結ばれぬ2人 作者/白牙 ◆tr.t4dJfuU

0 o °〇†第11日目 包帯† ○ ゜ o 0



「あれは病気だ……。寝てれば治る。寝てれば……」

翌日、美沙姫はあの胸の痛みを病気だと勘違いし、布団にすっぽりと包まり、寝込んでいた。

だが、暑がりの美沙姫がそれに耐えられるはずもなく……。

「あつぅぅううううぅいいいいぃぃ!!!」

***

「母上、俺はもう大丈夫です……」

「いえ! 念には念を! 今、美沙姫さんと戦ったら今度は本当に命を落すかもしれないのですよ!」

美沙姫が寝込んでいる間、竜一は真知による手厚い看病を受けていた。

怪我をしていない所まで包帯を巻かれ、窒息寸前という手厚すぎる看病だった。

「うう~……俺は一刻も早く……」

「一族のために戦う事は大切ですが、自分の身体を壊してまで戦う必要はありません」

竜一の言葉を、真知が遮った。

「だからといってこれはやりすぎでは……?」

竜一の両手足には、もう生身の部分が見えない程にまで包帯が巻かれていた。



0 o °〇†第12日目 美沙姫の親友、楼† ○ ゜ o 0



ドンドン、と美沙姫の家の玄関がノックされた。

布団からむっくりと這い出し、美沙姫は玄関へと向かう。

「どなたですか……?あっ」

玄関を開けると、赤紫の髪の、澄んだ黒い瞳の少女が立っていた。

「楼! どうしたの? いきなりっ!」

「いや~、美沙姫! あんた、あの火駕の竜一っていう人の知り合いなんでしょ?cちょっと案内してもらえないかな~って!」

楼という名の少女の手には、小さめのガマ財布が握られていた。

「それ、もしかして竜一の?」

美沙姫はその財布を指差して聞いた。

「うん、この前散歩してたらね。彼が落していったの」

「ふ~ん……、まぁいいわ。案内してあげる。こっちよ」

美沙姫と楼は、竜一の家へと向かっていった。

***

「すいませ~ん!」

美沙姫はいつもの様に火駕家の門の前に立っている門番に事情を説明した。

「はい! そういう事ならどうぞ、お入りください」

門番は重そうな門を開けると、美沙姫と楼を屋敷へと案内した。

「竜一様、美沙姫殿とそのお友達がお見えになりました」

「!! 入れ」

一瞬竜一の驚いたような慌てたような声が聞こえたが、それは2人共あまり気にしなかった。

「よっ、今日もお前の物を届けにきてやったぞ」

美沙姫はわざと『今日も』を強調して言った。

「ったく、今日は何だ? っと……その後ろの可愛らしいお嬢さんは?」

竜一は楼をじっと見つめた。

その視線が怪しく感じたのか、美沙姫は楼を庇うように一歩前へ出た。

「えっと……私、美沙姫の友達で楼と言います。今日は竜一殿……の落し物を届けに来ました」

楼は財布を竜一に差し出した。

「それは! いや~、楼殿が拾ってくださっていたのですか! ありがとうございます」

竜一は楼に向かって丁寧に礼をすると、財布を受け取った。

「楼! 折角だ、かりとして何かおごってもらえ!」

「え~!? でっ……でも……」

いくら財布を拾って届けたとはいえ、名家の者におごってもらうというのは気が引けるらしい。

「楼殿、遠慮はいりません。俺にできることなら、何でもいたします」

「そうだな~、それじゃぁ帰りの荷物持ちに洗濯風呂沸かしに……あ! 人参を買ってくれるか?」

「美沙姫! アンタには言ってないでしょ!」

楼は美沙姫にでこピンした。

「やっぱりいいですよ、当然のことをしたまでですし……」

「そうですか……」

竜一は少し残念そうな顔をした。

「折角だから茶でもおごってもらえばいいのに……。お! 楼っ、帰るぞ! そろそろ稽古の時間だ!」

「えぇ!? 私、関係ないのにぃ!!」

美沙姫は楼の腕を掴むと、竜一の部屋から飛び出していった。

「美沙姫殿、楼殿~、さようなら~」