俺の兄さん シンジ /作

7話 僕の『叔母さん』 中編
「こんにちは。叔母さん。」
階段を下りていくと叔母さんがたくさんの荷物を重そうに持っていた。横に彼も居る。
「持つよ。」
僕はそう言って叔母さんの手提げ袋を持った。中からちらりと白い熊が顔を出している。
(一番軽いの持っちゃったかな・・・?)
僕はそう思いながら叔母さんをリビングへ案内する・・・と、言っても叔母さんは月に何度か来ているからフォークがキッチンのどこにあるのかくらい分かる。
「ごめんね・・・持たせちゃって。」
叔母さんはそう言った。
叔母さんは母さんの姉だ。
けっこう叔母さんは母さんと違って躊躇な人だ。母さんは少し押しの強い人だった。
けれど目の色は母さんだ。
透き通るような何処を見ているのか分からないような瞳をしている。
そういえば彼も同じ瞳をしている。
そんなことを思ってふと、後ろを見る。
彼は今にも何か言いたそうな顔をしている。
(・・・?)
何を言いたいのか解らないがとにかく、僕らはリビングに入っていった。
叔母さんは重そうな荷物をソファーの横に置いた。そしてその荷物の横に僕が持っていた手提げを置いた。
かわいらしい熊がつぶらな瞳で僕を見ていた。
僕が座ると彼は今にも何か言いたそうな口を開いた。
「今回はどこに?」
叔母さんは色々なところを旅しながら、仕事をしている。小説家らしい。
どうやらその他にも仕事をしているらしいが。
叔母さんはにっこり微笑むと口を開いた。
「北海道。」
それを聞いた彼は瞳を輝かせて叔母さんに聞いた。
「今度はどんなのを?」
そんな彼を見るのは久し振りだ。瞳が輝いているだなんて。
―――ずるい。
僕はそんなことを思ってしまった。
叔母さんにまで嫉妬心を抱くだなんて。僕って本当に・・・

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