複雑・ファジー小説

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超能力者と絶対に殴り合う能力
日時: 2018/03/26 17:23
名前: 波坂 (ID: KLUYA2TQ)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=359

初めましての方は初めまして。それ以外の方はこんにちは。
波坂なみさかと言う者です。
意見や感想、アドバイスなどは大変嬉しいのですが、それが的確なものであるかどうかを一度確認してから投稿して下されば幸いです。
宣伝などはできる限り控えて下さい。

※リンクは能力の募集に繋がっています。よろしければどうぞ

2015/10/17 スレッド設立
2017/01/18 受験の為、更新停止
2017/03/07 受験終了。更新再開
2017/03/28 参照回数8000突破
2017/05/14 参照回数9000突破
2017/9/01 参照回数10000突破
2017/12/15 参照回数11000突破
2018/2//13 参照回数12000突破

Twitter創作アカウント→@namisaka_sousak

【目次】
第一章>>1-21 第二章>>23-31

第三章>>32-46 第四章>>47-67

第五章>>68-77 第六章>>78-104

第七章>>105-202 番外編>>203-215

第八章>>219-236 第九章>>237-269

第十章>>270-現在更新停止

Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.243 )
日時: 2017/04/24 23:06
名前: 波坂 ◆mThM6jyeWQ (ID: SkZASf/Y)

>>242

こんばんは。
ありがとうございます。そう言って頂けると本当に有り難いです。

小説についてはリクエスト依頼板で紹介を受け付けておりました。現在は締め切っていますがいつの日かまた募集を再開するのでその時にそちらの方によろしくお願いします。

Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.244 )
日時: 2017/04/25 19:24
名前: 波坂 ◆mThM6jyeWQ (ID: SkZASf/Y)

「……ハァ………ハァ……ッ…」
 
 今朝、平子と衝突した少女こと高森雪菜(たかもり/ゆきな)は走っていた。
 何故、その疑問は彼女を後ろから追いかけている黒づくめの集団を見れば解消されるだろう。
 重複した靴の音が2重の意味で少しずつ雪菜を追い詰める。
 彼女の脚は既に悲鳴を上げていた。何時間も走り続けられたのは最早逃げることしか出来ないという危機感と、捕まった後の事を考えた際に生じる恐怖がこの少女を奮い立たせていた。だがそれでも限界というものは存在するし当然いつまでも逃げ続けることができる理由などない。あるはずがないのだ。
 細い路地へと曲がった所で、彼女は運悪く転倒してしまった。彼女は今朝靴を失ったこともあり、かなり足を痛めていた。そして急カーブしようとしたところで足に激痛が走りバランスを崩してしまったのだ。
 すぐに立とうとする雪菜。しかし次の瞬間、引き裂かれるような激しい音がしたと思えば全身に痺れと激痛が這い回った。
 
「あぎがッ!」
 
 能力によって生じた電撃をモロに浴びた彼女は、声かどうかすら怪しい悲鳴を上げる。彼女の意思とは関係なく体が跳ねて一瞬視界が点滅した。
 雪菜は仰向けで倒れているために背後を振り返ることはできないが、背中に腕を回されて押さえつけられた事から自分が拘束された事に気がつく。
 抵抗しようにも、彼女の体は電撃によって麻痺していた。意識がある辺り弱い電撃だったのだろうが、それでも体を動かすのに不自由する程度の威力はあったようだ。
 カチャリ。という金属が嵌る音が文字通り背後からした。恐らく手錠でもかけられたのだろうと雪菜は推測する。
 彼女の金色の髪を見てもわかるように彼女は能力者だ。当然ながら彼女は能力を持っているし使うことも出来る。腕が動作に必要という訳でもない。が、彼女にとっての不運はその能力が1度しか使えないようなものだった事だ。そしてそれは今朝、平子を囮にした際に使ってしまっている。
 耳に男達の会話が入る。報告や運搬などの単語が飛び交っていることから、今から彼らは上司に報告し迎えを呼ぶようだ。だが、卑猥で下衆な言葉もまた同じように飛び交っていることに雪菜は気がつく。
 
「とりあえず、逃げないようにしておけ。それから2度と逃げ出さないように精神を嬲っておけ」
 
 スマートフォンを胸ポケットにしまった恐らくリーダーであろう男の発言に、軽く青ざめる雪菜。勿論それでも体は動かせないし、手錠が外れてくれる訳でもない。能力がもう1度使えるわけでもない。
 何故自分なんだ。何故自分がこんな目に遭わなければならないのか。自分は普通の人間の生活を送れないのか。普通の生活を夢見ることはダメなのか。次々と疑問が湧いては消える。勿論それは無意味な思考である事は雪菜にも分かっている。
 彼女は夢を見ていた。小さい頃、まだ雪菜が普通でいられた頃に読んだ絵本。そこではいじめられていた少女が魔法使いから助けられて、その後様々な事があって王子と結ばれていた。
 そんな奇跡を信じて彼女は逃げ出した。魔法使いなんていない、目的地も無ければ踊る舞踏会も無い。けれどせめて自分を救ってくれる存在ーーーー王子くらいはいたっていいじゃないかと。
 だがそれは夢に過ぎなかった。現実はどこまでも甘くて厳しい。夢を見せる甘さを持っているくせに、夢から叩き起す厳しさも持っているのだから。

 転がされて青色のドレスを破かれる雪菜。ぐったりとした様子に中途半端に破かれたドレス。白い肌は少し汗ばんでいて妙に水気がある。崩された金髪と涙に濡れた青い瞳。それ故か、かなり扇情的な格好となっていた。
 そんな姿にされた雪菜はもう恥辱と恐怖で精神がミキサーにかけられたようにぐちゃぐちゃになっていた。
 そして無数の手が雪菜に絡みつく。
 
「いい度胸してんじゃねェかクズがァァァ!」
 
 その声が、路地の延長線上から響き渡った。
 
 
 

 
 
 
 
 その声が響くと同時に、セミの鳴き声のような音が一瞬だけ響いた。
 どうやらその音は、声をあげた男性の手から立てられたようだった。男性の両手は青白い炎のようなものに包まれている。
 
「無力なガキを多人数で虐げるクズはなァーーーー」
 
 その男性は体格がよかった。身長は190を超えるだろう。細身だが一切の貧弱さは感じさせない。銀髪が全身から放たれる怒気のせいからか少し逆立っているようにも見える。飴色のサングラスから覗く瞳はまるで親の仇を見るような目だった。
 その男性ーーーー大見代久郎はかなりの俊足で距離を詰める。
 
「木っ端微塵決定だオラァ!」
 
 その青白い炎のようなものに包まれた手を、黒スーツの男の腕へと振るった。
 そしてその手が触れた瞬間、触れた部分が砂の山を崩すように粉微塵になり空気に溶けた。肘の辺りの無くなった肘から指先までがボテっと地面に転がり思い出したかのように出血する。
 一瞬理解が追いつかなかったのだろう。なぜなら男からみれば『目の前で自分の腕が跡形もなく消えた』のだから。
 
「ひゃぁえぁぁあえあいえあぁぁぁぁぁ!?」
 
 パニックに陥った男は血が溢れ出す右腕に左手を添えてただただ叫ぶ。
 久郎は青白い炎の消えた左手でその男の顔面を鷲掴みし、容赦なく壁に叩きつけた。ゴギリと嫌な音がし血が溢れ出るが久郎は知った事かとその男性から手を離す。
 
「テメェら……なァーにしてんだコラァ」
 
 質問に答える気は無い。そう言うかのように電撃の槍が久郎に向かって放たれる。
 だが久郎は手を前に突き出してそれを正面から受けた。次の瞬間、電撃がまばらに飛び散り眩く光る。
 だが久郎はなんのダメージも受けてなかった。そして突き出した手には青白い炎が宿っている。
 
「そのガキがなんかしたのか。なんかしたなら許してやれよ。そのガキがなんかされてんのか。だったら今すぐ止めろよ。そのガキがそこまでされる意味はあんのか。ねェならとっとと失せろ。弱い奴を虐げる奴は死ね」
 
「……交渉しよう」
 
「……ア?」
 
 唐突に1人の男が久郎に取引を持ちかけた。一瞬何を言ってるんだこいつはと言いそうになった久郎だが、彼は無為な争いは好まないので一応聞くことにした。
 
「ここに数十万ある。これで手を引いてくれ」
 
 男が取り出したのは、一万円の札束だ。とても軽く使ってはいけない額である。
 雪菜は何が起こったか分からないでいた。ただ、今の言葉はハッキリと聞こえた。
 彼女は知っている。金とは人間を狂わせる節があることを。その事を彼女はその身をもって体験していた。
 だから、きっと助けようとしていた彼も立ち去るだろう。そう考えると同時に落胆していた。
 だが、雪菜の目に映ったのは。
 
 青白い炎に包まれた手で札束ごと男の手を粉微塵にした久郎の姿だった。
 
「もういいぞ霞夏。お前がやる必要は無い。下がってろ」
 
 だが久郎の注意は前の男には向いておらず、何故か彼の背後に向けられていた。が、次の瞬間その場に幼い少女が現れた。ホワイトボードには『大丈夫なの?』と書かれている。
 
「大丈夫とか大丈夫じゃねェとかそういう問題じゃァねェんだ。……お前がやる価値すらねェってだけだ。だから、目ェ閉じてろ」
 
 少女は頷くと固く目を瞑った。絶対に視界が開けないように。
 そして久郎は、その青白い炎に包まれた手で次々と男達を始末していく。ただし、久郎は決して殺しはしていなかった。彼の頭の片隅には孤児院の院長である志穂乃の言葉が残っているからだ。
 彼が全ての敵を始末した時、雪菜には彼にあるものを当てはめた。
 ーーーー王子と。

Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.245 )
日時: 2017/05/04 13:35
名前: 波坂 ◆mThM6jyeWQ (ID: KLUYA2TQ)

「オイ、立てるか」
 
 鉄の臭いに囲まれながら久郎は雪菜に問いかける。少しだけ体の感覚が戻ってきた雪菜はなんとか首を横に振ることで、否定の意を示すことに成功した。
 その意思を汲み取った久郎はしゃがみ込んで雪菜の腰に手を回して持ち上げる。そして雪菜を背負う。
 
「オイ、名前教えろ」
 
「……雪菜。高森雪菜」
 
「高森、テメェなんか行く宛でもあんのか」
 
「……はい」
 
「教えろ、そこまで連れてってやる」
 
「……なんで?」
 
 雪菜の口から溢れたのは返答ではなく疑問だった。
 そもそもがおかしい。と雪菜は思っている。
 誰が何をされているかも理解していない上に、相手が誰かも理解していない。だがそんな赤の他人を救い、その後の行動も決して見返りを求めている訳では無い。
 雪菜は久郎がなぜそんな行動をするかを不思議に思っている。何故、こんな事をするのかと。

「単純な話だ、俺ァ弱い奴が虐げられてるの見てると腹立つんだよ」
 
 久郎の出した解答はとても安直なものだった。
 雪菜の疑問はより1層深まる。何故それを見て怒りを蓄積させるのか。何故腹が立っただけであれほどの行動ができるのか。
 時間は丁度午後6時を刻んでいた。
 
 
 
 ○
 
 
 
 
「オイ高森。テメーが言ってたはここであってんだな?」
 
 あれから20分ほど歩いた所で久郎はスマートフォンに目を通しつつも雪菜に問いかける。そのスマートフォンに映し出されている情報は地図だ。
 既に体の感覚が戻り破れた服を庇いつつ久郎の隣をあるく雪菜は「ここです」と言っている。
 3人の目の前には巨大な建築物がそびえ立っていた。全体的に白い建材で造られていて、ガラスが多く使われており全体的に凹凸のない、まるで豆腐を幾つも重ねたような建物だ。その形状は校舎に似ているかもしれない。
 
「……研究所……か?」
 
 久郎が横を見ると、看板に『私立能力学研究所』と記されている。
 能力学、とは能力に関する学問を総称してそう呼ぶ。
 能力の規則性や法則、創造力や能力の強度なども研究されているらしい。最近の能力学者達は念動磁場についての研究に熱が入っているらしい。
 何のことかサッパリの霞夏と高校生時代に習った能力学の知識がなんとなく思い出せた久郎。能力学は高校からの選択科目の一つなので小学生や中学生は授業を受ける機会は無いのだ。
 取り敢えずガラスが主体で構成されている自動ドアの前に立つ久郎。
 だが自動ドアが開かない。センサーに手をかざしても反応しない。どうやら機器が働いていないようだ。
 だが機器が働いていないとはロックも掛かっていない。久郎の怪力で自動ドアは簡単にこじ開けることが出来た。
 自動ドアの向こうは通路となっていた。部屋がいくつかあるが皆揃って消灯している。
 だが一つだけ灯りの灯った部屋があった。その部屋のドアノブを久郎が掴んで開けようとする。
 が、ドアノブに手を伸ばした瞬間ドアノブが久郎の手から離れるように移動した。つまりは内側から誰かが開けたのだ。
 
「自動ドアが自動で開かない癖に手動ドアが勝手に開く。さて問題だ。これによって生じる不利益を上げてみてくれ」
 
 ドアを開けたのは、顔色の悪い女性だった。
 うねったり跳ねたりと散々な暗い青緑色の髪は1本に束ねられている。しかし束ねているものはリボンというか細い布というか、とにかくデザインを重視したものでは無かった。
 焦げ茶色のデニムに黒い単調なベルト。青いワイシャツの上から白衣に袖を通している。首からはペンダントらしきものがぶら下がっている。
 三白眼の目の明るい赤色の瞳は少しだけ愉悦の色に歪んでいる。大人びた雰囲気を纏っている。身長は久郎よりも頭一つ分程度低い。
 
「俺のストレスが増える事」
 
 多少イライラした久郎は怒気を少なからず含ませた声で伝える。霞夏が少しビクビクとした様子を見せると久郎は自重して怒気を弱める。
 
「違うね。答えは私の労力が増えるだ。考えたまえ馬鹿」
 
「殺すぞテメェ」
 
 サングラスから鋭い眼光を放つ久郎に怯えることもなく、その女性は1度鼻で笑うように息を吐き出して喋る。
 
「ハッ、君如きに殺されるほど私はヤワじゃないさ。『ラビック』の大見代久郎」
 
「……テメェ、『こっち』の人間か……」
 
「ああそうかもね。ついでに言うならそこにいる青い髪の少女は『ラビック』のもう1人の縫空霞夏という事も知っているし、そこにいる破れた青色ドレスを着た金髪の子は今日逃亡してくるはずだった高森雪菜だということもね」
 
 ペラペラと喋る女性。だが久郎は内心でかなりの動揺をすると共に警戒を始めていた。
 裏の人間という時点で能力者は警戒に値する。ましてや久郎や霞夏の情報すら知っていた。恐らく能力も知られているだろう。そのため久郎はいつでも能力を発動して女性の腕を分離する準備をしていた。
 
「おっと、私の腕を分離しようなんて考えるなよ?私の腕は世界に一つだけしかない部品なんだからな」
 
「……テメェ読心能力者か……」
 
「残念ながら違うね。私はただ、君が考えそうな事を君の思考パターンに合わせて考えただけさ」
 
 ドアノブをパッと離し、踵を返して部屋に戻る女性。慌てて久郎がドアが閉まらないように支える。
 
「おいテメェ!状況説明くらい寄越しやがれコラァ!」
 
 久郎の方を振り返って心底うんざりしたような呆れ顔を見せると、ため息を付きながら額に手を当てて面倒そうに女性は告げた。
 
「私の名前はテメェじゃない。義義理だ。義義理響(ぎぎり/ひびき)だ。覚えておけ」

Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.246 )
日時: 2017/05/04 18:19
名前: 三毛猫 (ID: v2BiiJyf)

どうも、三毛猫です。

義義理……?どこかで聞いたようなお名前ですねぇ……。相変わらず読者を飽きさせない面白さ。感服いたします。

更新をいつも心待ちにしています。

Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.247 )
日時: 2017/05/14 18:29
名前: 波坂 ◆mThM6jyeWQ (ID: KLUYA2TQ)

>>246

三毛猫さん。
感想ありがとうございます。
そうですね……名前につきましては後々掘り下げていく予定です。何話後になるかはわかりませんが。


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