俺の兄さん シンジ /作

9話 僕の『夢鬱』
「ねぇ。兄さん?」
彼は言った。
僕はそこではっとなった。
どうやらぼーっとしていたようだ。
「あ・・・ごめんね。」
僕がそう言うと、彼は少し心配そうな顔をした。
「兄さん・・・考え事?らしくない・・・」
僕はそう言われて少しの間、黙ってしまった。
(確かに・・・らしくない。)
僕は自分がどうしてしまったのか、解らなかった。
それと・・・何か、いつもと違う。
僕は彼から、自然と目をそむけてしまっている気がして・・・。
胸の辺りがもやもや。だけどそのもやもやは熱い。そんな感じ。
(・・・どうしたんだろう・・・)
そんなことを考えていたせいかまた、彼に言われる。
「・・・ほんとにどうしちゃったの?熱でもあるんじゃない?兄さんはいつも頑張りすぎなんだよ・・・。」
確かにさっきっから頭がぼぅっとする。』妙に顔が熱い。
「・・・そんなこと無いよ。」
僕はそう言ったが、妙な事に気づく。
(・・・零夜ってこんなんだったっけ?)
「・・・う・・・ん。」
一気に目の前が明るくなってくる。
(・・・夢か・・・)
僕は即座にそう認識すると、そこから起き上がる。
目覚まし時計はまだ5時ちょっとすぎ。
・・・それにしても僕は・・・あんな夢を見るなんて。相当疲れているのだろうか?
そうなのかどうなのか知らないけれど、思考回路がどこかで止まっている。
こういうのを世間では上の空と言うらしいが・・・
・・・上の空?
何それ。まるで僕が恋わずらい。みたいじゃないか。
・・・
恋わずらい?
僕は昔から・・・
けれど・・・僕はこんな気持ちになったのが初めて・・・だった。
自然と、さっきの、胸の辺りが熱く、もやっと・・・。
・・・どうしちゃったんだろう。僕は・・・

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