結ばれぬ2人 作者/白牙 ◆tr.t4dJfuU

0 o °〇†第25日目 いよいよ……† ○ ゜ o 0
「よし、それじゃぁ美沙姫! 行ってらっしゃいっ」
楼は美沙姫の背中を押して、竜一の家の門前へと促す。
「うん。行ってくる」
美沙姫は深く頷くと、門へと向かっていった。
門番に用件を言うと、竜一の自室へ案内される。
「竜一様、美沙姫さんがいらっしゃいました~」
「どうぞ」
ガラリと扉を開け、美沙姫は部屋へと入った。
「りゅ……竜一!」
「美沙姫殿、どうかしたのか?」
美沙姫の顔はすでに赤くなっている。
やはり本人を目の前にすると、緊張するものだった。
「竜一! これ、受け取ってくれ!!」
美沙姫は薔薇の花束を竜一に差し出した。
だが……。
「これ……は?」
「え?」
花束の薔薇は、いつの間にかそこらに生えている雑草に変わっていた。
0 o °〇†第26日目 憎しみ† ○ ゜ o 0
「薔薇が……雑草に!!?」
美沙姫は花束を思わず床に落としてしまった。
「これは……。あ、綺羅!!」
竜一は、驚いた顔で言った。
扉を開けて入ってきたのは綺羅だった。
手には美しい薔薇の花が握られている。
「離れて……美沙姫……」
「え?」
綺羅の手はわずかに震えている。
「離れなさいっっ!!!」
「う……わっ……」
綺羅が怒鳴った途端、美沙姫の体は空中に投げ出された。
「綺羅! 何をするんだ!? やめろっ」
「止めないで! 竜一!! コイツに……私の苦しみを味合わせてやる!!」
綺羅は完璧に怒っていた。いや、怒っているというよりは何かを憎んでいる、という感じだ。
「私は……いつも辛かった! 竜一がコイツに会いに行くといつも帰りは遅くて私は1人になる! 許婚である私を置いてこんな女に会いに行くなんて許さない! それに火駕家にとってコイツは宿敵! 倒すべき存在っ! 竜一ができないのなら私がやるんだぁぁ!!」
「綺羅! やめろっ、やめるんだ!!」
綺羅は竜一が止めるのも聞かなかった。
握られていた薔薇がパサパサと音を立てて落ちる。
「ぅ……あぁぁああ!!」
綺羅の超能力によって、美沙姫の手足が引っ張られた。
ビリビリと音を立て、着物が千切れていった。
「今の私にとってお前は操り人形……。本当はすぐ楽にしてあげてもいいんだけど遊んであげるわ!!」
「あぁぁあああああぁあ!!!」
美沙姫はあまりの痛みに叫んだ。
だが綺羅はやめようとはしない。
今や美沙姫の叫び声は綺羅の力を掻き立てるものでしかなかった。

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