複雑・ファジー小説
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- 超能力者と絶対に殴り合う能力
- 日時: 2018/03/26 17:23
- 名前: 波坂 (ID: KLUYA2TQ)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=359
初めましての方は初めまして。それ以外の方はこんにちは。
波坂と言う者です。
意見や感想、アドバイスなどは大変嬉しいのですが、それが的確なものであるかどうかを一度確認してから投稿して下されば幸いです。
宣伝などはできる限り控えて下さい。
※リンクは能力の募集に繋がっています。よろしければどうぞ
2015/10/17 スレッド設立
2017/01/18 受験の為、更新停止
2017/03/07 受験終了。更新再開
2017/03/28 参照回数8000突破
2017/05/14 参照回数9000突破
2017/9/01 参照回数10000突破
2017/12/15 参照回数11000突破
2018/2//13 参照回数12000突破
Twitter創作アカウント→@namisaka_sousak
【目次】
第一章>>1-21 第二章>>23-31
第三章>>32-46 第四章>>47-67
第五章>>68-77 第六章>>78-104
第七章>>105-202 番外編>>203-215
第八章>>219-236 第九章>>237-269
第十章>>270-現在更新停止
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.102 )
- 日時: 2016/02/28 17:57
- 名前: 波坂@携帯 (ID: DJvXcT4Z)
あの〜。非常に申し上げにくいのですが……そういったこの小説に関係の無い宣伝等は控えて貰いたいです。「控えて」いるからいいだろ見たいな捕らえ方をしたならしないで下さい。どうせやるならやるのならリク版の方でお願いします。
生意気言ってすみません。応援メッセージは嬉しい限りです。
私も負けない様に頑張ります。
最後にせっかく感想をくれたのに新人風情が生意気言ってごめんなさい。すみませんでした。
続きです。
燃え盛る火球が音を立てて襲い掛かる。
それを改造された機械の足で蹴り付けて雲散霧消させるテレポーター。
火麗は舌打ちしながら後ろにいる後輩を見る。
「キャロルッ! まだかッ?」
「もうちょっと……」
後輩ことキャロルは険しい顔で受け答えをする。
「よそ見していて良いのか?」
三木の挑発的な言葉に多少イラッと来た火麗だが、迫り来るテレポーターのチェーンソウを見ればもはやそれどころではない。摩擦を減らし滑り込む様にチェーンソウを回避する火麗。そのままスイングで伸びきったテレポーターの腕を下からオーバーヘッドキックの様に蹴りあげチェーンソウを弾き、後転して体制を整えて空気銃を連射。
金属に小石が当たった様な音が空気銃の無力さを体言する。
次の瞬間火麗の視界からテレポーターが文字通り消え失せる。もしやと思いとっさに横に跳ぶ火麗。その行動が火麗の命運を分けた。
約一秒前に火麗がいた場所にチェーンソウが振り下ろされ鉄筋コンクリートをスナック菓子の如く削り取る。冷や汗で服を濡らしつつも火球を飛ばしテレポーターに牽制を入れる。
テレポーターは再び消え、今度は華麗の目の前に現れた。
とっさに空気摩擦と床の摩擦を変更し、機動力を高めて逃れようとするが既に手遅れ。火麗とテレポーターの距離は後一メートルも無いのだから。
火麗の引き締まった肉体にその邪悪な金属堺が突き刺さるーーーー直前に不自然な風力が発生。辺りの摩擦の弱まっていた火麗を吹き飛ばす。
その風力の源である竜巻まみるみる膨張していきテレポーターを飲み込む。
「たいちょー! 準備できたよ!」
「やれ!」
火麗が合図を出すと同時にキャロルの元にダイブする。それと同時にテレポーターが無理矢理竜巻を破壊する。
そしてそれと同時に、
「風間センパイの恨みだーッ!」
鼓膜を金属バットで殴りつける様な大轟音が発生。そして巨大な三角錐のコンクリート堺がテレポーターのいた座標を貫いた。
先程残切はビルの一角を切断した。
それはいい。問題は切断した後である。
仮に切断した一角かが市街地に落ちたら多大な被害がでるだろう。
では、その切断されたオブジェクトはどこへ行ったのだろうか?
答えは単純だった。
キャロルの戦車すらも吹き飛ばし転覆させる竜巻が、ビルに突き刺したのだった。
突き刺さった三角錐のもたらした被害は甚大だった。
なぜなら刺さるだけではあきたらず、ビルの高層部分が崩壊を始めたのだから。
テレポーターはどうなったかは神のみぞ知るが、回避はできていなかったために恐らくはスクラップだろう。
だが、火麗達は生きていた。
なぜなら火麗達のいた床が、予想していたかの様に切断されたからだ。
そして、49階の床が切れ、48階に着いたと思えば48階の床が切れ、47階に着けばまた切れ……という事が30階まで続いたのだ。
これらの事はあらかじめこの事を知っていなければ到底できない事だ。
だが、00部にはこれを可能にする能力者がいた。
天澤秋樹という、能力者が。
「火麗先輩、早く逃げましょう」
そうニコリと行ったのは天澤だった。
「そうだな。じゃあザン。頼む」
「わかったっすっ!」
残切が竹光を振るい始め、一方的なエレベーターは下って行った。
ここは何処だろう。
そもそも俺は誰だろう。
名前は……そうそう風間司だ。
じゃあここは何処だ? 目の前にえらく悪趣味な川がある以外に特徴は無いな。
そもそも何でここにいるんだ?
そう自問自答を重ねている内に俺は見た。
自分の腹部の傷を。
こ
そうだ。俺はあの時気を失って……まさか死んだのか? この悪趣味な川は三途の川か? そんなわけ……ご丁寧に看板に三途の川と書いてあるな。
死んだなら仕方が無い。潔く渡るべきだろう。
『おい! お前まさかーー風間か?』
はてあの世に知り合いなんぞいたかと思い川の向こう側を見る。
そして、そいつは知り合いだった。
『俺を覚えているか? 俺はーーーー桟橋火英だ!』
私こと、天澤秋樹誘拐事件はテログループ、DHA中部エリア支部長の三木の逮捕によりたった今幕を閉じたーーはずでした。
だけど、まだ終わっていないんです。彼が、風間さんが目を覚まさなきゃ終わらないんです。
先程治療が終わった風間さん。一命は取り留めたもののかなり危険で今既に峠の真っ只中でいつ命を落としても分からないらしいです。
現代の医学でも風間さんが危ないのは、皮肉にも風間さんの能力、[能力を無効化する能力]のせいで能力による治療が行えないからなんです。
現在、ベットで死んだ様に気を失っている風間さんが私の目の前にいた。
私もいつのまにか骨折していましたが、風間さんはそれよりも何倍何十倍もの苦しみを味わってるはずなんです。
だからっ! 私は謝りたいんです。そしてこの気持ちを打ち明けたいんです。
お願いです。神様でも、誰でも良いんです。風間さんを……助けてっ!
気付けば私は風間さんの耳元に顔を押し付けて泣いていた。
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.103 )
- 日時: 2016/03/08 22:05
- 名前: 波坂@携帯 (ID: DJvXcT4Z)
赤よりも紅い髪をした正しく桟橋火英ーーただし足は無いーーを目撃した風間の行動は次の様なものだった。
回れ右をし、力強く足を踏み出し、全力で手足を駆動させる。
つまりーー全力で逃げ出した。
風間の苦手なもの。それは表情にこそ出さないもののオカルト全般である。
そして、目の前の火英の姿をした幽霊を目の当たりにした風間に考える余地は存在するはずもなかった。
(夢だ。これは夢だ。ディスイズドリームだ。出てくる訳無い。幽霊なんていない)
「おーい!ちょ、マジかおい!」
幽霊と死に損ないの追いかけっこが始まった。
「んん……ふぁ?」
あれ?ここはどこ……そっか病院だ。私いつのまにか寝てたんですね……。
「おはよう天澤」
あ、聞き覚えのある声ですね。この声はたしか……
「おはようございます風間さ……風間さんんんんんんん!?」
余りの驚きに声がおかしくなっちゃいました……ってそんな事はどうだっていい!
「本当に風間さんですよね!?」
「本当に風間だ」
「本当の本当に風間さんですよね!?」
「本当の本当に風間だ。」
「本当の本当の本当に風間さんですよね!?」
「以下省略、風間だ」
うん。絶対に風間さんだ。
その事を理解した瞬間、私の中の何かが弾けた音がした。
そして、それと同時に私は風間さんに抱き着いていた。
「……ど、どうした?」
珍しく動揺している風間さん。
多分。私がいきなり抱き着いたりしたから驚いているんでしょう。
ごめんなさい。後で何回でも謝ります。だけど今は……この温もりを感じさせて欲しいんです。
「よかった……風間さんが無事で…本当に、よかったです」
私は一旦顔を離して風間さんと目を合わせる。
「こんなこと……原因を作った私が言える事じゃないのも、分かってます。だけど、言います、よ。わ、たし、とっても心配だった、んですから、ね」
泣きながら言ったわたしの言葉には、どれだけの意味があったのか、どれだけの重みがあったのか、風間さんは理解してくれるのだろうか。
いや、理解してくれなんていわない。だって私はただ、この言葉を私の口から伝えたかっただけなのだから。
「天澤……」
風間さんが私の名前を読んだあと、訳が分からないと言った口調でこう言った。
「お前は何をいっているんだ?」
え?
風間さんは何を言っているのだろうか。
「いいか天澤。お前は実際はテロリストグループに拉致された上に強制的に能力を使わされた被害者だぞ?お前が謝る理由なんて何処にも無いだろう。なによりーー」
それはそうですけどやっぱり私のせいじゃないですか。
私はその言葉を飲み込んだ。
なぜなら彼の言葉を聞いてしまったからだ。
「この程度でお前を救えるのなら、俺は十二分に満足さ」
ぽつり。
ぽつり。
何でだろう。どうしてここは室内なのに雨が降っているのだろう?
いちがいます。これは雨じゃない。
私のーーーー涙だ。
私は責められなくちゃ自分を許せないはずなのに。許されちゃいけないはずなのに。
そんな優しい言葉をかけられて嬉し涙をこぼしている自分がいる。
「お、おい天澤?お前…」
私が再び抱き着くと、風間さんも再び狼狽する。
「じっとしてて、下さい」
「いやそれは」
「風間さんは意地が悪いです。だって……女の子をこんなに泣かせるんですから
だったら私も風間さんに意地悪します。風間さん、私を抱きしめて下さい。泣かせた責任。取って下さい」
風間さんは一瞬迷う様に黙るが、諦めてかなり控え目に私の背中に手を回した。
それだけで、私の顔からは火が付いているのではないかと疑う程に熱くなったが、恥ずかしさよりも風間さんと接する事のできる喜びが心情を占めていた。
風がふき、細かくなったコンクリート粉が飛ばされる。
上の階層が殆ど崩壊してしまったビルの一番上にある少年、いや青年が右足と左手から閃光を吐き出しながら向かっている。
目的の位置についたそれはそのまま閃光を逆ベクトルに噴射。勢いを撃滅させてから着陸する。
青年の目の前には、キャロルの突き刺した荒い三角錐が映る。
青年は腰を少し落とし、あたかも武道家の様な構えを取る。
次の瞬間。爆発的な炸裂音とともに青年の右腕が閃光とは逆ベクトルに弾き出された。
その威力は三角錐の中腹辺りを玉砕し、叩き割る。
さらに再び激発。今度は右足だ。
その足が三角錐の突き刺さっていた部分を蹴り飛ばす。
「いやぁ。しかし毎回の如く君の頑丈さと悪運の強さには驚かされますよ。【移動者】(テレポーター)」
青年の前には右手と左手の両手、右足の大部分を損失したテレポーターだった。
「……【加速者】(ブースター)か」
「助けに来ました。君は有能ですからね。きっと我等がプロフェッサーも君を無くすことはいかんせん許しがたい事でしょう」
「……お前に俺が運べるか」
「当たり前です。僕の力は十橋時雨と同等を目標に設計されているのですから。それより君にはDHAで僕と同じ中央エリア本部でまた一仕事してもらう予定ですから」
「……何がある」
「決まってるじゃあないですか。三人の人間を取り戻すんですよ」
「一人はあの三木が執着していた女か」
「ええ、後は[能力を発展させる能力]を持つ義義理碧子。それからプロフェッサーの
リサイクル実験ただ一人の成功者ーーーー古都紡美です」
もう、加速していく歯車は、壊れるまで止まらないーーーー。
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.104 )
- 日時: 2016/03/19 22:21
- 名前: 波坂@携帯 (ID: DJvXcT4Z)
第六章、がんばれ!かざまくん、エピローグ
風間司はいつもの日常に取り込まれようとしていた。
いつも、といっても実際には風間が一時間遅れで出勤し、火麗が報告書などによりストレスが溜まっている目の前で風間がご丁寧に枕まで用意して夢の世界に意識をフライアウェイしようとしたためにしばかれ、その後医務室で頬にできた打撃痕(笑)を冷やしながら意識を夢の国へフライアウェイし、その間にキャロルが『肉』と風間の額に油性マジックで書き、その後部室に戻った際に残切と天澤に大爆笑され、悲鳴を上げながら逃走を諮るキャロルと凍てつく無表情のまま実弾を装填した拳銃を連射する風間が特殊警察中央エリア本部を舞台とした楽しい楽しい鬼ごっこを繰り広げ、見事勝利した風間はそのまま05部の部室へと赴き、青星に風間にしては珍しく礼を言い青星から「風間、風邪?」といつもなら相手に理解力を必用とする青星にしては珍しく分かりやすいコメントを貰い、その後天澤とキャロルに例の事件で先延ばしになっていた特殊警察中央エリア本部の案内(キャロルは鬼ごっこのせいで片方の瞼が開かない状態となっていた)をし、報告書を纏めながら今日の夕飯の事を考え、解散後御手洗の元に礼を言いに向かおうとしたら天澤もついて来ると言いだし、御手洗からは「リア充爆発しろよ」と言われ天澤が必要以上の反応をしたためさらに面倒臭くなり、天澤を家に送り自分も帰宅して夕飯を済ませソファに倒れ込む様にして横になったのが今現在である。
風間は一人で考え事をしていた。
DHAの狙いは何なのだろうか、と。
仮に特異的な能力が目的ならば、わざわざ特殊警察の首輪の繋がった天澤ではなく民間人から連れ去れば良かったのだ。
だが、DHAはそれをせず、あえて天澤を選んだのだ。
ではなぜ天澤なのか。
風間の脳裏にある仮説が立った。
DHAが狙っているのは[特異な能力]ではなく[未来予知の能力]だったのではないだろうか。
ではなぜ未来予知なのか?勿論未来が視えるのは確かに絶大なアドバンテージだ。
しかしそれに自分達の敗北する結末が映ってしまえばそれこそ大ダメージを受ける始末になる。
何かが引っ掛かると思いつつも分からない事を考えても無駄だと風間はもう一つの事を考える。
01部の調査によると、あのビルからは武装した人間しか救助されなかったようだ。
だからこそおかしいのだ。ーーーーテレポーターが消えているのだから。
テレポートしたとは考え辛い。なぜならテレポートは周りの状況を把握していなければうまく作動しないからである。
そしてテレポーターが埋まっている筈の所には明らかにおかしい点が一つあった。
キャロルの刺した三角錐がーーーー叩き折られているのだ。
予想ができない今後について風間は戦慄した。
ケータイの着信音が鳴る。
全く誰だ?こんな時間に?
そう思いながらオレこと風折影雪は応答した。
「もしもしー。風折ですがー」
『初めまして。早速だが仕事の話がしたいがいいかい?』
「いいけどよー」
『風折影雪。これは【裏】の仕事だ』
裏ねー……………はッ。
「先に言っておくが、雪花に手を出したらただじゃーすまねーからな?」
『心配するな。我々は君に足止めを依頼するだけだ』
は?足止め?
あとがき
平子「ファッキュー!」
時雨「落ち着け」
風間「どうした」
平子「風間さん!なんでそんなに尺とってるんですか!?」
時雨「リアルタイムで一番時間喰ってるな」
風間「仕方ないだろ。平子はそもそも考え方が作者が書きやすい様になっているし、時雨は理想像をそのまま書けばいい。だがな、俺は違うんだよ。考え方や感じ方にどうしてもコレジャナイ感が出てしまう。何回俺の台詞が修正されたか!」
平子「凄い説得力って訳ですよ」
時雨「右に同じく」
風間「それはそうと風折が遂にここに出すらしなくなったな」
時雨「弱者は消えるのみだ」
平子「次の話は…………長ぁ。私と紡美ちゃんと緋奈子ちゃんの女子いつもの三人組。時雨さんと碧子ちゃんの二人。風間さん含む特殊警察。DHAにジーナさんや風折さん。新キャラも居て……これ書けきれるんですかねぇ…」
風間「と言うか、作者はちょっと息抜きに新しい小説を書こうかなとか言ってるぞ」
時雨「……とにかく次回をお楽しみに」
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.105 )
- 日時: 2016/03/25 12:59
- 名前: 波坂@携帯 (ID: DJvXcT4Z)
第七章、〜無彩色は何の為に〜
はぁ……。
俺こと十橋時雨はため息をついた。歩いている為に揺れる景色はいつもと何も変わらずにただただそこに佇んでいるだけの様だ。
そしてそのまま流れる様に天を仰ぐ。日の光りは鬱陶しい程に輝いていた。
しかし、現実逃避しても仕方が無いと考えて再び首をソイツに向ける。
相手もこちらを向いたのだろうか。ピタリと視線が交錯する。
「どうかした?」
何でもない。そうとだけ答えて顔を前に向け歩く。
暫く無言の間が空き、何だか別れ話を切りだそうとしているカップル見たいな雰囲気が出てくる。最もコイツとは彼氏彼女の関係と程遠い仲なので、それは杞憂に終わるだろうが。
そして俺は思いを馳せるーーーーコイツこと、鸛御弥とであった日の事を。
そう。あの日は雨だった。
通行人達の傘はまさしく十人十色といった感じでいつもは灰色だらけのビル郡もその日はカラフルだったことは今でも覚えている。
そして、そんな中に一人、傘も差さずにただボーッとした様子で濡れながら歩いていた同年代の少女が酷く浮いて見えたことも覚えている。
そんな存在に声をかけたのは気まぐれだったか、お人よしから来たものかは自分でもよく覚えていない。
声をかけたとき少女は歩みを止め、こちらを見る。
身長はむしろ低い部類に入る辺りだったがその目は機械的な迄に無機質な感じだった。他にもその背中に背負うバックからは、コードが数本飛び出しており、時折モーター音を鳴らしている。
「貴方は誰?」
通りすがりのスタントマン。こう名乗った自分を時雨は多少ながらも尊敬している。
どうやらつい最近引っ越して来たらしく道に迷ってしまったらしい。一緒に探してやろうとすると酷く拒絶された。いちおう帰り道はわかるらしく、それは道に迷ったとは言わないんじゃないか?と言いたかったがいらないことは言わない事にした。
そうだ、これ差しとけよ。そんなに濡れると風邪ひいちまうぞ。
俺はコンビニで売っているようなビニール傘を差し出す。……安物で悪かったな。
少女は一瞬戸惑うような表情をしたあと、恐る恐る傘を手にとった。
じゃあ俺はこれで。
立ち去ろうとする俺の服の裾を何者かが掴む。掴んだのは少女らしく、何でも電話番号を聞かせて欲しいと言われた。悪用される可能性もあったが、俺は自分のケータイの電話番号を渡して立ち去ろうとする。
その間際、少女はこう言った。
「私は鸛、鸛御弥」
これが俺と鸛との出会いだった。
……余談だが俺はその後びしょ濡れになって家に帰った。
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.106 )
- 日時: 2016/03/30 19:50
- 名前: 波坂@携帯 (ID: DJvXcT4Z)
ただいま。
「お帰り」
帰り着いた俺を碧子が玄関で出迎える。
義義理碧子。訳のわからない組織的なものから追われる身となっていた少女だ。
身長は120や130といった所だろうか。髪型は恐らくずいぶん前から伸ばしっぱなしの緑色の髪の毛を白いカチューシャで束ねて後ろに下ろしている。ぱっちりとした瞳は幼さを感じさせるが、かなり頭(ここは知能と学力の二つを指す)が良く時雨も時折勉強を指導して貰っている。足元辺りまであるワンピースに裾を折った白衣という奇抜な格好だが、これには体罰を受けた跡を隠すためという理由がある。
「今日は鸛さんとなにかあったの?」
鸛は俺を毎日の様に呼び出しては、街の案内をさせていた。流石に仕事の時は行かなかったが、それ以外の日に出かける俺を不審に思った碧子がある日「時雨彼女でもできた?」と尋問され、白状した為に碧子は鸛の事を情報的に知っている。
今日も道案内をさせられただけさ。
「へぇ〜。碧子、てっきり鸛さんを手札に加えてるのかと思ってたよ」
お前の中の俺はそんなにたらしなのかよッ!?
「うん」
俺がたらしだと?ちょっと待て。別に俺は女子を周りにはべらせている訳でも無い(碧子)。運命的な出会いかたをした奴もいない(緋奈子)。友人と呼べる女性もいない(平子)。うん。大丈夫だろ。
「碧子、時雨には変化球は効かないからストレートで勝負しなきゃいけないって事が分かったよ」
碧子、呆れたように言うのは止めてくれ。あと何で野球の話になるんだ?
「いいよ。時雨は時雨だから」
意味がわからなかったが、俺は放っておく事にした。
「あ、碧子、料理作ったよ」
……どうやら放っておく事ができない案件があるようだ。
私は嬉しかった。
なぜなら、初めて友人と呼べる存在ができたのだから。
私ーーーー鸛御弥は自分の手の平を見つめながらそう思った。
十橋時雨。それが彼の名前。初めて私に優しさを教えてくれた。
彼は私に傘を貸してくれた。私は気になって両目の望遠機能を使い彼を追った。
そして知った。彼は私に傘を貸したせいで雨に打たれてずぶ濡れになってしまっていたのだ。
それを見た私はーーーー嬉しかった。
それは人として駄目な行為かも知れない。だけど、彼はこんな私に優しくしてくれたのだ。
『おい……聞こえるか』
私の思考は電話の主ーーーープロフェッサーによって中断を余儀なくされた。
『ターゲットが近づいている。確実に始末しろ』
了解と無機質に返す。
確かターゲットになったこの男性はDHAの元幹部の一人だ。辞めたから、情報を流されたら困るから。ただこんな理由で殺されるとは世の中は何と殺伐としているのだろうか。
だが、そんなことは関係ない。私はただターゲットを始末しDHA中央エリア本部に帰還するだけだ。
私はこれまで幾度と無く見ているーーーー命令に逆らい、また失敗したために文字通り『スクラップ』にされた同期達を。
だから私は失敗もできない。逆らうことも許されない。機械的に命令を受け、機械的に実行する。それが私、鸛御弥だ。
自身ですら、腐りきっていると分かっている。
いや、私の体は腐らないだろう。なぜなら私はーーーー機械接合手術を受けたサイボーグなのだから。
私の視界に映るのはターゲットが乗っている車。どうやらコンビニでトイレを済ませているらしい。
私は私服のまま、紫色と黒色の混じった、いわば闇色の髪を揺らしながら店内に入る。当然、私を不審に思う人物などいない。
そしてトイレに入る。どうやら男性のトイレが一つ使用中なので、ターゲットはここを使っているのだろう。
私は両目の機械眼を作動させる。視界がクリアになる。
私は両目と背中が既に機械と化している。その両目の機能は望遠とーーーー念動磁場の可視化だ。不可視のはずの念動磁場を波として視界に映し出し、明るい色ほど強く、暗い色ほど弱いという仕様になっている。
何故こんな機能なのかと言うと私の能力は[念動を操る能力]という能力であり、念動磁場を操作する類の能力なのだ。
そして私のもう一つの機能。それはリュックサックから伸びている直径三センチ程のケーブルの様な鉄線だ。
私が念動磁場を操作し、背中のリュックサックから幾つもの鉄線を伸ばす。その数は十五本。
「モードスパイク」
私がそう発声した直後、その鉄線達から夥しい数の棘が生え、見るのもおぞましい程の凶器に成り代わる。
【鉄鋼の茨】プロフェッサーはそう呼んでいたが、まさしく鉄の茨だと私は思う。
そして、その凶器を私は念動磁場を操作してトイレの一室に叩き込む。
肉をえぐる音と液体の噴き出す音の短い演奏会が繰り広げられ、それが終わると私は【鉄鋼の茨】を引き抜く。
【鉄鋼の茨】にはとてつもない程の血液が付着し、棘には所々紅い肉片がぶら下がっている。
それに遅れて個室のドアから鮮血がはい出るように流れ、私の足元をうめつくす。むっとする悪臭が鼻を突き刺し私に現実を突き付ける。
『ご苦労』
プロフェッサーの声が通信機から聞こえる。ああそうだ。私はまた一人殺したんだ。でももうどうでもいい。だって私の二つ名はーーーー。
『帰還せよ、【抹殺者】』
抹殺者なのだから。
今回わかりにくい部分が多いので、質問してくださっても結構です。
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