複雑・ファジー小説

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超能力者と絶対に殴り合う能力
日時: 2018/03/26 17:23
名前: 波坂 (ID: KLUYA2TQ)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=359

初めましての方は初めまして。それ以外の方はこんにちは。
波坂なみさかと言う者です。
意見や感想、アドバイスなどは大変嬉しいのですが、それが的確なものであるかどうかを一度確認してから投稿して下されば幸いです。
宣伝などはできる限り控えて下さい。

※リンクは能力の募集に繋がっています。よろしければどうぞ

2015/10/17 スレッド設立
2017/01/18 受験の為、更新停止
2017/03/07 受験終了。更新再開
2017/03/28 参照回数8000突破
2017/05/14 参照回数9000突破
2017/9/01 参照回数10000突破
2017/12/15 参照回数11000突破
2018/2//13 参照回数12000突破

Twitter創作アカウント→@namisaka_sousak

【目次】
第一章>>1-21 第二章>>23-31

第三章>>32-46 第四章>>47-67

第五章>>68-77 第六章>>78-104

第七章>>105-202 番外編>>203-215

第八章>>219-236 第九章>>237-269

第十章>>270-現在更新停止

Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.57 )
日時: 2015/12/07 13:47
名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)

 鋼城家は裕福である。
 何故。と言われたら答えるのは難しく無い。
 鋼城家は六代前の先祖が鉄工業で成功し、それを切っ掛けにして富豪へとのしあがった。
 更に今でも使われる、合金等は鋼城家が開発した物が多く使われている程だ。
 そんな感じで、その家の娘である緋奈子には少なくとも友人と呼べる者はいなかった。
 だから緋奈子は一人で朝食を食べようとしていたが…。

「一緒に食べてもいいですか?」

 隣にいた平子もまた、一人で食べようとしていた。
 紡美は学食で食べる為、平子もこのクラスには親しい中学時代の友人はいなかったため、緋奈子を誘ったのだった。

「良いですよ。どうぞ」

「ありがとう……えっとタメ口でいいですか?」

 緋奈子としてもそんなことを言わないでも良いのでは? と思ったが、気を使われているのを冷たく返すのもどうかと思い、無難に「良いですけど?」と返す。

「ふぅ。良かったー。紡美ちゃんは学食だから私一人で食べるところだったって訳だよ」

 そう言いながらパクついてる平子の弁当は恐らく手作りである。誰が作ったかはさておき。
 緋奈子はしっかり自分で作っている。料理くらいできないといけないらしいのだ。

「そう言えば緋奈子ちゃんって能力者なんでしょ? どんな能力?」

 平子の視線は緋奈子の青紫色の髪に向けられていた。髪の毛の色ではだいたいしか分からない物なのだ。
 因みに強さは兎に角、異色な能力は色が薄い事が多い。最も全てが当てはまる訳では無いが。その点から考えて緋奈子の能力はオーソドックスな能力だろうと平子は考えていた。

「私の能力ですか? [物体を移動させる能力]まあ便利な能力ですよ平野さん」

 緋奈子は自分を椅子ごと移動させて見る。移動と言っても横に数メートル程スライドしただけだが。

「へぇー。ああ、私の能力はね[相手と自分を平等にする能力]だよ」

 緋奈子はそれを聞いても理解ができなかった。

「ああ、こんな感じ」

 緋奈子の手を触った後に、平子は教室の中なので小さくパン、と合掌をする。

「能力を使ってみてよ」

 緋奈子は不思議な行動だと思いながらも能力を使おうとする。が、平子の能力で能力が行使できなかった。

「え?」

「私の能力はね。自分が持ってない相手の能力を自分に合わせる。つまり一時的に消せるんだよ。あ、戻すね」

 平子は能力を解除する。とは言っても平子の能力は戻す場合に挙動は無いため分からないが。最も、ほとんどの能力に戻す時の挙動は無い。

「まぁ…凄い能力ですよね」

「でも殴り合いにしか使えない様な応用0の能力だし、何より肌に触れないと使えないって訳ですよ」




「紡美ちゃん。帰ろうか」

「そうだね」

 平子は放課後に部活動と言う名の戦場に行く気などさらさら無いので帰ろうとしていた。紡美も運動能力以前に能力を持って無いため部活動に入る気は無かった。

「ちょっと待って下さい平野さん」

 帰ろうとしていた二人。いや正確には平子を引き留めたのは緋奈子だった。

「平ちゃん。この人は…?」

「鋼城緋奈子ちゃん。今日知り合った」

「平野さん」

 緋奈子は真剣な表情でこう言った。

「何で無能力何かと付き合いがあるんですか?」

 その言葉は、室内の空気を凍り付かせるには充分過ぎた。

「…あるぇー? 何て言ったのかな? 緋奈子ちゃん。私聞き間違えたかも」

「だから何で無能力何かと付き合いがあるのかと訊いています」

 同じ事を繰り返して言う緋奈子。それに対して平子は。

「無能力何かってどういう意味なのぉ?」

 半分キレかかっていた。しかし緋奈子はそんな事は視野に入れていない。

「何言ってるんですか? 私達能力者は才能ある者達ですよ? それが少しの才能すら無い無能力何かと分かり合えるとでも思ってるんですか?」

「ふざけないで下さいって訳ですよぉ!」

 緋奈子の発言に怒りを抱いた平子。
 緋奈子はそれでも、平子が何に怒っているのか理解できなかった。

「私の何処がふざけてるんですか?」

「無能力を馬鹿にするなぁ! 紡美ちゃんに謝れ! 発言を撤回しろ!」

 平子の言葉でようやく言っている事が理解できた緋奈子はこう言う。

「まさか無能力何かと仲良くするとは……失望しましたよ。何で私が古都さんに謝るんです? 謝る価値何て無い様にしか思えません。発言を撤回する気はありません。事実ですから」

「貴女……貴女って奴はぁ! 貴女の様な能力の有無で人間の価値を評価する様なクズが居るから無能力はバカにされるんだよぉ! 無能力と能力者の違い何て……髪の色と能力の有無だけだぁ! それ以外に何が違う! 少なくとも、私は無能力を否定する」

 平子は緋奈子に指差しして

「貴女が大嫌いって訳ですよぉ!」

 流石にここまで言われて緋奈子も怒る。

「黙って下さい!」

 能力を発動して壁に平子を移動させる。しかし平子はその前に緋奈子に近づいて手を叩いた。

 次の瞬間。平子が壁に飛んで行く。

 ドン! とそこそこ大きな音がする。平子も苦痛の表情を浮かべている。が、平子は合唱をする。

 パーン!

「これでよしと……緋奈子ちゃん? 貴女は今、無能力と同じ状態ですよぉ?」

「っ!」

 平子の発言に能力の使えなくなった緋奈子は黙る。

「もういいですよぉ。貴女はそんな人なんですから。精々無能力の時間を有意義に過ごして下さいよ」

 スタスタと平子は紡美のところまで歩いて、紡美の手を取り教室から出ていく。教室に残った緋奈子は。

「何で私が間違っているって思われるんですか…!」

 怒りと空しさだけが残っていた。

Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.58 )
日時: 2016/11/29 20:24
名前: 波坂 (ID: hQNiL0LO)

 緋奈子は迎えに来た使用人と共に自宅へと帰宅していた。

(……そう言えばもうすぐ親睦会がありますね)

 緋奈子はそんな事を考えながら窓から外を見ている。
 親睦会とは、富豪等が集まって親睦を深める。時には縁談をまとめ、時には火花を散らす。その様な物で、ホテルで開かれる。緋奈子はそれに十二歳から参加をしているが、馴れた訳ではなかった。因みに警備に特殊警察が付いている。

(はぁ……いざとなったら)

 緋奈子は通学カバンを右から左にゆっくりと能力を使い移動させる。

(この力で……)




 それから一週間の時が過ぎた。
 緋奈子は相変わらず紡美や平子とギクシャクしたまま。
 時雨は相変わらず【問題児部】の一員として名を挙げていた。
 この二人が今日、交錯する。



 時雨は今、一流。と言うか富豪しか使えない様なホテルのロビーに居た。
 何故、一般人である時雨がこんな高級ホテルに居るかと言えば、それは特殊警察の仕事だからだ。

「はい王手」

「ここはこうしてと……」

 こんな所でも堂々とチェス盤(500円)を広げてチェスをする時雨とザンはやはり問題児だった。

「ナイトは使い方では強いよな」

 白ナイト(手作り。時雨が暇潰しに消しゴムを削って作った)を動かしながら時雨が言う。

「そうですね。ま、安定はクイーンですけど」

 黒クイーン(手作り。これは黒消しゴムで作った)を動かしてボーン狩りをするザン。

「お前達……緊張感が無いな」

 呆れた様に言ったのは火英だ。青制服を着ている。因みに制服には赤、青、灰色、白、黒があり、赤は業務部のもので、青は動きやすさ重視の戦闘部のもの。白は鑑識等の捜査部で、灰色は医務部、黒は上位の人物専用のものだ。

「テレビ(スマホで)を見て大爆笑していた火英兄が言えないと思うぞ」

「全くだ」

 今日は制服の上に白いコートを羽織った火麗は火英の発言にツッコミを入れ、いつものコートを羽織った風間は火麗に同意する。

「司。そう思うならやってみろ。ルールを覚えたらな」

 時雨は完璧に火英をスルーして風間に言う。

「今、覚えているがキングとルーク? だったか覚えてないがそれの関係がわからない」

 別に風間は頭が悪い訳では無いが、一度覚えた事に何かを上書きするのが苦手なのだ。

「今覚えているなら覚えてないなんて言っちゃ駄目ですよ風間先輩……」

 これを言ったのはザンで全くの正論である。

「あ、時雨先輩詰みです」

「しまったぁぁぁぁ!」




 緋奈子は高級ホテルに入り、中で親が受け付けに向かった時に、ロビーを見回していた。
 そこで見たのは特殊警察だったが……。

(何で特殊警察に無能力が? 特殊警察も落ちましたね)

 チェスに負けてばたんきゅーしている時雨を見て緋奈子はそう思った。

「時雨。そろそろだ」

「分かりました火麗先輩」

 そして特殊警察の面々はエレベーターに乗って上階に向かった。

(あの人が私の近くの警備では無いことを望みますね)

 フラグじゃないか。
 そんなフラグを建てた緋奈子の元に緋奈子の両親が戻ってきて、時雨達の乗った隣のエレベーターに乗って上階へ向かった。




「流石金持ち共……。良いもん食いやがる」

 時雨のその発言は富豪達にとっては無礼極まった物だが、幸い富豪は周辺にはいなかった。目の前には豪華な食事の乗ったテーブルがある。

「当たり前だ。金持ちの金はドブに捨てる為にあるからな」

 火英のその発言も富豪にとっては無礼極まった物だが、その発言(暴言)を止める者は居ない。

「ここで札束で殴り合うとかするんですかね?」

「そんなわけ無い!」

 ザンの発言は流石にヤバイと思った火麗は一応誤解を解いておく。
 因みにザンの札束で殴り合うは文字通り手に札束を持って殴り合っているのかと思っていた。火麗が想像したのはドロドロの買収だの売却だの売買だのエトセトラだのエトセトラみたいな事だが。

(いや、無いわけでは無いだろう)

 そう口に出さずに思ったのは風間だった。風間は一番この中で冷静だった。




(本当ですか…)

 緋奈子がそう思ったのは開会宣言が始まる少し前だった。
 鋼城家の一番近いのは00部で、緋奈子に一番近い警備している人物は時雨だった。

(ま、気にしないでおきましょう)

『えー。本日は皆様お集まり頂きまして誠にありがとうございます』

 アナウンスが会場に響く。どうやら開会宣言が始まった様だ。
 正直言ってどうでも良かったため、省かせて貰う。

『それでは開会宣言を終了します』

 そして親睦会は始まった。




『こちらA班。開会宣言が終了しました』

「引き続き監視しろ」

『了解』

『こちらB班。準備が完了しました』

「よし、合図があるまで待て」

『了解』

『こちらC班。準備が完了しました』

「合図があるまで待機しろ」

『了解』

Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.59 )
日時: 2015/12/07 21:36
名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)

「はぁ……」

 時雨は溜め息を吐いていた。時雨は去年この警備に参加していなかったため、どんなものか予想していなかった。だからこれ程迄にーーーー退屈だとは思っていなかった。
 時雨は誰とも会話せず、ただ会場の壁際でつったっているだけだ。時々カ○ピスを注いだグラスをボーイが持って来てくれるが、それを飲み、警備or監視、飲む、警備or監視、飲む、警備or監視の繰り返し無限ループだった。

「くそぉ……退屈過ぎるぞおい」




 時雨が自分の尾を追い続ける犬の様に無限ループしていた頃、緋奈子はうんざりしていた。

(声をかけられても町のナンパとほとんど何も変わってない様な人達ばかり。おまけに財力はあるから迂闊に能力で追っ払えないなんて……疲れました)

 緋奈子は壁にはぁといった感じにもたれかかる。緋奈子的にはもうさっさと終われよ見たいな気分だった。

「一人? 僕も一人何だよ。一緒に回ろうよ。ねっ」

(また来ました。面倒ですからあっち行って下さい。お願いします)

「いえ、私は一人でいるのが好きなもので」

 流石はお嬢様。中々本性を表さず、しっかり本音と建前を理解していた。
 勿論緋奈子は真っ赤な嘘を言っている。緋奈子は一人が好きという訳では無い。

 その後もしつこく言い寄る害虫を撃退した緋奈子は精神的に疲れきっていた。緋奈子の帰りたいメーターは百をぶっちぎっていた。




 時雨は暇潰しに富豪の様子を見ていた。
 視線の先には車椅子の人、それを押す人、札束で殴り合いをする展開になっている人、何か握手してお互いに黒く笑ってる人達、疲れきっている人、色々な人がいた。

(思ったんだが富豪って結構個性的な奴多いよな)




 それは、唐突に起こった事だった。

 何やらゴテゴテした服に身を包んだ人間が細い鉄の塊ーーーーライフルを持ってパーティー会場に数人ほどいきなり侵入して来たのだ。

「おい! こいつのいのtぐぶぁ!」

 時雨は真っ先に人質をとろうとしていた奴の顔面に拳を叩き込む。グシャリと音がして男は一気に盛大に吹っ飛んでいく。
 ロケ○ト団よろしく吹っ飛んでいった人間はそのまま前の開会宣言をした場所の教壇的な物に激突した。
 バゴォ! と物凄く大きな破壊音が鳴り、半壊した教壇的な物に人間が逆さ状態で上半身を突っ込んでいるシュールなオブジェが完成した。
 そのオブジェの生成を手掛けた破壊手、時雨はこう語る。

「やっべ」

 人質をとられそうになっていたのを救出したのは良いものの、このままでは恐らく今みたいなのが侵入してくると思い立った時雨は助けた少女ーーーー緋奈子を放して出入口へと向かった。

 出入口では既に戦闘が展開されていた。

「おい時雨! こいつら多分テロリスト共だ!」

 そう時雨に大声で伝えたのは火英。
 今、火英は警棒でテロリストを殴りながら頑張っている。因みに特殊警察の制服は防弾・防刃性能がついているためある程度は安全である。

「くっそー! 切断したら死ぬから能力が使えないぜ!」

 そう叫びながら相手の銃等を切断するザン。どうやら能力が生物に効きすぎるのも良くないようだ。

「鬱陶しい、さっさと引き返せばいいものを」

 能力者達を相手にしている風間。所々コートが破れてしまっているが、本人的にはどうでも良さそうだった。

「これでも喰らえ!」

 向こう側から走って来てテロリスト側に赤い筒状の物をぶん投げた火麗。火麗が投げた赤い筒ーーーー消火器がテロリストに到達した瞬間。

「空気摩擦で燃えろっ!」

 次の瞬間、消火器が燃え上がり、それが壁に激突しーーーー大爆発を引き起こした。

Re: 超殴り合う能力 ( No.60 )
日時: 2015/12/08 10:16
名前: 齋藤 凜美 (ID: gp9wpgoS)

そうなんです

わたすが大分県の魔王


鱗状寺とうまなんです


はみがきこ


いちごのおいしい歯磨き粉

Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.61 )
日時: 2015/12/08 22:30
名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)

 ……すいません。私は小説カキコで所詮は半年も経たない初心者の為、上の様なコメントにどう対応していいのか分かりません。
 こんなクソ真面目な私でごめんなさい。


 続きです。




 ドガァァン!

 消火器による爆発の音は富豪達の部屋にも当然響き渡っていた。
 それを聞き、富豪達の大部分はパニックを起こす。

「動くな!」

 そこに低い男の声が部屋中に響いた。富豪達はそれでも落ち着かないが、その男がマシンガンを乱射すると静まる。冷静を取り戻した訳ではなく、恐怖で硬直しているだけだが。

 そして次から次へと武装したテロリストが火英率いる00部が交戦している場の反対側の方から乗り込んでくる。
 ガチャガチャと歩く度に音を鳴らすその様は富豪達を更に恐怖で埋め尽くす。

(……まずいです)

 その中では比較的冷静なーーーー最も一般的な水準から見れば冷静では無いがーーーー緋奈子は舌打ちをする。

(恐らく、彼らはこの後人質を取った上で何かしらの要求をするはず。私の予想では身代金……とは言えこの状況からの逆転なんてほぼ無い気がしますけど…)

 緋奈子は内心諦めている。いくら誰が何をしようとこの状況は簡単に覆せるものではない。と考えていた。
 そんな緋奈子に、「おい」と声がかけられる。
 そちらを向くとゴテゴテした装備のテロリストがズカズカと緋奈子に近づき。

「こっちに来いっ!」

「きゃっ!」

 緋奈子は強引に立たされ髪を引っ張られて男に移動させられる。移動した場所は最も目立つ場所。
 緋奈子の予想は正しかった。現に彼らは人質を取っている。そしてその次も予想が正しければーーー

「オイ! こいつの命が惜しいか?!」

 ーーーー緋奈子を使って身代金を要求するはずだ。

「惜しいなら俺達の要求を飲みな……十億用意しろ! 出来ねぇなら……」

 そこまで言い、近くにいた女性と男性に銃口を向けて。

「こうなっちまうぞ!」

 次の瞬間。ズダダダダダダ! と無慈悲な銃の発砲音が鼓膜を叩いた。
 銃口の延長線上には、小さい穴だらけの紅い人間ーーーーだったものが二人転がっていた。

 若干15歳ほどの少女が耐えられる光景でもまた無かった。




「クソッ! 数が多い!」

 時雨は毒を吐きながらも次々と自分に向かって攻撃をしてくるやつらを文字通り叩き潰していた。
 叩き潰す。とは言ってもヘルメットに覆われた顔面を思いきり、ヘルメットが意味を為さない程度に殴っているだけである。
 幸いだったのが、能力者を殆ど風間が相手している事だった。彼に有効な能力を使用した攻撃など、上からの超質量攻撃以外にはそうそう無い。
 だが、それでも数が多すぎる。ザンは能力が逆に対生物に効きすぎて使えず、相手の厄介な武器を愉快な形に切り刻んでプレゼントする事以外にはすることが無い。火麗は消火器を爆発させた事により相手にしている大部分は減ったがやり辛そうだ。能力が[摩擦を操る能力]といった防具をガチガチに固めた相手には相性が良くない能力であるため苦戦を強いられていた。
 火英は司令塔として後方支援をし、時折殴り込んでいく姿が見られる。

(そう言えば火英の能力って何だ? 風間の笑った顔並(=0)に見たことが無いな)

 時雨が考え事をしている最中にテロリストが襲ってくる。時雨は一度意識を覚醒させて跳びかかってきたテロリストにラリアットを決め、そのまま後ろにいた二人も巻き添えにする。

(どっちにしろこのままじゃあ拉致が開かないな。全員ぶっ飛ばすしか無いのか…)

 時雨はそのまま右にいたテロリストに腹パンを決め、乱暴に投げる。

(…やるしか無いな)


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