コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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こちら藤沢家四兄妹
日時: 2014/10/27 23:29
名前: 和泉 (ID: l5ljCTqN)

初投稿です。
よろしくお願いします。


☆special thanks☆

ちゅちゅんがちゅんさま

冬の雫さま

紫桜さま

猫又様

はるたさま

八田 きいちさま

夕衣さま

波架さま

また、読んでくださっている皆様。


☆目次☆

日常編 

>>1 >>3 >>5 >>7 >>10 >>11 >>14 >>18 >>19
>>22 >>23

夏祭り編

>>26 >>27 >>28 >>31 >>32 >>33 >>34 >>37
>>45 >>47

長男過去編

>>55 >>58 >>61 >>63 >>65 >>68 >>71 >>73
>>77 >>78 >>79 >>84

双子お使い編

>>86 >>89 >>90 >>92 >>93 >>96

次女誘拐編

>>100 >>102 >>103 >>104 >>105 >>107 >>108 >>109
>>111

長女デート編

>>112 >>114 >>117 >>118 >>119 >>120

長男長女の文化祭編

>>122 >>123 >>124 >>129 >>131 >>132 >>133 >>134
>>135 >>136 >>137 >>140 >>141 >>146 >>147 >>148
>>149 >>150 >>154

佐々木杏奈の独白

>>157 >>158 >>159 >>163

同級生と藤沢家編

>>164 >>165

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Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.110 )
日時: 2013/08/30 22:20
名前: 和泉 (ID: mt9AeZa7)  


八田きいちさん

コメントありがとうございます。

更新遅くなってしまってすみません。

さあ、ヒーロー登場です(笑)

Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.111 )
日時: 2013/08/31 20:51
名前: 和泉 (ID: 6xDqgJhK)  


♯46 「長女と母親vs母親」

母さんがキレている。
それはもう、すっごく優しい笑顔なのに底冷えするような怒気を漂わせて。

あたし、リカは車イスから手を離して、そっと父さんの隣まで下がった。

誘拐犯、もとい立花紫乃に近づいていく母さん。

それを見ていると。

「あー、懐かしいなぁ」

「え?」

父さんが小さな声でぽつりと呟いた。

「涼子さん、高校時代ね、人助け団体作ってたんだよ」

なにそれ、そんなの初耳ですが。
ぎょっとして父さんを見上げる。

「団体名はHEROって言ったんだけどね。
学園内で起きるいろんないざこざの解決屋団体ってとこかな。
俺はその団体に入っていて、涼子さんの後輩だったんだ。
で、涼子さんが何度もごちゃごちゃした事件解決するところを見たけどね」

父さんは、小さな声でこう続けた。

「あの笑顔をした涼子さんに口でも暴力でも勝てた強者は、一度も見たことがないなぁ」

ちょっと待て。

口でも暴力でも、それはつまり。

「母さん、ケンカ強いの?」

「俺が見た中の最高記録では五分で身体的にも精神的にも成人男性5、6人ずたぼろにしてたよ」

その言葉を聞いて、私は突然心配になってきた。

母さんではなく、立花紫乃が。


そんな話をしている私たちをよそに、母さんは笑顔を崩さないまま立花紫乃に近寄っていく。

「ずいぶん、私たちの娘がお世話になりましたようで」

あ、だめだ怖い。
その笑顔に寒気を感じていると、

「あたしの娘よ!!」

立花紫乃がじり、じりと一歩ずつ後退しながら叫んだ。

「あたしが産んだの、あたしの娘よ!!
あたしのものよ!!」

とっさに、ナツ兄がアヤのもとに走った。
アヤの耳を塞ぐようにして抱き締める。

聞かせたくない。
アヤには、こんな自分勝手な理論にまみれた言葉。

アヤが今何も聞こえない状態。
それを確認した母さんはまたゆっくりと笑った。

「あの子は誰のものでもないわ」

母さんの攻撃ターンの始まりだ。

「なにを…っ!!」

「あの子は、あの子のものよ。
軽々しくあたしのものよなんて口にしないでもらえるかしら?」

母さんの、いつものふわふわした口調が完全に消えている。

「それに法的に言うならアヤは私たちの娘です。
確かに血は繋がっているかもしれないわね。
でも、五年前にアヤを手放したのはあなたでしょう。
今のあなたはアヤにとってはただの他人で誘拐犯よ。
突然現れてかっさらって手前勝手な理論ぶちまけないでもらえる?」


立花紫乃は何も言わない。
いや、言えない。
母さんの笑顔がそれを許さない。

「男のためにアヤを名前もつけないまま捨てて、
男に捨てられたら寂しくなってアヤを連れ戻そう、なんて。
そんなあなたの独りよがりが通用するとでも?」

母さんのセリフはどれもがどれも、反論の仕様がないほど正論だった。

「……うるさい!!あんたになにがわかるのよ!!」

「わからないわ」

母さんはゆっくりと繰り返す。
わかるわけないわ、と。

でもね。

「あなたが。本当にその男性を愛していて、それで別れを告げられたなら。
その男性に一時でも愛されたっていう「アヤ」という名の証拠を、
手元に置きたい気持ちはわかる気はするわ。」

「……っ」

それでもね。

「そこにアヤの意思はあるの?」

「………っ」

「アヤが心からそれを望むなら、私は寂しいけど止めはしないわ。

アヤ」

そう言って、母さんが車イスを押してアヤに近づいた。

「立花紫乃さんと、暮らしたい?」

淡々と、事務的に問う声が部屋に響いた。

「母さん!!?」

何言ってんだ、そんな口調でナツ兄が叫ぶ。

「なっちゃんは黙ってて。
アヤ、大事なことよ。
立花紫乃さんは、あなたの本当の母親。
彼女はあなたと暮らすことを望んでいる。

アヤは、どうしたい?」

黙って母さんの話を聞いていたアヤは、きゅっと手を握りしめた。

そしてゆっくりと首を振る。

「帰りたい。
ナツ兄と、リカ姉と、ヒロとお父さんとお母さんのいるおうちに帰りたい。」

それを聞いて、ゆっくりと母さんは立花紫乃を振り返った。

「そういうことだから。
この子、連れて帰るわね」
そう言って、母さんがアヤの手を引いたその瞬間。

「あなたが産んだわけじゃないのに」

立花紫乃がつぶやいた。

「え」

「本当の娘でもないくせに、母親なんて笑っちゃうわよ!
あなたの方が他人じゃない!!」

ナツ兄が息を飲んだ。

しかし、母さんはその言葉にゆっくりと口角をあげた。
そして一言。


「たとえ自分の子供じゃなくたって
腹くくって愛情そそいで育てきる覚悟を決めたなら、誰だって母親になれるのよ。」


あたし、この人の娘でよかった。

この人の娘になることができてよかった。

心の底からそう思った。

「あなたがその覚悟を決めることができたなら、今度は堂々とアヤに会いに来ればいいわ。
そのときまで、あなたの娘は私が責任をもって育てる。」

立花紫乃が泣き崩れた。
母さんは、そんな彼女に慰めの言葉もかけずにあたしたちを振り返った。

そして、ひとこと。

お家に帰りましょう。

そう言って、優しく優しく笑った。

あたしたちは大きくうなずいて、その家を出た。
家を出るとき、後ろを向いたアヤが、

「またね!!」

そう立花紫乃に叫んだ。
アヤがどんな気持ちでそれをいったかはわからない。
だけど、立花紫乃はドアが閉まるまで泣きじゃくったままだった。



マンションからでる。
アヤが無事帰ってきてよかった。
安心してアヤの頭をそっと撫でたときだった。

「母さん?」

ナツ兄の不思議そうな声が聞こえた。
どうしたんだろう、そう思いながら母さんの方に目をやると。

ぐらり、と大きく母さんの体がかしいだ。

「母さん……っっ!!」

おうちにかえろう。

一番帰りたかったのは、アヤじゃなくて。

「母さん!!!!!」

母さん、だったのかな。


母さんが車イスから崩れ落ちていく様を、私はぼんやりと眺めていた。

Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.112 )
日時: 2013/09/01 10:41
名前: 和泉 (ID: DrxGkANi)  


♯47 「ぐらり、ぐらり」


なかないで。

なかないでよ、ねえ。

『あなたひとりくらい、担いで歩いてみせます!!』

だから俺にすがりついてよ。
弱音吐いて見せてよ、涼子さん。

高校生のかなめくんが、泣きながら笑った。
高校生のわたしも、笑いながら泣いた。

握りしめた手を、思い切り振り払ったのはわたしだった。

なかないで。

なかないでよ、ねえ。

かなめくんの泣き声がなっちゃんに変わって、
アヤに変わって、ヒロになって、リカちゃんに変わって溶けて消えた。

おねがいよ、なかないで。

だってわたし、幸せだったから。




アヤ誘拐未遂事件あと。
母さんは目を覚まさず、緊急手術と入院が決まった。
あたし、リカは毎日母さんの病室に通いつめた。

母さんは、今も眠り続けたままだ。

ガタが来ていた母さんの体は、突然の外出とストレスに耐えられなかったらしい。
あたしには、医者の説明はよくわからなかった。

ただわかるのは、あのとき母さんを意地でも行かせなきゃよかったってこと。
そして、母さんは今も眠り続けたままだということだ。

学校帰り、病室にいくともうナツ兄が先に来ていた。

「おかえり、リカ」

「ただいま」

言いながら、病室のイスに腰かける。

そして参考書を取り出した。

そんなあたしを見て、ナツ兄がぽつりと呟く。

「ほんとに、イチコー受けるのか。リカ」

受けるよ、あたりまえじゃない。

「二年前、まだ気にしてるのか」

気にするよ。
気にしない方がおかしいよ。

ナツ兄は、ほんとはイチコーに行くはずじゃなかった。
家から電車で一時間ほどの、専門学校に通おうとしていた。

諦めたのは二年前。
ナツ兄が中三の冬、あたしがヒロとアヤを
藤沢家においてくれとわがままを言ったからだ。

母さんは、そのとき体調を崩して入院が決まっていた。
家事くらいならナツ兄は専門学校に通いながらでも
あたしと分担してできるはずだった。

でもそこに、小さな子供の世話が入ったら。

自分が長い間家を空けるわけにはいかない、そう思ったんだろう。

ナツ兄は志望校を、家から一番近いイチコーに変えた。
ナツ兄はちょっとだけ、寂しそうに笑っていた。


だからあたしもイチコーにいく。
あたしがもっと家にいられる時間が増えたら、ナツ兄の負担もきっと減る。
だから、あたしはイチコーにいかなきゃいけない。

それなのに、ナツ兄は少し寂しそうな顔でいつもあたしを見るだけだ。

それは、あの日。
ナツ兄がイチコーに受かったときの笑顔によく似ている。


「なあ、リカ。
アヤの誘拐未遂あっただろ」

参考書から顔を上げないあたしに、ナツ兄が小さな声で尋ねた。

「うん」

「あれな、俺いろいろひっかかることがあってさ」

ひっかかること?
それが気になって顔をあげると、思いの外真面目な顔のナツ兄と目があった。

ひとつ、聞いてもいいか。

そう前置きをしてナツ兄はこう言った。


「おまえ、もしかしたら———————じゃないのか」


それを聞いて、時間が止まった気がした。

Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.113 )
日時: 2013/09/01 16:58
名前: 八田 きいち。 ◆8HAMY6FOAU (ID: txYMsE4u)


お、お母様が!!
倒れられたぁぁぁぁぁっ!
カッコいいお母様がっ、

と、ととと取り敢えず、アヤちゃんが無事でよかったですすす!!
お母様も早く元気になってくれ……(´;ω;`)ウッ・・

Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.114 )
日時: 2013/09/01 17:52
名前: 和泉 (ID: L46wKPpg)  


♯48 「長女と同級生とデートと写真展」


真っ白な頭で病院を出た。
なんで、ナツ兄はあたしにあんなことをきいたんだろう。
なんで知ってるんだろう。

あたし、ナツ兄にそんなこと話した覚えなんかないのに。

あたしの中の、一番古い記憶。

『リカちゃん、リカちゃん』

ちいさなちいさな女の子が、泣きながら手を引かれて去っていく。

いかないで。

伸ばした手は空を切る。
ぱたん、と閉まるアパートのドア。

振り返るとそこには鬼が立っている。

あのこの名前は、なんだっけ。

ずきん、ずきんと頭が痛い。
思い出すな、そう体が叫んでいる。

『いたい、いたいよお父さん……っ!!』

だめだ、だめだ。

うつむく。
頭がいたい。
いたい、いたい、いたい。

「思い、だすな……っっ!!」


『もう、だいじょうぶだからね』


桜の咲いたあの日にみた、優しい笑顔を思い出す。

優しい笑顔を思い出した瞬間、ふっと頭の痛みが和らいだ。

そのとき。

「藤沢さん……っっ!?」

聞きなれた声が聞こえた。
ぱっと振りかえって、大きく息をつく。

ああ、優しい笑顔はここにもあったね。

「日下部、くんだ」

日下部が、慌てたようにあたしの腕をつかんでいた。
「なんでいるの?」

「学校の帰り、いつもと違う方向に行くから気になって…」

「つけてきたんだ」

ストーカーめ。
そういうと、日下部がちょっとほっとしたように笑った。

「母さんが入院しちゃってさ。
今日は見舞い。
それにしても日下部くん、なんでそんなに慌ててたの?」

あたしが聞くと、日下部が困ったように眉を下げた。

「泣いてるのかと思ったんだ」

「え」

「うつむいてるから。
泣いてるんじゃないかって思ったんだ。
ひとりで、また」

だから、ちょっと焦った。

そういって日下部はあたしの頭をすっと撫でた。


「泣いてなくて、よかった」

そのセリフに、一瞬胸が跳ねたような気がした。
気がしただけだ、きっと気のせいだ。

ぶんぶんと首を降る。

頭の痛みは、もうずいぶん和らいでいた。

「ね、藤沢さん」

日下部がぱっとあたしから手を離してポケットに手を突っ込んだ。

「これ、一緒にいかない?」

とりだしたのは一枚のチラシ。

「四季の花の写真展」

そうタイトルがつけられていた。

「来週の日曜日、隣町のアートギャラリーでやるんだ。
一緒にいかない?
今度はふたりで、さ」

四季の花。
確かに興味はあった。
けれど。

「それってデートのお誘いですか?」

首をかしげて尋ねる。
そういうと、うっと日下部が止まった。

「そ、そう改まって聞かれると恥ずかしいんですが。
俗にいうデートのお誘いですね」

すっと目が横に向いていく。

「また写真展なんて中学生のデートにしては渋い選択ね」

そういうと、日下部はぱっとこっちを向いた。

「でも、藤沢さんは遊園地とか
そんなレジャー施設よりこういうのの方が好きかと思って。」

その通りです。

「それに、前に言ってたでしょ。
桜が好きなんだって」

桜の花の写真も展示されるみたいだから。

そういって、ふわりと笑った。

あたしも忘れたような小さな会話を、こいつは今も覚えていたのか。

胸の奥がぎゅっと掴まれたような気がした。
こんな感情、知らない。

あたしはふっと日下部から顔を背けた。
けじめをつける、そう言ったばかりだ。

そう決めて口を開く。

「でもあたし、受験生だし。ヒロとアヤを置いてもいけないし」

日下部の誘いを断ろうとした瞬間だった。

「いきますいきますむしろつれていけ」

どん、と肩を押されてよろめく。

慌てて日下部があたしを抱き留めてくれた。
ナイス日下部。

犯人をにらみつけると、
病院から出てきたナツ兄がこっちをみて笑っていた。

「やっほー、日下部くん」

「ど、どうも」

どことなく日下部の顔が青ざめた。
どうしたお前。

「お兄さん、いつからそこに……?」

「泣いてなくて、よかった。のあたりから」

「わりと最初の方ですねなんの羞恥刑ですかコレ」


にっとナツ兄が笑った。

「こいつ、全然息抜きしないから。
つれてってやってくれ。
多少遅くなってもいい」

「ナツ兄!!」

「お前は休め。
最近ちゃんと休憩してないだろ。
一日くらいぱーっと遊んでこい
俺たちは大丈夫だから」

「ナツ兄……」

さすがに申し訳ないんだけど、そう何度もいってもナツ兄は引こうとしない。

あたしはゆっくりため息をついた。

そして日下部を見上げて一言。

「いく」

日下部は嬉しそうに笑っていた。


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