俺の兄さん  シンジ /作



10話 風邪って奴



「・・・や・・・零夜っ?」

どこか遠くから兄さんの声が聞こえてきた。

(・・・朝だ)

そう思ったのはいいとして、やけに体が重い。

だるい。
寒気がする。
あぁ。風邪って奴だ。
俺はそう悟った。

「・・・零夜?」

兄さんの声が意識の遠くで聞こえた。

「・・・ん・・・」

返事をしようと思ったのだが上手く声が出ない。

「零夜っ。」

兄さんはそういってドアノブを回した。
が、いつものとおり開かない。

「・・・零夜っ。起きてるの?」

兄さんの心配をしています声が聞こえる。
返事をしたほうがいいと思ったのだが上手く声が出ない。

兄さんは心配症だから俺が生きているのを確認しないと部屋の前から動かない。
しかし兄さんの足音は遠ざかった。

仕方ない。起き上がるか。
だるい体を俺は起き上がらせて頭痛に耐えながら自分のドアノブに手をかけて鍵を開ける。
それとほぼ同時に俺の部屋の窓が開く。
俺は窓を背にしていたから振り向いた。

(・・・)

俺の部屋は二階にある。
つまり隣の部屋からどうにかして窓へ。
めんどくさい奴だ。
率直、そう思った。

「・・・零夜?大丈夫?」

兄さんは俺のそばに来た。
そばに来た兄さんはおでこに大きなバンソコウをつけていた。

「・・・」

兄さんはそのまま俺のおでこに手を当てた。

「・・・熱い。頭痛くない?ちょっと待っててね。」

兄さんはそういって部屋から出て行った。
そのまま俺はその場に座りこんだ。
何も考える気にならない。
と、いうか頭がボーっとして上手く考えられない。

「ほら、熱はかろ。」

いつの間にか兄さんが隣に居た。
頭が回らない。