俺の兄さん シンジ /作

14話 これって本能?それとも――
俺はどうしてここに居るんだろう。
時々そう思う。
どうしてそんな事を思うのかなんて自分ですら分からないけれどきっとここに居る理由をはっきりと分かっている人間なんて居ないんじゃないか。
俺は自分にそう言った。
俺はあの夢のことを兄さんに聞いたら兄さんは自分が悪かったんだ。僕の不注意だ。とだけ言った。
兄さんはいつもなんでも自分のせいにする癖がある。
それを思うとどうしてこんな俺がここに居るのか。と、自分に聞いてしまう。
そんな愚かで哀れな自問自答を繰り返している俺のベットの横にはすやすやと床にそのまま仰向けで寝ている兄さんが居る。
すっかり夜が深くなっている事に俺は気づいた。
なんだかんだで兄さんは今日一日俺の世話で忙しかったから疲れているのだろう。俺はそう悟った。
いくら初夏だとは言え夜は冷える。
そこで寝ている兄さんまでもが風邪を引いたらどうしよう。って俺は思ったから兄さんに何か掛けてあげようかなっていう気になった。
こんな格好じゃ冷えるだろ。
でも何を掛けようかな。そんなことを思いながら兄さんの顔を覗き込む。
おでこのバンソコウは気になったが綺麗な兄さんの寝顔は女の子のようだった。
母さんに似ている兄さんの顔はすらっとしていて綺麗でなんかすごく・・・
人の寝顔は起きている時よりも3歳も幼く見えるそうだ。
そのせいなのか兄さんがいつもの兄さんじゃないみたいに思えた。
このまま手を伸ばして触れてしまいたい。そういう衝動に駆られてしまって・・・自分の感情が、衝動が、自分のものとは思えなくなってしまって・・・
ベットから顔を出してもっと顔を近づけてしまう。
あと数センチ動けば兄さんに口付けが出来てしまいそうで――
・・・だめだ。何を考えているんだ。しっかりしろよ。俺・・・
そう自分に言って枕に顔を伏せる。
どうしたんだよ。俺!!

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