俺の兄さん  シンジ /作



12話 僕の『真夏の夜と現』



「・・・えっと、あとは・・・あっ!ム・シ・ヨ・ケは~♪」

自分でもあほらしいと思いながら自作の歌を歌っていた。

「これでよし~♪あとは~あとは~明日を~待つだけだ~ね♪」

そう。明日は弟の零夜。彼と星を見に行くのだ。
彼はなかなか僕を誘ってどこかへ行くことは少ないのだが、彼は星が好きだからなんだかんだで一緒に行くことになった。

・・・一緒にどこか行くなんて久し振りだな・・・ほんとに。

昔も一回一緒に星を見に行った記憶がある。

数年前の記憶がほんの少しずつ鮮明によみがえる。

えっと・・・そうだ!そのときも夏だった。いや・・・真夏だった。

そのときはまだ母さんが居て。一緒に行けっていわれたんだっけ?

「うん。それで一緒に星を見に行ったんだ。・・・で、」

で。

見に行った。・・・それだけだっけ?

違う。と、まるでもう一人の自分が言っている。

星が手に届きそうで、星が特別好きって言うわけじゃないけれど「綺麗。」って思って。

そうだ。僕は初めて何かを綺麗って思えた気がしたんだ・・・