結ばれぬ2人 作者/白牙 ◆tr.t4dJfuU

0 o °〇†第13日目 竜二† ○ ゜ o 0



「美沙姫ぃ~、もう無理だって!」

「まだまだぁ! 今日は月に1回のタイムサービスなんだから!」

国のはずれにあるものの、何かと賑わっている隣町。

美沙姫と楼は馬車を乗り継ぎ、この町に来ていた。

この町で1番大きな八百屋のタイムサービスのためにだけ。

なぜこの時代にタイムサービスが、と楼は思ったが、あえて口にしなかった。

「よし! 次は大根っ」

「そんなに買っても帰りが大変なだけだよ~!」

次のタイムサービスに意気込む美沙姫を、楼は必死に止める。

だが、美沙姫はそんなことは聞かず、再び八百屋に向かって歩いていく。

そんな2人を、1人の男がじっと見つめていた。

「あれが竜一の敵? 確か藤鷹 美沙姫……」

***

「よ~し! 買った買った~!」

「重い……」

美沙姫はたくさんの商品を抱え、勝ち誇ったような顔をしていた。

美沙姫は意外と後先読まずに物事を進めてしまうのだった。

「美沙姫ちゃ~ん!」

「え?」

2人の前に、突然栗色の髪をした青い瞳の少年が飛び出してきた。

大人びているものの、まだ少し幼さが残るその顔からは、美沙姫と同じ位の年齢であることがわかる。

「君が美沙姫ちゃん~? 俺は……」

「私が美沙姫だ」

少年の目は楼を真っ直ぐに見ていた。

それに気付いた美沙姫がすかさず少年の言葉を遮った。

「っと、そちらが美沙姫ちゃんか! 俺は竜二。竜一の友達だ!」

「竜一の友達?」

話を聞くと、竜二もこのタイムサービスに来たのだという。

「偶然だな! お主もタイムサービスのために来のか!」

「あぁ! お、そうだ! 美沙姫ちゃん、こっち!!」

竜二は美沙姫の腕を掴むと、人気の無い所へと連れ込んだ。

「何だ? 何かあるのか?」

美沙姫は相当鈍いのか、飄々とした表情のままだ。

「いや、その……さ、俺……実は、美沙姫ちゃんのことが……」

竜二は少々顔を赤らめた。

「私がどうかしたか? というかお前、熱でもあるのか?」

美沙姫は相当所ではなく、超が付くほど鈍かった。

「……いや、冗談。美沙姫ちゃん、竜一の事が好きなんだろ? よければお手伝いしようかな~って」

竜二は美沙姫にこの手の冗談は通じないと悟ったのか、本題に切り出した。

「好き……私が!? 竜一をっ? そういえば……なんだかアイツを見ると胸が高鳴ったり……」

「それが恋っていうんだよ! そうか~、青春だな。若いっていいね~」

竜二は腕組みをすると、うんうんと頷いた。

「そうか、あれは恋というのか……。ということは……初・恋!!!!!!!??」

美沙姫は頭上に雷でも落ちたかのような顔をした。

いくら美沙姫でも、初恋などということを考えたりすれば取り乱すらしい。

数10秒間、美沙姫は妙な行動をしたり、奇声を発していた。

ちなみに、この妙な行動をしたり奇声を発したりする状態は、後に"あわあわモード"と呼ばれることとなった。



0 o °〇†第14日目 竜一の許婚† ○ ゜ o 0



「まぁ……落ち着け。っと……竜一には許婚が居るんだっけ。確か……彗星 綺羅! かなり美人でしかも強いから、気をつけたほうがいいかもな~」

「強いぃ……? はっ! 笑わせる! この藤鷹一族16代目、藤鷹 美沙姫を負かせる事ができるのは、この世界に1人! 竜一だけだ! はっはっはっは~はっ!!」

美沙姫は『初恋』という言葉で以上にテンションが上がった。

「ふぅん……なら、戦ってみる?」

「知っているのか!? その綺羅という娘を!!?」

竜二は綺羅の住所を記したメモ用紙を取り出した。

「実は知ってるんだよね~」

竜二はニヤリと笑う。

「そうとなれば話が早い! 楼! すぐに帰るぞっ!」

「えっ? ちょっと待ってよ~!!」

***

「え~っと……ここの角を曲がってぇ……」

美沙姫は例のメモ用紙を持って綺羅の家を探していた。

「お! ここかっ」

美沙姫の家よりかは新しく見えるが、少し古びた家。

壁には『彗星』と書かれた表札がつけられている。

「よし! 綺羅さん! 居ますかぁ~??」

美沙姫は強めにノックした。

だが、返事所か物音1つ聞こえない。

「誰も居ない……。お、これは……」

玄関の扉の横に置かれたベンチに、置書きが残されていた。

「只今彗星 綺羅は、火駕 竜一さんの家へと出かけております。お越しの方は、失礼いたしますが再度お越しください、か。しょーがない。竜一の家に行くか」

大きな溜め息を1つ吐くと、美沙姫は竜一の家へと向かった。