俺の兄さん シンジ /作

13話 やっと思い出したよ
「零夜ッッッ!!」
兄さんは俺の部屋に飛び込んできた。
兄さんは俺の頭を優しくなでながら「大丈夫?」とか「どうしたの?」と、聞いてきた。
けれど俺は何も答えられない。
あの鮮やかな赤が頭の中にこびりついていてはなれない。
俺の息は荒い。
頭がグチャグチャになっていてなにがなんだか理解がつかない。
あの赤のせいでなにも考えられない。
いや。何も考えたくない。
考え始めてしまったら何かを理解してしまいそうで――
けれど俺は兄さんを見て何かを理解した。
俺が兄さんを殺した
あぁ。そうだ。あの夢は知っている。あれは俺の記憶の一欠片だ。
俺が風邪を引いた時の・・・
そこまで何かを思い出すとあの痛みが襲ってきた。
けれど俺はその記憶から逃げるつもりなんて無い。
兄さんは俺が殺したも同然なんだ。
あの日兄さんは事故にあったんだ。
そのまま兄さんは救急車に乗った。
俺がその後見た兄さんには包帯が巻かれていた。
兄さんの身体は生きていたけれど心はあの事故のせいで・・・
けれど兄さんは生き返った。
今ここに居る。
それでも俺は兄さんを殺したのだから・・・
どうして俺はそんな記憶を忘れてしまったのだろう。
やっと思い出したよ。
その1ピースのせいで俺は記憶があやふやだったんだ。

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