俺の兄さん  シンジ /作



12話 見つけてはいけないピ-ス



・・・夢?いや、忘れたはずの記憶だ。
いつの記憶だろう。


「零夜っ。ちゃんとご飯食べなきゃ良くならないよ。」

兄さんはそう言った。

「・・・いらない。」

俺はそう言った。

「聖夜ぁっ。母さん仕事に行くから零夜の事を見ててね。あと、ご飯食べたら薬、ちゃんと飲みなさいよーっ。」

母さんの声だ。
今の兄さんの声よりも少しだけ高い声。
兄さんは声が小学生の頃からぜんぜん変わってないから。

一言余計かもしれないけれど身長も低い。
俺も低いけど。


それは置いておいて。この記憶はまだ先があるみたいだった。
俺は小さい頃の記憶があまり無い。
何でかなんて俺は知らないし、困らないから良いんだ。
けれどこうやって思い出す記憶にはいいことが無い。
だからってこの思い出しかけた記憶のかけらを俺は最後まで見ないと目が覚めない。
自覚はあるんだけど。
だから逆に鑑賞してやる。


「ほら、零夜。ご飯食べないと薬飲めないだろ。」

兄さんは俺に向ってそう言った後「あっ!」と言って俺の部屋を騒がしく出て行った。

(何しに行ったんだろう。)

俺は思った。きっとこの時の俺も思っただろう。
少しして兄さんが戻ってくる。

「プリン。なかった。零夜はプリン、好きだろ。」

俺はうなずいた。あぁ。好物だ。

「じゃあ買ってくるね。零夜は大人しくしてろよ。」

俺は仕方なく・・・なのか、嫌そうにうなずいた。
兄さんは俺の部屋を出て行きながら「早く帰ってくるからーっ。」と、言った。

・・・

しかし少しすると思いっきりキキーーッ。ドンッ。と、音がした。
俺はそのままベットから起き上がって窓を開けた。
乗り出して家の目の前の悲惨な状況を目にしてしまった。

そこには血の海と赤く染まった兄さんが居た。

「兄さんッッッッッッ!」