結ばれぬ2人 作者/白牙 ◆tr.t4dJfuU

0 o °〇†第15日目 綺羅† ○ ゜ o 0
しばらく歩くと、いつもの様に2人の門番が立っている竜一の家の門が見えた。
「あの~、竜一さんに会いに来たんですけど……」
「これはこれは美沙姫殿! それでは、ご案内いたします」
ここの門番は用件なんかを聞かずに屋敷に入れてくれるので、美沙姫は心底大助かりしている。
それもこれも、美沙姫が藤鷹一族の娘という事もあるのだろう。
いつも通り、『竜一の部屋』と書かれた札のぶら下がった扉を案内してきた門番がノックし、竜一の返事が返ってきた。
「失礼しまーす」
「何か……用か?」
部屋に入ると、いかにも不機嫌そうな顔をしている竜一が居た。
その隣には青い瞳の、花の様な美しさの少女がちょこんと行儀良く座っていた。
しかも、ここらでは見ない服を着ている。
学生服というのだろうか、胸元に赤いリボンが着いている。
「竜一……この方は……?」
少女は風の様な澄んだ、流れるような声で言った。
「綺羅、この方は藤鷹 美沙姫殿だ。美沙姫殿、この方は彗星 綺羅。俺の許婚だ」
「綺羅……。っこの弱弱しいヤツがぁああ!!!???」
美沙姫は思わず大声で叫んだ。
綺羅の腕や足は細く、とても強そうには見えない。
「……むぅ、失礼ですぅ……」
綺羅は、ムッと顔をしかめた。
「まぁまぁ、能ある鷹は爪を隠すとかなんとか言うじゃないか。そうだ! 美沙姫殿、綺羅と一戦交えないか?」
「望むところだ! 受けてやるさっ!!」
第16話 ~本当の目的~
決闘の場所はあの火駕家訓練場。
立会人は竜一と真知だ。
「よし……捻ってあーしてこーしてやるぅ」
美沙姫は何かを捻るような手をした。
「……よろしくお願いします」
綺羅はというと、ぺこりと礼儀正しくお辞儀をした。
「それでは、勝負、はじめっ!!」
真知の合図で美沙姫は剣を構えた。
だが、綺羅は身動き1つしない。
「……何もしてこないなら、こちらから行かせてもらうっ!!」
美沙姫は一直線に綺羅目掛けて走り出した。
「んなっ?」
一瞬、光と空気が凝縮されたかのように思えた。
次の瞬間、美沙姫は見事に宙を舞っていた。
「ぬおぉっ!?」
綺羅が手を上に上げると、一気に振り下げた。
それにつられるようにして、美沙姫の身体が床に叩きつけられた。
「っく……! 何を……何をした!!?」
美沙姫は牙をむいた。
だが、綺羅は全く表情を見せない。
「私は神の子と呼ばれてるわ。それは……超能力が使えるから!」
綺羅が言った途端、床に転がっている美沙姫の上に、何か大きく重い物が落ちてきたような衝撃が走った。
だが、身体の上には何も無い。
「こっれが……超……能力っ……か。だが……」
約1秒後、キィンという音が響いた。
「なっ……私の超能力を跳ね返した!? しかも……自分の力で!」
何と、美沙姫は綺羅の超能力を剣一本と自分の力で跳ね返したのだ。
「信じられない! 私の力は……物理攻撃では跳ね返せないはず!」
「この風鈴丸は風を司る。その力は代々風の神……風神を信じ、敬ってきた藤鷹一族が使ってこそ充分に発揮される! 風なら、超能力にも負けない! やはり私に力では勝てないようだな!」
最後の一言が、余計だった。
あの『勝てない』という言葉を聞いた綺羅の目はつりあがり、怒りが見て取れた。
「……私は……負けない! あんたみたいな人に……負けたりはしないぃぃいっっ!!!!」
「ヒュー……。やっと来たか!」
綺羅が手を動かすたびに、壁や床が凹み、ヒビが入る。
美沙姫はそれを避けながら、なんとか綺羅に近づいていった。
「これで……最後ぉぉっっ!!」
ガキンッという鈍い音がした。
美沙姫は綺羅とまだ対峙しているように見えた。
だが、美沙姫の剣は、綺羅の肩に入り、綺羅の手は美沙姫の腹部を完璧に貫いていた。
2つ、ドサッという音がして、2人は倒れこんだ。
数秒の静寂、慌てる人々。
2人は担架に乗せられて運ばれていった。

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