風使いブーケ~2つの一族の物語 作者/ミル

*10*



もう夕方なのに何でこんな暑いんだよ・・・・

あぁうっとーしい。

ぐったりしながら図書館への道を歩いていた。

図書館につくと、冷たい空気が俺を包み込む。

至福の時。

俺は目的の本を探す事に取りかかる。

水泳について・・・あった!

手に取ってみると重みがあり、かなり前の物の様だ。

[伝説]については・・・・

こう、書かれてあった。

[伝説のフォーム]と同じく、天性の才能の持ち主にしか実行できない。

[伝説]は、飛び込みからバタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、クロール、ターンと全ての技において完璧。

だがしかし、信用した人の前でしか綺麗な泳ぎができないのも特徴の一つ。

その理由は[伝説]の持ち主が難しい環境で育ち、人を完全に信じられない事が原因と考えられる。

よって[伝説]の泳ぎが公に発表された事がないため、知ってる人も見た人もごくわずかだという。

・・・・とのことだった。

俺はある言葉がひっかかり、もう一度読み直す。

―その理由は[伝説]の持ち主が難しい環境で育ち、人を完全に信じられない事が原因と考えられる。―――

難しい環境・・・?

美波もいろいろあったのか・・・・?

だから信じた人の前でしか泳げないとか言ってたのか・・・・・?

何だよ、難しい環境って!!

くっそ・・・・

ちゃんと言ってくれればいいのに・・・・・

もっと頼ってもらいてぇよ・・・・

美波・・・。

俺は図書館の片隅でうずくまった。