*人魚姫* 作者/ひさこ ◆tON3cp20n

*16*



「んだよ・・・何だよっ!!」

俺は怒鳴り、水面を叩く。

部員のみんながビクリとしたのが分かった。

でも無視し、乱暴に水から上がって走ってシャワー室へいった。

シャワーを浴びていると、みんなが練習を始めた音が聞こえた。

いつもより勢いねぇじゃん・・・・

水の音や、みんなの声から嫌になるほど分かった。

俺だって、

俺だって・・・

こんなタイム嫌だよ。

飛び込みが失敗したし、途中で水を飲んだし・・・

こんな風に言い訳をする自分にも腹が立つ。

俺はシャワー室の床を思い切り蹴った。



シャワーを浴びて出ると、辺りがオレンジ色に染まっていた。

どうやら長いことシャワー室にいたらしい。

自動販売機で水を買い、ベンチに座って飲んでいると向こうから誰かがやって来るのが見えた。

俺は視力が悪いから、そいつが俺の横に座るまで誰か分からなかった。

「どうしたの、今日のタイム。涼真らしくなかったよ?」

えるが言う。

その言葉には優しさが感じられた。

えるの言葉なら、今の俺は素直に受け止められる気がする・・・。

俺は水を一口飲んだ。