複雑・ファジー小説
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- シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【氷国の民編】
- 日時: 2019/09/08 08:53
- 名前: 姫凛 (ID: 9nuUP99I)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=19467
これから綴る物語は忌まわし呪われた血によって翻弄され
哀しき封印から少女達を救い
少女達と共に謎の不治の病に侵された小さき妹を
助けるため小さな箱庭を行き来し愛と絆の力で闘い続けた
妹思いな少年と個性豊かな少女達の絆の物語である
-目次-[シークレットガーデン〜小さな箱庭〜]
登場人物紹介 >>166-168
-用語紹介- >>169
-魔物図鑑- >>23
-頂きもの-
高坂 桜様(元Orfevre様)より シル(オリキャラ)>>10
はる様より リア・バドソン(オリキャラ)>>11
ブルー 様より ヒスイ(オリキャラ)>>12 ヒスイ(キャラ絵)>>205
レム様より エリス(オリキャラ)>>66
華那月様より ヨナ(キャラ絵)>>08 ランファ(キャラ絵)>>09 シレーナ(キャラ絵)>>38
むらくも(キャラ絵)>>39
むお様より リオン(キャラ絵)>>37
自作:エフォール(キャラ絵) >>217
-あらすじ(第九章)
山の国の何処かにあると言い伝えられている女神が誕生した遺跡 アンコールワットで見事試練を乗り越え真実の歴史を知ったルシア達は遺跡を出てリオン、リティと別れ時渡の樹が生えた広場でヒスイと合流を果たした。
新たに出来た旅の目的。四つの国にある四つの遺跡を巡りかつて女神と共に邪神と戦った王達の力を受け継ぐ旅の始まり。
——さてどこの国の遺跡から行こうか?
-章の目次-
*1分〜10分(読むスピードで個人差があります)で物語の概要が分かるスキップ物語☆
*本編を読むだけでも物語を楽しめますが個別の短編も読むことでより深く楽しむことが出来る作りとなっています。
序章 出会いと別れ >>05-07 -スキップ物語- >>22
第一章 物静かな看護師の闇
荒くれ者 ザンク編 >>13-20 -スキップ物語- >>40
シレーナの封じた過去編 >>24 >>26-36 -スキップ物語- >>50-51
(より抜き「 魔女と呼ばれた少女の物語」完結済み)>>152)
第二章 汚された草競馬大会 >>43-47 -スキップ物語- >>52
第三章 大都市で起きた不可解な事件
宿屋での選択肢 >>48-49 -スキップ物語- >>53
[ムラクモを探す- >>55] [後をついて行く- >>54 …正体END]
遺体のない葬儀編 >>56-61 -スキップ物語- >>68
立食パーティー編 >>62-63 >>67 -スキップ物語- >>79
第四章 監禁・脱走 >>69 >>73 >>76-78 -スキップ物語- >>124
(叢side「椿の牢獄」>>158完結済み)
(別side「菊の牢獄」>>)
第五章 美しき雌豚と呼ばれた少女
コロシアム編 >>82 >>85-90 >>93 >>97 >>100-101 >>104 >>107-108
-スキップ物語-上中下>>125-127
シルの封じた過去編 >>111-113 >>119-123 -スキップ物語- >>128
(続編「美しき雌豚と呼ばれた少女とおくびょう兎と呼ばれた少年」完結済み)>>153)
第六章 闇と欲望の国
アルトの封じた過去編 >>129-133 >>136-138 >>143-145 -スキップ物語- >>146
裏カジノ編 >>147-150 -スキップ物語->>151
(幕間「感情のない少女の物語」>>224)
敵の本拠地へ編 >>154-156 -スキップ物語->>157
第七章 賢者たちの隠れ里 >>159-163 -スキップ物語上下- >>164-165
第八章 からくり遺跡
女神の試練編 >>170
[勇気の試練>>183-186 ] [知恵の試練>>177-182] [力の試練>>171-176]スキップ物語->>187-189
[仲間->>185…生贄end] [友人->>186…見損ないend][本当->>181] [嘘->>180…神のお遊戯end]
[棺を開けない- >>173-176][棺を開ける- >>172…死神end]
隠された真実編 >>194-197 -スキップ物語->>193
(修正前>>190-192)
第九章 荒くれ者の最期 >>198-202 -スキップ物語->>207
(幕間「殺戮人形と呼ばれた少女の物語」>>224)
第十章 殺戮人形ト色欲妖怪
王家の墓編 >>208-216 -スキップ物語->>
リアの封じた過去編 >>218-2231
[受け入れる>>220-221]…喪失END [受け入れない>>222-223]…永眠end
(→狐の銅像「親殺しの青年の物語」>>)
第十一章 嘘ツキな臆病者
氷国の民編>>225-229 …達筆中
ひと時の休息編
第十二章 賽は殺りと投げられて
偽りの仮面編>>
真実の泉編 >>
???の封じた過去編>>
最終章 最終決戦
Aルート >>
Bルート >>
cルート >>
Dルート >>
-掲示板-
達筆開始日 2014/3/4
2017/11/25:URL先を新しくしました。雑談板にあります、設定資料集スレにしました。
2019/9/8:URL先を新しく書き始めたリメイク版の方に変えました。
-おしらせ-
2017夏☆小説カキコ小説大会【複雑・ファジー小説部門】で【銅賞】を頂きました。
投票してくださった皆様、本当にありがとうございました<(_ _)>
完走(完結)目指して頑張りたいと思います!
20119/9/03→『氷国の民編』『新章』追加
参照100突破!3/6 200突破!3/11 300突破!3/15 400突破!3/21 500突破!3/28 600突破!4/4 700突破!4/9 800突破!4/15 900突破!4/22 1000突破!4/28 1100突破!6/2 感謝♪
2017年 2600突破!/1/30 2700突破!1/31 2800突破!2/7 3200突破!8/31 3300突破!9/1 3400突破!9/7
3500突破!9/12 3600突破!9/19 3700突破!9/26 3900突破!10/10 4000突破!10/17 4100突破!10/31
4200突破!11/6 4300突破!11/14 4400突破!11/23 4500突破!11/28 4600突破!11/3 感謝♪
2018年 5000突破!1/7
返信100突破!2014/4/28 200突破!2017/11/14 感激♪
-神様な読者の方々-
蒼欒様:初コメを下さいました!もう嬉しさMaxです♪
レム様:エリスちゃんの生みの親様です♪いつも温かい励ましコメありがとうござます!
ブルー様:オリキャラ ヒスイちゃんを投稿してくださいました!
出せるまでに一ヶ月以上もかかってしまったのに、見捨てずに見て下さっているお優しい方です(T_T)
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【敵の本拠地へ】 ( No.156 )
- 日時: 2017/09/11 09:17
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: 5xmy6iiG)
目の前にはバーナードと、ぐるぐる巻きに縛られたヨナ。
背後には無言で殺気を放ち、仁王立ちする紅き鎧の騎士。
左右には嘲けり血を欲する狂犬ザンクと、「殺殺」と喋りフードで顔を隠した少女。
「ど、どうしようルシア君!?」
「ここは慌てず、冷静に…」
「って言われてもなー。完全に囲まれちゃってるし」
「やっとここまでこれたのに…また、だめなの?」
「どうすれば…」
「…ルシア」
背中合わせに仲間達と一か所に集まり固まる。ルシアに助けを求めるように皆、見つめるがここは敵の本拠地。完全に囲まれていて逃げ場など何処にもない。
バーナードが腕を振り上げ「ここで終わりだ、ルシア!」と言ったのを合図に、武器を構え今か今かと待っていた、二人が一斉に襲い掛かった。
—こんなところで死んでしまうの。やっとここまで…ヨナがすぐ目の前にいるというのにっ!
死を覚悟したルシアの命の灯を女神さまはまだ消えさせたりしない。
「お兄ちゃんっ」
「ッ娘!?」
ヨナがバーナードに渾身のタックルをおみまい。まさかヨナがタックルをしてくるなんて一欠片も思っていいなかったバーナードは一歩二歩と後ろに後退る。
ひるんだ一瞬の隙をついて、ヨナは机にある長細の引き出しの下に隠すよいに設置してある、赤いボタンを頭突きでスイッチをいれた。
「——ッ!!?」
二秒後。部屋の中央、ルシア達が立っていた足元の床が大きく開かれ引力には逆らえない。
下へ落下するまで残り時間 三秒。
「このっ餓鬼!」
「キャア!」
「ヨナッ!」
弾き飛ばされて床に倒れるヨナを助けに行きたいと脳は体に命じるが、宙に浮いている状態では体の動作を上手く扱えない。気持ちばかり焦り、上手く思考が働かない。
下へ落下するまで残り時間 二秒。
「やっとここまで来れてまた会えたのに! ヨナー! ヨナー!!」
悲痛の叫び声。手を伸ばせば、その肌に触れられる。後もう少し、もう少しだけ手を伸ばせば、取り戻せるのにっとやるせない思いで胸がいっぱいで苦しい。
下へ落下するまで残り時間 一秒。
「ヨナ…待ってる」
「ッ」
「お兄ちゃんが…助けに来てくれるの…待ってるから…ね?」
弱々しく、けれども兄を心配かけまいと健気に笑う妹の笑顔。それが最後に見たヨナの顔だった。
下へ落下するまで残り時間 零秒。
「ヨナ…ヨナ…ヨナーーーーーーー!!!」
「フッ」
「バーナード!! 絶対にお前からヨナを取り戻してみせ——」
ルシアの悲痛な最後の叫び声は閉まる床の音にかき消されてしまったが、ヨナにはその思いはちゃんと伝わっている。「待ってる…待ってるから…」と一人静かに大粒の雫を流すヨナ。
「チクショーが!! 殺しそびれたぜッ!!」
「殺殺殺殺っ!!」
ルシアを殺せなかったことを残念がる二人にバーナードは冷たく言い放つ。
「奴らの行き場所など検討がつく。先回りし今度こそ息の根を止めろ」
と言った後に「次はないと思え」と付け足す。生の無い瞳。冷徹で残酷な瞳。ドルファでは社長、バーナードの命令は絶対。失敗など許されない。次はないというのはつまりそうゆうこと。
「言われなくともぉ!!」
「殺殺殺殺殺」
「御意に」
それぞれ返事をすると、それぞれの持ち場へ急ぎ向かう。ルシアとの最初で最後の勝負が待っているから、楽しみでしょうがないのだ。
どう可愛がりいたぶってやろうか、どう絶望させ精神を壊してあげようか、ルシアを先に殺すか、それとも大事な仲間を先に殺すか、考えるだけでわくわくしてくる。どちらが勝っても負けてもこれが最後。
なら楽しまないと損でしょう。
「待て」
バーナードに呼び止められたのは紅き鎧の騎士だ。
「貴様、何故攻撃しなかった。あの程度の雑魚、お前ならば簡単にしまつできるだろう」
ルシア達を殺せと命令されたときただ一人、仁王立ちのまま動かなかった紅き鎧の騎士。いや最初から一人だけ武器を抜いていなかった紅き鎧の騎士。
彼女の実力ならば武器を一振りするだけで、ルシア達など一掃できただろう。でもしなかった。
「王よ、お言葉ですがあの者達を過信しすぎでは」
「ほう?」
「奴らはいずれ、貴方様をも超える存在。あまり過信し油断なさらないように」
首を刎ねられるのも時間の問題ですよ。と、紅き鎧の騎士はぼそり独り言のように呟くと、瞬間移動魔法を使い、自分の持ち場へと移動した。
広い部屋の中にぽつりと残されたバーナードは笑い出しだ。渇き狂ったように笑い出した。
「フッフハハハハハッ! メシア風情が私を超え怯えさる存在になりえるだと…?」
そんなことなど万が一にもあり得ない、とバーナードは心の底から思っている。だって彼の種族、ユダ族こそが世界で最強の種族。他の種族などユダ族からすれば、お飾りもしくはカスの塊程度の存在だ。
見下してきた他の種族に負けるなどありえない。あるはずがない。…だけど
「それも、それで面白いか。…なぁ、メシアの姫よ—」
メシアの姫と呼ばれた少女は、窓の外にある黒い雲の先、ずっと遠く、遠い場所に旅立った大切な家族のことを想い無言で答える。
その答えは、肯定とも否定ともとらえられる答えでした—
-敵の本拠地へ編-終
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【賢者たちの隠れ里】 ( No.157 )
- 日時: 2017/09/12 12:17
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: PCEaloq6)
第六章 闇と欲望の国-敵の本拠地へ編-スキップ物語
草木が枯れ果てた台地。雷雲の黒く分厚い雲で覆われ、頂上を見ようと見上げると首が痛くなるような高層ビル。
「ここが…ドルファフィーリング本社…」
ぼそりとルシアが呟やく、首が痛いな…とさすりながら。誰かが魔王城?と言っていたいるようだが、確かにそうともとれる見た目かもしれない。
一応、敵の本拠地なのわけだから。でもごく一般的と言っていいのか、普通にエリートサラリーマン達が出はいりしている会社とも言えるし見える。
とありのままを目の見えないヒスイに伝えると呆れられ、首を傾げられた。それはそうだろう、言っている本人が分かっていないのだから、当然の返答といえよう。
入口程度でしりもじしているようでは駄目だ。ドルファのにはこれまで沢山の煮え湯を飲まされてきたのだ、そのツケを今日はらって貰わなければいけないのだ。
もう誰も悲しまなくて、苦しまなくていいように。
いざ—ウィーンと横に開くガラス製の自動のドアをくぐり中へ入ると……
「ようこそいらっしゃいました。ドルファフィーリング本社へ」
邪が出るかはたまた、地獄の番犬ケルベロスがお出迎えかっ、と身構えていたがなんのこっちゃない、営業スマイルが素敵な受付のお姉さんでした。
拍子抜けだ。一戦交える気満々だった為、皆あっけらかんとして棒立ち状態。どうしよう…めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど、とルシアに視線が集中するが睨まれたってしょうがない。だって皆、ドルファに来るのは初めてなのだから。
目が見えないのはある意味ラッキーか。ヒスイが受付に向かい、お姉さんと
「社長にお会いしたいのですが」
「アポはありますか?」
「いえ。ないです」
「少々お待ちください。社長に聞いてみますので」
いった感じのやり取りをして社長へ会えるようにしてくれた。
「「普通っか!!」」と仲間たちからは突っ込まれたが、いいのです。普通で。むしろ平和的に解決するならそっちで解決した方がいいに決まっているのだ。
無駄に豪華絢爛なエレベーターに乗り込み社長室へ。
「ようこそ、我がドルファフィーリングへ。ルシアそして…そのお仲間さん達」
出迎えたのは綺麗に伸ばされた銀髪ストレート。鋭く振り上がり凶器のようにも感じるツリ目の三十代半ばといったところの男性だ。
男は冷たい微笑みをルシアに向け、ニヤリと冷たい笑みを浮かべている。
彼の名はバーナード。ドルファフィーリングに社長で悪の親玉みたいな人。ルシア達を一人一人吟味するように見つめ、そして最後にルシアの方を向くと
「貴様は自分が何者なのか知っているか—?」
知らないとルシア答えるとバーナードはカカカと嘲けり、世界の理を語り始めた。
「古の時代。まだ世界が誕生したばかりの時代。
光から生まれ、誕生と繁栄を司る、女神"ナーガ”
闇から生まれ、死去と混沌を司る、邪神"ギムレー”
光と闇は相容れない存在。神々よる争いは必然なこと。
女神と邪神は、何百年も何千年も何億年もの間、争い続けた、が力を消耗するだけで決着には至らなかった。
このままで力尽き負ける—と感じた女神は、残り僅かの力を使い、フュムノス、ドラゴンネレイド、壊楽族(かいらくぞく)、リリアン、ユダ、そしてメシアの五つの種族を生み出し、共に戦ったことでなんとか邪神を封印出来た—かに思われた」
ここで一度、バーナードの話が途切れた。
周りの仲間達にを見てみると、皆何故か、ルシアと視線を合わせようとしない。
「—が、裏切り者のせいで、その封印は完璧な物とはいえなかった」
「裏切り者? 誰が…」
ルシアが首を傾げると、バーナードはニヤリと笑い
「貴様の父親だ—」
「えっ。父さんがっ!?」
「貴様の父親は、邪神の持つ、永久にも近い寿命と世界を支配できる圧倒的な力に魅入られ、闇に堕ちた。
我が物にしようと邪神を己の体に取り入れ、その結果。奴は強大な力と永久の寿命を手に入れた」
幼い頃に父と母の両方をなくし、今まで妹のヨナと貧しくも仲睦まじく暮らしていたルシア。
おぼろげに残る、幼き日に見た父の記憶。
父の大きくて偉大な背中に少しでも早く追いつきたくて、何度駄目だと言われても狩りへ行く父の背中を追いかけて行き、途中でバレて叱られて、お前も一緒にやるか。と、大きくて暖かい手のひらで頭を撫でられた、記憶の中に僅かに残る父の姿。
バーナードが言っていることが本当の父の姿なのだとしたら、この記憶の中にいる父はいったい—誰なのだろうか。
「貴様の父が裏切ったことに痛く悲しまれた女神"ナーガ”様は我らユダ族に命じられたのだ」
ゴクリと唾を飲みこむ。
「—貴様ら、メシアの一族を皆殺しにしろとっ!」
この言葉を合図に隠し通路に隠れていた
前方、バーナードの後ろにはぐるぐる巻きに縛られたヨナ。
左にはギャハハハハッと嘲け剣を構えたザンク
右には殺殺殺…と言っている弓を構えた少女
背後、エレベーター前には無言の圧。そして殺気を放つ般若の面を付けた紅き鎧の騎士。
囲まれた。完全に。逃げ場を失ったルシア達。
やっとここまで来れたのに—
諦めて死を受け入れるのしかないのかと思ったその時—
「逃げて—お兄ちゃんっ」
ヨナの活躍により、ルシア達が立っていた床が開から逃げ道が。
ルシアはヨナも一緒に逃げようと、手を伸ばすがヨナ首を振り、涙でくしゃくしゃな笑顔で「お兄ちゃんが…助けに来てくれるの…待ってるから…ね?」と落ちてゆく兄を見送った。
次にルシア達が向かう場所などバーナードには見当がついている。ならば先回りさせせればいいだけのこと。
確実に殺せ—と部下と言う名の捨て駒に命令する。捨て駒は各々返事をすると持ち場へ、移動する。
「待て」
バーナードに呼び止められたのは紅き鎧の騎士だ。
「貴様、何故攻撃しなかった。あの程度の雑魚、お前ならば簡単にしまつできるだろう」
ルシア達を殺せと命令されたときただ一人、仁王立ちのまま動かなかった紅き鎧の騎士。いや最初から一人だけ武器を抜いていなかった紅き鎧の騎士。
彼女の実力ならば武器を一振りするだけで、ルシア達など一掃できただろう。でもそうしなかった。
「王よ、お言葉ですがあの者達を過信しすぎでは」
「ほう?」
「奴らはいずれ、貴方様をも超える存在。あまり過信し油断なさらないように」
首を刎ねられるのも時間の問題ですよ。と、紅き鎧の騎士はぼそり独り言のように呟くと、瞬間移動魔法を使い、自分の持ち場へと移動する。
広い部屋の中にぽつりと残されたバーナードは笑い出しだ。渇き狂ったように笑い出す。
「フッフハハハハハッ! メシア風情が私を超え怯えさる存在になりえるだと…?」
そんなことなど万が一にもあり得ない、とバーナードは心の底から思っている。だって彼の種族、ユダ族こそが世界で最強の種族。他の種族などユダ族からすれば、お飾りもしくはカスの塊程度の存在だ。
見下してきた他の種族に負けるなどありえない。あるはずがない。…だがもしものことがあれば?
「それも、それで面白いか。…なぁ、メシアの姫よ—」
メシアの姫と呼ばれた少女は、窓の外にある黒い雲の先、ずっと遠く、遠い場所に旅立った大切な家族のことを想い無言で答える。
その答えは、肯定とも否定ともとらえられる答えでした—
- -椿の牢獄- ( No.158 )
- 日時: 2017/10/13 09:31
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: nj0cflBm)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=19193
【シークレットガーデン -椿の牢獄- 紹介文コーナー】
この話は本編(第四章 監禁・脱走)を紅き鎧の騎士こと叢さま視点で書いた物語です。
第四章の選択/正体END読んでいる前提で物語が書かれているので、こちらから読むとフツーにネタバレされます。
ネタバレ駄目! 絶対!(隠す気の無いネタなので大丈夫だとは…思われますが)
簡単に解る?物語の概要
ドルファフィーリングでボディーガードとして働いている少女、ムラクモ。
極度の人見知りで恥ずかしがり屋さんでしかも口下手…。人を守るボディーガードとしては色々欠点しかない性格をしているが実力は本物。
それはまるで歴戦の戦士を思わせるほどの風格—。
般若の面をつけた紅き鎧の騎士。
ルシアの妹ヨナを連れ去った犯人であり、憎き強敵。
獲物(武器)は包丁と槍。彼/彼女が通った道には草木ひとつすら残さない—。
—むらくも。
陰と陽。裏と表の顔。
果たしてどちらが本当のむらくもなのだろうか—?
物語はURL上に張ってあります。もし興味を持たれて読んでみたいなと思われた方はどうぞ、クリックしてくださいませ♪
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【賢者たちの隠れ里】 ( No.159 )
- 日時: 2017/09/13 09:57
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: PCEaloq6)
第七章 賢者たちの隠れ里
ドルファフィーリング本社、社長室でバーナードから自らの出自の真実を知らされたルシア。
自分はもっとも平均的な能力でもっとも多くの数がいると言われるヒュムノスだと、ずっと信じ込んでいた、信じ込まされていたのに本当は違った。それは大嘘だった。
本当の種族は、厄災の子、メシアだったのだ。世界を自分のものにしようと、自分を生み出した女神、共に戦った仲間達、全てを裏切った、罪深きメシアの一族。
裏切った張本人とされるのはまさかのルシアの父親だった。幼い頃のおぼろげに残る父の大きな背中。あれは…なんだったのだろう。こんな父が欲しかったという願望が映し出した幻だったのだろうか—?
父も死に、バーナードに完敗し逃げ帰った来た、今のルシアに真実の裏に隠された真実を知るすでなどない。
ドルファフィーリング本社の地下に広がっている地下水道。
点滅する電球の灯りしかなく辺りは薄暗い。気温は低く少し肌寒い。ジメジメと湿気が多い、周りの壁には苔ばかりだ。
足元の泥と拗ね辺りまでの水が歩みを邪魔する。歩くたびにペチャッペチャッとあまり好い気のしない音が鳴る。
ここへ落下してからどれだけ経過しただろう。数時間? それとも数日だろうか。時間を確かめるすでがないため、己の体内時計に頼るしかない。ただひたすらに出口を目指し無言で前へ歩き続けるそれだけ。
いつものように陽気にふざけたりなど誰もしない。皆疲れきった顔をしている。
落とされてからずっと歩き続けているのだ、それも致し方ないのだろう。
「ねぇ、これからどーするの」
「………」
最初に沈黙を破ったのはランファだった。
始めの頃は空気の読めない発言ばかりしていた、ランファだったがルシア達との冒険で大きく精神的に成長し今では空気が読めるようになれるまで成長したのだ。
「そうだなー」
「………」
次に口を開いたのはリア。彼も最初はお調子者の青年といった雰囲気をしていたが、ルシア達との冒険で自分がこの中で一番最年長なのだという事を改めて認識し、俺がこいつらを導いてあげないとっと気持ちを改めた。
「この洞窟っぽいとこ、どこまで続いてるのよ…」
「………」
文句をいうように言ったのはシル。ドルファのせいでパクホー伯爵を殺した犯人として濡れ衣を着せられ、幼いその首に三億という賞金をかけられてとても口に出来ないような辛い人生を歩んできた少女も今では普通に笑い文句を言える、生活を送れるようになった。
「うっ、苔の臭いが…」
「………」
苔の臭いにむせているのはヒスイ。健常者でも歩きにくい泥道。杖を使いながら歩く彼女だとさらに歩きづらいことだろう。
シルがそっと、肩を貸し助け合いながら前へ歩く。ドルファに人生を滅茶苦茶にされた者同士、なにか通じ合うものがあるのだろう。
「歩きづらいよー」
「出口なんてあるのかな」
「苔の臭い苦手…」
「んー……」
「………」
それぞれ文句を言いながら、助け合いながら前へと進んで行く仲間達とは対照的に、ずっと黙り込んだまま、足は前に進んでいるが心は止まったまま。前へ進むことを諦めてしまった少年が一人。
「……ルシア」
「……なに?」
少女が少年の名を呼ぶ。少年が少女のいる後ろを振り返ると
バチンッ!!
「わぁ〜お……」
「あちゃ〜」
「あれは痛い」
「すごい音…なにが?」
地下水道全体に響き渡る、平手打ち。仲間たちもドン引きだ。
叩かれた少年、ルシアの頬には真っ赤な紅葉が。
「な…なにするの…シレーナ」
ルシアに平手打ちしたのはシレーナ。無言でルシアを見つめたまま静かに
「ルシアは逃げてる」
「逃げてるッ? 僕がっなにから!?」
図星を突かれて自然と声が荒ぶる。物静かで大人しいシレーナが怒った姿を見るのは初めての事。どうするのが正解なのか、どうすればいいのか分からない仲間たちはただオロオロしながら二人の様子を見守る事しか出来ない。
「ヨナちゃんから…現実から…」
「僕は逃げてなんかないっ!」
ドルファフィーリング本社での出来事を思い出すと、怒りで我を忘れそうになる。自分の中にいる黒い邪悪な黒い感情が爆発してしまいそうになる。
爪が食い込み血が流れるくらいに力強く拳を握りしめ、壁を殴り付ける。まだ少し残る理性がそうさせるのだ。間違っても、この怒りをシレーナに向けないように。
「やっと…やっと会えたのに! あともう少しだったのに! あともう少しでヨナを助けだすことが出来たのに! あともう少しでっ!」
バチンッ!!
血塗れの拳で壁を殴り続けるルシアの頬をもう一度、シレーナは平手打ちした。今度は先程よりもずっと強く。
「それが逃げてる」
「……どうゆう意味だよ。シレーナの言いたいことが解らないよ」
「あの時…ルシアが自分と引き換えにしてヨナちゃんを助けたとしても……ヨナちゃんは喜ばない」
「どうして…? だって、あんなところにいるよりもずっと!」
「……ルシアがいないから」
「ッ!」
早くに両親を亡くし、兄と妹の二人で貧しくとも協力し合って楽しく暮らしていたあの日々の思い出がよみがえってくる。
大量に狩れた日なんかは、ヨナの大好物のメロンを買って帰り二人でささやかなパーティーを開いて楽しんだり、隣町にある本屋に新しい本が入ったと聞けばヨナの為に新しい絵本を買いに行く。
いつもヨナの為にヨナの為にと頑張っていたら、ある日ヨナがいつもありがとう。大好きなお兄ちゃんへと手紙をくれた日があった。貰った手紙は今でも肌身離さず持っている。僕の宝物だから。
僕にとってヨナは命に代えても守りたい存在。大切な家族だから。
「…でもっ僕は災厄の種族でっ!」
「ん〜〜〜」
「ッリアさん?」
言い争いをしていた、ルシアとシレーナの間を考える人よろしくのポーズで歩き回っていたリアが通りすぎる。あまりに深刻な面持ちで考え込んでいるため、逆に心配になってきた。
「どったのリア? そんな難しそうな顔して…似合ってねーむぎゅっ」
ランファの頬を両手でむぎゅっと抑えてタコさん顔。唇を突き出した表情にしてやり
「君にだけはい・わ・れ・た・くないな〜」
と爽やか笑顔。
「むぎゅ〜むぎゅっ」
「あはっ。君にはそのぶちゃいくな顔がお似合いだよっ」
腕をぐるぐる振り回しすランファの攻撃をかわしつつ、頬を押さえる手は離さないリア。
傍から見れば仲の良い兄妹のようでとても微笑ましい光景だ。
「リアさん。難しそうな顔して考え込んでいるんですか?」
ま、それはそれとして。先ほどの話しへ戻ろう。リアはん? あ〜。と上を向き一度自分の中で話を整理する。
数秒後、ルシアの方を向き
「あのバーナードとか言うおっさんがいってたこと、どーも胡散臭いなーと思ってな…」
バーナードの言っていた事…ルシアの出自及古の時代にあったと言われる女神と邪神に神々による大戦争の事だろう。
田舎育ちのルシアは知らなかったが、この世界に暮らす者なら例え幼子でも知っている。有名なおとぎ話だ。
その話を今更胡散臭いとは如何程だろう。
「んー……」
腕を組みリアはまた難しそうな顔して考え込み始めた。
仲間達は皆首を傾げ顔を見合わせる。
待つこと数刻。
「ああっ、わかった!」
突然リアが大きな声をあげた。
「ど、どうしたんですかっリアさん」
「思い出したんよっ!」
リアさんは言うが早いか、ルシアの両肩を掴み
「そうなんだよっ違うんだよ、本当の歴史はそうじゃなかったんだ!」
喉に引っかかった小骨が取れたときなみに大喜びで大興奮のリア。掴んでいるルシアの肩を前後に揺らしまくる。気持ち悪い…酔いそうだ。
「リ、リアさん…なにを思い出し…たんですか…?」
もはや虫の息である。
「そう。俺は見たんだ。真実をっ! あの遺跡でっ」
「あの遺跡?」
リアが肩を揺らすのをやめてくれた。あぁ…気持ち悪かった。…と一安心していると、今度はリアの顔が目の前いっぱいに!! 近い。キスでも出来そうなくらい近いっ。
わぁ〜と周りの年頃の乙女から声があげる。あれか、見る角度によれば、しちゃっているように見えるという現象ですかっ。
「なぁ…ルシア」
近い。でもリアの顔を至って真剣だ。ふざけているようには見えない。
だから恥ずかしさを押し殺し、ルシアもリアを真っ直ぐ見つめる。
「お前は真実を知る覚悟があるか?」
「…真実を」
「真実ってのはいつも自分に有利になるような物ばかりじゃない。
知りたくななかった、知らない方が良い真実だってある。
それでもお前は真実を知りたいか—?」
「………」
ゴクリ。つばを飲み込む。
真実は残酷なりとはよく言ったものだ。バーナードから知らされた真実よりもさらに残酷な真実があるのか…。
だけど、それでも
「それでも僕は知りたいです。自分の事。父さんの事。そして僕達メシアの一族の真実。
もう自分だけ知らずに生きるのはごめんです! 教えてくださいリアさんっ!」
たとえどんなに残酷な真実であったとしても、もう目を逸らし逃げたりなんてしない。
受け入れてみせる。ルシアの中に新たに宿る覚悟の炎。
「あ…いや…そのー」
「…?」
どうしたことだろう…リアの様子がおかしい。冷や汗をかき、目がバタフライ(泳いでいる)している。
「見た場所は思い出したんだけどな〜……内容は忘れちった、てへぺろ」
ウインク&舌をぺろりと出してごめんねっと謝るリアに皆でせーのっ!
「「「えええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」」
「テメェよく偉そうなこと言ってたなコンニャロウメー」
殴りかかるランファの拳はさらりとかわし、頭をチョップ!
「イタッ!」
「そんなへなちょこ攻撃なんて当たるかっ」
「コノー」
追いかけっこを始めるランファとリア。本当に二人は仲が良んだな…とほっこり、している場合ではなく
「あのー! リアさんが思い出した遺跡ってー!?」
内容は忘れたと言っていたリアだが、見た場所は思い出したと言っていた。
そっちからせめていくことにしよう。近道ではないがリアが思い出すのを待つより、そっちの方が確実だ。
「アンコールワット!」
アンコール・ワット? 皆の頭に上にクエスチョンマークが浮かび上がる。
見たことも聞いた事もない名前の遺跡だ。
「でもあそこはリリアンの管理区域だから、まずは賢者の里に行かないとなー」
「にゃー!!」
…あ、捕まった。ランファが捕まり、リアにぽこぽこにされた話はまたの機会にでも。
森の国の何処かにあると言われるリリアンたちの隠里。何処かにあるということは、噂話で皆知っている事。だがしかし実際に辿り着いたものは誰一人としていない幻の里。
何故、リアが賢者の里の場所を知っているのかとても不思議な話しだが、今回に限ってはとても助かる話だ。ここは甘えて連れて行ってもらうことにしました。
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【賢者たちの隠れ里】 ( No.160 )
- 日時: 2017/09/18 07:41
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: 344/XKJR)
山の国には古くから言い伝えられている噂話がありました。
山々が連なる場所のどこかにあると言われている禁忌の森。一年中常に霧が立ち込め、薄暗く生命の息吹を感じない死の森。
森の奥深くには化け物の集落があると恐れる者。森の奥深くには全知全能の神を奉る賢者達の隠れ里があり強大な力を授けてくれると語る者。森の奥深くにある洞窟には膨大に寿命を延ばす泉があり、その水を飲むと永遠の命を得られるという者。
様々な噂が飛び交っていました。欲に目をくらませた愚か者たちは森の奥へと吸い込まれていきました。
そして誰一人として森から出てくることはありませんでした。
森の化け物に食べられたのだと言う者。全知全能の神に極楽浄土へ連れていかれ汚れた現世には帰ってこないのだろうと言う者。賢者の里に住んでいると噂されるリリアン達に食い殺されたのではないかと思考する者。
皆様々な憶測をたてるがどれが本当で真実なのかは誰にも分からない。
—だって。生きて帰って来た者なんて誰も居なかったのだから。
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