと気持ちよさそうに寝ている。
「少し夜風でもあたってこようかな…」
シレーナを起こさぬようゆっくりベットから起き上がり部屋を出る。すると
「…あれ?あのこにいるのは…ランファ?こんな時間に何処へ行くんだろう」
真夜中の廊下、明かりは点いているが従業員の姿も他の客の姿もない。ランファとルシア 以外誰もいない…おや?
「あれ、外で待機してるって言ってたムラクモさんもいないや…どうしたんだろう」
この時ルシアの頭の中には二つの選択肢があった。
−ムラクモを探す-
「ムラクモさんを探してみようかな。ランファは丈夫だしきっと大丈夫だよね」
色々考えた結果。ランファはほっといてもきっと大丈夫だろうというとことにし、可憐で非力なムラクモを探すことにした。
「あれは…ムラクモさん?こんな場所でなにしているんだろ」
一階一階隅々丁寧に探しているとエントランスで、物憂げに満月を見上げているムラクモの姿があった。その姿はまるでかぐや姫が月を恋しく見ているような。幻想的だった。
「ムラクモさん…?」
「へ……?ひゃぁぁあ!?」
「わっ!」
声をかけてみるとムラクモはビクッと体を動かし目をまん丸に驚いた。それにルシアも驚いた。
「ぁ…ご、ごめんなさいっ!驚かすつもりはなかったんです」
慌てて誤るとムラクモは頬を赤く染め
「いっいえ…。ぁ…あのっ別にさぼっていたわけじゃないですよっ?月が綺麗だったから…つい…見入ってしまって…」
恥ずかしそうにもじもじしながら言っている。
ムラクモにそう言われて改めてルシアは月を眺めてみる。
「わぁ…満月だ。綺麗…」
「…はぃ」
今日の月はまん丸な満月で、美しく輝いていた。
二人で静かに寄り添いしばらく月を眺める。するとムラクモが優しい声でルシアに聞いてきた。
「知っていますか?」
「…えっ?」
「月には闇を浄化する力が込められていると言われているんですよ」
「へぇー。確かに月を見ているとなんだか心が洗われるような気持ちになりますね」
「ふふっ、そうですね。心がポカポカです」
他愛のない話をしながら二人で仲良く月を眺める。第三者から見れば二人はお似合いのカップルだ。
「はぁ…」
ムラクモが急にため息をついた。悲しそうな表情で月を眺めている。
「…どうかしたんですか?」
心配になりムラクモに聞いて見ると、しばらく黙り込んだ後
「…ルシアさんは知っていますか?」
質問に質問で答えてきた。
ルシアは困った表情をしていると続けて
「世界最強戦争を」
「せかいさいきょうせんそう?」
さっぱりわからないと言った表情をしているとムラクモは先ほどよりももっと落ち込んだ表情をする。
「やっぱりわからないですよね…」
「す、すみませんっ」
自分のせいでもっと落ち込ませてしまったと思ったルシアは慌てて謝るが
「いえ、いいんですよ」
ムラクモは優しい笑みで答える。そして世界最強戦争の事を教えてくれた。
「世界最強戦争とは、ドラゴンネレイドと壊楽族の間で行われた戦いの事です。
どちらの戦力も互角で勝敗は中々尽きませんでした。無益に、互いの兵を消費するだけで…」
「…でも今はもうやってないですよね?」
「はい。勝敗はついたんです一応。
今から百年前の事です。私達ドラゴンネレイドの王が和解をしようと一人無抵抗でやって来た壊楽族の王の首を打ち取ったんです」
「…私達?もしかしてムラクモさんは僕と同じフュムノスじゃ、なくて…ドラゴンネレイド?」
「えっ…?あっ…はい。私は世界最強の異名を持つドラゴンネレイドなんです。
王は壊楽族の王を打ち取った後、なんの罪もない壊楽族の民を追い出し自分たちの国 仮面の国を立ち上げたのです。
追い出された壊楽族の民は、気が遠くなるような長旅をしやっと見つけた新天地に身を置き国を立ち上げたのです。それが…ここ。海の国です」
「だから…仮面の国と海の国は北と南真逆の方角にあるのか」
「はい…。今もなおドラゴンネレイドと壊楽族の仲は最悪。ドラゴンネレイドは、多くの犠牲を払って世界最強の異名を手に入れました。でもそのせいで…」
申し訳なさそうに辺りを見ながら言うムラクモにつられ辺りを見渡すと、宿の従業員が白い目でムラクモを睨みつけ陰口をたたいている。
「すみません。ルシア様にまで嫌な思いをさせてしまって…」
「いっいやっ」
そんなことはないと言おうとしたルシアだったが
「私の事はどうか気にしないでください。それではおやすみくださいませ」
「あっ!ムラクモさんっ!」
ムラクモはぺこりとお辞儀をした後、逃げるようにその場を去って行った。
従業員たちもムラクモが去ったのを確認すると、それぞれの持ち場に戻って行った。
ただ呆然とすべてを見ていたルシアは
「……そろそろ寝よう」
彼女になにもしてあげられない自分をはがいいと思いながらも、部屋に戻り深い眠りについた。
-宿での選択肢-終
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