*人魚姫* 作者/ひさこ ◆tON3cp20n

*8*



え、伝説の飛び込みだけじゃないってどういう事だよ・・・?

先生が美波の泳ぎを見ながら言う。

「あのバタフライを見てみろ。バタフライも水しぶきがほとんど上がっていない。普通あんな風に泳げないだろ・・・・」

あ、そうか。

だから蝶の様に見えたんだ・・・。

美波が泳ぎ終わり、荒い息づかいをしている。

美波、君は一体何なんだ・・・?

先生は無言でプールから立ち去り、俺と美波だけが残された。

「美波、さっきのってどういう意味?」

「あ、そのぉ・・・・」

美波はモゴモゴと小さく喋る。

聞こえん。

「ね、どういう意味?」

俺がプールへ飛び込み美波へ近寄ると、

「むぎょっ!!」

むぎょ?

「え、美波・・・どうした?」

「どうしたって・・・・だからぁ・・・、顔が近いのっ!!」

あ、やべ。

そんな近かったか。

「悪ぃ。だからってむぎょっ!!はないだろ・・・」

遠のきながら俺が言うと、

あれ?

美波の顔、超赤くね?

「美波・・・・?」

「えっとぉ・・・、その・・・・あたし、信用した人が側にいないと泳げないの!!綺麗な泳ぎ方ができないの!!!そういうことだよっ!!」

信用した人。

って俺か?!

「あ、うん、え、そうだったんだ。」

俺が戸惑っていると美波は走って出ていってしまった。

てか何で顔赤かったんだよ!!

え、えぇ、えぇぇ?!

信用した人とは?

=俺のこと。

何故、美波の顔が赤くなったか?

=俺の顔が近かったから。

何だこの方程式!!

あー、もう!!

何なんだ、この気持ち・・・。

そして何なんだ、島津美波・・・。

頭がパンクしそう。