複雑・ファジー小説
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- 超能力者と絶対に殴り合う能力
- 日時: 2018/03/26 17:23
- 名前: 波坂 (ID: KLUYA2TQ)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=359
初めましての方は初めまして。それ以外の方はこんにちは。
波坂と言う者です。
意見や感想、アドバイスなどは大変嬉しいのですが、それが的確なものであるかどうかを一度確認してから投稿して下されば幸いです。
宣伝などはできる限り控えて下さい。
※リンクは能力の募集に繋がっています。よろしければどうぞ
2015/10/17 スレッド設立
2017/01/18 受験の為、更新停止
2017/03/07 受験終了。更新再開
2017/03/28 参照回数8000突破
2017/05/14 参照回数9000突破
2017/9/01 参照回数10000突破
2017/12/15 参照回数11000突破
2018/2//13 参照回数12000突破
Twitter創作アカウント→@namisaka_sousak
【目次】
第一章>>1-21 第二章>>23-31
第三章>>32-46 第四章>>47-67
第五章>>68-77 第六章>>78-104
第七章>>105-202 番外編>>203-215
第八章>>219-236 第九章>>237-269
第十章>>270-現在更新停止
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.52 )
- 日時: 2015/12/04 07:23
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
時雨の第一印象からすれば、火英の印象はバカだった。
(何が言いたいんだ?)
「おい。何が狙いだよ」
時雨は火英を睨み付けて鉄パイプを拾う。
「おおいっ! 俺は単に飯に誘っただけ…うおあっ!」
ドスッ!
火英が説明している途中で時雨が鉄パイプを投げた。その鉄パイプは見事先程まで火英がいた場所に突き刺さる。火英が少し避けなかったら火英自身に鉄パイプが刺さっていただろう。
「ハッ。何が飯に誘っただ? お前の目的は何だよ」
このころの時雨は碧子までとはいかないが人間不振だった。親切な事をされても裏があると考える。そんな自分を時雨は嫌い、自己嫌悪の悪循環が続いていた。
「本当の目的? …お前を助けたいってのが俺の目的だぜ」
時雨はその言葉を聞いた直後、火英に向かって走り出していた。
火英は紅色の髪をしているため、能力があるのだろうが、先程まで手を出さなかった事から遠距離攻撃では無いと予想した。
時雨は懐に潜り込み、ボディーブローを叩き込む。それを火英はガードしようとするも、パンチのスピードを捉えきれずに防御できなかった。
結果的に、火英は吹っ飛ばされて5mほど飛んでいく。それを見た時雨はどうでも良さそうにポケットに手を突っ込んで背を向ける。
「くっ…中々良いパンチを持ってるな。お前、特殊警察でも通じるぜ」
火英は立ち上がっていた。少し腹を押さえながらも立ち上がっていた。
「ほら、もっとやってみろ。思う存分殴ってみろ。それが済んだら飯食いにいくぞ」
火英のその一言は、時雨にとっては挑発としか聞こえなかった。
今度は時雨はわざと見える様に、右手で顔面を狙い拳をつき出す。
パァン!
火英はそれを受け止めるも。
ゴギッ。
「うぐぁっ!」
手から乾いた音が響き、口から声が漏れた。
時雨は受け止められた右腕ではなく左腕で拳を繰り出す。
左腕を今度は学習した火英は拳出はなく、腕に横から攻撃して軌道を逸らした。
しかし、時雨は容赦しない。
時雨は右足で足払いをかける。上半身の防御に徹していた火英は当然気が付かずに転倒した。
さらに転倒した火英の横腹に時雨は蹴りを叩き込んだ。
「ガアッ!」
声を挙げながらゴロゴロと地面を転がる火英。
時雨は溜め息をついてその場を立ち去ろうとするがーー
「その…程度…か、よ」
ーー火英は再び立ち上がった。
「…お前、いつまで諦めないつもりだよ」
「お前が更正するまでだっ! うおおぉぉぉ!」
質問に答えた火英は時雨に向かって走り出す。それは普通に見たって速いだろう。だか、時雨からすれば。
(遅いんだよ。なってねぇ)
助走をつけて火英が放った拳を時雨は易々と避け、カウンターで顔面を殴った。
また飛ばされた火英。しかしまたもや立ち上がる。
鼻血が出始めたのは鼻が折れたのだろうか。
「何の為にそんなに頑張ってんだよ」
時雨は諦めない火英に一言。
「この偽善者が」
これを言えば、きっと火英は立ち去る。そう思っていた。が、
「…そうだ。俺は偽善者だ」
帰ってきたのは予想外の言葉だった。
「俺は全ての人を救える訳じゃあ無い。完全無欠のヒーロー何かじゃあ無い。目の前に困ってる奴が、助けを求めてる奴が、道を踏み外した奴がいれば、俺はそいつを助ける。なぜ助けるかって言っても、それは俺の自己満足に過ぎない。俺は、目の前にいる奴等だけを救って、ありがとうを言われて、嬉しいって思う様な。ちっぽけなやっなんだよ」
その言葉を聞いた時雨は思った。
こいつは、俺が出会ってきた中で一番のヒーローじゃないか、と。
「だからよ。俺にお前を救わせてくれ」
火英は時雨に向かってそっと手をさしのべる。
時雨はその手をーー
ーー握り潰した。
「グガァァッ?!」
火英は声をあげる。
「信じ…られるかよ!」
時雨は火英の顔面を殴る。しかし、殴られた火英はニヤッとする。
「どうした! 何がおかしいんだ!」
「お前、気がついて無いんだな。……拳の威力が無くなって来てるぜ。ま、体は素直なんだな。……まさかこのセリフをエロ0%の所で繰り出すとは思ってなかったぜ」
時雨は、認めたく無いとばかりにうつ向く。
「だから、飯食いに行こうぜ」
「チッ」
時雨の舌打ちが、了解の意味の返事だった事を火英は理解していた。
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.53 )
- 日時: 2015/12/04 21:49
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
三毛猫さん。返信をしてくれた事に気がつかなかった私を許して下さい。
そして返信ありがとうございました。
今後、キャラが崩壊してしまうかもしれませんが、その時はご指摘してください。
続きです。
「何でラーメンだ」
「いいだろ。結構うまいんだ」
時雨の手を引いてラーメン屋へと入っていく火英。時雨は面倒そうにしながらもしっかり自分で歩いていた。
店内に入った火英はカウンター席へと座り、注文をする。時雨はメニューを見て、一番先に目がついた醤油ラーメンを頼んだ。
「なあ……時雨って呼ぶぞ。時雨。お前住むとこあんのか?」
「…ねぇ」
火英は心配して質問したのだが、時雨はその問いに家族の事を思い出してしまう。素っ気ないながらも返事をしたのは、少し火英を信じたからだろう。
「へいお待ち」
ゴトッ。醤油ラーメンと……謎のラーメンがおかれる。
「何だよそれ」
真っ赤というか赤しかない。赤いスープに赤い麺。赤いナルトに…あれはトマトだろうか。ついでにパプリカも入っている。
「REDラーメン」
微妙にREDの発音がよかった火英はそのラーメンをいただいます。と言い食べ始める。ぶっちゃけ不味そうにしか見えない。
「…いただきます」
こんな事言ったのいつぶりだっけ。そんな事を思いながら時雨はラーメンをすする。
火英と食べたラーメンは、いつものコンビニ弁当よりも、ずっと美味しいと時雨は感じた。
「お前。俺と同居しないか?」
そんな事を言ったのは、火英だった。
突然の事に多少驚く時雨だが、路地裏に寝るよりは衛生的にもいいだろうと思い同居する事となった。
「早速だが、お前にも生活費を稼いで貰わないと困る」
まさか生活費を稼げと同居してから一週間目に言われるとは思わなかった。
でも何をしろと? 時雨はそう思っていたが…。
「特殊警察に入れ。学校に通ってないなら給料は貰えるはずだ」
因みに学校に通っている場合は、学費の五割援助か給料の4分の1の収入である。大半が学費の五割免除だが、安い収入もそこそこはいる。事実火英はその一人だ。
「…はぁ」
「何だよ。どうした?」
時雨はため息をついた。
時雨はこの時、自分が特殊警察は無理だろうと考えていた。
事実、特殊警察の九割が能力者だ。一方、時雨は無能力である。
「大丈夫だ。お前ならできるさ」
面倒だ。と思いつつもやるだけやってみるか。時雨はそう思って一週間後の特殊警察の入試に参加を決めた。
そして、特殊警察の入試が始まった。体力テスト、能力テスト、面接、の三つで合否が決まるが、時雨は能力を持っていないため、圧倒的に不利と思われた。がーー
ーー常識を潰すのか時雨である。
時雨は体力テストで異常な点数を叩き出した。それも最高記録の三倍程のものもあれば、五倍が出たものもあった。
能力テストは受けられず、そのまま面接に移行する。
三人の試験官がいた。
試験官は始めにこう言った。
「貴方はどんな人間ですか」
それに、時雨はこう答えた。
「俺はクズ見てぇな人間だ」
試験官はそれを訊いた後、幾つか質問をした。
「貴方の体験をお聞かせください」
「家族が俺以外死んだ」
「得意な事はなんですか」
「喧嘩と破壊」
その回答は、常識から考えればおかしいものだった。
時雨は落ちるな。と予想していた。あんな事を言ったりしたのだ。自分が受け入れられる訳がない。
が、予想を裏切って、時雨は合格した。そして、配属されたのは特殊警察00部。通称、【問題児部】だった。
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.54 )
- 日時: 2015/12/05 19:45
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
「何でこの部は人数が少ないんだよ」
時雨はそう思った。
先程、00部に入室して自己紹介をして、自分の机を教えて貰った時雨はそのまま頬杖をついている。
暇潰しに時雨は人数を数えて見たが、時雨自身を含めても4人だけなのだ。
「仕方無いだろ。俺達は通称【問題児部】なんだからよ」
「問題児部?」
なんだそれは。と言いたげな時雨の声に答えたのは、青制服にモッズコートを羽織った風間だった。
「俺達は皆、個性が強すぎたり人格破綻者だったりするんだ」
はきはき喋る風間。しかし時雨にとっては余計疑問が増えるだけだ。
「じゃあ…風間は何なんだ?」
「俺は、能力の個性が強いんだ。[能力を無効化する能力]という特異的な能力を持っているためここに配属されたと思っている」
「因みに俺は人格破綻者だぜ。お人好し過ぎるからだとよ」
風間と同じ青制服を着た火英が胸を張る。時雨からすれば、それ自慢できないだろ。とツッコミたいが、事実自分はそれに助けられたので何も言えなかった。
「それが火英兄の良いところだ!」
後ろから風間の後ろから会話に入ってきたのは、青制服を着てオレンジ色の髪をセミロングの長さにした多少癖っ毛の髪と多少大人びた雰囲気の容姿の桟橋火麗だった。火麗は火英の妹で、火英の事を「火英兄」と呼んでいる。
「え…じゃあ桟橋先輩はどっち…」
因みに何故火麗だけ先輩付けなのかと言うと、火麗は時雨より歳上であるからだ。当然火英はその兄であるため時雨より歳上なのだが、時雨は今更変えたところで。といった感じで先輩を付けていない。
「私の事は火麗で良い。私か?」
「…能力だろ、流石に火麗は人格破綻者じゃ無いだろ」
風間の指摘には説得力があった。
「…俺は両方だな」
確かに時雨は運動能力だけで勝ち抜いたし、面接であんなことを言ったのだからあながち間違いと言う訳では無かった。
「そうか、じゃあ理由も分かっただろ? 俺達の人数の少ない理由が」
「ああ。大体な」
プルルルルルル。
「はいこちら第00部です」
突然の電話に対応したのは火麗だった。
『至急、応援を頼む。座標はE-7だ。相手はATMを車で引きずり出し強盗。、能力によって逃走中。人数は4~7人だ』
「分かりました。失礼します」
ガチャッ。
「皆。強盗だそうだ」
火麗のその一言で、【問題児部】は動き出す。
自分の制服に空気銃と警棒を差す火英。机から何かの鍵を取り出していた。
大体、以下同文、風間。
なんとなく便乗する時雨。
時雨は初めての仕事だが、緊張は見られなかった。
「彼らはATMを奪って逃走中らしい。座標はE-7。間違えないでよ火英兄」
「分かってるよ!」
返事をしながらパトカーのアクセルを全開にする火英。黙ってシートベルトをする助手席に乗った風間。基本黙っている時雨。説明をする火麗。
動き出したパトカーは、周りの車を軽々と上回る速度で現場に急行している。その速さは明らかに改造しているとしか思えない。
「特殊警察が改造とか良いのかよ」
「安心しろ! 俺の改造は爆発以外の失敗が無いぜ!」
それを聞いても不安しか出てこない時雨の反応は正しいだろう。
信号無視しながらパ行の音を出しつつ現場に急行する00部。それは大義名分があるからこそできる行為だった。
「あ、ゴミ跳ねた」
「止めろ!」
「おい! 考えて見たら逃走中ならもうE-7に居ねぇだろ!」
それは時雨の一言だった。
「…そうかもな。ちょっと確認してみようか」
電話をかけて情報を集める火麗。
電話が終わると火麗はこう言った。
「今、特殊警察が包囲して、E-7を右往左往しているらしいが…何か強行手段に出そうだ」
「そいつはやべぇぜ……ってかここもうE-6だぞ。隣だぜ」
相変わらずとばして信号無視を繰り返しているために速度は速い。なぜ事故にならないのかが不思議だが。
そこからちょっとするとパトカーか見えてくる。
運転している火英の代わりに助手席の風間が通信機を車外に出す設定にしてこう言った。
『どけどけ、【問題児部】のお通りだ』
その声を聞くと、すっと包囲網の一部が解かれてパトカーが通れる様になる。
「俺の知ってる特殊警察じゃねぇ…」
「これが俺達のやり方だぜ」
ドヤ顔でわざわざミラーから目線を向けてくる無駄な配慮に時雨は少しイラッときた。
「あれか?」
火英の一言に全員が指差した方向を見る。こんな所にダンプカー。しかも特殊警察から発砲されている。もう犯人と見て間違い無いようだ。
周りの特殊警察に風間は一言。
『どけどけ、【問題児部】のお通りだ』
スーッと引いていく特殊警察を見て時雨は思う。
俺もこいつらの同類か、と。
「さあ、行くぜ!」
いきなりダンプカーに突撃する火英。だか、ダンプカーに触れる前に見えない何かによって弾かれる。
「…念動能力か空気圧縮壁? どっちにしろ風間の能力で消せるはずだ」
「了解だ」
再びパトカーが接近する。今度は窓から風間が手を出している。
ダンプカーに触れる少し前辺りで、キィィン! と音が鳴る。
風間はその音を境に手を引っ込める。そして窓を閉めた。
直後、強烈な衝撃が車内全員に襲いかかった。
「おい! 相手にダメージあんのか!」
時雨はそこ迄言って気がつく。
パトカーに一切傷が無いのだ。
一方、ダンプカーは傷はあまり無いものの、壁に衝突して今に止まろうとしていた。
ダンプカーから人が5人程出てくる。
「今だ火麗! 燃やしちまえ!」
「分かった火英兄!」
火麗が止まったダンプカーに手をかざした一秒後、
ドガァァン!
ダンプカーが大爆発した。
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.55 )
- 日時: 2015/12/06 04:55
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
突然の爆発に強盗犯と時雨は驚くしか無いのだが、他の三人は違った。
「早く出ろ! 直ぐに取っ捕まえるぞ!」
「了解した」
「分かった火英兄!」
二人はとっととシートベルトを外し、ドアを開いて驚いている強盗犯達に先手必勝を仕掛ける。
「警棒の先制攻撃だぜ!」
妙に聞き覚えのある台詞を漏らしつつも警棒を容赦無く振るう火英。
こうしてはいられないと時雨も車から飛び出し戦いに加わる。
「喰らいなっ!」
強盗犯の誰かが出した声に比例して、周りの物体が次々と飛んで来た。
「邪魔だ、失せろ」
キィィン! 念動能力的な能力だったのだろう。風間が手を横に振ると、周囲の念動磁場が消え去った。
因みに念動磁場という物は、念動能力によって物が動かされたりするときに発生する物で、念動磁場その物が物を動かしたり物体に干渉する性質を持っている。磁場を操って、物を動かすだけではなく、念動力の壁を作ったり物を千切るとか捻るとか絞めるなどもできる。また、念動磁場にも+と-があり、+の念動磁場は物体を能力者本人の方向に引き寄せる力があり、-の念動磁場は物体を能力者本人から引き離す性質がある。横に飛ばす時は、二つを同時にかけたり片方を弱めにして角度を調節したりする。磁場、と言うだけあって念動磁場は電気エネルギーにも干渉が可能だが、電気自体を操る事はできず、エネルギーを打ち消し会うだけだ。
風間は今回近くの+と-の磁場を触っただけだが、念動磁場は能力が弱いほど不安定な為、一つを無効化するだけで全てがジェンガの様に崩れたのだった。
能力による攻撃が止んだ為、風間と時雨は別々の敵に走り出す。
時雨のターゲットは、先程まで攻撃していた念動能力者。風間のターゲットは別の能力者。
「くそがっ!」
時雨に念動能力がかけられ、後ろに飛ばさんとする。が、
時雨は目の前からの圧力を無視して能力者に近づく。流石に念動能力者も驚いた。
念動力が更に強くなる。時雨はそれを思いっきり手を引いてーーー
「ぶっ壊れろ!」
バギッ!
拳をふりきり、念動磁場その物に対抗した。念動磁場は壊れ、霧散する。
そのすきに時雨は、念動能力者にボディーブローを加える。
少し呻き声を出して念動能力者は気絶した。だが、後4人はいる計算だ。
一方風間の方では。
「な、何故だ! 何故能力が効かない!」
この男は[発火させる能力]を持っている。そして近づいていた風間に発火させたのだが……風間に能力は効かない。当然発火も起こらなかった。
「そんな事は、どうでもいい」
本当にどうでも良さそうな風間は近付いて、殴りかかる。拳を受け止められるが、容赦無く足で股間を蹴りあげて金的をかます。風間に慈悲は無いようだ。怯んだ隙に顔面に一発。
バギッ! 殴ったってこのくらい気絶しないことは百も承知で、そのまま警棒を取り出してその柄で後頭部を打撃して気絶させた。
あと三人。
いや、後一人か。
既に、火麗の[摩擦を操る能力]が二人に襲いかかっていた。二人は走った瞬間に空気摩擦で服が燃えていた。
あと一人は火英なのだが…。
「これで終わりだ!」
ぶん殴って相手を気絶させた。
時雨の初仕事は成功に終わった。
……せめてもうちょっと大人しくしろと言われたが、ダンプ燃やすなとか色々。
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.56 )
- 日時: 2015/12/06 17:45
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
時雨が特殊警察に所属し始めてかれこれ二年が経った頃だった。
「暇だ……」
この頃になると、時雨はすっかり丸くなり、また【問題児部】としての資質(良いものではない)が備わってきた。今はずっと自分の机でグデーっとしている。それもそのはずで、00部は今のところ時雨を除いて通学している。当然、平日に特殊警察に顔を出すのは五時以降になる事が多い。
しかし、時雨は給料を十割貰っている身なので朝の九時辺りに出勤しなければならない。火英とも朝は会わない。
この頃、時雨は一人暮らしを始めた。住居はあの【上原荘】の503号室である。
あのマンションは1・2(しきりで分けられるから)LDKで最初から洗濯機が着いて、風呂場とトイレが別々のいい場でそこそこな値段で人気のはずの住居だ。なぜ人気では無いのかと言うとエレベーターは壊れている上に階段も無駄に多い為、一階や二階は満員。三階もそこそこ。四階はほぼいない。五階は時雨のみで、その上は全ての部屋が空いているという奇妙なアパートなのだ。
それは兎に角。
時雨は色々な事を体験していた。
能力者と戦ったり、能力者を殴ったり、能力者を捕まえたり、エトセトラ、エトセトラ……能力者関連なのは仕方がない事なのだ。
そもそも00部は、緊急事態にのみ要請がかかってくるのだ。そしてその緊急事態とは、高位の能力者がアレしたコレしたりした時の事なのだ。
その為か00部は給料が高い。<要請=危険>の方程式が成り立っているからだ。事実、時雨も一般人なら死んでいた事は何回もあった。コンクリートが高速で飛んできたのがいい例だろう。もっとも時雨はそれを粉砕したが。
「失礼しまーす」
そして二年もすれば00部にも新人はやって来る。と言うか半年前にやって来た。
その名は残切山斬。通称ザンだ。
風間が名前の漢字を読んで、「ザンセツザンザン?」と言ったのが切っ掛けだった。
とは言ってもやはり【問題児部】である。ザンも曲者だった。
時雨の事を最初は無能力だからと完全に舐めきっていたため反抗的だったが、時雨の素手で高速コンクリート粉砕を見て態度を入れ換えていた。
「遅かったな……」
時雨は机から黒と白のチェック柄の板と数十個の白黒の小さい人形達を取り出す。
「じゃあ今日もしますか……えーっと、俺が10勝時雨先輩が9勝でしたね」
「今日は勝つさ」
二人はチェスを始めた。
「ボーンって砕いたらタワーに直せそうだな」
「止めてくださいよ」
「お前ら部長様の登場だぞ〜」
「火英兄。何かすっごい偉そうな態度だな」
火英と火麗の二人は茶番しながら部室の中へと入る。そこで二人が見たのは……。
「ふはは! クイーンがついに無くたってしまったな」
「不味いですね」
コトッとザンが駒を数個進める。
「はい詰みな」
結果的に時雨とザンはお互いに十勝だった。
「全員いるな? じゃあ説明会を始める。今度はホテルの警備でーー」
火麗が目の前のホワイトボードを使い説明しているが、要点をまとめるとこうである。
・今度、金持ちの仲でパーティーがある。
・特殊警察はそれの警備をする。
・00部もそれに参加する。
そして今、火麗は場所や配置を決めていた。
時雨の位置は、最も金持ちの達に近い場所だった。
この少し前の日、世の中では入学式というイベントが多数の場所で行われていた。
そして、平子達が通っている高校も今日が入学式だった。
入学式が終了すると、教室に案内される。その中に新品のブレーザーとロングスカートの制服に身を包んだ鋼城緋奈子はいた。
因みにここの制服は、上と下で別れていて、上はブレーザーで夏用の緑の線が入った服(半袖)と冬用の青の線が入った服(長袖)の二種類があり男女共通。下は女子は青いロングスカート(足首の少し上)と緑のミニスカート(膝の上)の二種類があり、男子は共通の長ズボンである。
(……はぁ。今のところ、私の席の周りは黒髪ばっかりの様ですね…嫌なんですけど)
この頃。緋奈子は困った考え方をしていた。それは黒髪への差別だった。
(何で私が無価値な人間と近くで勉強しないといけないんですかね?)
声に出さないものの、中ではそう思っていた。因みにこの時の周りには紡美も含まれていた。
(後は隣の席の……平野平子さん。どうか能力者でいてくださいよ)
ふと教室に、目立つ髪の目立つ人間が入ってくる。
真っ白い髪に細い身体。成長途中ながらもそこそこな高身長と胸。
何より目立っているのは白い髪だ。人の髪の色が変わるのはあるが、色素を手放す事はほとんどない為に真っ白い髪と言うのは珍しいのだ。
(ああ、あの人が隣なら嬉しいんですけどね)
そして、緋奈子の思いは兎に角、平子は自分の席を探して一分程迷い緋奈子の隣に着席した。
(この人私の隣だったんですね。良かったです)
緋奈子はそう安堵している。一方平子は。
(眠い…あの校長先生は「話が短いと嫌われます! 私の様に髪が短くても嫌われます! だからこれだけ言いましょう。入学おめでとう。そして頑張れ。以上です」って私でも覚えられる位に短くてそこそこ面白い人だったから良いけど……教頭の話長いって訳だよ。……席は紡美ちゃんが近いしいいとするか)
こんな感じのありきたりな事を思っていた。
自己紹介で学校生活が決まる。
これは本当ではないが、違うと言えば嘘になる。
だから印象に残る自己紹介で、人気者になるかカースト下位になるかが決まる。
だからある意味、平子の自己紹介は強烈だった。
「次、自己紹介してくれ」
相川悟と名乗った藍色の髪の青年教師が次の人を指名する。その次とは平子の事だった。
(あー。眠い)
平子は前に行く途中で、まず、一回転倒する。
バダン!
「痛いって訳です…」
大体がクスクス笑っているが眠い平子はさっさと終わらせたかった。
「私の名前は平野平子です。へいやにひらたいに子供のこで平野平子。趣味はアニメ。嫌いな物は…まあ色々と。得意科目は、理科と数学。苦手科目は古典、社会科、英語。別にあだ名は着けていいですけどアルビノって名前は止めてください」
そう言うとまあ当然皆から拍手が起こる。そして再び席へ戻ろうとしてーー
バダン!
もう一度転倒した。
今度は皆態度を隠さずに笑っている。平子は眠たいからどうでも良かったが、後から思い出してうわあああってなったらしい。
(流石に入学式前に夜更かししたのは間違いだった…)
平子は入学式前に夜更かしする様な感じで、今と特に変わらずフリーダムだった。
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