俺の兄さん シンジ /作

2章 僕の弟 / プロローグ 僕の『嘘』
僕は時々自分に嘘をつく。
さっきも嘘をついた。
僕には弟が居る。
僕は弟が好きで弟は僕の事が嫌いなのかもしれない。
僕の前では母さんが死んで、父さんがおかしくなって彼が不登校になってからは彼は一度も笑ってない。
そんな弟の事を好きになるだなんておかしいのかもしれないけれど好きになってしまったことは事実で。
それをブラコンと呼んだり異常者と呼んだりするのかもしれないけれど僕はそれでも良い。
あまり自分に嘘をつくのが好きじゃないからそんなこと言えるのかもしれない。けれど僕はそんなところだけがはっきりしている。そんな気はした。
本題を元に戻すとつまりは彼は僕の前に自分から現れない。
ずっと部屋にこもっていて僕の前に自ら現れない。
けれど今は彼が風邪を引いていて寝込んでいるから僕は彼の前に居る事が出来る。
たった一人の直家族なのに彼は俺とは親しくしてくれないんだ。
彼は彼で色々とあるけれど僕は少しでも彼のそばにいたい。そうおもう。
そう思うからこそ嘘をついた。
「早く元気になれよ。」
とは言わなかったけれど僕は彼の頭をなでた。
彼は特に意味を感じないかもしれないけれど僕は彼にそんな気持ちを込めてなでた。
そんなの元気になってほしい。のは当たり前のはずなのに僕ははっきり言ってこのまま寝込んでて欲しい。
彼が苦しんでいるのは嫌だけれど彼が近くに居ないのもいやだ。
勉強とか部活とかもしなくちゃいけないけれど、それでも今ここにある時間がいとおしくて。
勉強とか部活とか受験とかそんな事に努力するくらいだったら彼を笑わせる努力をしたい。そんな事さえ思った。
だからさっき
『嘘』
をついた。

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