二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 小さな書庫の騒動【短編集】
- 日時: 2016/03/19 18:19
- 名前: ブレイジング・フレア・ドラゴン (ID: zSZyy9Vi)
ようこそ我が小さな書庫へ。ここでは様々な著者が綴っていった作品を保管しており、皆様に楽しく読んでいただくために図書館として併用している保管庫です。
あ、だからといって貸し出しは厳禁ですよ?
では、この書庫の様々な作品をお楽しみ下さい。
タグ1:ヴァンガード ヴァイスシュヴァルツ リリカルなのは スマブラ ダン戦 ぷよぷよ ポップン オリキャラ ミルキィホームズ
タグ2:キャラ崩壊 オリジナル要素 百合表現あり なのフェイ
お知らせ>>638
『今は抹消したい駄作』
とあるキャラの諸事情>>1-2
祝福の風は一陣の風となりて>>3-5
聖夜のドタバタ体験記>>8-10
ヴァンガード認識試験>>17-18
クレイについて(2013年番)>>30-33
『依頼書まとめ』
QUEST1>>346-352
QUEST2>>361-367
QUEST3>>400-407
QUEST4>>499-505
QUEST5>>538-547
QUEST6>>816-821
QUEST7>>843-848
『映画を基にした本』
[天空の国エンジェランド]
第1章>>11-12
第2章>>15-16
第3章>>35-38
第4章>>39-42
第5章>>45-50
[怪盗と探偵の争奪劇]
前書き>>641-642
怪盗>>643-645
探偵>>651-653
争奪>>654-658
『長く続いた日記』
[行楽の秋]
旅館編>>55-58
宴会編>>66-68
一日の終わり>>85-87
特別編>>100-105
紅葉狩り編>>114-119
季節外れの肝試し編>>126-130
[jokerに繋がるストーリー]
むらくも>>256-258
エンジェルフェザー>>259-261
ネオネクタール1>>291-292
ダークイレギュラーズ&グリムホロウ>>293-295
[記憶喪失と夏祭りレース!]
前編>>416-421
中編>>428-433
後編>>439-446
[死と隣り合わせの料理会]
準備編>>571-575
前編>>582-586
後編>>601-607
結果発表>>624-629
[2ちゃんネタシリーズ]
ヴァンガちゃんねる1>>328-330 2>>338-340
すまちゃっと>>477-478
だっちゃんねる>>662-665
『色々なオムニバス』
祝福の風の厄日>>19-25
ハロウィン狂騒曲>>77-80
本当に酷い赤ずきんの話>>136-140
異世界を巻き込んだ事件
前編>>149-153
後編>>164-168
新たなオリキャラとシスコン同盟会>>182-186
ダンボール戦機とリンクジョーカーでアンジャッシュネタ>>198-201
テストネタ>>209-213
金髪(かなかみ)乱れて修羅となりて>>226-231
THE・没ネタ>>242-245 2nd>>518-521
二つのスピカは相対する。>>263-268
人魚の報復物語>>274-279
ゲームの世界にようこそ!>>301-306
GWでも騒動はやってくる1>>310-311 2>>312-314
氷の狙撃手と光の剣士の先導者1>>374-378 2>>389-394
あっちこっちパロで質問ネタ>>455-460
プロローグ>>485
伊吹コウジ君の退屈>>486-487 桜庭道子ちゃんの憂鬱>>488-489
新春混沌すごろく祭>>560-566
Fleet of silver soul>>673-678
ポケホームアローン>>694-697 ポケホームアローン2>>705-709 答え合せと悪ふざけしたおまけ>>721
桜の花と共に来た依頼>>722-728
ショートランドの艦これ日和>>739-744 2>>758-762
君がいた夏は……>>768-772 後半戦>>783-792
戦姫絶唱しないシンフォギア番外編>>803-806
錬金術師とのカードバトル>>834-839
先導者と定理者>>858-860
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- 天空の城エンジェランド第3章:その1 ( No.35 )
- 日時: 2013/07/24 16:10
- 名前: 八雲(元BFD) (ID: w/wSfXM1)
お待たせしました!漸くラピュタパロの再開です。
書ける時間がなくて今まで延滞してすみませんでしたOTL
前回までのあらすじ。
時は大ギルド時代。
ひょんな事から天空から落ちた少女、八神はやてを預かる事となったギルド、魔道ギルド『ヴォルケンリッター』。
その翌日、同盟を結んでいる鍛冶傭兵共同ギルド『修羅道の刀鍛冶(しゅらどうのブラックスミス)』マスター、ディントスからはやての正体と帝国ギルド『オーラム』の目的を知る事となる……
転送されたリインフォース達が自分達のギルドに帰って来た3人。
室内に入り、先に帰っていたヴィータ、シャマル、ザフィーラに自分達の入手した情報を話す。
「ふざけんな……」
シグナム達が説明し終えた時、ヴィータが怒りを堪える様な声を絞り出す。
その直後、
「ふざけんなっ!コイツはあたし達の事を騙してたのかよっ!!!」
喉が張り裂けんばかりの大声で怒りを露にするヴィータ。
バンッ!とテーブルを強く叩き、上に置いたグラスが揺れる。
「ヴィータ、落ち着いてぇな!私は別にこのギルドの皆の事を騙してる訳じゃ……!」
「うるせぇうるせぇ!貴族や王族なんて下の連中を喰い物にして自分の親族を人形みたいに飾り栄えする事しか能の無い連中なんだろ!自分の悪事は権力とかで無かった事にする、最低な連中なんだよ!!!あたしは別行動する。こんな奴と一緒にいてたまるかよ!!」
激昂したまま本音を吐露する。
誰も口を挟めない中、ヴィータが本音を言い終えるとリインフォースが返すように聞く。
「ヴィータ、ザフィーラとシャマルの話を聞く限りお前も狙われる可能性が高い。別行動なんて、敵にぜひ狙って下さい何て言ってるものだぞ?」
「だったらテメェらでそのお姫様を護るこったな。あたしは絶対に行かないからな……!」
両者一歩も引かず、睨み合うけん制が続く。
1分も経たない内にリインフォースが諦めた様な溜息を吐いた。
折れたのかと思ったが、彼女からの声はヴィータの予想していたものとは全く違っていた。
「これは使いたくなかったが……仕方ない。ギルドマスター命令により、これよりシグナム、シャマル、ザフィーラ、そしてヴィータ。この4名はギルドマスターである私リインフォースと共に八神はやての護衛及びオーラムの撃退を優先事項とします」
「!!?ふざけんなよ!何でテメェが勝手に仕切ってんだ!!」
「これはギルドマスター権限だ。この権限がある以上ギルド員であるお前に反対の権利は無い」
再び拮抗するにらみ合いをするヴィータとリインフォース。
その後、「クソッ!」と帽子をテーブルの上に捨てて毒づくとメインホールを出て行った。
「あの、ヴィータはなんであんな貴族や王族を嫌ってるんや?」
「それも重症的にね。理由は分からないけど、物凄い敵意を向けているのは確かだわ」
「シャマル、そう喋る物じゃないだろ。ここの掟を忘れたのか?」
シグナムに鋭い目で咎められ、シャマルが思わず口に手を当てて「ごめんなさい」と謝る。
「ヴィータ、ほんまに大丈夫なんやろか……」
†
同刻、ギルドのバルコニーにて——
「……」
「一人で天体観測か?」
「……お前か」
一人星空を見るヴィータ。
そこに、ブラックピットが現れる。
「お前、このまま行かねぇのか?」
「当たり前だろ。あたしは貴族や王族が大嫌いなんだ。あいつがオーラムに捕まろうがあたしには関係ないだろ」
「……仲間が殺されりゃ、お前もその吐き気がする貴族や王族と同じになるのにか?」
「なんだと……!?」
挑発的なブラピの言葉にヴィータが振り向いた。
元々喧嘩っ早い性格の彼女に今の言葉は火に油を注ぐ結果になっただろう。
「お前が行く行かないは勝手だ。だがな、オーラムがアイツらが邪魔者と判断して殺しに掛かるのは目に見えている」
「……うるせぇ…」
「奴らは強いが、帝国ギルドと闇ギルド『冥王星』。コイツら相手なら、奴らもたまったもんじゃない。すぐに殺されるだろうな」
「……うるせぇ…!」
「そうなれば、お前は自分の命可愛さの為に仲間を見捨てた、いわば『仲間殺し』の責に押し潰される。お前が嫌っている貴族や王族と同じ位最低な奴のレッテルを貼られるだろうな」
「うるせぇ!」
度重なる挑発に本気で激怒したヴィータが霧を振り払う様にハンマーを振う。
それを軽々しく避け、ブラピは再び彼女に言い放つ。
「なら、今ここで俺をそのハンマーで殺すか?貴族や王族と同じにされたくないなら、それくらいの覚悟はあるんだろ?」
「テメェ……!!」
ハンマーを握る力を込める。
怒りを全てハンマーに込め、目の前の黒い天使に殴りかかる。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
最上段から振り下ろしたハンマーはそのまま……
バルコニーの床を突き破った。
「……勘違い……するなよな…」
荒い息遣いをしながら、微動だにし無かったブラピを睨む。
「あたしはあたしに狙いを付けた貴族共の追手を全員叩き潰す為に着いて行くだけだ。はやてがどうなろうと知ったこっちゃない」
彼女が示すのはあくまで自分に降りかかる火の粉を払おうとする意志だけ。
王族であるはやてを護る為では無かった。
†
ブラピと共にヴィータがバルコニーから降りて来ると、はやてが真っ先に投げつけた帽子を手に心配そうにヴィータに声をかけた。
「ヴィータ、大丈夫なん?」
「テメェに心配されても嬉しくないね」
頭の冷えた後でもはやてに冷たく当たるヴィータ。
帽子を受け取りもせずにリインフォースの向かいの長イスに座る。
「バルコニーに出て頭が冷えた様だな。ヴィータ、これからの事で話をする。私達は近くの丘の頂上でホーリーロード所有の飛行船に乗り、そこからシュベルトクロイツの示す先へ目指す。問題は、その飛行船が来るまで4、5分のタイムラグがあると言う事だ」
たった4、5分のタイムラグとはいえ、オーラムがこの機会を逃す筈は無い。
「まぁその事は後で考えましょう。善は急げで早速向かいましょうか」
- 天空の城エンジェランド第3章:その2 ( No.36 )
- 日時: 2013/07/24 16:12
- 名前: 八雲(元BFD) (ID: w/wSfXM1)
全員馬車に乗り、小高い丘に到着した一同。
その丘はリインフォース達のギルドのある街が一望でき、街灯が淡く照らし出して幻想的な風景となる。
「綺麗やな……」
「はやて、この風景を楽しむのは後にした方が良いぞ」
「こんな大所帯でお祭り騒ぎか?」
静かに腰の刀を抜刀したシグナムと銀色の神弓を構えるブラピに続き、全員が戦闘態勢をとり、はやてが所持している魔道書を取り出した直後だった。
巨塔、射爪、撃剣を手に妖しげな顔が醜く爛れた人型の冥獣達がリインフォース達を取り囲む。
「冥王星のお出ましか!」
「重々承知でしょうがかなりの手練です。油断なさらない様に!!」
パルテナが一体の冥王星ギルド員を撃剣で撃ち抜いた。
それが戦いの火蓋が切って落とされる。
冥王星ギルド員が掠れた金切り声を上げ、一斉に襲いかかる。
「我等に牙を向けるなら容赦しない!覇っ!」
「ゴッ!?」
「煌竜!紫電一閃!」
「ゴァァ……!!」
シグナム射爪を鞘で弾き、蛇腹式の刀に炎を纏わせて斬り上げ、そこから流れる様に跳躍してからの振り下ろしで襲ってきた一体を斬り捨てた。
リインフォースも魔力を纏った拳と深紅の短剣で倒していく。
「テートリヒ・シュラーク!」
「烈鋼襲牙!」
一方ヴィータも幼い身でありながら大人顔負けのハンマーの振り下ろして一人を倒し、ザフィーラは撃剣のチャージショットを冷静に受け止め、その魔力を自分の魔力を上乗せして返す。
その後ろから更に一人が巨塔で殴りかかるが突如突風に見舞われる。
「吹き荒れよ……風の息吹!」
「ゴァッ!?」
強烈な竜巻によって吹き飛ばされた一人をヴィータが取りだした鉄球で倒す。
続けて魔道書を開いたはやてが強烈な魔法を炸裂させ、ピットも爆筒を放つ。
「勝利をもたらす剣兵達、光の一撃で敵を貫け……ブリューナク!」
「ビッグバン・シュート!」
「がぼ…ぉ…」
次々と冥王星のギルド員を倒していく。
流石に力の差を感じたのか、残りのギルド員達が徐々に後ずさる。
その陣形の少し後ろで、何かが落ちて——いや、誰かが着地した。その衝撃で自身が起きた様な揺れが起こる。
「貴方は……!!」
「「ハデスッ!!」」
「はーい!ご来場の皆様お待たせしました!冥府神ハデス、ここに参上!!」
現れたのは闇ギルド冥王星の頭首ハデス。
無数の冥獣を生み出して冥王星を作り、同時に冥府を取り締まる頭目がこの男だ。
滑稽さを交えた口調と笑いが、軽いノリを持つ男と思わせるが、獰猛さと狡猾さの両方を宿した双眼が、彼を只者では無いと本能が告げる。
「いやー、ちょっとバイオレンスになっちゃった?」
「そのバイオレンスを仕掛けた張本人が言うな!」
「おおっと、怖いね〜。パルテナちゃん、もっと人と接する事を教えたら?」
「闇ギルドのマスターで、しかも超が付くほどの危険人物を前にしたら、これが普通の反応ですよ」
いつもはからかい半分のパルテナでさえ、冗談を交えない表情で彼に撃剣を向ける。
「まあまあ、ここはお互い血生臭い争いは止めて、どうだい?取引と行こうじゃないか」
「取引……?」
「そうそう。うちのギルドは荒事好きが多いからね。取引には僕自らが行かなきゃならないの。んで取引内容だけど、僕達は2人の女の子、はやてって子とロート……今はヴィータだっけ?その2人を譲ってくれれば僕達は帰るさ」
「なっ……!?」
「無論タダとは言わないさ。ガレアス侯爵からたんまり報酬を掻っ攫ってやるからさ」
滑稽に笑いながら取引をするハデス。
彼の事だ。取引の報酬はディアマント家の人間を皆殺しにして根こそぎ奪う事が否が応でも想像できてしまう。
均衡が続く中、ヴィータが無言で、ゆっくりとハデスの元に歩み寄る。
「ヴィータちゃん!?」
「へぇ、ヴィータちゃんはパルテナちゃん達と違って案外利口——」
ハデスの言葉の途中でヴィータが顔を上げる。
その顔に大きく表れている表情は……
……『怒り』。
「ふざけてんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
「——と、思ったのはおじさんの勘違いだったみたいだねぇ!!!パァァッ!」
「うわぁぁぁぁ!!!」
「ヴィータ!!!」
ハンマーを振り上げて殴りかかろうとしたヴィータを咆哮一つで吹き飛ばす。
咄嗟にリインフォースが駆け出して吹き飛ばされた彼女を受け止める。
「こりゃあ両手両足無くしてでも連れて来なきゃならないみたいだねぇ?ツインベロス君、頼むよ!!」
『任せろやぁ!!』『噛み砕いたらぁ!!』
ハデスが声を上げると彼の隣の空間が抉じ開ける様に歪み、そこから業火の毛皮を持つ双頭の冥獣が駆け付ける。
業火を纏った双頭の牙がヴィータとリインフォースに襲いかかる。
「轟け、竜王の声。聖なる咆哮で撃ち砕け!クラウ・ソラス!」
『オボァ!?』『ゴベシッ!?』
その時、光の砲撃が爆発して業火の冥獣を吹き飛ばす。
「はやて!?」
「間にあった……!」
「おやおや、2人揃って意外と型物なんだねぇ」
「黙って!人の命を物みたいに扱う人なんかに私は絶対屈しない!!」
「つまり、取引には応じないと。まぁ、答えは関係ないよ。応じなかったら力づくで連れて来させるまでさ!ヒュードラー君、助っ人宜しく〜!」
「人間だ人間だ!」「漸く出番か!」「女の子2人は食うなよ」
ハデスの呼び掛けに応じるのを待っていたかのように空から三つ首の青い竜が飛来する。
左は声が高く、リインフォース達に対して獰猛な牙を向け、中央は待ってましたと言わんばかりに闘志を宿し、右は3つの首の中で一番低く、人間を捕食しようとする左を注意する。
「剛腕ハデス装備っと。さ、いつでもいいよ」
「なら遠慮なく行くぞ!ブラッディーダガー・スラストシフト!」
「羽ばたけ霊獣、邪を貫く剣となれ!バルムンク!」
「遅い遅い!」
リインフォースとはやてが遠慮無しに無数の剣をハデスの周りに展開して突き刺そうとする。だが、ハデスはその前に剛腕を一振いして全ての剣を払い落す。
「逆巻く嵐!!」
「飛竜一閃!」
「おおーっと、こっちの風は扇風機代わりには丁度いいね。こっちの炎は……」
シャマルの魔法の突風をまるでそよ風でも当たっているかの様に平然と立つハデスが、取りだした串に刺された鶏肉を盾代わりにして防ぐ。
「うん、良い焼き加減。もうちょっと炙った方が僕は好みだね。タレ持ってくりゃ良かったかも」
「戦闘中に食事している場合か!!牙獣走破!」
「ラケーテンハンマー!」
「前ダッシュシュート!パルテナアロー3連発!」
「ちょいと?食事中くらいは大人しくしてくれ……よっと!!」
「ぐぉあああああああ!!!」
「うわああああああ!!!」
串焼きの鶏肉を食べているハデスにザフィーラ、ヴィータ、ブラピが一斉に攻撃するが、これも剛腕を一振いして薙ぎ払う。
「流石に強い……!」
「こっちはまだまだ余裕だよ?」
苦戦するピット達に対してハデスは余裕綽綽。冥府神の桁外れの実力だけでない。
冥獣ツインベロスと三つ首竜ヒュードラーの巧みな攻撃がそれをさらに加速させる。
「ですが、これ以上貴方達と付き合ってる暇はありませんよ」
「は?」
ハデスがパルテナに対して素っ頓狂な声を上げた直後だった。
- 天空の城エンジェランド第3章:その3 ( No.37 )
- 日時: 2013/07/24 16:14
- 名前: 八雲(元BFD) (ID: w/wSfXM1)
——ドガガガガガガガガガガガガガガ!!
『あぼしゃ?!』『ごべぇ!?』
突如空から降り注ぐ鉛玉の雨。
2つのギルドを囲む冥獣やツインベロスに被弾する。
「なんだ!?」
「来てくれたようですね!」
立て続けに降り注ぐ鉛玉の雨は的確に冥王星のギルド員達だけ的中し、パルテナやシグナム達には掠りもしない。
「あれが、我がホーリーロード一の最速を誇るチャリオット氏の持つ光の戦車の曳く『星の方舟』です!」
パルテナがそう言うが早いが、冥王星とホーリーロード、ヴォルケンリッターの上空を旋回する星の方舟から降ろされたロープに掴まる。
彼女に続き、低空滑空するピットとブラピもそのロープに掴まった。
「逃すか!」「船を用意していただと!?」「奴ら、逃げる気だ!」
『チクショウ!』『待ちやがれ!』
2体の冥獣が逃げるリインフォース達を追いかけようとする。
「(ん?そういやさっきまであの銀髪の子、早足で辺りをうろついていたな……)2人とも、追い掛けるのもいいけど、周りに用心しなよ?」
何かに感づいたハデスが言うが既に手遅れとでも言う様に……
ドガァァァン!!!
追い掛けようとした途端、その冥獣2体が爆発に襲われる。
「設置して正解だったな」
「何?何をしたの?」
「ナイトメアスフィア。簡単に言えば魔力でできた見えない地雷を設置する魔法だ。リインフォース、お前あの取引が終わるまで追っ手を撒く為に仕掛け続けただろ?」
「せやけど、そんなのを仕掛けたら私達やピット君達まで巻き込まれるんじゃ……?」
「味方識別魔法(イデンティ)を常時発動させてるのよ。味方と判断した人には魔法が生じない仕組みになってるの」
先程から設置していたのはこの事を見越しての行動だろう。
あのままだったら人数的にも実力的にも圧倒的な差で全滅していたに違いない。
そう思いつつロープを上り、船の中へと入る。
「エンジェランドへの道は、どうするんですか?」
「この、シュベルトクロイツが教えてくれるはずや……」
はやてが剣十字のペンダントを手にした瞬間、銀色の光が発した。
そしてまるで羅針盤の針の如く真東に伸びる。
「進路は決まったか?」
「ええ。進路を東にお願いします」
「委細承知。フラッシュ、シルバー、行くぞ」
星の方舟の主、チャリオットが光の戦車を曳く2匹の星の光の一角獣、フラッシュとシルバーが夜空に高々と嘶いて光の指す東へと進んで行った……。
†
同刻、オーラム所有船『ダイソンスフィア』内。
「——で、結局逃したのか?」
「まぁ、半分正解かな?『泳がせた』ってのも入るけど」
今回の事件の首謀者、ラーズと冥王星ギルドマスターハデス。そしてガレアス侯爵とバルマ子爵がブリッジで話していた。
「だがいいのかい?逃げられたには変わり無いんだろ?」
「お父様の言う通りだ。相手は1頭で巨人を曳く馬力と彗星の如き速度を誇る『スターダストユニコーン』が2頭。追いつけない以前に簡単に場所を割り出せないでしょ?」
「簡単に場所を割り出せる方法を予め用意していたとしたら?」
ハデスが仄めかす様に懐からある物を取り出した。
何の変哲も無い羅針盤だが、針の先端に紙切れが突き刺さっていた。
「これは命の息吹(ビブルカード)と言ってね。さっきの戦闘で星の方舟にこれの付いたナイフを刺してね。この専用羅針盤で方角が解るって寸法よ」
「つまり、ただ戦っていた訳じゃないというわけか。中々InterestingなAcitonを取るじゃないか」
ラーズが手にした葉巻に火を点ける。その火は自分の野望の為に焼き払い、無情にも掻き消された魂が放り込まれる様に、燃え盛る。
ハデスはこれから起こる事に興味が湧き上がる様に笑い、ディアマント親子も昂った感情を抑えきれずに笑いだした。
「もう天空の城は我等のものだな。ハハハハハ!」
†
星の方舟のとある船室。
『方舟』、と言っても別にボートの様な姿では無い。ちゃんと船室が用意されているのだ。
船の船頭はチャリオットが引き受けると申したので、一行は睡眠を取る事にした。
スターダストユニコーンは元々夜行性なので、走行中に眠ってしまって墜落、なんて事はあり得ないから安心だ。
船の進む振動で揺れる赤いランプが部屋を照らす。
揺り籠の様な心地よい揺れが安眠を誘う。だが、はやては全く眠れなかった。
窓から見える星空を、ただ見ていた。
「はやて、起きてるか?」
ノックも無しに、ドア越しにヴィータが声をかける。
横になっていたはやては起き上がると、ドアの前まで移動する。
「どないしたんや?」
「ひとつ、聞きたくてさ……何であたしを助けたんだ?」
「え?」
扉越しのヴィータの言葉に、はやてはやや目を丸くした。
改めて考えてみると、自信無さげに答えを出す。
「何て言うか、あの時は無意識だったから……敢えて言うなら、『私の目の前で、誰かが死ぬのを見たくなかった』ってのが、理由かも知れへん」
「目の前で、誰かが、か……」
「せや、ヴィータ。あの帽子の事でええか?私が初めて見た時は酷くズタボロだったから直してあげたけど、何かあったん?」
「何でもねぇよ。ただ、自分でそうしただけだからな……」
扉越しにトーンが低くなったヴィータに、はやては何か申し訳なさそうに表情を少し暗くする。
しかしそれでもめげずにヴィータに話しかけた。
「あんな、ヴィータ。貴方が貴族や王族が嫌いでも、私はヴィータが、ううん。魔道ギルド『ヴォルケンリッター』の皆が好きやで」
「そう言って、危険な時にはあたしらを見捨てる腹か?」
「違うって。——まぁ、今は嫌いでも、いつかヴィータに認められる様に私、努力するからな」
はやては自分と共に天空の城を目指す魔道ギルド全員に対しての、本当の気持ちをぶつける。
ヴィータの返答は、扉からは聞こえなかったが、はやては自分の答えを出せただけで満足したのか、「明日からお城の探索見たいやから、はよ寝よか」とヴィータに言った。
「——のん気な奴」
吐き捨てる様に言ったヴィータが、自分も船室に戻って休めようとした時だった。
——ジリリリリリリリリリリリリリリ!!!!
『こちらピット!7時の方角からオーラム所有飛行船『ダイソンスフィア』を捕捉!繰り返す!7時の方角から『ダイソンスフィア』を捕捉!』
方舟の屋上で見張りをしていたピットが通信管から大声で連絡する。
この報告で、彼と、部屋に戻ろうとしていたヴィータと、フラッシュとシルバーの手綱を引いているチャリオット以外のメンバーが飛び起きたのは言うまでも無い。
†
「HAHAHAHAHA!意外と早く追いついてしまったな!」
「ふーんむ、こりゃスターダストユニコーンの伝説もたかが知れてるねぇ」
「そんな事はどうでもいい。あの船には我が家から逃げ出した人形もいるのだろう?まずは奴にたっぷりと我が家を捨てた事を後悔させてやろうか……!」
ブリッジで指揮を執るラーズに続き、残る2人の黒幕も高らかに笑い声を上げていた……
——続く
感想どうぞ。
- 天空の城エンジェランド第4章:その1 ( No.39 )
- 日時: 2013/07/26 22:23
- 名前: 八雲(元BFD) (ID: w/wSfXM1)
『こちらピット!オーラム所有飛行船『ダイソンスフィア』を捕捉!物凄いスピードで接近中!このままじゃ3分も持ちません!』
「ピット!今すぐこちらへ来て下さい、対策を考えます!」
連絡管からパルテナの声に従い、ピットが船室に飛びこんだ。
「ピット、状況は?」
「最悪ですよ!とんでもない数の兵士と爆筒です!」
「マトモに正面からぶつかったら確実にこちらが全滅しますね」
ざっくりとパルテナが酷な現状を伝える。
こちらはざっと10人と備え付けの爆筒が数本。
対して向こうは2つの巨大ギルドの連盟に加え、支援者の貴族の抱える兵士もいる。
この現状は確かにパルテナの言う通り、まともに戦ってもこちらの勝ち目は皆無に等しい。
だからといって降伏するという選択も、彼女達のプライドが許さない。
「ひとつ、策はある」
運転席を離れ無かったチャリオットの言葉に、一同の表情に僅かに輝いた。
だが、ホーリーロードの3人の表情は暗いままである。
「この方舟には『バリィ』と言う2人乗りの小型の魔道飛行船がある。それを使えば逃げれるだろう。
この船を捨てればな」
「そ、それってチャリオットさん達も見捨てろって事とちゃうの!?」
はやての驚きの籠った声にもチャリオットはまるで他人事のように頷いた。
確かにこの方法ならピット達とはやて達なら助かるだろう。
だが、それはチャリオットと2頭のスターダストユニコーンの命を『見捨てる』のと同意だ。
しかし、別の策を使っても、エンジェランドが悪用されるのは目に見えている。
何か他に、全員が助かる様な策が無いか考えるはやてがふと縄に目をやる。
「この縄は?」
「星の方舟と光の戦車を繋ぐ縄だ」
ブラピがそれがどうした?と言わんばかりの表情で答える。
それを聞くとはやてはブラピに質問を重ねる。
「2つええか?1つ目は星の方舟に他の動力があるか。2つ目は方舟抜きやとあの2頭はどれくらい速くなるかや」
「前者の答えはNOだ。これ単体はただの船。そいつら以外の動力は無い。後者は今と比べ物にならない位、それこそ流れ星に匹敵するほどの速さになる」
ブラピの返答に少し考える様に俯くはやて。
そして、何かを閃いたはやての顔に希望が充ち溢れる。
「これや!これやったら皆助かる!」
「何か良い案でも?」
「はい!実は…………」
†
一方、はやて達が船内で作戦を練る間にも、ダイソンスフィアが短い橋が掛かれば繋がる距離にまで接近していた。
「第1部隊、第2部隊、共に乗り込め!」
ハデスがレバーを降ろして梯子を掛けると同時、陣頭指揮をとるバルマ子爵の指示で大人数の兵士が乗り込む。しかし、肝心のバルマ子爵はブリッジで指揮を執るのみだが。
一気になだれ込み、方舟と戦車の境目の場所にまで乗り込むと、操縦していたチャリオットが十字弓を手に待ち構えていた。
「動くな!もうこの船は我等の物である!大人しく投降すれば、命くらい助けてやってもいいぞ」
「……愚かな。うわべだけの言葉に乗せられると思ったか?」
「なんだと!?」
チャリオットの挑発に乗せられた一人の兵士が槍を構えて今にも突進しそうな所をもう一人の兵士に止められる。
その間にもチャリオットは十字弓に矢を装填する。
「馬鹿め!そんな武器でこの数を相手にするというのか!」
「否。それ以前に一戦交える気も無い」
チャリオットの言葉に兵士達が「え?」と間の抜けた声を上げた瞬間だった。
手にした十字弓を真横に向けて放ち、縄を切断する。
鞭の様に唸って兵士達を怯ませチャリオットが光の戦車に乗り込む。
同時に方舟の船底から何かが飛び出した。
それは、空中を高速落下していく内に翼を広げる様に変形。上昇気流を捉えて一気に上昇する。
残る翼を失った方舟は、多くの兵士を乗せて成す術無く雲海へ沈んでいった。
「後はお願いします!」
「承知」
光の戦車だけになったフラッシュとシルバーが再び力強く嘶いて、先程とは比べ物にならない速度で爆筒の弾を全て華麗に避ける。
バリィに乗ったリインフォース達も散り散りに、オーラムから逃げる。
「はやて!光は!?」
「あの雲の中をずっと指してるで!」
はやてのシュベルトクロイツからの光はまっすぐ東を、そう、巨大な積乱雲の中を指している。
その形はまるで雲の城の様に幻想的であると同時に、自然界には無いと言いたくなる位巨大で、圧倒的である。
おまけに近くの雲が触れた途端飲み込まれて消えてしまう程の乱気流付き。
「まさか、あれに飛びこむなんて言わないよね……?」
シグナムの背中にしがみ付くシャマルが顔を蒼くして僅かな希望に縋る様に問う。
あんな乱気流まみれの雲の中に突っ込むのは、自殺行為に等しい。
だが、今彼女達はオーラムに撃墜されるか、僅かな希望を胸に積乱雲に突っ込むかの2つに1つだ。
「——行くぞ!」
覚悟を決めたリインフォースとはやての乗るバリィに続き、ザフィーラとヴィータ、シグナムとシャマルの乗るバリィが乱気流に突っ込んだのであった——
- 天空の城エンジェランド第4章:その2 ( No.40 )
- 日時: 2013/07/26 22:20
- 名前: 八雲(元BFD) (ID: w/wSfXM1)
積乱雲の中に突っ込んだ6人を待ち構えていたのは、闇と雷、横殴りの豪雨と暴風、そして吹き飛ばされそうな衝撃のオンパレード。
「ぐぅぅ……!!」
「……ッ!!」
今は自分のバリィを操縦する事のみに全神経を集中させる。何所が上でどこが下か、少しでも手を緩めば、瞬く間にこの10年分のゲリラ豪雨に翻弄されてしまうだろう。
仲間が今どこに居るのかも気にしていられない。
だが、彼女はまっすぐ進むしかない。自分を信じてくれている人がその身を自分に預けているのだから。
「!!リインフォース、あそこ……!!」
「……!あれは!」
その時、光が指した。
はやての言葉の先に光が指した。
その光を信じてエンジンをフルスロットルにしてその光を目指す。
するとまるで光に取り払われた様に豪雨も、雷も、闇も後方に流れる。
——雲の中から現れたのは、巨大な城。
中心に聳え立つは遮蔽する雲も無く直接日光を受けて異常なまでに成長した大樹。
歴史を表す様な瓦礫と、高度な文明が栄え、そして消えた跡が生々しい街の跡。
ヴォルケンリッター本部の建物がある街、『イングヴァルト』の数倍はあるだろう。
「「おーい!」」
エンジェランドの圧倒的な荘厳さに目を奪われていると、上空と真横からの声で我に返る。
はやてとリインフォースが慌てて辺りを見回す。
そして上空からザフィーラとヴィータが、真横からシグナムとシャマルが乗ったバリィを発見する。
「無事やったんやね……」
「流石に、少し肝を冷やしたよ……」
仲間が無事だったことに安堵した2人は残る4人と合流し、大樹の根元近くへ着陸したのであった……
†
「うわぁ……」
バリィを隠し、内部を探索するはやてが感嘆の声を漏らす。
外の装飾も圧倒的だが、内部も、大樹の根が侵蝕しているが、それと同等以上の荘厳さを醸し出していた。
これで廊下なのだから中はきっと更に凄いに違いない。因みに、真っ先に目に入った大樹を初めとする木々や植物の光合成で息苦しさを全く感じていない。
「ここは……秘書室か?」
周りの壁に何かの文字が刻まれた部屋に移動した一行。
そのほかの特徴を上げるとすれば、机の横に積み重ねた石板と草が生え完全に動かなくなった人型の機械が目に入る。
「あ、シグナム、リインフォース。ガイナスさんから貰った手帳って何やったんや?」
「アレの事か?実は方舟の中で調べたのだが……ここの文字を現代に直したものだな」
「だったら私が解読してみるわ。この手の事には一番知ってるから」
シャマルがそう言ったので、リインフォースはガイナスから渡された手帳を受け取り、解読を開始。ヴィータを置いて残るメンバーは散策の為に別々の場所へ移動した。
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