*人魚姫* 作者/ひさこ ◆tON3cp20n

*18*
涼真がえると話していたとき、美波は合宿場の会議室にいた。
勉強がしたくて探していたら会議室が見つかった。
会議室は誰も来ないみたいだし、勉強にはもってこいって思ったから。
適当に机を選び、座る。
「えぇっと・・・y=5x-1だからぁ・・・」
ブツブツと言いながらワークとにらめっこしていると、会議室のドアが空いた。
美波は驚いて、ドアを見る。
「奈々ちゃん。」
そこに立っていたのは、橋本奈々だった。
奈々は明日の練習メニューを組もうと思って、会議室に来たみたいだった。
少し驚いた様な顔をしてから、美波と反対側の席へ腰掛けた。
しばしの沈黙・・・
気まずいなぁ・・・。
美波は何か話しかけようと思ったけど、いい言葉が見つからない。
そんな中、先に口を開いたのは奈々だった。
「奈々の気持ち、知ってるの?」
「え?」
美波は突然聞かれたから、何のことか分からなかった。
「知らないわけ?」
奈々の苛立ちのこもった言葉に少し傷ついた。
「う、うん・・・ごめ・・・・」
「あたし」
美波が謝る前に奈々が口を挟む。
「涼真のこと好きなんだよ。」
え・・・?
声に出せなかった。
奈々の言葉が、脳の中で繰り返される。
涼真のことが、好き。
あたしの気持ちは・・・どうなの?
美波は自分で自分に問いかける。
正直、涼真への気持ちが分からなかった。
初恋なんてまだだし、恋をするとどんな気持ちになるのかも知らなかった。
涼真が近くに来るとドキドキするし、話すだけで顔が赤くなる。
部活に来てたら嬉しいし、元気が無いと不安になる。
これが、恋なのかな・・・
そうだとしたら、もしそうだとしたら、
あたしはどうすればいいの?

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