「知る・触れる」編 ~知るきっかけづくり~
【第6回】 『農業』を、知っていますか?
農家の人達を恰好悪いなあ~とか、将来の職業にしたくないなあ~なんて考える人はいますか?
実はとても恰好良いんですよ。農業は第1次産業で、国防の要の一つです。
国防には(諸説ありますが)食糧、情報、資源(土地)の3つの要素があります。
何も武力を持ったり専門部隊を組織し戦うことだけが国防ではありません。
食糧は、自国で足りないときは外国に頼ればいいですね。平和な時にはそれで問題ありません。
しかし、仲違いしたらどうなるでしょう。相手にNOと言われたらどんな条件も受け入れ土下座しなければなりません。
もし、土下座しても食糧を手に入れられなかったら、終わりです。
国内に作物を作れる土地を一切持たず、家に買い置きも一切無く、スーパー等に一切食糧が補充されず、たとえあっても手に入らないほど高価だったら、他国から直接武力攻撃されなくても、生きるのが『ただちに困難』になってしまいますね。
食糧について丁寧に考えることは、人が安心して生きるための根本です。
プロの農家さんは、畑の神様(自然)という非常に手厳しい存在を相手に商売をしています。
人間の器が大きくないとなかなかに難しいですよね。どんなに頑張っても心をこめても、根こそぎ駄目になることもあります。
小説で例えれば、情熱と長い思索の年月を経て完成に近づいてきた大事な作品を、読者の目に触れる以前に、全ページをビリビリ破られ目の前で捨て去られる、そんな無情を何度経験しようと、負けず、辞めず、再びゼロから作り直していく意欲・情熱を持ち続けられるでしょうか。かなりの人数が、ふるいにかかってしまうと思います。
木村さんや石井さんは、過去、何度も何度もそうした辛すぎる出来事を経験なさって、今の豊かな実りを実現しています。
踏まれても、踏まれても、信じる道をまた歩き出すことの意味や大切さを教えてくれますね。
なお、複雑にいくつもの流通組織が中間に入る仕組み等もあって、農家は『自然と勝負するリスクや頑張りの割に金銭的に報われない職業』イメージのままなのが少し残念です。
戦後日本は、諸外国との平和を保つために、食糧に関する国力弱体化アピールや外圧等により、減反はじめ様々な国策が行われてきました。永遠にも思える私たちの平和の足場は、粘り強い国際交渉の末の、非常に繊細でもろい世界バランスで成り立ってきたものです。ニュースでしばしば目にするTPPについても、諸問題の防衛線がどれだけ薄い氷の上にあるかを、私たち一般人でも垣間見ることができます。日本の長い歴史から見ても、カロリーベースでこれほど豊かな食事ができている期間は、実はほんのわずかです。
だからと言って、何か批判しようだとか(中間利権構造の厚さについては批判されるべき側面もあると思いますが…)とりあえず皆農業を始めようぜ!ということではありません。悪質農家を除いて、安全で美味しい物を食べてもらおうと真剣に農業を営んでくださっている全ての人々の存在自体がとても尊いということ、食糧の最前線でこの国と私たちの命(健康)を日々力強く支え守ってくれていることを、覚えておきたいですね。
とてつもない思索と苦労の年月を耐えたからこその石井さんや木村さんのさりげない言葉達から、育てる作物のことをどれほど心から大事に想っているかよく伝わります。お二方とも、高度な学問を修めた農学博士等のエリートではなく、自分のそばにあるものをひたすら熱っぽく見つめ、誰にでも可能なツールを使って、独学で辿り着かれました。
一般常識上、学問上で、作物にとって最も不要視・排除されてきた『雑草(自然)の力』を大事に愛してこられたという点は大変興味深いですね。文章についても同様に、学問的・常識的アプローチのみを盲信せず、皆の足元にあるのに誰にも見逃されている大事な視点に気づくことの大切さを教えてくれます。
国内外の人々だけでなく、畑の神様にも認められた、人として憧れるとても大きな方々ですね。
- 第7回 東日本大震災を記憶しよう
書き方・ルール
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