「知る・触れる」編 ~知るきっかけづくり~

【第8回】 和菓子(上菓子)のことを知っていますか? 

和菓子(上菓子)は非常に高度な創作作品でありエンターテイメント作品です。
しかも、ねりきり(京呼称:こなし)のような上菓子は、もはや単に景色や造形を写し取った意匠というだけでなく、主人の心や客への気持ちまでも汲んだ意匠となっていたりします。

和菓子の一種、饅頭はいわゆる『ケ(普段、日常)』のお菓子です。
出来たては抜群に美味しいですね~。虎屋と塩瀬は老舗で有名ですが、地方土地ごとにある饅頭も、またそれぞれに美味しいものです。年を取る度に饅頭が美味しく感じるのは日本人の不思議です。手に持って食べることのできるカジュアルさもいいですね。正しくは半分に割って食べるのだとか。美味しければどっちでもいいですね。

上菓子は、『ハレ(いつもとは違う日、大事な節目)』のお菓子です。
饅頭よりもずっと早くに味が落ちてしまうので、出来たてを食べるのがいいですね。
食べたい時間に合わせて上菓子を菓子司に注文しておくという贅沢は、まさにハレの日ならでは。
現代のクリスマスや誕生日ケーキの注文みたいな感覚でしょうか。

そのため、大切な時間にふさわしく、五感すべてを使って楽しんで食べられるものが目指されています。
茶(抹茶)という主役が霞むほど目立ってしまわぬよう、それでいてはっとするような名脇役となるよう、非常に繊細で緻密に計算された、淡いほろほろとした溶ける上菓子が多くなっています。

四季や土地によって、ドレスコードならぬ色彩コードや季節コードがあったり、定型の伝統的な意匠や制限があるなかで、それぞれの菓子司さんが、自分の手と昔ながらの道具を駆使しながら自分らしい上菓子を緻密に表現なさっています。

1.和菓子 -WA GA SHI- (日本語字幕)

2.春の上生菓子 和菓子 田町梅月

3.京菓子司 源水

4.目の前で作ってくれた和菓子in京都

5.和菓子職人・三輪健二「ねりきり100種」実演披露

上菓子を作る職人さんの技も凄いですが、細工をしやすい『餡』が物凄いですね。

表現したいことを何でも飲み込んでしまう、桁外れの度量を持っています。
だからこそ、その餡づくりに職人さんは最も情熱を注いでいるのです。

一番の命はやはり餡(素材)であって細工(小手先)ではないという点が興味深いですね。
もちろん、良質の餡素材を作るためには長年の鍛錬と見極める目が必要ですが……。

作者自身という素材(中身)が豊かに良質にならないと、いくら外側から技術だの作法だので覆ってみても、上質なものには到達できないということが言えるかもしれません。
『作家としての素材が良いとは?』という問いは、各自が考えて答えを見つけていくことになるのでしょうね。

ときには抹茶と上菓子で、静かに思索にふけってみるのもいいものですね。