メイドと追っかけと職人と巫女と
作者/マッカナポスト

【第四十三話エピローグ】
その後、何の異常も無く保健室へ到着した拓夢。
しかし、どうしようもない胸の高鳴りは、留まる所を知らなかった。
【十分後、保健室にて】
唐突に開かれた扉と共に、大きな声があたり一面に響き渡る。
「拓夢!!」
「びっくりした……優ちゃんか」
「そうだよ!お前の優ちゃんだよ!?憶えてるか!?」
「いや、たかが風邪で記憶喪失に陥るなんて聞いたこと無いし、しかも優ちゃんは俺の優ちゃんじゃないよ……!」
しかし源とのちょっとしたトラブルを優大が知っていたらどうなっていた事か。背筋が凍る。
「今朝具合悪そうだったから、拓夢大丈夫かなと思ったら『保健室行った』なんて事聞いたからついつい……」
「ありがとね」遠慮がちに、しかし優大への最大限の愛を込めた一言だった。
「無理すんなよ?」
他愛も無い一言で、互いに笑いあう二人。
全ての失態を引っくるめても、この日は絶対に忘れない。
その姿は、真の『青春』を体で表しているようだった。
今日は、自分の義務は遂行できなかったけど、
最高で、
最悪な、
『青春の一ページ』だった。
なんて、青臭いか。
私の前を歩かないでください。私は、後についていかないかもしれません。
私の後ろを歩かないでください。私は、導かないかもしれません。
私と並んで歩き、私の友でいてください。
アルベール・カミュ

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