結ばれぬ2人 作者/白牙 ◆tr.t4dJfuU

°o+0。*4日目 過去*。0+o °



「何年か前、私がまだ幼かった頃は彗星家は姉が継ぐことになっていました。ですが私の超能力が発見され、彗星家次期当主は私になったのです。それからというもの、何の力も持たない平凡な姉は彗星家の者や世間から蔑まれてしまった。そんなある日、姉は突然家を飛び出して行ってしまったのです。そして各地から差別を受け、苦しんでいる人々を集め、黒の一族を作ったのです……」


綺羅は瞳に涙をためて話した。


澄んだ水色の大きな瞳が細められ、大粒の涙がポタポタと零れ落ちた。


「綺羅……」


竜一はそっと綺羅の肩を抱いた。


「……あれ?」


美沙姫は何だかモヤモヤした感じがした。


「ん? どうした、美沙姫」


「あ……いや、何でもない」



美沙姫は顎に手を当てて今のモヤッとした感じのことについて考え始めた。


「何だったのだろうか……?」



同じ頃、燈霊山の頂上の木の上に人影があった。




「クフフ……私は人の心を操れる……さぁさぁ、楽しい楽しいお人形劇の始まり始まり……」



°o+0。*5日目 2人の剣*。0+o °



「今の話! 聞いたわよぉ!!」


3人の後ろで、砂利を踏む音と少女の声がした。


「……楼! 竜二!」


そこにいたのは、腰に手を当て、ふんぞり返っている楼と、日の丸扇子を楼に向かってパタパタと振っている竜二であった。


「黒の一族とやらをぶっ飛ばすんでしょう! だったら私達も参加するわ!」


楼と竜二は腰に巻きつけてある布の中から、それぞれ何かを取り出した。


「それは……!」


美沙姫は思わず声を上げた。


布の中から2人の手によって滑る様に取り出された物は、剣だった。


「私の父さんが徹夜で作ってくれた物よ! どう? 驚いたでしょ!」


楼は得意げに自らの剣をずいっと前に出した。


「そうか、楼の父上殿は鍛冶屋だったからな」


美沙姫はふむふむと頷いた。


「その通り! 特殊な鉱石と鋼を絶妙なバランスで合成させたこの町1番の剣よ!」


「楼ちゃん、それ言いすぎ……」


父自慢をする楼の肩を、竜二はポンと叩いた。


「むっ……。まぁいいわ! この剣の名は雷華烈晶! 雷の鉱石を使い、作られた剣よ!」


「これは水呼氷天。水の鉱石を使ってるんだ」


楼の自慢するような紹介とは対照的に、竜二の剣の紹介はあっさりとしたものだ。


「それで、お前達。技とかは使えるのか?」


「「へ??」」


竜一の問いかけに、楼と竜二はほぼ同時に目を丸くした。



「使えないようだな……」


「「……はい」」