複雑・ファジー小説

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超能力者と絶対に殴り合う能力
日時: 2018/03/26 17:23
名前: 波坂 (ID: KLUYA2TQ)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=359

初めましての方は初めまして。それ以外の方はこんにちは。
波坂なみさかと言う者です。
意見や感想、アドバイスなどは大変嬉しいのですが、それが的確なものであるかどうかを一度確認してから投稿して下されば幸いです。
宣伝などはできる限り控えて下さい。

※リンクは能力の募集に繋がっています。よろしければどうぞ

2015/10/17 スレッド設立
2017/01/18 受験の為、更新停止
2017/03/07 受験終了。更新再開
2017/03/28 参照回数8000突破
2017/05/14 参照回数9000突破
2017/9/01 参照回数10000突破
2017/12/15 参照回数11000突破
2018/2//13 参照回数12000突破

Twitter創作アカウント→@namisaka_sousak

【目次】
第一章>>1-21 第二章>>23-31

第三章>>32-46 第四章>>47-67

第五章>>68-77 第六章>>78-104

第七章>>105-202 番外編>>203-215

第八章>>219-236 第九章>>237-269

第十章>>270-現在更新停止

Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力(3000回突破、アドバイス求む ( No.143 )
日時: 2016/07/11 19:34
名前: 波坂@携帯 (ID: dY22Nade)

扇堂医師曰く、俺の身体は約十発の弾丸によってえぐられていたらしい。その弾丸を摘出するのに何本か手術用具を折ったりしたらしいがそこは置いておく。
その後、特殊警察による聴取等があったが、俺はあまり覚えていない。

なんだ、この虚無感は。
心に風穴でも開いたようだ。
なにか大切なものを落としてきたかの様な感覚に捕われる俺。
外の未だに降り続ける雨を特に感想も抱かぬまま無機質に見つめる。
そのままボーッとするだけで時間は過ぎていく。
ーーーー俺は何をしているんだよ。

ーーーー俺は何ができるんだよ。

ーーーー俺は……一体何なんだよ……?

そんな自問自答に答える俺は、当然ながらいなかった。



「失礼します」

知らない様な知っている様な声が病室に発生する。
誰だ?そもそもこの事を俺はまだ誰にも話していない。そんな中来る訳が無い。
そいつはベッドに横たわる俺の視界に入り込む。
そして、俺は理解した。
こいつが誰なのかを。

お前は……!

「どうも、昨日会いましたね。十橋時雨さん」

感情が煮えたぎる。
何が煮えたぎっているか?
怒りだ。
何故かって?
こいつは誰でも無い……昨日碧子を連れ去った……張本人だ。

……何をしに来やがった!

「おっと怖い怖い。というわけなので用件を済ませたら帰らせて貰いますよ」

この余裕の表情や態度。こいつにとって俺は何なんだ。
そいつが一つの封筒を放って帰っていった。
一応封筒を開いてみる。
まず折り畳まれている紙を開いた。
どうやら地図らしい。そして一つのポイントには×印が描かれている。
もう一枚は写真の様だった。何故か不透明のカバーが付いていたので剥ぎ取る。

そうかよ。
そういうことかよ。
こんなにも。
こんなにもわかり易い挑発は初めてだ。
一枚の写真。
写真に写っていたのは碧子だ。

身体中を痣だらけにされて、鎖に縛られている、碧子だ。
俺が何色の感情に狂ったなんて、言う必要は、無いだろ?




もう時計は8時を指す頃。空も大分暗くなり、闇夜が街を染める頃。
俺は病室からそっと出る。
そしてそのままホールを目指して歩く。
夜の病院とはいえまだ明かりも付いているので怖い事は無い。

そして受付のカウンターで医療費等の用事を済ませ、病院から退場しようと

「待ちたまえ、十橋くん」

聞き覚えのある声を背にゆっくりと振り返る。
白衣姿の五十代辺りの医師、扇堂医師だ。

「きみの身体は確かに頑丈だ。今もきみは至って普通の日常動作を行っている。
しかしだね、きみの身体は既に悲鳴を上げているよ。……悪いが医師としてそんな身体の患者を見過ごす訳にはいかない」

……あんたがいい人だってのは知ってる。
別にそれに反対する訳じゃねぇ。
でもな、俺には捨てられないものがあるんだよ。

暫くの静寂、不意に息を小さく吐き出す音が聞こえた。恐らくニュアンスは溜め息。

「……仕方ない、きみには特別に私から少し助力をさせてもらうよ」

扇堂医師の指が、俺の肩に触れる。
その指が光りだし、段々と輝きを強めていく。
力が湧いてくるようだ。
先程まで絶不調に近かった調子が一気に絶好調へと変わった。

「私の能力、[体調を引き上げる能力]だよ。ただし効果は一時間だ。
それを過ぎれば身体は殆ど動かなくなると言っていい」

一時間、それがタイムリミットらしい。
俺は扇堂医師に礼をして、その場を去った。
一秒でも早く、碧子を救う為に。

Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力(3000回突破、アドバイス求む ( No.144 )
日時: 2016/07/16 14:22
名前: 波坂@携帯 (ID: dY22Nade)

ずっと、友達だと思っていたって訳で。
小学校で出会ったとき、あの子は虐められてた。
それを、髪が黒いからって、人より身長が低いからって、それだけで虐められていたあの子をみていられなかったって訳で。
だから、私はある日、虐めをしていた男の子の頬を張った。
「髪の色が黒いからって、能力が無いからって、だからってそんな事をするのは間違ってるって訳ですよ!」
確かこんな台詞を言ったっけ?
そして私は、虐めの対象にされた。
だってその時、私も髪が黒かったって訳だから。
虐めは辛かったけど、私には沢山の友人がいたから、それほど苦にもならなかった。
そして、私はある日聞いた。
放課後の教室、虐められていたあの子と虐めていた男の子が話していた。
虐めていた男の子はこう言っていた。
「平野を虐めたらお前は虐めないぞ」
私は呆れた。そして悲しくなった。
明日からあの子からも虐められるんだ、と。
でも、私の耳に入ったのは、人の言葉じゃなくて、乾いた音だったって訳で。
そのあと、確かに聞こえた。
「そんなのするわけ無いよ!平野ちゃんは私を助けてくれたんだから!」
だから決めた。
この子とは、絶対友達になるって。




ああ……寝違えた、首が痛いって訳ですよ。
首を押さえながら目を開けると、白くも無い見知らぬ天井が映った。

「あら、目が覚めたのかしら」

パタン、と本を閉じる音と共にハスキーな女性の声が聞こえた。
寝違えて痛めた首を押さえながらそちらに目線を動かすと、トランプ柄のブラウスに赤と黒のチェック柄のスカートを穿き、コバルトブルーの髪を大きな灰色の髪留めで二つに括った髪型の聖林寺さんがそこにいた。聖林寺さんの髪型はツインテールって何故か呼ぼうと思わないって訳ですよ。大人びているからですかね?

おはようございま……ストップ。

いやちょっと待ってって訳ですよ。
なんで私の寝てるすぐ近くで聖林寺さんが本を読んでたんですか。
てかそもそもここ私の家じゃないし。

「?何がストップなのかしら?
おかしい所は見当たらないわよ?」

聖林寺さん、逆です。おかしな所しか見当たらないって訳ですよ。
取り合えずベッドから出て聖林寺さんに近付こうと痛ったぁい!
何ですかこれ!なんか私が寝ていたベッドの周りに薄くて青いガラスみたいなものがっ!

「ああ、貴方の周りに障壁を張ってるのよ。
……ついでに言っておくけど貴女も女なんだから羞恥心を持ちなさい」

は?羞恥心?一体何のこキャアアァァァァァ!
なんで私服着て無いんですか!ばれる!私のスリーサイズばれる!
って問題はそこじゃ無いって訳ですよ!
ま、まさか聖林寺さん……そんな趣味が……変態ッ!

「……酷い誤解を受けている気がするけど、服ならベットの左側にあるわよ」

Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力(3000回突破、アドバイス求む ( No.145 )
日時: 2016/07/18 20:44
名前: 波坂@携帯 (ID: dY22Nade)

ベットの側に置かれていた私の服を着る。てか誰が脱がせたのこれ?
障壁から透けて見える壁や床は表面に光沢のある大理石の様な石で、オーク材の大きなテーブルや椅子達が規則正しく列んでいる。聖林寺さんの座っていた椅子はあそこから拝借したんですかねぇ?

「聖林寺」

と、重厚な扉を開く音に遅れて女性の声が聞こえた。
軍服の様な恰好をした女性……うわぁ、胸大きいって訳ですよ。
その女性と赤黒い髪を適当に跳ねさせた天然パーマのトレンチコートを着た身長推定170辺りの男性。そして車椅子に乗ったカッターシャツを羽織っている……私と同い年位の男子と……なんか朝焼けみたいな髪の色のメイドさんが入ってきた。

「あら出雲さん、少し遅かったわね」

「すまぬ。少し外せぬ用があっての」

なんか女性が爺言葉喋ると違和感しかないって訳ですよ。

「つーか障壁張りっぱで良いんですか?創造力尽きちまいますよ?ひじりん姉さんよぉ」

天パの男性が頭をかいてこちらを指指しながら言った台詞に対し、聖林寺さんはスタスタとその男性の前まで早足で向かい、その細長い五本指で顔面を鷲掴みにしてニッコリと脅迫的な笑みを浮かべながら言葉を返した。

「うふふふ、障壁については問題は無いわよ。だって私は一応司る能力者の一人、創造力は殆ど尽きる事は無いわよ♪
ただね……少し向こうで優しい優しい聖林寺姉さんとオ・ハ・ナ・シ、しましょうか♪」

「痛い痛い痛いいだいぃ!すんません聖林寺姉さん!調子乗りました!だから止め頭がぁぁぁぁ!」

「うふふふ♪」

ニッコリと黒い笑みを浮かべながら、そして天パの男性の顔面を鷲掴みにしながら文字通り引きずって部屋を出て行った。……聖林寺さんって優しそうに見えるけど怖ッ!

「……やれやれ、中野さんもわかっているだろうに」

「ご主人!あれはきっと喧嘩する程仲が良いという奴です!だから私とご主人も喧嘩しましょう!」

「……落ち着け、それより紅茶入れてくれないか」

こっちの高校生位の二人は……至って普通なんですかね?

「いかんいかん、本題を忘れておった」

と、爺言葉の女性が思い出したかの様に手をポンと叩いて私の方に近付く。私より身長高いです。
上から見下ろす様に視線を投げつけて来るこの人に対して私はどういう目線を返せば良いんでしょう?睨みつける?防御力下げさせてどうするんですか。
ここは無難に「え?何?」みたいな目線を投げつけましょう。

「おぬしは平野平子で間違いないかの?」

一瞬「いいえ違います」なんて言う英文を直訳した様な文章が頭を横切りましたが変な事をしたら即やられそうな気がしたので「そうですけどなにか?」と返しました。私だって空気くらい読むって訳ですよ。

「そうか、では平野平子。
私らと一緒に来んか?」

……え?

Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力(3000回突破、アドバイス求む ( No.146 )
日時: 2016/07/22 22:04
名前: 波坂@携帯 (ID: nYs2x9iq)

始めてだった。
自分自身が、建前や倫理からきたものでは無く、純粋に、心の底から、守りたいと思ったのは。
そう思えたのは、あいつだけだった。
恐らく、他の人間の為に、俺はあそこまで意地を張る事はできないだろう。
俺はヒーローじゃない。ただ、単純に、俺の手の届く範囲であろうと、自分の知らぬ人間は助けないし、救おうとも思わない。
あくまで、特殊警察だから、知り合いだから、面倒事に繋がるから、そんな理由を並べたてて、風間司なんていう正義ぶった仮面を付けている。
でも、
だけど、
あいつだけは、仮面の風間司では無く、本心の、本当の、俺が守りたいと思った。
俺は汚い、汚れた人間だ。あいつみたいな純粋な人間じゃない。打算で動くし、切り捨てるものは切り捨てる。
だが、
しかし、
そんな俺が、あいつを守ろうって思っても、悪くは無いだろ?



「ーーーー間、ーーー答、所望、葉月」

声が聞こえた。
天澤の様な柔らかい声じゃない、低音でカクカクとした声だ。
目を開けると真っ先に飛び込んできたのは海の様に深い藍色の瞳。
サイドテールが垂れて鼻先をくすぐるが、流石に心配していた様子だったので視線で訴える。
記憶の追跡者ことメモリアルストーカー、青星葉月はベットに横たわる俺を覗き込む姿勢でこちらを見ていた。

Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力(3000回突破、アドバイス求む ( No.147 )
日時: 2016/07/23 20:53
名前: 波坂@携帯 (ID: nYs2x9iq)

「風間、此処」

あの後、青星から俺の身体について聞いた。どうやら肋骨が数本逝っているらしく、あと二日程は絶対安静、二週間程は運動禁止らしい。むしろ俺は限界まで足を酷使した上に軽自動車に交通事故さながらに激突され、おまけに銃弾を数発プレゼントされた割には怪我が軽いと思う。
とは行っても今は本当に体が重い。運動能力の低下に加えて肋骨を支える器具を巻き付けていて、日常動作すらもけだるげに思え、今こうして歩いているだけでも自分の容態の深刻さが把握できる。

青星が手をかけたドアノブは特殊警察医務担当の06部の部室だ。もはや部室というよりは病棟ーーーーとはいうものの特殊警察中央エリア本部の三割を医務担当の部が占領しているのだから当たり前と言えば当たり前だがーーーーであり、00部との社会的格差を思い知らされる。
俺も先程までは此処にいた訳だがやはりと言うべきか01部による事情聴取が行われた。どうでもいい、知らない事は「知るか」の一点張りで答えたのは些か手を抜きすぎたとして反省している。
青星がドアノブを捻る。ドアを開けると通路があり、病院の様な雰囲気を醸し出していた。
病室に繋がるドアが幾つも設置されていて、視線を右にずらせば『特殊警察06部部員室1』とゴシック体の字が印刷された紙がドアに無造作にセロハンテープで貼っている。
青星がなんの躊躇もなくドアをノックし返事をもらいズカズカと入室していったのをみて無遠慮な奴だと感想を抱きながら便乗する。

「ありゃー?こりゃ葉月っちゃん後輩ちゃんじゃな〜い」

高い声、女性というか少女の様な印象の声。
声の主の方向に首を回す。前では青星が特に反応も無く「報告」と一言だけ呟いている。それを聞いて何の報告だと気にかかったがどうでも良くなったので後回しすることにした。
声の主はしたにローラーが付いている椅子に腰掛けて足を組んでいた。もしそれが大人の女性の容姿ならば色っぽく見えたのだろうが、その存在は余りにも幼く見えた。
06部の灰色を基調とした制服の上から床に擦れる程サイズが合っていない白衣を羽織った身長140cm程の少女だ。スリッパのサイズも大きいのかオレンジ色の靴下が八割がた見えている。
ふふんとピンク色の髪を小さなツインテールに纏めた少女は幼げな童顔で笑っていた。
青星がその少女に向かって俺に指をさしながら一言言う。

「彼、風間司」


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