結ばれぬ2人 作者/白牙 ◆tr.t4dJfuU

0 o °〇†番外編 美沙姫の呼び方† ○ ゜ o 0
ある日、美沙姫は竜一の家へと向かっていた。
理由は、竜一の落し物を発見したから。
財布の次は手ぬぐい。
竜一はなぜか忘れ物や落し物が多いらしい。
「ったく……なぜ私がこんなにアイツの家に……」
文句を言いながらも、美沙姫は竜一の家へと向かう。
これも恋心からか。美沙姫の顔は少し赤くなっている。
「すいません、竜一さん居ますか?」
「美沙姫さん! 居ますよ、ご案内します」
もうすっかり門番とはなじんでいる。
案内してもらうついでに、世間話なんかもしょっちゅうしている。
なので、広い屋敷の中を歩く時間も、やけに短く感じるのであった。
「竜一様、美沙姫さんがいらっしゃいました」
「おぉ、入れ」
がらりと木製の扉を開け、美沙姫は室内へと足を運んだ。
「美沙姫殿! 今日はどうなさったのですか?」
「どうもこうもあるか! これを落しておったぞ!」
美沙姫は竜一の手ぬぐいを投げ渡した。
「これはこれは、剣を届けてくれたりと、美沙姫殿は親切だな!」
「……なぁ、この前美沙姫『殿』はやめろと、言わなかったか」
確かに美沙姫はそう言っていた。
だが、竜一は一時は美沙姫、と呼んでいたものの、最近になって再び『殿』をつけて呼び出したのだ。
「いや、やっぱりこちらが落ち着かなくてね。昔から客人などには『殿』をつけて呼ぶように、と教育されていたのでな。これからも、美沙姫殿と呼ばせてもらうよ」
「ったく……わかったよ。竜一」
そういうわけで、これからも美沙姫は『美沙姫殿』と呼ばれることになるのだった。
0 o °〇†番外編 楼と美沙姫†〇°o 0
あれから3日後―・・・。
「・・・美沙姫・・・?」
いつものように美沙姫が縁側で涼んでいると、聞き覚えのある声が聞こえた。
「・・・楼!」
声の主は、楼だ。
楼は、怯えたような瞳で美沙姫を見ている。
「・・・あの、もう・・・怒ってない・・・?」
楼は小さな声で聞いた。
楼は、あの時の喧嘩のことを謝りにきたのだ。
「・・・あぁ!あのことか!・・・怒ってないよ。だから、そんな眼をするな。あれは・・・まぁ、私のほうが悪かったのだからな」
美沙姫は、にっこりと笑って言った。
「本当・・・?」
「本当だ」
楼は、俯くと、肩を震わせた。
「ふぇ~! みぃさぁきぃ~!」
「うわ! 楼! ちょっ……こんなところで抱きつくな! 人にっ……見られる!」
楼は美沙姫に抱きつくと、嗚咽を上げた。
ずっと悩んでいたのだろう。時折"ごめんなさい"という言葉も漏らしている。
「……あ」
「あ?」
家の前の道の方から、声が聞こえた。
「……りゅー……いち……」
何と、そこに居たのは竜一だった。
「……お取り込み中だったか? というより……美沙姫、同性愛はダメだぞ」
「ち……違う! これにはっ……ワケが!!」
「まぁいい。楼殿だったら信用できるしな」
「っ……美沙姫っ……。あの……」
楼は顔を赤くして、美沙姫を見つめた。
「ふっ……不束者ですが……よろしくお願いします!」
「ばっかああああああああああ!!!!」

小説大会受賞作品
スポンサード リンク