*人魚姫* 作者/ひさこ ◆tON3cp20n

*15*
30分ほどで、バスは合宿場へ着いた。
「っしゃぁー!!」
これ、俺の日課。
部活をやる前に気合いを入れる。
美波にビビられたけど。
さぁ、やるぞ。
着替えて、キャップの上からゴーグルをはめる。
飛び込み台を蹴り、水中へ入る。
ジャバンッ・・・―――
い・・・ってぇ。
飛び込み失敗した・・・
身体がじんじんする。
そのせいで、足や手が思う様に動かない。
くそっ・・・
無我夢中で泳ぐ。
ターンして、残り25メートル。
だんだんと身体が疲れてきているのが分かった。
今日はついてない・・・・。
こんなに早くバテるなんて。
でもあと5メートル・・・。
そう思ったとき、水を思いっきり飲んだ。
ッ・・・!!
塩素の嫌な味が口に広がった。
水中でむせ、また水を飲む。
そんなんで、やっとゴールした。
「ゲェッホ・・・ゴホッ・・・」
咳が何度しても収まらない。
「橋本・・・タイム・・・・ゴホッ」
やっと言い、橋本を見上げると・・・
あれ?
何か・・・様子ちがくね?
まさか・・・
「はっ、早く見せろよっ!」
橋本の手からストップウォッチを奪い、見る。
・・・俺は愕然とした。
今までにとったことの無いような遅すぎるタイム。
美波や、他の部員や、先生の視線が・・・
突き刺さる。

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